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■オープニング本文 天儀本島武天国、龍安家の治める土地、鳳華――。 11月の小康状態を破って、アヤカシ軍、再び動く――。 天泉河の支流を前に、在天奉閻の軍勢は、10月末の戦いで莫大な被害を出し、片翼の侯太天鬼の鬼軍を失い一時後退したが、しかしまた軍勢を増やしつつあった。魔の森から続々と到着するアヤカシの兵士たちは、凄まじい数に膨れ上がっていた。 「在天奉閻‥‥まだこれだけの大軍を魔の森に残しているなんて」 龍安武将の直代神樹は、言って厳しい表情を見せた。 龍安軍とアヤカシ軍は川を挟んでまた対峙している。 龍安弘秀は、望遠鏡を下した。 「残るは在天奉閻のみか‥‥先の戦いはどうにか敵の渡河を阻止した。しかし、アヤカシの数は尋常ではないな」 「敵軍の様子を見るに、まだ在天奉閻は戦力を残しいたようですな。何ともしぶといことですが‥‥」 筆頭家老の大宗院九門の顔もまた厳しいものであった。 「蒼晴雪鈴と明道心の到着が遅れておりますな。今はこちらも、精鋭を全軍でぶつける必要があるでしょう」 龍安武将の青木正則は、言って思案顔で顎をつまんだ。 「いずれ決着は着く。だがそれは今日になるかもしれない」 龍安弘秀は、後方の自陣を顧みた。弘秀はかつてない大軍を呼び寄せていた。ここが決戦時と睨んだ弘秀は、次の在天奉閻との交戦において、少なくとも決定的な打撃を与えるつもりであった。在天奉閻の大規模な攻勢を封じ込めるには、麾下の機動戦力を叩くしかない。 そしてそれは、在天奉閻としても同じことであった――。 アヤカシ軍陣中――。 在天奉閻は、麾下の軍勢に総攻撃の命令を下そうとしていた。 「龍安弘秀、そして龍安軍――わしの兵をここまで引きずり出すとは‥‥それにふさわしい最後を与えてやろう。今日お前たちは決定的な敗北を喫することになる。それは鳳華の崩壊につながるだろう」 そうして、在天奉閻は、天に向かって腕を伸ばすと、もの凄い咆哮を上げた。 周囲のアヤカシ兵が雄叫びを上げる。おぞましい叫びが川を越えて龍安軍に叩きつけられる。 在天奉閻はもう一度、総攻撃の咆哮を上げた。 『全軍攻撃開始! 龍安軍を叩き潰せ! 決着をつけてやるわ!』 その咆哮は、天を圧して、大気をびりびりと震わせた。 |
■参加者一覧
星鈴(ia0087)
18歳・女・志
鈴梅雛(ia0116)
12歳・女・巫
百舌鳥(ia0429)
26歳・男・サ
葛切 カズラ(ia0725)
26歳・女・陰
焔 龍牙(ia0904)
25歳・男・サ
輝夜(ia1150)
15歳・女・サ
コルリス・フェネストラ(ia9657)
19歳・女・弓
ジークリンデ(ib0258)
20歳・女・魔 |
■リプレイ本文 「ジークリンデ(ib0258)は行ったのか」 龍安弘秀は、傍らの大宗院を顧みる。 「はい、恐らく間もなくでしょう」 「だが‥‥このアヤカシどもは恐らく水攻めなどで死ぬ相手ではあるまい。足止め程度か」 「お屋形様――」 前線から青木正則が戻って来る。血まみれだ。 「開拓者たちの部隊がどうにか敵を足止めしています。どうにかですが」 「やはり‥‥明道心様たちの兵力が必要ですね」 鈴梅雛(ia0116)が呟くと、直代神樹は頷く。 「兄上、明道心も雪鈴も間もなく。今は在天奉閻を止めねば。兵力がまとまったなら、一斉に攻勢に転じましょう」 「ああ。