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■オープニング本文 天儀本島武天国、龍安家が治める土地、鳳華――。 首都の天承城で、新たに筆頭家老に登用された西祥院静奈は報告書に目を通していた。先だっての戦で敗退したアヤカシ軍は東の魔の森へ壊走したが、全ての攻撃が無くなることはない。差し当たり、龍安家は魔の森への対応と、被害を受けた地域の復興を優先していた。 先の戦で指揮を取った龍安家の重臣たち、筆頭家老の大宗院九門、武将の直代神樹、青木正則、神官長の蒼晴雪鈴、陰陽頭の明道心光悦らは、その功績により、武天の巨勢王から直轄領での直参を命じられ、鳳華に別れを告げている。西祥院が登用されたのも、そのためであった。 西祥院がそうしていると、新たに龍安家の重臣となった面子が姿を見せた。次席家老の栗原直光、家老の天本重弘、坂本智紀、水城明日香、シノビの頭領でもある赤霧たちだ。西祥院が「おはよう」と言うと、家老たちは軽く頷いた。 「東の魔の森は一応停滞している。とは言え、各地で散発的な攻撃は発生している。大がかりな動きはひとまず封じ込めたのだろうが、アヤカシの活動は続いている」 栗原が言うと、天本が頷いた。 「アヤカシ達の攻撃は小康状態だが、先週には復興地域の村が一つ壊滅した。大規模な攻撃は無いが、と言って連中の全てが黙っているわけじゃないらしい」 「鳳華の七魔将が全て撃破されたことで、恐らくアヤカシ勢力の中は混乱状態にあるんだろうけど、力のある奴はまだ残っている可能性はあるだろう」 坂本の言葉に赤霧は思案顔。 「アヤカシ達の統率が崩壊しているのは確実だ。ただ、いつ連中がまた結束して立ち向かってくるとも限らない。今その兆候はないがね」 「長い停滞期があったことを考えると、次の攻撃はまた何十年か先かもしれないけど、魔の森からの兆候は確認しておくべきたと思うわ」 水城は言って、肩をすくめる。 西祥院は頷いて、口を開いた。 「アヤカシの件は最優先事項よ。復興作業の方はどうなってるかしら」 「順調とは言い難い。被害の大きかった東部の里では、立ち直るのに時間が掛かるだろう。アヤカシの攻撃も無くなったわけじゃないからな」 「攻撃を受けた諸都市の防備はどうにか再建されているよ。まあ少し時間はかかるだろうけどね」 天本と坂本の言葉に西祥院は「結構」と頷く。 「それじゃみんな、今日もよろしく」 西祥院の言葉に、一同解散していくが、一人水城が残った。 「どうかした明日香?」 「気になることがあるのよ」 「何なの」 「清奈の里の件」 「その件なら聞いているわ。集落が一つ壊滅したようね」 「死人の集団と黒い鎧に身を包んだアヤカシが目撃されているわ。明らかに下級アヤカシじゃない。そのうち人さらいまで始めそうな勢いよ。開拓者を呼ぶべきだわ」 「やっぱりそう思う?」 「すぐにでも」 「そうね‥‥お屋形様に報告するわ」 西祥院は水城と別れると、龍安家頭首の龍安弘秀のもとへ向かった。 弘秀は軍事顧問の老将、山内剛と話し合っていた。 「――お屋形様、アヤカシは大きな敗北を喫しましたが、戦は続くでしょう。結局のところ、東の魔の森がある限り、攻撃は続くのですから」 「魔の森のことは、頭の痛いところだ」 そこへ、西祥院がやってくる。 「失礼しますお屋形様、山内殿」 「静奈、筆頭家老が板について来たな」 山内の言葉に、西祥院は肩をすくめる。 「そう願いたいものです」 「何かあったのか」 弘秀の問いに、西祥院は頷いた。 「清奈の里の件です」 「例の上位のアヤカシか」 「明日香は開拓者を呼ぶべきだと」 「兵士の手には余りそうか」 「ええ恐らく」 弘秀は山内を見た。山内は小さく吐息する。 「開拓者に任せるべきでしょうな。強力なアヤカシが絡んで来るとなれば、それが最善の方法でしょう」 「分かった。神楽の都へ連絡を。問題が発生したと」 「はい、直ちに」 西祥院は一礼すると、弘秀の前を辞した。 |
