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■オープニング本文 天儀本島武天国、龍安家の治める土地、鳳華――。 開拓者ギルド相談役の橘鉄州斎(iz0008)は、北部の大都市凱燕にいた。先日の依頼から、橘は鳳華に留まっており、龍安軍に協力して凱燕近郊の避難誘導に当たっていた。 「よお桜――」 橘は、そもそも自分をここへ呼んだ娘――桜の一家の様子を見に来た。 「橘さん」 「志野は大丈夫か?」 「ええ‥‥おかげさまで、お母さんの様子、少しだけましになりました」 「橘さん‥‥」 奥から、足に包帯を巻いた志野が出て来た。 「よお志野、あれから、六介の奴はどうした」 「それが‥‥あのろくでなし、あれから家に帰ってこないんですよ」 「そうか‥‥全くあいつ」 「お金も持ってないはずなのに、どこで何してるのか‥‥少し心配で」 「志野、あいつの心配より‥‥」 「分かってます、あんなろくでなし、縁を切った方がいいって‥‥でも‥‥」 「お母さん‥‥大丈夫だよ。きっと橘さんが来たから、怖くなって帰ってこないんだよ」 桜の言葉に、志野は吐息した。 「そんなことだと良いけど‥‥何か、悪い予感がするのよ」 橘は思うところが無いわけではないが、差し当たり桜たちの無事を確認して安心した。 「また来る。今少し、龍安家に協力するつもりなんでんな――」 橘はそう言うと、桜と志野に手を振って立ち去った。 ‥‥六介は、界隈の裏通りにある店に入って行く。薄暗い店内を見渡して、適当な席を見つけると、酒を注文する。 それから六介は、酒を飲みながら、吐息した。 「参ったな‥‥橘が戻って来るとはな。どうにかして、桜と志野には知られないように事を運ばないと‥‥全てがおしまいだ」 六介は思案を巡らせ始めた。 首都、天承の城――。 家長の龍安弘秀のもとへ、魔の森からの新たなアヤカシが攻め寄せて来ると急報が入る。 「どうして敵も打つ手が早いな‥‥先日開拓者が遭遇した子具乃王とか言ったか。凱燕の防備を破るとか言い残した」 筆頭家老の西祥院静奈は、状況を確認する。 「お屋形様、まだ、凱燕近郊の避難は進んでおりません。報告によると、魔の森から出現したアヤカシは数百に上るとか。このままでは被害を押さえるのは難しいかと思われます」 「最小限に食い止めるしかない。天本を呼んでくれ」 「はい――」 しばらくして、家老の天本重弘がやってくる。 「天本、どうやらアヤカシは凱燕近郊に大規模な攻撃を仕掛けてくるようだ。前線に出て指揮を取ってくれ。兵を五百ほど連れて行け」 「承知いたしました。ではすぐに準備に取り掛かります」 そこへ、次席家老の栗原直光が、足早にやって来る。 「お屋形様、風信機のところへ来て下さい。子具乃王と名乗る者が話し掛けて来ています」 「何だと? アヤカシだぞ、どうやって風信機を」 弘秀は西祥院と栗原とともに、風信機のもとへ急行した。 「龍安弘秀だ」 すると、風信機の向こうから、くぐもった声が流れて来た。 「私はアヤカシの将にして子具乃王。龍安弘秀、良く聞け、私はお前を支配できる。凱燕への無差別攻撃を止めてほしければ、私の言う言葉を実行しろ」 弘秀は一息ついて口を開いた。 「どんな言葉であろうと、アヤカシと交渉するつもりは無い」 「そちらに今、長篠安盛と言う貴族が朝廷から来ているはずだ」 「ああ、それがどうした」 子具能王は、続けた。 