|
■オープニング本文 天儀本島、武天国、某村――。 真夏の太陽が降り注ぐ川辺で、子供たちが遊んでいた。村の母親たちは、子供たちの様子を見つめながら、川で洗濯をしていた。 「この間旅の人から聞いたんだけど、こことは違う、別の国が見つかったんだってね」 「別の国? そこは平和な国かねえ。どこに行ってもアヤカシから逃げることは出来ないからね」 「泰国とジルべリアだって、決して平和とは言えないだろう? ジルべリアじゃこの間戦争があったそうじゃないか」 と、そこへ若い母親が姿を見せた。名を「鈴」と言った。 「みんな聞いて、近くの村がアヤカシに襲われたんですって。骸骨や死人のアヤカシが出たんですって」 その言葉に、母親たちは不安そうな顔を見せる。 「アヤカシが‥‥近くに?」 「恐ろしい」 「村長さんは何て言ってるのかしら」 すると、鈴は声を低くして言った。 「村長さんは開拓者ギルドに依頼を出したそうよ。多分大丈夫よ。開拓者がアヤカシをやっつけてくれるわ」 鈴はそう言って、母親たちの顔を見渡した。 ――程なくして、村に異変が起きる。 村のとある一家で惨殺死体が見つかったのだ。 「これは‥‥酷い」 役人は、遺体に藁を被せると、同僚に言った。 「最近近くでアヤカシの被害が起こっている。もしかして、夜のうちに村に入り込んだのでは」 「ふむ‥‥」 役人たちは、家の中を見渡す。家の中はひどく荒らされていた。 「それにこの傷跡は、とてもではないが人がつけた傷とは思えん」 「アヤカシか‥‥だが、ただの骸骨なら、他にもっと痕跡が残っていてもいいのでは。どこかに潜んでいるとは思えん。ここはただの村だ」 「それはそうだが‥‥今、近くに開拓者たちが来ていたな。死人アヤカシが出た件で。彼らを呼んで一度調べてもらおう。アヤカシ絡みだと我々の手に余る」 そう言って、役人たちは開拓者たちを呼んだ。依頼は前後して風信機を使って、ギルドに伝えられた。 ‥‥家の中で、鈴はごく普通に家族たちと接していた。夫や子供たちのために夕食の支度をしていた。 ――と、鈴は手を止めると、家を出て、裏手に回った。 そこに、何と幽霊がいた。 『毘姫様――』 アヤカシの言葉で毘姫と呼ばれた鈴は、口許に笑みを浮かべた。 『最初の攻撃で近郊の村に打撃は与えましたが、開拓者たちの手によって骸骨兵は全滅です』 『そうであろうな。ただの骸骨程度に、開拓者が後れを取りはしまい。が、これは始まりに過ぎん』 『そうですが‥‥』 『お前は行け。ここは私が制圧していく』 毘姫はそう言うと、家の中に戻った。 子供が鈴の姿をした毘姫に駆け寄ってくる。 「お母さん、お腹すいた」 「待ちなさい。もう少しで出来ますからね」 子供に母親の笑みを向ける毘姫。人界に潜む毘姫はそうして、密かに行動を起こそうとしていた。 |
■参加者一覧
朧月夜(ia5094)
18歳・女・サ
劫光(ia9510)
22歳・男・陰
ルエラ・ファールバルト(ia9645)
20歳・女・志
エシェ・レン・ジェネス(ib0056)
12歳・女・魔
アグネス・ユーリ(ib0058)
23歳・女・吟
オラース・カノーヴァ(ib0141)
29歳・男・魔
无(ib1198)
18歳・男・陰
百々架(ib2570)
17歳・女・志
灰夢(ib3351)
17歳・女・弓
鳳珠(ib3369)
14歳・女・巫 |
