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撃退庁のことかね?  ああ、久井さんとはよく一緒に食事をしているよ。
我々はもちろん協力関係にあるのだが、どうにも組織というものは大きくなると、
偏見や面子というものが生まれがちでね。
そういう誤解を生まないためにも、しっかりと学んでくれたまえ。

日本国内の撃退士活動組織

 日本国内での撃退士の活動は、当初『怪事件』として扱われていた名残で、警察組織を模して構成されています。

 組織は国家公安委員会の直下におかれ、撃退庁、全国に6の撃退局、全国に162の撃退署と、組織だけを見れば警察組織そのままに充実しているように見えますが、撃退士は常に人手不足というのが実情です。

 近年、撃退士の需要は急速に高まっていますが、同時に深刻な人材不足が問題になっています。アウル能力の適正が必要であり『誰でもなれる』職業ではないことや、危険で過酷な任務もままあること、そして何より『第一線で活躍できる期間が必然的に短くなりがち』であることが原因です。

 地方の撃退署には、撃退士が10名程度しか在籍していません。そのため、緊急時にはフリーの撃退士を招集したり、久遠ヶ原学園生の派遣を要請したり……と、組織の骨子がしっかりとしている割には、底が浅くなっています。
もちろん撃退庁直属の選抜・直属撃退士などは、対天魔の特殊部隊を謳うだけあり、相当の戦力を有しています。しかしそれすらも、良くも悪くも少数精鋭というのが実情なのです。

 『どうやって撃退士を増やしていくか』は、今後、世界においてもっとも重要な課題の一つと言えるかもしれません。



撃退庁について

 撃退庁は、天魔が脅威として世界中に認識されはじめた2000年、世界的にもアウル能力者の早期育成が望まれる中、『天魔対策戦略室』を格上げする形で設置されました。

 長官である久井遥明は、かつて全国に複数存在していた『撃退士養成学校』の統合を提案するなど、久遠ヶ原学園の設立に際して顕著な活躍をした人物でもあります。

 撃退庁は天魔関係の事件を解決するための組織ではありましたが、人材不足が災いし、出動要請に十分応えられるものとは言えない状況が続いていました。そのため、しばしば批判の対象にされることもあったといいます。

 とはいえ、世界的に見ても天魔事件の発生率がきわめて高い日本において、最低限のライフラインを保っていることに関しては、国際的にも少なからず評価を受けています。

 所属する職員はさまざまです。撃退士然とした人間も存在する一方で、良くも悪くも公務員といったタイプも存在します。
久遠ヶ原学園のOB・OGであることも多く、学生である久遠ヶ原学園生には、親心にも似た厳しい態度で接する者もいるようです。裏を返せば、一定の範囲で「同門」という認識が存在しているとも言えます。互いに邪魔をするような行為は行わない・情報は積極的に提供するなど、仲間として最低限の礼節はわきまえる人々であることも事実です。


久遠ヶ原学園 関係組織

 久遠ヶ原学園は、その複雑な設立経緯から、日本国内の撃退士組織から半ば独立した存在として扱われています。

 学園の大きな動きは、各国政府の中で承認された『国際撃退士養成機構』によって決定されます。

 国際撃退士養成機構には、創設者であり、久遠ヶ原学園の設立にも深くかかわった『長野綱正』という人物が在籍しており、彼は世界各国の撃退士の、安定した立場の創出に尽力しています。
また、久遠ヶ原学園長・宝井正博は、アジアエリアの撃退士の養成・活動を管轄する『アジア撃退士養成機構』の理事を兼任しています。

久遠ヶ原学園と撃退庁

天魔事件において、撃退署のリソースでは対応しかねる事案が発生した場合、撃退局はフリーランスや直属の公務員撃退士に救援依頼を送ることができます。また、撃退署の現場判断において久遠ヶ原学園に依頼を出すことも可能です。(教室に時折、撃退署からの依頼が掲載されているのはこのためです)
大規模な戦闘時には、企業撃退士への業務委託や久遠ヶ原学園との共同作戦といった例も見受けられます。

以上のように、撃退庁と久遠ヶ原学園は基本的には協力関係にあります。
しかし一方、学園はあくまで『国際撃退士要請機構』の直轄組織であり、撃退庁とは異なる指揮系統をもっています。そのため撃退庁から学園へ、直接命令といった形で指示が下りることはありません。
国際的な撃退士育成組織である久遠ヶ原学園と、日本国内の機関である国家公安委員会の関係が生み出した、ぎりぎりの境界線がここに存在するのです。