誰も死ぬためにここへ呼び寄せたわけじゃない。勝算はある。小さな望みだがな」 そこへ、シノビが知らせを持ってやってくる。 「うむ――ジークリンデの準備が整った。よし、俺も前線に出る。大宗院、援軍が来たなら総攻撃の合図を出せ」 「はっ!」 「行くぞ――!」 龍安弘秀は立ち上がった。 「お屋形様からの命が下りました。皆さんよろしく」 ジークリンデはそう言うと、焙烙玉を投擲してストーンウォールを破壊して行く。龍安兵も一斉に焙烙玉を投擲。 「よし逃げろ!」 ストーンウォールにせき止められていた水が怒濤となってあふれ出すと、下流のアヤカシ軍目がけて流れ込んでいく。 「私たちも本体と合流しましょう。敵は混乱するはずです。少しでも削っておくにしくはありません」 「ジークリンデの水攻めが来るぞ! 全員後退! 巻き込まれるな!」 百舌鳥(ia0429)は叫ぶと、目の前のアヤカシを二刀で叩き斬った。 「急げ! 後退!」 焔 龍牙(ia0904)も声を張り上げると、兵士たちを後退させていく。 龍安軍は潮が引くように後退する。 勢いを増すアヤカシたちは、獰猛な雄叫びをあげると、一気に川を越えてくる――。そこへ、上流からの鉄砲水が流れ込んできた。 「ぬう‥‥? 同じ手か」 在天奉閻は上流を見やり、不敵な笑みを浮かべた。 「水攻めなど、足軽を幾ら巻き込んだところで笑止」 怒濤が押し寄せ、アヤカシ軍を直撃する。巻き込まれたアヤカシ足軽は肉体をへし折られて瘴気に還元して行く。しかし、鎧武者や中型以上のアヤカシ兵は水攻めなどものともせずに押し寄せてくる。 『巨人兵! 奴らの防壁を叩き潰せ!』 在天奉閻の咆哮で、巨人が前に出てくる。 星鈴(ia0087)は、腕を振り上げると、兵士たちに叱咤した。 「ええか、うちらの役目はここで踏ん張ることや。全員、気合い入れてきぃ!!」 「おお!」 「常に二人で組ぃ、隙見せたら狩られるで。‥‥うちん背ぇはお前らに任す! しっかりついて来ぃ!!」 「行くぞ! 星鈴殿に続けい!」 「行けー!」 「おっしゃー! テメェら、あいつらを踏み砕く。覚悟はできてるかい? 俺はとっくにできてんよ!」 百舌鳥は二刀を構えると、突進して行く。 「オラ、こいよ。簡単にやれるぜ、俺は、だからよ。さっさと殺りにこいよ、オイ。」 激突する百舌鳥は、アヤカシ武者の首を切り飛ばした。 「うおおおおお!」 「突撃!」 葛切 カズラ(ia0725)も前線に出ると、鞭でアヤカシ兵士を絡め取り、斬撃符を叩き込む。 「そろそろこの戦いも終わらせてもらうわ! 出でよ神風特攻!」 「全力で食い止めるぞ! この戦、勝って終わらせる!」 焔は兵士たちを率いて、最前線に立ち、アヤカシ兵士を叩き斬っていく。 輝夜(ia1150)も前線に出ると、長大な野太刀で巨人の足を両断した。 「さて、急がば回れ‥‥とは言うが。ようやくここまできたか。ただ、あの在天奉閻の弱点が見出せなかったのは気がかりじゃがの」 「地帯攻撃開始! 一斉射撃!」 コルリス・フェネストラ(ia9657)が命じれば、弓術士たちが即射で次々と矢を放っていく。 「何とかうまくいった‥‥とは言い難いですね」 ジークリンデは戦場に到着すると、険しい顔で兵士たちに命じる。 「瘴気の霧を発動。火炎獣を撃ち込んで下さい」 「承知」 それからジークリンデは自らはアークブラストを叩き込んだ。閃光が魔杖からほとばしる。 「弘秀様!」 コルリスは、前線に出てきた弘秀に肩を叩かれた。 