■参加者一覧
井伊 貴政(ia0213)
22歳・男・サ
華御院 鬨(ia0351)
22歳・男・志
葛切 カズラ(ia0725)
26歳・女・陰
コルリス・フェネストラ(ia9657)
19歳・女・弓
更紗・シルヴィス(ib0051)
23歳・女・吟
将門(ib1770)
25歳・男・サ
朱鳳院 龍影(ib3148)
25歳・女・弓
雪刃(ib5814)
20歳・女・サ |
■リプレイ本文 天承城――。 「肝心なところで駆けつけられなかったのが情けないやら恥ずかしいやら‥‥ま、今回から頑張ろう。うん」 井伊 貴政(ia0213)は言って、肩をすくめた。 「お偉いさんを倒したというのに、また、なんや現れたあるどすなぁ」 華御院 鬨(ia0351)は、全くしつこいという顔をしていた。 「一難去ってまた一難ってヤツね。森に近い土地のサガと言ってしまえばそれまでだけど、ならばこそ早めに始末はつけなくちゃ」 葛切 カズラ(ia0725)は、しなやかな指先を顎に当てると、仲間たちを見渡す。 「これはあくまで一案ではありますが‥‥」 コルリス・フェネストラ(ia9657)の言葉を、開拓者たちは聞いた。 1:最初は逃げ遅れた人達を里から逃がす為、迎撃で時間を稼ぐ【迎撃】班と逃げ遅れた人達を探しだして保護する班【保護】に分かれ―― 2:迎撃班は逃げる里の人達の所へアヤカシを向かわせない様食い止め及び迎撃。その間に保護班は里の人達を可能な限り保護。警備隊の一部に保護した里の人達を戦いの及ばない場所への護送する作業を委託。 3:保護班は迎撃班と合流し全員で里の地形を生かしアヤカシ達と戦闘。拡散した敵に対し各所で常に上回る人数で戦い各個撃破を続け最終的に里からアヤカシを撃退。 「全体の流れとしてはそれで良いかと思います。個々の戦場では私たちも含め、警備隊のみなさんに臨機応変に対応して行きましょう」 更紗・シルヴィス(ib0051)はそう言って、悲しげな顔をした。すでに民の命が失われた。それはシルヴィスの胸を締めつけた。 「奇襲であったとは言え、村を一つ潰す程の相手。油断は出来ません」 「俺だってそれなりに修羅場をくぐって来たが、ここはひどいぜ。報告書も見せてもらったが‥‥」 将門(ib1770)は、開拓者たちを迎えている筆頭家老の西祥院静奈に声を掛けた。 「残念だけど、ここは魔の森に侵された土地、アヤカシとは常に隣り合わせなのよ」 「先年の大規模な軍事行動は見せてもらった。尤も、あの時は龍安軍が対処していたから、ある意味ましだったのかもな」 「私は在天奉閻との戦いも見て来たけど、魔の森の戦力は実際無限に等しい。だから、迂闊に軍事行動を起こすことは出来ないわ」 「西祥院、ひとつ教えてくれ」 「何かしら」 「黒い鎧のアヤカシだが、これまでに心当たりは無いのか。記録は残っているんだろう?」 「記録が無いのよ。過去に鳳華で活動した記録は残ってない」 西祥院は肩をすくめた。 「前回のでやつを撃破したそうじゃが‥‥龍王を名乗る者として、私も行きたかったのう。その点が実に残念。」 龍人の朱鳳院 龍影(ib3148)はそう言うと、深々と吐息した。 「私にとっては単純明快。そこに人を襲うアヤカシがいるから。せっかく山を下りて、開拓者として働くなら、こういうことを積極的にやっていった方がいいだろうし、やっていきたい」 神威人の銀狼、雪刃(ib5814)は、言って、冷たい瞳を見せた。 「知ってる人も多いだろうけど、ここは危険地帯よ。油断は禁物。敵の新たな動きは、まだ謎に包まれているけれど、あなたたちには、目の前の脅威に対処して欲しい。