|
■オープニング本文 武天某村‥‥。 開拓者ギルドが新たな受け入れを始めてから、一月以上が経過していた。新しく開拓者となった者たちは早速アヤカシの脅威と立ち向かうことになった。 ここ武天の国でも、魔の森は少ないにせよ、開拓者達は厳しい戦いを強いられていた。 氏族のサムライ達が手の及ばないところで、アヤカシが現れては、人々を食らっていく‥‥。 最近武天の国に出現した、朱璽(しゅじ)と言う名を名乗る美しい女の姿をしたアヤカシがいた。朱璽はそもそも川姫と呼ばれるアヤカシだそうだが、元来術士であるはずの川姫と違って、この朱璽は複数の開拓者を同時に相手にするだけの格闘戦技も持ち合わせていた。つい先日、開拓者達によって何とか撃退されたこのアヤカシは、魔の森から新たな手勢を引き連れると、武天の村に攻撃を仕掛ける。 ――――ザクッ! と村人が牙に貫かれる。 民をあっという間に食い殺したのは白毛の狼アヤカシである。 もう一人の村人は必死にじたばたとあがいていた。 「ひ、ひいいいい! お助けを! どうかお助け‥‥」 川姫朱璽は、四匹の白い狼アヤカシを引き連れて、村に乗り込んでいたのである。 村人は残酷な笑みを浮かべる朱璽と狼の前に、腰を抜かして這いつくばっていた。狼は次なる獲物である村人を睨みつけながら取り囲み、牙を剥いていた。 「助けてやろう。とりあえずは」 朱璽は紅を塗った口元を釣り上げると、村人の顔をつまみ上げた。 「民を集めて来い。逃げる者は、そいつから狼の餌になると心得よ」 「は‥‥い、いや‥‥」 「行け、今すぐここで食い殺されたいか?」 村人は脱兎のごとく走り出した。 村はパニックに陥った。女の姿をしたアヤカシと凶暴な狼アヤカシが襲ってきたと。 一目散に逃げる村人達だったが、狼は瞬く間に追いついて、民に食らいついた。 最終的には村の半数が狼の犠牲となり、ほとんどの民は捕まって閉じ込められた。 「お前達は十分に食べたであろう。捕まえた連中はわしが貰おうか」 朱璽は凶暴な狼を言い聞かせると、恐怖に凍りつく村人の前に踏み出した。 狼たちは不満そうに飢えた鳴き声を上げる。 「さて‥‥どれから食うか」 朱璽の目に、怯える少年の姿が目に止まった。 「ふむ‥‥」 朱璽はにたりと笑うと、少年の頭を撫でた。 村人達から泣き声が漏れる。少年は口をかすかに動かした。 「た、助けたて‥‥」 「助かりたいか? 駄目じゃな、わしは腹が減ってしょうがない」 朱璽の口が耳まで裂けると、恐ろしげな大きな口には牙が並んでいた。そして‥‥。 ‥‥開拓者ギルドに、先の依頼で打ち漏らした、朱璽という名の川姫が再び姿を現したと言う知らせが入ってきた。生き残った村人がギルドに駆け込んできたのだ。 川姫朱璽は早くも次なる活動を開始した。今度は狼アヤカシを引き連れての攻撃である。 またしても多数の民が捕まり、恐らく生きながら食われているのであろう。ギルドの受付の青年は、状況を説明してから開拓者達に思案顔で捕捉した。 「‥‥先の依頼で逃がしたアヤカシです。複数の妖術を操るようですが、先の戦いではずば抜けた格闘戦技を見せました。全く攻撃が通じないわけではありませんが、倒すには苦労しそうな気配です。取り巻きの狼も注意が必要ですが、やはりこの川姫を倒すには、一気に勝負を掛けるしかないのでしょうか。逃げ足も速いようですしねえ‥‥」 受付の青年は唸った。果たして、このアヤカシの凶行を止める術はあるのだろうか。川姫、朱璽との激闘が再び幕を開ける。 |