■リプレイ本文 時をやや遡る――。 出立前に、无(ib1198)は図書館に立ち寄っていた。事件が起こった村の周辺地域の伝承を調べていた。 「何か分かりそうか」 普段書物を漁ることには慣れていない朧月夜(ia5094)は、広大な図書館を見上げて、无の様子に感心していた。 「そうですね‥‥」 「しかしよくこれだけの書物を集めたな。感心するよ」 「ええっと、ここですね」 无は目的のページを見つけて、指を走らせた。 「ふむ」 「それで? 何とある」 陰陽師の劫光(ia9510)は、无を促した。 「その昔、毘姫と言う名のアヤカシがこの地域を席巻していたそうです。十年ほど前のことだそうですが。その時には毘姫は開拓者たちによって撃退されたとあります。それ以外は特に目立った情報はないですね。後はいわゆる昔話の類です」 「アヤカシの被害再来か‥‥」 それから无たちは、開拓者ギルドをもう一度訪れた。最後に念のため確認しておきたいことがあった。 「鉄州斎さん」 ギルド相談役の橘は、机の向こうから開拓者たちを見上げた。 「一つ確認しておきたいことがあるのですが」 「何か、現地以外で?」 「ええ、特に気になることがありまして、憑依能力への対処を確認しておきたい」 「ふむ? 憑依は厄介だ。憑依された時点でその人間は死んでいる。そこからアヤカシを倒すのは、心情的にも辛いものがあるよな」 「そうなんですか‥‥」 「どうにかして、アヤカシ本体を肉体から引きずり出すしか、方法はない。最悪、被憑依者の肉体ごと、アヤカシを倒すしかない」 「分かりました。参考にさせてもらいます」 无はお辞儀すると、仲間たちの方を向いた。 「何か気になることがあったのか、これからだぜ」 劫光は无に言葉を掛けた。 「そうですね‥‥まだこれからですが」 そうして、開拓者たちは神楽の都を出立していたのだった。 ‥‥それから骸骨アヤカシを倒した開拓者たちは、やってきた役人から依頼を受けて、そのまま風信術でギルドとのやり取りを済ませると、事件が起こった村へとやってきた。 「こっちでもアヤカシ被害が出たそうだな。随分近い」 朧月夜は村を見渡しながら、役人たちと話していた。 「アヤカシの影か‥‥まずは聞き込みからになるか。被害状況は」 劫光は役人に問う。 「‥‥それにしても、この手の依頼は時折ギルドでも見かけますが、人里にアヤカシが入り込んでいることもままありますよね。珍しい状況ではありますが」 ルエラ・ファールバルト(ia9645)の言葉に、エシェ・レン・ジェネス(ib0056)が応じる。 「アヤカシの仕業‥‥って言っても、判んない事の方が多いんだね? 調べるの大変だぁ‥‥」 「今、骸骨退治してきたとこなんだけど。また、アヤカシが出たの、ね‥‥」 アグネス・ユーリ(ib0058)は眉をひそめて、少し悲しい顔になる。村人には言わないが、人にアヤカシが紛れてる可能性も疑う。 「‥‥ちょっと前、受けた依頼がそうだった、から‥‥嫌な事件だったわ、あんなのもう二度と見たくない。だから‥‥止める、次の被害が出る前にね」 「全くだ。許せねえ」 オラース・カノーヴァ(ib0141)は言って、熱い口調で拳を握りしめる。 「人を食らうアヤカシか‥‥まだ逃げ出していないことを祈るぜ。俺がこの手で粉砕してやる。民の無念を晴らしてやる」 怒りは静かに押さえつつ、オラースは感情を揺さぶられていた。幾度となく危地を脱してきたが、それでもアヤカシによる攻撃と聞けば、平静ではいられなかった。 「それで‥‥現在の状況ですが」 无は特に役人から、つぶさに状況を聞き込んでいた。 「被害があったのは親子四人の家族だ。全員何かに凄まじい勢いで傷つけられたような跡があった。恐らくお前さんたちの方が詳しいだろうな。あんな傷は、普通の人間がつけられるようなものじゃない」 「ここ最近になって、アヤカシの被害などは?」 