情報はこちらでも拾っていくわ」 西祥院は、そう言うと、吐息した。 「それじゃ、よろしくお願いするわ。幸運を祈ってる」 「ご期待にそえるように頑張ってみますよ筆頭家老殿」 「周辺の防備を固めてほしいところあるが、うちらが足止めする間に」 「そうね、出来ることは手配する」 「行きましょうか。話を聞くのはこれくらいよ」 「急ぎましょう」 開拓者たちは出発した。 清奈の里は混乱に陥っていた。民は荷物をまとめて、アヤカシがやってくる方角から逃げ出そうとしていた。 「大変な状況ですね‥‥」 開拓者たちは、現地へ急行する。 徐々に人影が少なくなっていき、やがて、開拓者たちは里の警備隊と合流する。 「大丈夫ですか」 貴政は声を掛けると、警備隊の隊長は険しい顔で吐息した。 「開拓者か。随分と大変な状況になってきている。魔の森から出るアヤカシは撃退したはずだが‥‥またかなりの敵だ」 「交戦状況は」 将門の言葉に、隊長はまた吐息した。 「今のところ、どうにか食い止めているが、持ち堪えるかどうかは微妙なところだ。尤も、お前たちが来たことで状況は変わって来るが」 「まずは逃げ遅れた人々を確実に保護するのが先決と考えます」 コルリスは言うと、作戦を説明する。 隊長のサムライは頷くと、部下達を集めた。 「では、保護班の一部にも部下を回して、アヤカシを迎撃しよう」 「まずは里に入り込んでいる連すうを叩きだす必要があるようじゃの」 「ではうちと雪刃さんで民を誘導するあるから、後は任せるある」 「心得た」 「敵の位置を確認させて」 「地図をここへ――」 それから、開拓者たちは警備隊と行動を開始する。 「雪刃さんはそっちを頼むあるよ」 「分かった」 鬨は迎撃に向かった仲間たちが敵を足止めする間に、民の確保に向かう。 迎撃班が時間を稼ぐ間に民の多くが逃げ出してくる。 「あっちへ、まだ向こうには敵は来ていないある」 「ありがとうございます!」 「急ぐあるよ」 鬨は兵を率いて、前進して、民家を一軒ずつ回って行く。 静かな民家を、心眼を使って探りを入れる。反応が出る。鬨は銃と喧嘩煙管を構えると、用心しながら家の中へ踏み込む。 「‥‥‥‥」 家の中を覗き込むと、かすかに開いた障子が目に入る。鬨はゆっくりと回り込んで、勢い障子を開けた。 「助けて! 殺さないで!」 逃げ遅れた一家が手を上げて叫んだ。 「大丈夫ある、落ち着いて、大丈夫あるよ。うちは警備の人間ある。さあ早く、ここから逃げるあるよ」 「あ、ありがとう‥‥」 「さ、急ぐある」 鬨は一家を立ち上がらせる、用心して外の様子を確認、家族を脱出させる。 雪刃はアヤカシの気配を探りながら、民家を回っていた。ゆっくりと移動しつつ、だが開けた場所は素早く駆け抜け、民家の気配を探りつつ行く。 一軒の家屋を覗き込んだ雪刃は、蠢く影を捕えた。はっと息を飲む。もう一度覗き込むと、ぼろぼろの鎧を身につけた骸骨が、何かを漁っている。骸骨が貪っているのを見て「何か」が何かは見当がついた。 雪刃は呼吸を整えると、太刀を構え、ゆっくりと扉を開けて行く。少し顔を出す。骸骨戦士はおぞましい咆哮を上げながら、それを貪っていた。雪刃は深呼吸して、気合を入れて飛び込んだ。 一撃、太刀を振り下ろす。ぐしゃ、と言う音がして、骸骨戦士の肉体が打ち砕かれた。激痛に泣きわめき、骸骨戦士は顔を上げる。そこへさらに一撃を振り下ろす。 ――キイイイイン! と弾かれた。骸骨戦士は刀を構えて、ゆっくりと立ち上がる。 ――オオオオオオオオオオ! と骸骨が咆哮するが、雪刃は「やあああああ!」と気合を発して突撃した。 ――キイイイイン! キイイイイン! と打ち合うが、やがて雪刃が確実に打撃を与えて行く。 ズシン! と、雪刃の一撃が骸骨の腕を吹き飛ばした。 よろめいて倒れ伏す骸骨。