■参加者一覧
緋桜丸(ia0026)
25歳・男・砂
雪ノ下・悪食丸(ia0074)
16歳・男・サ
風雅 哲心(ia0135)
22歳・男・魔
犬神・彼方(ia0218)
25歳・女・陰
橘 琉璃(ia0472)
25歳・男・巫
輝夜(ia1150)
15歳・女・サ
本堂 翠(ia1638)
17歳・女・巫
雲野 大地(ia2230)
25歳・男・志 |
■リプレイ本文 川姫の凶刃に掛かった嘆きの村に到達した開拓者たち。どこからともなく血の匂いがするのは開拓者達の緊迫感を高める。背筋に寒いものが走って、早くも戦闘独特の、お馴染みの戦慄に開拓者達の顔が一瞬厳しいものに変わるがそれも束の間のことだった。 「川姫ってのは美人さんかね? それとも河童みたいにぬめっとしてたり。まぁ、美人だろうとアヤカシだけは御免だがね」 言って普段の涼しい顔が一瞬だけ虚空を冷たく一瞥するのは緋桜丸(ia0026)。 「故郷を出た身だが、故国を荒らす敵は許せねえ」 雪ノ下・悪食丸(ia0074)の言葉には怒りが滲んでいた。確かに、開拓者となって故郷とは疎遠になってしまったが、故国の民が生きながら食われていると知れば怒りも沸く。 「川姫か‥‥話には聞いていたが、とんだ外道もいたもんだな。ここで逃がしては犠牲者が増えるばかり、かたをつけてやるぜ」 風雅哲心(ia0135)は感情を押し殺して、ぶっきらぼうに言ってのける。 「名うての川姫たぁやってくれるねぇ‥‥ここまでやられてみて見ぬ振りも出来なぁいしねぇ‥‥ここらで人様の生き血をすするけだものには、ぶちのめして八つ裂きにしてやるかぁねぇ‥‥」 任侠一家の家長、犬神・彼方(ia0218)の瞳が鋭く光る。残酷なアヤカシ相手に殺気がみなぎっている。 「こういう人外のけだものに情けは無用だぁねぇ‥‥」 「一度逃げられているとは、はっきりと決着をつけないとな」 巫女の橘琉璃(ia0472)は言って牙を剥く。編み笠で女顔を隠しているが、れっきとした男である。 「この外道以上の外道に、どんな報いをくれてやろうか‥‥ククク」 「川姫・朱璽か‥‥さすがにこれまで我が死合ったアヤカシどもとは格が違うようじゃの」 輝夜(ia1150)は思案顔で呟く。さて、このアヤカシ朱璽、凄腕の輝夜とも戦えるのだろうか‥‥。 「主が真に御座しなば、何故此の世は斯く無情なるか‥‥だねぇ」 普段は淡い笑みを浮かべているが、本堂翠(ia1638)は思案顔で呟くのだった。その心中は推し量ることは出来ない。 「緋桜丸さん、雪ノ下さん、風雅さん、本堂さん、頑張りましょう」 雲野大地(ia2230)は同じく川姫殲滅班の仲間達に声を掛ける。 「犬神さん、橘さん、輝夜さん、救出の方頼みました」 それから人質救出班の三人にも言葉をかける。 そして開拓者達は嘆きの村に踏み込んでいく。激闘の幕開けであった‥‥。 人質達のいる家屋――。 そうでなければ美しい白磁の肌を持つ美女、川姫の口が耳元まで裂けると、牙がならんだあり得ない巨大な口が、民に襲いかかろうとしていた‥‥。 「た、助けて‥‥お願い」 必死に逃げる娘の足をつかんで、川姫は口もとに引き寄せれば、かっと開いた牙が娘を一飲みにしようとしていた。 「お姉ちゃーん!」 姉妹なのだろうか、小さな娘が涙を浮かべて叫ぶ。 村人達は恐怖に身動きできない。