「長篠安盛をこちらへ引き渡せ。そうすれば無差別攻撃は中止してやる」 一同さすがに言葉を失う。 「何だと‥‥そんなことが出来る筈がないだろう」 「良く考えろ。お前は多くの民を守らねばならないはずだ」 「子具乃王――」 「話はおしまいだ」 そこで言葉は途切れた。 戻った弘秀たちは、今の言葉に付いて話し合った。 「いずれにしても、奴が凱燕に無差別攻撃を掛けようとしていることは分かった。何としても食い止めねばならん」 そこへ、長篠安盛が姿を見せる。 「龍安、どうやら、追い詰められたようだな」 「これは長篠殿‥‥」 長篠は平静を保っているように見えた。 「話は聞いた。私が行こう」 「何ですって?」 「無辜の民が犠牲になろうとしているのに、ここで安穏としてはいられん。子具乃王とやらは私の身柄を要求しているのだろう。私が行こう」 「お言葉ですが、鳳華の領主として私にはあなたをお守りする役目があります」 「その役目は私が解除する。私が行くことでアヤカシの攻撃を遅らせることが出来るかも知れない」 「言語道断です。アヤカシと交渉するなど」 「やってみる価値はあるだろう。私にはそれなりの利用価値がある」 そこで、栗原が言葉を挟んだ。 「ですが、不自然ではありませんか。なぜ子具乃王はあなたがここにいると知っているのですか」 長篠は肩をすくめた。 「存在は明らかにされてはいないが、アヤカシの情報網は人界にも張り巡らされている、それは確かだ」 それから長篠は言った。 「私は自分の意思で凱燕に行くのだ。それをお前に止める権限はないはずだ。遭都と巨勢王にはしかるべく言葉を送っておく。私が時間を稼ぐ。アヤカシを止めろ、いいな」 そう言うと、長篠は急ぎ足で立ち去った。 「全く‥‥」 「お屋形様、とにかく、アヤカシの攻撃に備えませんと。いずれにしても、凱燕近郊は危険です」 西祥院の言葉に、弘秀は頷いた。 「凱燕周辺の守備隊を強化しろ。アヤカシが来る前に叩く」 |
■参加者一覧
華御院 鬨(ia0351)
22歳・男・志
葛切 カズラ(ia0725)
26歳・女・陰
焔 龍牙(ia0904)
25歳・男・サ
滝月 玲(ia1409)
19歳・男・シ
コルリス・フェネストラ(ia9657)
19歳・女・弓
オラース・カノーヴァ(ib0141)
29歳・男・魔
朱鳳院 龍影(ib3148)
25歳・女・弓
セシリア=L=モルゲン(ib5665)
24歳・女・ジ |
■リプレイ本文 鳳華首都、天承城――。到着した開拓者たちは、龍安弘秀と会う。 華御院 鬨(ia0351)。女形をしていて、常に修行のために女装し、そこいらの女性よりも女性らしい雰囲気を醸し出している。今回は可愛らしい系(メイド)の演技をしている。 「さぁて、お掃除始めやすよぉ! アヤカシのお掃除どすがねぇ」 と明るく元気にして龍安家の士気を高める。 一座の龍安家臣たちは、呆気にとられる。 「鬨殿‥‥その御姿で戦うおつもりですか?」 「はい! 何の問題もないどす〜!」 「みんな、大丈夫よ。鬨のことだから心配しないで」 筆頭家老の西祥院静奈は、そう言って肩をすくめた。 ‥‥賞金首の関係者っぽい勢力の様な敵軍に疑惑の強い権力者、色々と憂う事も有るけどココはしっかりやらないとね‥‥。 葛切 カズラ(ia0725)は胸の内に呟き、西祥院と握手を交わす。 「お久しぶり」 「カズラ、よく来てくれたわね」 「お元気そうで何よりね西祥院さん。