喚いて腕を振り回すが、雪刃は裂帛の気合とともに太刀を振り下ろした。骸骨は頭部を打ち砕かれて、瘴気に還元して行く。 雪刃は吐息すると、外へ出た。 「まだ始まったばかり」 迎撃班は激戦の渦中にあった。 「これ以上の横暴は許さない。さあ、死にたい方からお相手しましょう。僕が瘴気に還して差し上げますよ」 貴政は飄々とした口調で言うと、刀を構えた。 死人戦士が咆哮して突進してくる。盾で攻撃を弾き返し、刀を一閃する。ズバアアアア! と死人戦士の腕が吹き飛ぶ。 「残念ですが、どうやら僕の勝ちのようですねアヤカシさん」 貴政は刀を振るい、死人戦士の足を叩き斬った。崩れ落ちる死人に、連続攻撃を入れて止めを差す。 「年明け早々からご苦労な連中が居たものね」 カズラは符を構えると、貴政に声を掛けた。 「貴政さん! 次来るわよ!」 「了解です」 「急ぎて律令の如く成し万物悉くを斬刻め!」 カズラの斬撃符が死人戦士を切り裂く。触手が鏃に変形して神風特攻。凄絶な破壊力は、アヤカシの胴体を吹き飛ばした。 「さすがですね」 コルリスは建物の上に登り、鏡弦でアヤカシの位置を探りつつ、矢を装填していた。鷲の目でアヤカシを確認する。 「前方に四体、接近中‥‥行きますよ!」 コルリスは死人が射程に入ったところで、矢を解き放った。ドウ! と、矢が死人を貫通する。よろめく死人にもう一撃、叩き込む。今度は頭部を狙う。ドン! と死人の頭部が破壊される。 コルリスは建物の上を飛び交い移動しつつ、攻撃を続ける。 「恐れることはありません、ご自身の力を信じて下さい」 シルヴィスは騎士の魂で味方の防備を上げる。吟遊詩人の勇壮なメロディが、騎士の折れない魂を植え付ける。力が湧いてくる。 ハープを奏でながら、シルヴィスは戦況を見守る。 「力が湧いてくる。吟遊詩人てのは大したもんだ」 将門は言いつつ、加速した。死人戦士の攻撃を弾き返しつつ、刀を一閃する。確実に打撃を与えて行く将門。警備隊とも連携して、敵の数を減らしていく。 「さて、まずは逃げ遅れた民衆を助ける為に敵を別の場所におびきよせなければの」 朱鳳院は、言って、息を吸い込むと、「はあああああ‥‥ああああああああああ!」と咆哮を解き放った。 咆哮の直撃を受けたアヤカシ達が怒りの声を上げて引き寄せられてくる。 「来るがよい。私が相手じゃ。不足は無かろう!」 朱鳳院は加速すると、回転切りを叩き込み、槍を一閃した。凄まじい一撃がアヤカシ達をまとめて粉砕する。豪快な槍捌きでアヤカシ数体を瘴気に還した。 「‥‥では、もう大丈夫あるな。うちらも合流するある」 「そうだね」 鬨と雪刃は、民の避難を確認して、迎撃班に合流を図る。 警備隊のサムライ兵士達も戻って来る。 「大丈夫だ。後は里の自警団に任せておけばいいだろう。ここからアヤカシの撃退を最優先に」 「よし、行くあるよ」 開拓者たちと龍安兵の反撃が始まる。戦闘地域にアヤカシ達が集まってくると、ちょっとした集団戦の様相を呈してくる。 と、アヤカシ達が後退して戦列を整えると、その背後から黒い鎧を身につけたアヤカシが姿を見せた。 「出たな‥‥」 「こいつか」 「気をつけろ! こいつは並みのアヤカシじゃないぞ!」 警備隊の隊長は呼び掛けた。 「で? 今度は何処の誰の配下でどういう肩書きなの? 名乗っておいても良いんじゃない?」 カズラは、その黒甲冑のアヤカシに呼び掛けた。 「あんさんがボスあるどすか」 鬨も声を掛けた。 そいつは金属がこすれたような笑い声を上げると、ざらざらした声で、人語を話した。 「新手か‥‥わしの邪魔をするな」 やや驚く開拓者たち。 「こいつ、言葉を話すのか」 「意外ではあるけれど、想定内ね」 カズラは言って、もう一度呼び掛けた。 「それで、誰の配下で、どういう肩書なのかしらね? 名前はあるのかしら。だって呼びにくいでしょう。