川姫と雪狼らアヤカシの凶行は語るにおぞましい‥‥床に飛び散った鮮血が物語っている。 と、その時である。 外から――ガオオオオオオオオオ! と獅子の雄叫びを思わせる咆哮がびりびりと鳴り響いた。 外からサムライ緋桜丸のスキル、咆哮である。 「何だ?」 川姫は娘の足を離すと、突然暴れ出した雪狼を見やる。 雪狼たちは、咆哮に引き付けられて、壁に体当たりしていたが、結局外に走り出していった。 ――同時に、犬神の術“人魂”、一センチ程度の蜘蛛の姿をした式が建物に入り込み、術者の視覚と聴覚をリンクさせると、川姫の様子を探っていた。 「いたようだぁねぇ‥‥こいつがけだもの野郎かぁねぇ‥‥」 まさに村人を食らおうとしていた川姫を発見して、犬神は琉璃に合図を送る。 「奴はここだぁねぇ」 琉璃は瘴気結界でアヤカシの位置を把握する。 「確かに、雪狼は外へ出てきたようだな。家の中にはアヤカシが一体‥‥ここからまっすぐ、壁の向こう十間程度の距離にいるぞ」 琉璃は壁に手を押し当てながら輝夜に告げる。 「よし、行くぞ」 輝夜は鉄甲をつけた両の拳を構えると、家屋の壁に打ち込んだ。 木造の壁はいとも簡単に破壊され、輝夜はそのまま壁を引きはがした。 壁を取り除いて、人が通れるくらいの穴を開けると、三人は中に飛び込んだ。 「あいつだぁね! あの女が川姫だ!」 犬神は朱璽を指差して斬撃符を飛ばす。 琉璃は力の歪みを叩き込む。 虚を突かれた川姫に輝夜は突進し、疾風のようにその体に拳を叩き込んだ。 ずん! と大気が震動して川姫は数メートル吹っ飛んだ――! 「今じゃ! 早く逃げるのじゃ!」 「早くしろ! 俺たちは神楽の開拓者だ! この化け物を倒しに来たぁね!」 「さ、早く逃げて下さいよ、自分達がアヤカシを食い止めている間に」 川姫が倒れ伏しているのを見て、民は一目散に行動を開始する。我先にと輝夜が開けた穴目がけて走り出し、家屋から逃げ出した。 ――家屋の外では、雪狼と開拓者の戦いが始まっていた。 「飼い主の躾がなってねーなぁ!」 緋桜丸は雪狼の牙を受け止めると、二刀でこの白毛のアヤカシに切りつける。 「俺が調教してやろうか」 刀が狼の腹を切り裂き、鮮血がどばっと溢れる。苦悶の声を上げる狼に悪食丸はさらに追い討ちをかける。 「民の無念を食らえ!」 刀を叩きつければアヤカシは足を切り落されて激痛にわめいた。 「貴様らに武天を為すがままにはさせないぞ! 故国を侵した罪、死してあがなうがいい!」 悪食丸はさらに雪狼に突撃、その頭部を叩き割った。 飛び掛ってくる雪狼の攻撃をさっとかわす風雅、裂ぱくの気合いを込めて刀を振り下ろす――ざくっと刀身が狼の肉体を貫通し、血しぶきが風雅の顔を朱に染める。 「逃がしはしねえ! この怪物どもが! 一匹残らず叩き切ってやらあ!」 さらに渾身の力で刀を叩きつける。狼の反撃もろとも風雅は叩き潰した。 ‥‥刃を持ったって、皆の様に前に出て立ち会う事は出来ない。ならば僕は――この戦線、全力で支えるから。 翠は御信用の小刀を手に、戦況を見つめる。雪狼相手に引けを取るメンバーではないようだ。 飛び交う狼の攻撃を跳ね返し、反撃の刃を叩き込んでいく開拓者たち。 悪食丸は翠の前に立ち塞がると、にかっと笑みを送った。 「こいつらの相手は俺たちで賄う。翠さんの練力は温存してくれ」 悪食丸は言って狼に飛び掛っていく。 「やるっ! でもこれなら!」 