毎回、来るのが事件の時ばかりだけど」 「そうでない依頼が出せれば良いんだけれど」 西祥院は肩をすくめる。 長篠殿の事をなぜ、アヤカシが? まさか、人質がいるのか? いくら詮索しても、推測の域を出ないな‥‥まずはアヤカシを食い止めなくては。 焔 龍牙(ia0904)もまた胸の内に呟くと、龍安弘秀にお辞儀した。 「弘秀様、亡王奈落が言い残した子具乃王とは、このことだったのですね」 弘秀は頷いて吐息した。 「そのようだな。良くないことが進行中のようだが。俺はアヤカシの専門家ではないが、奴らがこの地に策を巡らせているのは確かだろう。事前に察知できればいいのだが」 先の言動もある、長篠殿を行かせ子具乃王に成り代わられるのが心配だな‥‥。 滝月 玲(ia1409)にも長篠の言動は気がかりだった。 「弘秀様、長篠度はすでに?」 「ああ、すぐにでも凱燕に向かうつもりだろう」 「恐れながら、何としてもお止めするべきです」 「俺も引きとめたが、頑として譲らんのだあの御人は‥‥。ここへ来た時は朝廷の威を振りかざすだけの人物かと思ったが‥‥そうではなかったらしいな」 オラース・カノーヴァ(ib0141)もまた、長篠の件に付いては、断固として引き止めるべきだと言う。 「長篠安盛は説得して引き止める。要人を敵に利用させることは大きな損失を招くからな。アヤカシを撃退できても長篠をとられれば負けたも同然だ。どうしても行くと言うなら俺達の戦いを見てからでも遅くないはずだ。何としても引き止める」 「弘秀様、ここは力ずくでもお止めすべきでしょう」 「そうかも知れんな‥‥後々で厄介なことになるかも知れんしな」 「では」 滝月の問いに、弘秀は頷いた。 「やってくれ、任せる。責任は俺が取る」 それからコルリス・フェネストラ(ia9657)は、一礼すると、口を開いた。 「弘秀様――」 防衛作戦案を以下の通り弘秀に奏上し裁可を仰ぐ。 隊を壱、弐、参に分け 壱隊は弐隊が来るまで敵北部軍を 衡軛陣 (凹の形)で食い止め 弐隊は敵東部軍を迅速に撃破。 撃破後弐隊は敵北部軍の側面へ回り込む形で 移動し翼包囲。 参隊は凱燕内の防衛及び避難誘導 「いかがでしょうか弘秀様」 「ああそうだな、衡軛陣はうまく使えば敵を引きずりこみ打撃を与えることが可能だろう。兵士達は訓練されている、陣形の運用には問題ないと思う。兵力も拮抗しているから戦術的な課題は無いだろうと思うが、一部、巨人やがしゃ髑髏や妖術師が確認されているから、形勢不利となったら策にこだわるな」 「はい」 「参隊の凱燕内部の防衛だが、ここは恐らく今回は難しいかも知れん。時間的にも余裕が無い。まだ敵は凱燕に達していないから間にあうかも知れんが‥‥」 「そこは、最善を尽くしますので」 「頼む」 「予想通り大軍できたか‥‥状況的にはつらいが、出来る事をするだけ。じゃな」 龍王の通り名を持つ龍人、朱鳳院 龍影(ib3148)はそう言って思案顔で話を聞いていた。 「私は東へ回るとしよう。撃破後にはすぐに北へ合流するからの」 「よろしく頼むぞ。在天奉閻の配下も凱燕に攻め寄せたことがあったが、その時も撃退した。今回も、どうにか持ち堪えてくれると思っている。凱燕は簡単に落ちるような都市ではないが‥‥」 「じゃが、子具乃王には、何か裏がありそうじゃの。そこは気にならないと言えば嘘になるがの」 「そうだな‥‥」 弘秀は吐息して顎をつまんだ。 