「コルリス、戦況はどうだ」 「見ての通り、戦況は混沌としています」 「そのようだな。右翼に青木と神樹を向かわせた。正面は俺たちで食い止めるぞ」 「はい」 「頼む――雛」 「はい弘秀様」 「巫女を頼む、お前も死ぬなよ」 雛はひたと弘秀を見つめると、小さく頷く。 「弘秀様もお気をつけて」 「よし、行くぞ」 ――龍安軍のもう一つの部隊は、明道心と雪鈴が率いる約200人の部隊である。 「見えてきましたな」 「在天奉閻ですか‥‥弘秀様にお知らせしないと」 そこへ、上空から龍騎兵が舞い降りてくる。 「明道心様! 雪鈴様!」 「ああ、迎えが来ましたね」 「待ちかねましたぞ! 敵軍の側面から背後を突いて下さい! 大宗院様が同時に全軍で総攻撃を敢行します!」 「承知しました。これから仕事に掛かるとお伝え下さい」 「では! 頼みましたぞ!」 明道心は、雪鈴を顧みた。 「状況はどう転ぶか分かりませんな」 「今は、在天奉閻を逃がさぬことを。行きましょう。敵は甚大ですが、私たちの部隊も精鋭。ここでアヤカシ軍を滅ぼします」 「そう願いたいものです」 「全軍突撃の号令を下して下さい! この戦に決着をつけるのです!」 「ぬう‥‥?」 在天奉閻は、側面から突撃してくる龍安軍の部隊に目をやると、目を細めた。 「龍安軍、戦はここからだ。二十年前を思い出す‥‥」 在天奉閻は咆哮すると、部隊を後方と全面に展開して、龍安軍の攻勢に対峙する。 「全軍突入! アヤカシどもを挟撃して一気に叩く! 勝ち鬨だ!」 大宗院は待機していた全軍に突撃命令を出す。 「よう耐えたでお前ら、今度はこっちん番や。勇んで前へ進みぃ!!」 星鈴は兵士たちを叱咤すると、呼吸を整えた。汗がにじみ出てくる。ここからが正念場だろう。いよいよ在天奉閻と対決することになるはずだ。吐息は白いものに変わり、蜃気楼を思わせた。 「行くで!」 アヤカシ軍と龍安軍は激しくぶつかり合い、数で圧倒するアヤカシ軍に対して、龍安軍の精鋭たちは凄まじい勢いでアヤカシを削って行く。 「俺ぁただの刀だ。こまけぇこたぁ‥‥あとで考えるんだよぉ!」 百舌鳥は前線で乱舞し、次々とアヤカシを葬り去って行く。 じわじわとアヤカシ軍の中心部に迫っていく龍安軍は、やがて在天奉閻率いる本陣に到達する。 「鳳華の竜神! あんたとの決着、付けに来たで!」 星鈴の言葉に、在天奉閻は巨体を揺らした。 「わしとの決着だと? 竜神に勝てる道理があろうか」 「栗原様‥‥ひいなたちを守って下さい」 雛は小さな手を握りしめて、杖を構えた。 龍牙、百舌鳥、カズラ、輝夜、コルリス、ジークリンデは、在天奉閻と向き合う。 「在天奉閻! 今日お前との決着をつけてやる! 『焔龍』の名において!」 「ひゃっふ〜! こいつが在天奉閻かよ! いよいよ面白くなってきたねえ」 「あんたのその顔もそろそろ見飽きたのよね!」 「在天奉閻よ、何度もやられてやるわけにはいかんのでの。腕の一本はもらって行くぞ」 「みなさんの心と絆が、私たちをここへ導いた。鳳華の魔将の最後を見届けさせてもらいます」 「今ここに、竜神の滅ぶ日を銘記しましょう。在天奉閻――」 在天奉閻は、集まってきた龍安兵と開拓者を前に、軽く笑った。 「わしをここまで追い詰めたのは貴様等が初めて。月並みではあるが、それに相応しい最後を与えてやろう。わしは何度でも立ち上がる。魔の森で兵を再建し、鳳華を叩きつぶす」 「そうはいかんぜ!」 「行くぞ竜神!」 開拓者、龍安兵たちは時間差をつけて殺到した。