これからあなたを叩きのめすたびに、さあ覚悟するのよ黒い甲冑を着たアヤカシ、て、長過ぎるじゃない」 「わしが誰に仕えるか‥‥そんな事を聞いても誰も救われんだろう‥‥。わしは奈落‥‥亡王奈落‥‥この名を伝えるがいい龍安兵」 「名乗ったところで気の毒じゃが、すぐに消えてもらうぞ」 「‥‥来い人間‥‥在天奉閻を倒したと言う力を見せてみろ」 すると、亡王奈落はざらざらした理解不能な言語で、死人戦士たちに何かを命じた。すると死人たちは反転攻勢に出てきた。 「付け入る隙は必ずあります」 シルヴィスはスプラッタノイズを亡王奈落に叩きつけたが、効いている様子は無い。 「こっちは私たちが止めるよ、あいつは任せる」 雪刃は死人戦士に突撃して行く。 開拓者たちは死人戦士を切り捨て、亡王奈落に向かって加速する。 貴政、鬨、将門、朱鳳院は一斉攻撃を浴びせかける――。が、次の瞬間、亡王奈落の腕から緑色の閃光がほとばしり、開拓者たちを薙ぎ倒した。 「な、何だ‥‥!」 「瘴気の術ね、それならこっちは専門よ!」 カズラは式を召喚する。 「秩序にして悪なる独蛇よ、我が意に従いその威を揮え!」 蛇神――触手が絡まって巨体を造り、特攻。亡王奈落を直撃するも、奈落は不動。 「続いて、呪縛符!」 「朧!」 コルリスが呪弓の非物理攻撃を叩き込む。矢が亡王奈落を貫通する。 「それならば‥‥武勇の曲!」 シルヴィスは旋律を変更して、武勇の曲を奏で出す。 「四方から攻撃するのじゃ!」 「回り込むあるよ」 「僕は側面に回ります」 「右は任せろ! カズラ殿、コルリス殿、シルヴィス殿、支援を頼む!」 開拓者たちの連携攻撃。 亡王奈落はモーニングスターを振り上げると、巨大な鉄球を振り回し始めた。 「来い‥‥」 加速する開拓者たち。 正面から行った朱鳳院にモーニングスターが直撃する。 「ぬう!」 朱鳳院は受け止めたが、吹き飛ばされた。 貴政と鬨、将門は切り掛かったが、分厚い装甲に刀は弾かれた。 直後、亡王奈落は腰の剣を抜いて、貴政と鬨を吹き飛ばした。 「硬いか‥‥ならば新陰流でも食らえ!」 将門はスキル全開の一撃を叩き込んだ。刀が亡王奈落を貫通する。が、次の瞬間将門は剣で叩きのめされた。 開拓者たちはそれから連続攻撃で亡王奈落に打撃を与えるが、貴政、鬨、将門に朱鳳院は大ダメージを負い、瘴気の稲妻でカズラにコルリス、シルヴィスらも撤退を余儀なくされる。 それでも、死人戦士を撃退に追い込むと、亡王奈落は最後には後退したのだった。 ‥‥天承城にて。 西祥院は、開拓者たちからの報告を受けていた。 「そう‥‥そいつは亡王奈落と言う名前なのね」 「七魔将と言う高位アヤカシを殲滅したとは言え、魔の森のアヤカシ群は未だ健在。大アヤカシを滅ぼすまで、気を抜く訳には行きませんね」 シルヴィスの言葉に、西祥院は吐息してこめかみを押さえた。 「何れにしても、これで終わるような相手じゃなさそうね。最初で終わるかと思ったけど。人間の言葉を話すなんて‥‥」 そこへ、龍安家頭首の龍安弘秀が姿を見せた。 「清奈に向かった開拓者たちか、どうだった例の敵は」 「余り良い状況とは言えませんね。あの在天奉閻を軽くあしらうような言葉を残していました」 コルリスの言葉に弘秀は頷く。 「そうか。ならば、また次があるだろう必ず」 弘秀はそう言って、深い吐息を漏らした。 「いっそ飛空船を使って、空から精霊砲で魔の森一帯を一掃するか」 「それで魔の森が押さえられるなら、誰かがとっくに実行しているあるよ」 鬨の突っ込みに、 「有効だと思ったんだが」 弘秀は肩をすくめると、その場を後にした。 西祥院は、吐息して開拓者たちの労をねぎらう。 「また何か起こったら連絡するわ。その時はよろしく」 開拓者たちは、西祥院と握手を交わして、天承城を後にした。 |