「ンッフフ‥‥ッ! 楽しい事になりそうねェ‥‥」 セシリア=L=モルゲン(ib5665)は艶のある声で笑みを浮かべると、 「ンフフ‥‥一応弘秀君もここまでの流れは確認できたと思うけど、最後に兵力配分よ」 セシリアは言って、仲間たちとまとめた兵力配置を提示する。 北部(壱班) サムライ×230 志士×30 泰拳士×25 弓術師×30 陰陽師×20 巫女×15 砲術士×30 シノビ×2 (内、オラースの指揮下 サムライ×18 志士×6 弓術師×12 巫女×3 シノビ×2 合計‥‥41) 合計‥‥380 東部(弐班) サムライ×50 志士×20 泰拳士×25 弓術師×20 陰陽師×5 巫女×10 砲術士×20 合計‥‥150 避難誘導&監視(参班) サムライ×20 陰陽師×5 巫女×5 シノビ×10 合計‥‥40 伝達要員(壱・弐・参) シノビ×8 兵士が集まってる間に、全体の作戦も伝える。 各自最悪の事も想定し、被害を最小限に抑える。 「‥‥と、まあこんなところよね」 「ああ、了解した。後は前線の天本と話し合ってくれ。彼が全体の指揮を取る」 「分かったわ弘秀君」 「よろしく」 そうして、開拓者たちは出発する。 「よし行くぞ。まずは、長篠を引きとめてからだな」 オラースは鋭い声で言って、先頭に立って歩き出した。 ――長篠安盛は、天承を出るところで開拓者たちに捕まった。 「長篠! そこの籠止まれ!」 オラースが長篠を乗せた籠を止める。 「何事だ」 警備の兵士たちが、開拓者たちの前に立ち塞がる。 「開拓者だ。長篠には天承にいてもらう。そこをどけ」 「何だと? 開拓者?」 「おい、どいてくれ」 「そうはいかん。どういうことだ。長篠殿は我々が守る。開拓者の手は借りん」 「そうじゃない。アヤカシの手に落ちるのを見ているわけにはいかないんだよ」 「どうした」 長篠安盛は、籠から降りて来た。 「長篠様、お戻りください」 「この者たちは?」 「開拓者にございます」 「開拓者? そうか‥‥私を止めに来たのか」 鬨は進み出ると、 「今度、うちの歌舞伎、見に来てくれはれぇ」 とチケットを渡して、相手の警戒を解こうとする。まずは、仲良くなることから始める。しかし鬨は警備兵に止められた。 オラースは、兵士と格闘しながら語気も激しく詰め寄った。 「長篠、考え直せ。あんたが敵の手におちたらそれこそこっちには打つ手がない。俺たちの戦いを見てからでも遅くは無いはずだ」 長篠は、首を振った。 「いや、子具乃王は私がいけば無差別攻撃をやめると言った。今は私が行かねば、犠牲者が出る」 「そんなことにはならない。少しは自分の立場を考えてくれ」 「‥‥‥‥」 滝月は、礼節を重んじた上で会い進言する。 「時間稼ぎのため命を投げ出すとはさすがは朝廷の臣、されどその思いも敵にすり替わられ鳳華に混乱を齎せばアヤカシ討伐を進めてきた武帝にも仇成す事になりますぞ」 「帝の名を出すとは‥‥」 長篠はうめくように呟き、顔を曇らせた。 「お願いする! どうかあなたを守らせて頂きたい! これも民の為です! 最善と思われる道、変なプライドなど捨てて頂きたい!」 「長篠――」 滝月とオラースの説得に、長篠は遂に足を止めた。 「分かった。そこまで言うなら、お前たちを信じてみよう。だが必ずアヤカシを食い止めろ」 長篠はそう言うと、天承城へ戻って行った。 ――凱燕。 六介は、まだ平常を保っている凱燕の街並みを行き過ぎると、自宅に戻った。 