大地は狼の牙をかわしながら、業物の刃を叩き込んだ。 ぎゃん! と狼は悲鳴のような声を上げて後退すると、油断なく大地と距離を保って唸り声を上げる。 雪狼の瞳は敵愾心に燃えており、飢えた口元は苛立たしげに吐息している。 ガオオオオ! と飛び掛ってくる雪狼を大地は気合い一閃、叩き落す。 「何度でも叩き落してやります!」 ――朱璽は逃走する民人を横目に、奇襲攻撃を仕掛けてきた開拓者たちを見据える。 「性懲りもなくまたしても来たか。神楽の手の者か」 「さて、朱璽とやら、我の力試しの相手となってもらおうか」 輝夜は鉄甲を打ち鳴らすと、朱璽と相対する。 「あんたに食われた民人の無念は‥‥俺たちがぁ仇を討ってやるよ」 犬神は符を構えると、朱璽を睨みつける。 「川姫朱璽とやら、今回は逃げられると思うなよ」 琉璃は言ってすっと目を細める。 「何度打ち掛かって来ようが、わしを倒せると思うなよ‥‥簡単に人間に討ち取られると思うか」 朱璽はそう言うと、家屋の外に向かって走り出した。 「逃がさんぞ!」 輝夜は走った。 家屋の外では雪狼が討ち取られていたが、まだ瀕死の二体が残っていた。 開拓者達は雪狼を取り囲んでいたが、そこへ川姫が出現する。 輝夜、犬神、瑠璃が追いかけて出てくる。 「そいつが川姫じゃ! 逃がすな!」 輝夜は仲間達に呼びかけると、川姫に突進する。 空を切り裂き、唸りを上げて飛ぶ輝夜の拳が――朱璽に直撃! 朱璽は輝夜の一撃を片手で払おうとした、が、輝夜の重たい強烈な一撃は川姫の腕を弾き飛ばして直撃する。ずしん! と大気が震動し、朱璽は吹っ飛ばされる。 「ちっ‥‥やりおるわ、小さななりで」 朱璽は立ち上がると、着物の埃を払う。 雪狼たちは悲鳴のような声を上げて朱璽にまとわり付いた。 「お前達の手には負えぬようじゃのう」 朱璽の異様に長い舌がべろりと伸びて口元を舐める。 「うげっ‥‥所詮は怪物――アヤカシかよ」 緋桜丸は首元をさすって川姫を見据える。 「朱璽とかいう愚者はあなたか? 話しには聞いている。魔の森でおとなしくしていればよいものを、みすみす三途の川を渡りに来るとは。後悔しても手遅れですね。所詮は狼の頭領、あなたに私たちは倒せません」 そう言う大地の目は笑っていない。 「ふふん‥‥来い、人間ども。努力だけでは越えられない壁を見せてやろう」 着物の袖で口もとを覆うと、川姫は攻撃態勢を取る。 開拓者達は互いに合図を送ると、川姫を取り囲み、一斉に攻撃を仕掛ける。 「でやあああ!」 突撃する緋桜丸の一撃を受け止め、カウンターで拳を叩き込む川姫。緋桜丸は吹っ飛んだ。 裂ぱくの気合いとともに強打を繰り出す悪食丸。刀身が川姫を直撃するが、川姫は反転して悪食丸を拳で弾き飛ばした。 「手前ぇが今まで食らってきた奴等に、地獄でわびてこい! 星竜の牙、食らいやがれ!!」 風雅は精霊剣を繰り出す、青白い光に包まれた刀身が川姫を貫通する。 「ぐお!」 「あんたにやられた奴らの恨み‥‥今ここでぇ‥‥晴らしてやるよ!」 残撃符を連発する犬神。式が川姫の顔を切り裂くと、川姫は悲鳴を上げる。 「得意じゃないから、あてにするなよ」 と言いつつ、瑠璃は弓矢を飛ばす。かつん、と矢は川姫の肉体に当たって落ちるのみ。 「千変万華‥‥隼人!」 隼人――輝夜はスキルで加速すると、拳を立て続けに打ち込む。ずしん! ずしん! と輝夜の拳が川姫の肉体を打ち据え、朱璽は苦痛の声を上げる。 