「いや、まあ魔の森の近くからアヤカシが出没するのはよくあることだが、旅人が時折襲われることがあったが、村にまで攻撃が及ぶことはなかった。今しがたお前たちが片づけて来た骸骨の集団なんてものは、まず出なかったな」 「ここ最近では珍しい事件と言うわですか」 「ああ、だからこそ、アヤカシを疑う。こんな事件はアヤカシにしか出来ん。およそ人間の理解を越えてる。そうだろう?」 およそ人外の作用が見受けられる事件に、一般の役人たちがアヤカシの影を疑うのは当然である。何しろ、アヤカシは慢性的に国土と人心を蝕んでいる昨今である。 「正体不明のアヤカシですか、あたしには初めての依頼ですね‥‥がんばですよ」 百々架(ib2570)はそう言って、ぐぐっと拳を握りしめた。百々架はまだまだ経験と言う意味では浅い。強力なアヤカシとの交戦経験はほとんどない。 灰夢(ib3351)は美しい。まさに絶世の美女である。仕事以外には無頓着な女性で、普段は無口、無表情、無感動な人物だった。 「‥‥狡猾そうな正体不明のアヤカシ。どう村に隠れているのか‥‥謎。退治には‥‥アヤカシの裏をかく必要が‥‥ある」 灰夢は言って、しなやかな指を顎に当てた。 「‥‥今回は、頼りになる開拓者達が、集まっている。そういう意味では、ありがたい‥‥。後は‥‥私に出来る事を、やる」 「頑張りましょうね灰夢さん!」 百々架の溌剌とした言葉に、灰夢は軽く頷く。 「人事を尽くして天命を待つ‥‥と言ったところですか」 「まだアヤカシが残っているとすれば、村のどこかに姿を隠しているはずですね。アヤカシの捜索を徹底して行うとともに、発見した場合は排除を」 鳳珠(ib3369)は言って、思案顔で村の方を見やる。 「姿を消しているという前提で、私たちは動くことになりますね。アヤカシがどんな方法で村に紛れ込んでいるかは、幾つか状況は考えられますが‥‥」 それから開拓者たちは、正面から村に乗り込み、巡回兼囮班として調査を行う班と、村に潜伏して、アヤカシに悟られないように行動する潜伏班に分かれることにする。 巡回役兼囮役:朧月夜、劫光、ルエラ、アグネス、オラース、百々架 潜伏班:エシェ・レン・ジェネス、无、灰夢、鳳珠。 「心してかかろうか」 朧月夜は村に入った。明らかに目立つ格好で、村人たちは何事かと朧月夜を見やる。 「さて‥‥どこかにアヤカシを誘い込むことが出来ればいいのだが」 周辺に目を配りながら村を巡回する。 「あの‥‥」 と、村の女性が話し掛けて来た。 「何か」 「武家の方ですか? 何があったんでしょう」 「俺たちは開拓者だ。役人からの依頼で、事件の捜索を行っている」 「開拓者‥‥あの事件は、何か特別なことでも」 「とにかく、大人しく家に戻ってろ。今はな」 「は、はい‥‥」 女性は朧月夜のもとを離れると、口許を緩めた。この女性は鈴――毘姫である。 「開拓者が‥‥これは面白くなりそうだな」 毘姫は村の中へ視線を泳がせる。見れば、巡回している開拓者たちが見える。 劫光は予定通り聞き込みを開始する。 「何はともあれ聞き込みからになるか――最近この事件以外で周りで何かなかったか。そう、例えば家畜がいなくなったとか、怪しい影を見たとか‥‥どんな些細なことでも良い」 「分かりませんね‥‥これと言って何があるとは思えませんが。やはりアヤカシのせいでしょうか? 亡くなった家族のことは恐ろしいですが」 「ふむ‥‥」 ルエラは現場周辺を心眼で探りながら、また村人たちの聞き込みも行っていく。 