妻の志野と娘の桜は、驚いたように六介を見やる。 「あんた‥‥」 「お父さん‥‥」 六介は、ばつが悪そうな顔で、家に入って行く。 「心配掛けてすまなかったな、志野、桜。俺は心を入れ替えた。この何日か考えて、決心がついたよ。二度とお前たちを傷つけるようなことはしない。本当にすまなかった。許してくれ」 六介はそう言って、志野と桜に近づいていく。 「約束だよお父さん」 「桜‥‥」 六介は桜を抱きしめて、志野に歩み寄った。 「俺が馬鹿だったよ、すまなかったな」 それから六介は、安堵する二人を置いて、奥の棚の後ろから、何かの包みを素早く取り出して懐に入れた。 「志野、桜、実は仕事が見つかったんだ。行かないと。また後でな」 そうして、六介は再び裏通りの界隈に入って行った。 そこで、編み笠をかぶった人物と会う。 「六介か」 「ああ」 「手に入れたのか?」 「もちろんだ。そっちはどうしたんだ。依頼人が来るはずだろう」 「あの方は来れなくなった。報酬は用意できてる。物を渡してもらおう」 「分かったよ。こっちはもらう物さえくれればそれでいい。あんた等が何をしようが知ったこっちゃない」 そして六介は、包みを編み笠の人物に渡した。 現場に到着した開拓者たちは、天本とサムライ大将たちと打ち合わせして行く。 「よろしくお願いします天本様」 コルリスが作戦を説明すると、天本は頷いた。 「承知した、ではその作戦で行きましょう。よし全員迎撃準備に掛かれ! アヤカシが来る前に陣を敷く! 行くぞ!」 「では幸運を祈っておる」 朱鳳院は言って、鬨ともに東部の迎撃に向かう。 カズラ、焔、滝月、コルリス、オラース、セシリアたちは北部の迎撃に向かう。 「ゴミはお掃除しないといけないどすぅ!」 鬨は仕込箒を抜くと、アヤカシ騎兵を切り裂いた。 咆哮して突進してくるアヤカシ騎兵相手に、鬨は最前に出て、兵士たちを鼓舞する。 「みんなでお掃除すれば必ず綺麗になるどすぅ〜!」 「よし行くぞ! 鬨殿に続け! 我らもお掃除開始だあ!」 兵士達は鬨に調子を合わせて加速する。 「遠距離攻撃で、各個撃破してゆくぞ。確実に狙い撃て」 「は‥‥!」 朱鳳院の言葉に、兵士達はアヤカシ騎兵を各個に撃破して行く。 「受けよ、ガトリングボウ――」 朱鳳院は三本の矢を解き放った。矢が貫通して、アヤカシ達を薙ぎ倒していく。 「炎武骸骨が前進してきます!」 「怯むな。撃ち返せ」 「みんな骸骨に集中攻撃ど〜す!」 鬨は兵士たちとともに炎武骸骨に加速する。 炎武骸骨は巨大な刀を振り下ろしてくるが、鬨は軽やかにステップしてかわすと、その腕を切り落とした。 そこへ朱鳳院が矢を叩き込む。 ――ガオオオオオオオ! 炎武骸骨は咆哮すると、アヤカシ兵は後退して行く。 「敵が後退します!」 「脆すぎる‥‥罠かも知れん。深追いは禁物じゃ。様子を見る」 朱鳳院は言って、弓を下して敵情をシノビに探らせる。 「色々と思う事は有るけど今はココを凌がないと、避難完了前に抜かれると痛いわよ」 カズラは兵士たちを激励すると、自らも鞭を振るってアヤカシ兵士を叩きのめす。 ゆらり‥‥と姿を見せるがしゃ髑髏に、カズラは斬撃符を叩き込む。 「行くわよ――神風特攻切り裂け!」 凄絶な式の一撃ががしゃ髑髏の胴体を両断する。 「よーし行くぞ! カズラ殿を支援する! 突撃!」 「玲! 奴を頼む!」 「ああ、任せろ!」 