吹き飛ばされた緋桜丸と、悪食丸に翠は駆け寄り、具合を尋ねる。 「大丈夫ですか緋桜丸、悪食丸」 「ああ‥‥だが、こんな一撃を食らったのは滅多にない」 二人は口もとを拭って立ち上がる。 炎魂縛武を使用して、強化した刀で打ちかかるのは大地。 「朱璽とやら、これでも笑ってられるか?」 その炎に包まれた刃が、朱璽の肉体を切り裂くと――。 「ぬ‥‥おおおおお‥‥!」 朱璽は般若の形相で牙を剥くと、大地を殴り飛ばして飛び上がる。開拓者の包囲から逃れようと川姫は飛んだが――。 「させるか!」 輝夜が飛び掛って朱璽の足に食らいつくと、地面に叩きつけた。 ドゴオオオ! と川姫を叩きつけると、地面にめり込んだ。 「逃がすな!」 開拓者達は川姫を取り囲んで刀を叩きつける。 「小賢しいわ! 人間どもがあ!」 川姫は攻撃を受けながらも立ち上がると、開拓者たちを拳や手刀で打ち据える。 「ぐ‥‥畜生‥‥!」 風雅は激痛によろめいて後退する。 「哲心、しっかりして下さい」 翠は流血している風雅の側に寄ると、神風恩寵でダメージを回復させる。 「さすがに噂の化け物だな」 「何てぇしぶとさだ。ここまで攻撃を食らってまだ生きてやがる」 犬神は式を構えつつ、川姫を憎々しげに見つめる。 緋桜丸、悪食丸、大地の刀が川姫を何度も打ち据える――。 そして、輝夜の鉄甲が遂に川姫の肉体を貫通した。朱璽の脇腹を、輝夜の拳が貫通したのだ。 「ぐ‥‥お‥‥な、何‥‥!」 川姫は驚愕したように小さな輝夜の一撃に目を落とした。 「ち、畜生‥‥! 貴様ごときに!」 それでも川姫は怪力で輝夜を蹴り飛ばした。輝夜は腕で蹴りを受け止め、ざざっとすり足で後退する。 よろめく川姫に、悪食丸が強打+成敗! で切りかかる。 ザン! と、悪食丸の一撃が、川姫の後頭部を叩き割ると、悪食丸はぱちんと刀を鞘に収める。 犬神の残撃符が川姫を切り裂き――。 ついにこのアヤカシが崩れ落ちる。 「お、おおおおお‥‥」 ぼろぼろと黒い固まりとなって崩れ落ちていく川姫の肉体は、やがて瘴気となって完全に消滅したのである。 雪狼はと言うと、すでに逃走していなくなっていた。 「やったか‥‥」 翠は地面に座り込む仲間達に駆け寄った。 「大丈夫みんな」 「ああ、こんなもんか。何とかやったな」 緋桜丸は吐息してアヤカシが消えた空を見つめる。 「倒せたか? 見せて見ろ、ったく無理しすぎだろ? 激戦だったから、しょうがないが、今度から気をつけるんだな」 瑠璃は言って、傷ついた仲間たちを巫女の術で回復する。 「これで、死んだ奴の無念は、晴らせたと良いんだが?」 「激戦であったのう‥‥これほどのアヤカシが‥‥わしらも精進せねばな」 輝夜は言って、おとなしく回復を受けていた。 ‥‥戦いは終わった。 激戦の末に、開拓者達は遂に川姫朱璽を倒すことに成功したのである。 「ありがとうございます‥‥あなた方が来なければ、今頃私たちは生きてはおりません」 村長は一同を代表して深々とお辞儀すると、多くの民が嗚咽を漏らして、亡くなった者たちを悼んだ。 「みなさん、もう大丈夫ですから。あんな化け物は二度と現れませんよ。安心して下さい」 翠は言って、民の手を取り、子供の頭を撫でた。 そうして開拓者達はそれぞれに思いを胸に、村民に別れを告げる。 激闘を制した開拓者たちは、前途遼遠に思いを致す。彼らの旅路はまだ始まったばかりなのだから‥‥。 |