在天奉閻の言霊をまともに食らえば終わりである。 「来い! まとめて吹き飛ばしてくれるわ!」 在天奉閻は加速すると、腕を一閃した。閃光がほとばしり、開拓者たちを薙ぎ払った。 「ぐう‥‥! さすが並みの一撃やない‥‥!」 星鈴は崩れ落ちた。 「行け行け! 怯むな!」 龍牙は加速した。 「おおおおおおおおお!」 龍牙の一撃が在天奉閻の足を切り裂く。しかし――。 「浅いか!」 「無駄なこと!」 閃光が龍牙を吹き飛ばす。 「撃って撃って撃ちまくって! 朧!」 コルリスは呪弓で在天奉閻を打ち抜く。 「白面九尾の威をここに! 招来せよ白狐!」 カズラの白狐が在天奉閻をかみ砕く。しかし在天は白狐を閃光で粉砕した。 「そのケンカ買ったぁぁぁぁぁ!!」 突貫する百舌鳥。二刀を撃ち込むが弾かれる。 「にゃろ! んじゃ、もうちょい調子こかせてもらうぜぇ?」 「気をつけて!」 雛は叫んだ。次の瞬間、閃光が百舌鳥を襲った。爆発に吹き飛ぶ。 「いってぇな‥‥もうちょい、強めにしてくれ。頭か心臓やらねぇと俺は止まらんぜぇ‥‥!!」 がくりと百舌鳥の足が落ちる。ダメージは想像を絶する。 「大丈夫ですか」 雛が駆け寄り、閃癒を掛ける。 「腕の一本でも置いて行くがよい。せっかく来たのじゃ」 早駆けで突進すると、影を解き放って輝夜は飛び込んだ。 ――ザン! と、在天奉閻の右肘から下が飛んだ。 「何を!」 初めて在天奉閻が怒りの声を上げた。直後、肘が無くなったところから閃光がほとばしって、輝夜を打ち貫いた。 「む‥‥う‥‥」 崩れ落ちる輝夜。どうにか後退するところへ、在天奉閻は立て続けに閃光弾を浴びせかけた。 「足止めを! 一斉攻撃!」 「行くわよ! 受け取りなさい竜神!」 ジークリンデとカズラが号令を下すと、陰陽師たちが一斉に攻撃術を叩き込んだ。めくるめく式の集中砲火が、在天奉閻を貫通して、しかしこの竜神を止めるには至らず、在天の反撃の閃光が龍安軍を薙ぎ払った。 「まだです。回復量はまだ十分です。終わってませんよ」 雛は輝夜を回復しながら、巫女たちを激励する。 開拓者たちは再び生命力を充填すると、立ち上がった。 在天奉閻を半包囲する。 「長く苦しい戦いであったか? 人間たちよ、お前たちがアヤカシと呼ぶ我々は不滅だ。いかにお前たちが策を張り巡らせようと、世界は魔の森によって包まれるだろう。永遠の夜が黄泉の沈黙となって天儀の時を凍りつかせる。魂さえも、全てが消失する。それは着実に進行しているのだ」 「そんならうちらは人の世が人の世である限り、仲間たちがいる限り、諦めることは無いで。あんたの言う通りやったとしたら、とっくに天儀は滅びとるやろう。うちらがそうはさせへん。少なくとも今はあんたを瘴気に還して、戦を終わらせる」 星鈴が言うと、在天奉閻は笑った。 「所詮血塗られた道よ。英雄などとうの昔に死んだ。世界は終わる」 「最初から分かっていたことやな。お前たちとは相容れない――行くで!」 「おおおおおおお!」 龍安軍は突進した。 「行くわよ! 一斉攻撃!」 「みなさん! あの在天を狙い撃って!」 コルリスは朧を連射した。 龍安兵と開拓者たちは在天奉閻に襲い掛かって行く。 在天奉閻は咆哮すると、腕を大地に叩きつけ、全周囲に閃光弾を放った。 なぎ倒される龍安兵たち。 「見てみぃ鳳華ん竜神‥‥これが‥‥人間の、『武』や!」 星鈴はスキル全開で突入した。薙刀が鋼鉄の在天奉閻のはらわたを切り裂いた。 「おおおおお――! ここまで来たらもう止まんねえー!」 