「現場周辺にはこれと言って見るべきものは‥‥」 ルエラは民家の周囲を回って、中に入る。家屋の中は荒らされていた。ルエラは血糊が着いた壁や床に目をやり、ゆっくりと踏み込んだ。と、そこで気配を感じて、ルエラは振り向いた。 鈴――毘姫が立っていた。 「あ、あの‥‥」 「何か」 「開拓者の方ですか?」 「そうですが‥‥」 「私、見たんです」 「見た、何をですか」 すると、鈴はぶるっと震えて、口を開いた。 「あの夜、幽霊が家の周りに浮かんでいました」 「幽霊? 詳しく聞かせてもらえませんか」 「あ、いえ、私、とても怖くて、すぐに逃げ出したんです‥‥」 鈴はそれだけ言って、その場から走り去った。 ルエラは鈴の背中を見送り、手帳に幽霊の存在を書き込んでおく。 「みんな、しばらく外出は自粛してね! 安全が確認されるまでは危険だから。外に居ると急に襲われた時対処出来ないからね。どうしても外に用事がある際はあたしたちに声掛けてちょうだいね!」 アグネスはそう言って、村人たちに自粛を求めていた。なるべく村人と接触して、顔を覚えて貰う。敢えて明るく頼り甲斐有り気に振舞い、印象付ける。 それから子供達とも触合ってみると、「最近変わったこと無い?」と聞いてみる。 「最近、茜ちゃんが元気ないんだ」 「茜ちゃんて?」 「鈴おばちゃんとこの子。最近、お母さんが変だって」 「変? 茜ちゃんのお母さんどうしちゃったのかな」 「えーっとね、なんか怖いんだって。夜遅く家を出たりするんだって」 「そうなの、ありがとね」 アグネスは子供の頭を撫でると、思案顔で立ち上がった。鈴がいると言う家に向かう。茜と会う。 「ねえ茜ちゃん、お母さんのこと聞かせてくれるかな」 茜は少し怯えたようにアグネスの背後を見る。 「ん?」 アグネスが振り返ると、鈴が立っていた。 「何か、茜に用ですか?」 「あなたは‥‥」 「母親の鈴です」 鈴はそう言って、茜を家の中に戻らせる。 「あなたが鈴さん? 少し話を聞かせてもらえる? 最近あなたの様子がおかしいって話があるんだけど」 「何だあんた、開拓者だからってあれこれ詮索するのはやめてくれないか」 奥から鈴の夫が出てくると、話はそこまでとなった。 「ま、仕方ないわね。確証があるわけでもないしね」 閉ざされた扉を前に、アグネスは立ちつくした。 「アヤカシの気配か‥‥どんなものかな」 オラースは巡回しながら、村の様子に気を配っていた。アヤカシの影などは微塵も見えない。 「まあそう簡単に見つかる相手でもないだろうがな」 顎を撫で回しながら、オラースは潜伏班がうまく動いてくれることを祈る。 百々架もまた、武装して村に堂々と入り込んだ。 「開拓者だってバレるでしょうけどその方が好都合ね」 腕に包帯を巻いて村に潜入する。 「前の依頼での傷がまだ完治してないです」 そう言って、百々架は村人たち全員の家を回っていく。 「えっと、この村で一家惨殺事件が起こったって聞いたんですけどぉ‥‥詳しく教えてもらえませんか?」 「恐ろしい‥‥! 一体いつの間にアヤカシが入り込んだのか‥‥信じられません!」 村人たちは一様に不安な様子。正体不明の相手と言うことで、まずアヤカシの存在が疑われる。 「致命傷じゃないけどこんな怪我をしている時に襲われたら大変ね‥‥」 百々架は眉根を寄せながらわざとらしく聞こえる声で言う。 そのまま一家惨殺事件についての概要の聞き込みを続ける。村人全員と会話していく。‥‥特に子供や若い女性は憑依されてる可能性が高そうだから要注意ね。 「毘姫‥‥十年前の事件の時は派手な被害が出たようですね」 无は手帳にメモを書き込みながら、思案顔。 