焔と滝月は、戦場で連携して兵を率いて、骸骨騎馬武者の突撃を食い止める。 そこへ、側面から死人術士の瘴気弾が飛んでくる。 「やってくれる‥‥がそうはいかん!」 焔は骸骨騎馬武者を炎魂縛武で切り捨てると、術士を桔梗で真っ二つにした。 滝月の提案により、共に前線で戦うサムライ部隊は3列方式をとりダメージ50%を目安に交代させ巫女による治療か投薬により回復させるといったスクロール方式。 「今回はただ討って出るだけではだめだ、勝つために粘り強く戦わなければならない」 突撃してくる騎馬武者に桔梗を撃ち込み、後退させる。 コルリスは近隣の砦に砲術士と護衛のサムライを配し、要の衡軛陣を維持しつつ弓兵・砲兵達に地帯射撃を命じる。 「銃撃開始――!」 自身も鏡弦で敵軍の動きを逐次探査し感知した情報を報告しつつ、 「朧!」 鷲の目+朧月の合成射撃技で敵を順次射撃していく。 戦場に点在する櫓から目まぐるしく黒、黄、青、赤の旗が振られる。コルリスの手配である。黒:戦況報告求む。黄:交戦中。赤:苦戦中。青:敵撃破。 オラースは六角陣形の小隊の指揮を取る。前回六角陣に採用した人材を優先採用した。 「よしローテーション交代!」 オラースが笛を吹くと、六角形に組んだ兵士の集団が右に回転して前衛と後衛が交代する。 続いて、笛を吹くと、兵士達はオラースの周辺に集まって来た。 「閃癒を頼む。神楽舞『心』も準備してくれ。キリク行くぞ!」 オラースはトルネード・キリクを解放、味方を巻き込まず敵を多く射程に捉えるよう部隊の動きや自分の向きを調整する。 セシリアは兵士達を鞭で指揮しながら笑っていた。 「ンフフッ!! いいわぁん。堪らないわねェン! みんな援護よろしく頼むわねェ、 行くわよォ呪声!」 「セシリア殿を支援しろ! 前衛隊、前に出るぞ!」 「ウフフフッ! みんな良い子たちねェン! 気に言ったわよォ」 鞭を振るうセシリアに、だが兵士達は良く動いた。 「あそこに‥‥! 子具乃王を確認!」 焔はアヤカシの戦列が広がっているところを発見して、友軍に合図を送った。 「あののっぺらぼうが‥‥これでもどう!」 カズラは蛇神を叩き込んだ。直撃を受けて微かによろめく子具乃王。顔をカズラの方へ向けた。 悠然と手を上げると、そこから瘴気の波動を解き放った。なぎ倒される龍安軍。 「やる‥‥! 怪物‥‥!」 焔は側面から回り込んでいく。 「子具乃王! なぜ長篠殿を欲する、何が目的だ!」 「開拓者か‥‥ふふ‥‥欲しい物は手に入れた。わしの思惑通りよ‥‥」 焔の斬撃を受け止める子具乃王。 滝月はトウガラシ入りの焙烙玉をぶつけると、子具乃王に突進する。 「炎牙秋水、鬼眼、のっぺらぼうじゃあ寂しいだろ、せめて一太刀刻んでやるっ」 「ぬ――!」 ――ザッシュウウウウウ! と、滝月の一撃が子具乃王の顔面を切り裂いた。 「おのれ!」 反撃の瘴気弾をまともに受けて、滝月は吹っ飛んだ。 「弓スキルで奴を撃て! こっちは気力全開アークブラスト!」 オラースは電撃を連射した。 「今日はこれまで‥‥この借りは返す!」 子具乃王は瘴気の波動を全開で放出すると、態勢を立て直して兵を引く。 「引きが早いな――」 焔は兵士達を止めると、偵察を出した。 やがて、朱鳳院と鬨らが東から合流してくる。 「間に合わなんだか。こちらも、敵は何か時間稼ぎをしていたようじゃが」 とにかくもアヤカシ軍が退いたことを確認して、開拓者たちは防備を固める。 |