「在天奉閻!」 百舌鳥と龍牙は在天奉閻に激突した。刀が在天を貫通する。 「焔龍、梅紅秋翠!」 龍牙の一撃が深々と在天奉閻の肉体を抉った。 「さっきのはまぐれか幸運か‥‥何でもいいがもう一度奴の腕を貫け‥‥!」 輝夜は斬竜刀を叩き込んだ。今度はブロックされる。在天奉閻の足蹴りを踏み越え、輝夜はアクロバットに飛び上がると、背後から切り掛かった。在天奉閻の背中を切り裂く。 「貫け稲妻! 極大のアークブラストで撃ち貫け!」 ジークリンデはアークブラストを連射する。超絶威力の閃光が在天奉閻を貫通する。 「わしは今までにも、これまでにも、そしてこれからも、不敗を貫く――わしはお前たちを叩き伏せる者だ、覚えておくがよい!」 在天奉閻は腕を振り回すと、群がる龍安兵、開拓者たちに閃光を叩きつけた。フラッシュが炸裂する。衝撃が直撃するが、開拓者たちは受け止めた。光り輝く在天奉閻は、アヤカシだがまるで後光が差しているようだった。その姿は神々しく、畏怖すら覚える。 星鈴は震える両手に力を込めて、吐息した。体は傷つき、ぼろぼろだが、心は生きていた。 「今こそ、精霊の力を解放する時です」 雛たちは神楽舞と回復術で味方のダメージを回復し、力を底上げする。巫女の力が兵士たちの気力を立て直す。 「行っくでえ‥‥終わらせる‥‥!」 星鈴、龍牙、輝夜、百舌鳥、兵士達は再度突撃していく。コルリスは練力を振り絞って朧を叩きつけ、ジークリンデとカズラも残りの練力全開で魔術と式を叩きつける。 「竜神に止めをくれてやるわ! 隷役召喚!! 出でよ白狐!!」 「おおおおおおおお!」 一撃一撃が、在天奉閻を捕えて行く。鳳華の竜神と言われたその不死身の肉体が、吹き飛んで行く。 龍牙の一撃が在天奉閻の足を斬り飛ばし、輝夜と星鈴の一撃が腕を斬り飛ばした。 在天奉閻は咆哮した。自分は勝てるはずだ、人間に負ける筈がない――! その頭部を、百舌鳥の一撃が切り飛ばした。 「ひゃっふー!」 「やったか!」 みな、崩れ落ちる在天奉閻の肉体を見つめていた。 「これが終わりだと言うのか、わしが辿りつけるのは、ここまでだと言うのか。信じられん。わしが最後に敗北するとは」 在天奉閻の言葉に、輝夜はその落ちた頭に歩み寄った。 「止めを差してやろう在天。瘴気に還ってくれれば思い残すことは無い」 「殺せ。わしの戦いは終わった」 在天奉閻は角笛のような鋭い声を上げると、周囲のアヤカシ兵が突如として引いて行く。 「意外と潔いアヤカシじゃの」 輝夜は在天奉閻の頭部を叩き斬った。 それが最後だった。在天奉閻の肉体が瘴気の渦となって黒い塊に崩れ落ちて行き、最後には空中に瘴気となって消え去って行く。 後に残ったアヤカシ達は、まだ相当数が残っていたが、恐慌状態に陥って狼狽の声を上げると、次々と壊走して行く‥‥。 「勝ったのか‥‥?」 龍安弘秀は逃走して行くアヤカシ達を見つめて、状況を確認する。 そこへコルリスが駆けつける。 「弘秀様。在天奉閻の討伐に成功しました」 「やったのか‥‥! まさか‥‥信じられん」 「本当だぜ大将、勝ったんだよ俺たち」 煙管を吹かしながら百舌鳥がやってくる。 「おめでとうございます弘秀様」 星鈴と龍牙は手を差しだした。 「そうか‥‥よくやってくれた」 弘秀はその手を取ると、勝ち鬨を上げた。 やがて戦場に歓呼の声が響き渡る。開拓者たちも兵士たちから喝采を浴びてもみくちゃになる。鳴りやまない勝ち鬨は、冬の空に高らかに響いた。 |