「中々に難しい依頼ですね。確実な情報があるわけではありませんからね」 鳳珠は瘴策結界で地道な探査を続けていたが、成果は出ていなかった。 「一体どこにアヤカシが潜んでいるのでしょうか‥‥」 鳳珠は厳しい顔でそれぞれの家屋や物影などを探っていた。 ‥‥夜になる。潜伏班が動き出した。 ジェネスはルエラが残した手帳に目を落としていた。 「幽霊の目撃情報か‥‥それ以外には‥‥目立った情報はなしですか」 それから立ち上がり、村の中を確認する。 夜の巡回を行う仲間たちの後を追ってみるが、怪しい影はない。 无、灰夢も密かに村の中を潜行する。 夜、静けさに包まれた闇の中で移動する開拓者たち。 「変わりはないか」 劫光は家を一つ一つ訪ねて回る。村人たちを安心させるように、一方でアヤカシの気配を探りながら。 その時である。呼子笛が夜の闇に鳴り響く。アグネスの合図だった。 「何だ」 朧月夜は駆け出した。 開拓者たちは急行した。 アグネスが、羽衣を着た女と対峙している。その足元には、倒れ伏す鈴と、女の後ろでは夫の男が泣き叫んでいる。 「やはり‥‥アヤカシか」 加速する朧月夜は抜刀した。 「一体何があった」 「アヤカシだよ!」 羽衣を着た妖しげな女――毘姫は、不気味な木霊する声を出した。ぼうっと瞳が光る。 「開拓者たちか‥‥わしを捕まえてみよ。すでに力は頂いた。後は、貴様らを討てば重畳極まりない」 「わざわざのおでましとは‥‥民の悲しみを知れ!」 オラースは扇子を構える。 「ふふ‥‥行くぞ」 毘姫はすうっと両手を上げると、羽衣を翻した。 ばさばさばさ! と羽ばたきが鳴って、毘姫は滑空するように飛びかかってきた。 最初の一撃を朧月夜は受け止めたが、毘姫の拳が深々とめり込む。 「裂け! 風竜!」 劫光が風をまとった竜を放つ。竜の式の斬撃符――。毘姫を切り裂く。 「瑠璃!」 ルエラは毘姫に打ち掛かったが、ばさばさ! と舞うようにかわされる。 遅れてやってきたジェネスは、ホーリーアローを撃ち込んだ。 「ようやく姿を見せたね」 「みんな頑張って!」 アグネスは鈴を鳴らして踊る。天鵞絨の逢引で仲間たちを支援する。 「逃がすかよ! 食らえ! アークブラスト!」 オラースは術を叩き込む。毘姫の肉体を閃光が貫く。 无は斬撃符で支援しつつ、百々架はレイピアで突きかかった。 毘姫は開拓者の攻撃を捌きながら滑空するように舞う。実際に飛んでいるわけではないが、毘姫は軽やかに跳ねる。 「‥‥‥‥速射、連続速射。両方命中」 灰夢は矢を連発すると、毘姫を牽制する。 「‥‥好機‥‥六節、会‥‥き、りょ、く‥‥」 灰夢の一撃が毘姫を直撃するが、微動だにしない。 「そちらから出てくるなんて、随分と自信がありますね‥‥でも好都合ですよ」 鳳珠は力の歪みを撃ち込んだ。空間が歪んで毘姫の肉体がねじれる。 それから開拓者たちは毘姫と打ち合うが、このアヤカシの格闘戦技は意外に高い。 「はは‥‥開拓者たちよ、お遊びはここまで! 我が姿は幻、影、見えぬものじゃ」 ばさばさばさ! と毘姫は舞うように後退すると、そのまま闇の中へ消えた。 ――静寂が戻った。 「終わったのか‥‥」 无は状況を確認する。 灰夢は戦闘の緊張を解いてから、周りの視線で着流しが着崩れ過ぎている事に気づいて(「‥‥!」)いつもの状態に直す。 「‥‥失礼、したな‥‥」 ‥‥それから夜が明けて。 百々架は鈴の子供達と一緒に小さな墓を作り、 「もっと早く来てあげれ、ば助けられたの、かし‥‥ら‥‥」 涙声で俯き。 とにかくも逃走したアヤカシの件を役人たちに報告して、開拓者たちは村を後にした。 |