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(シュウスイ)愁水

new2021年03月18日 パーティノベル 納品

ルームバナー

■当方の発注について

お手数ですが、ご依頼の前にこちらのご確認をよろしくお願い致します。

■□■当方のWT活動&NPC描写■□■
 当方の活動は過去にWT9「エリュシオン」、今現在はWT10「ファナティックブラッド」のMSがメインです。
 愁水が所有してますNPCへのお誘いはご自由にどうぞ。

《WT9》
 藤宮 流架(jz0111)
 ダイナマ 伊藤(jz0126)
 御子神 凛月(jz0373)

《WT10》
 白亜(kz0237)
 黒亜(kz0238)
 紅亜(kz0239)

 作品のサンプル以外に、リプレイもご参考にして頂ければ幸いです。

 過去に何件かお受けしたことはありますが、今後は他MSのNPCが関わるご依頼はお受け出来ませんのでご了承下さい。

 WT9のNPC登録していないキャラ(漣 悠璃や迦具山 臣など)は、今まで通り受注可能です。

■□■発注文に関して■□■
・台詞がんがん心情歓迎。
 キャラクターの台詞を入れて頂けますと、口調を把握し易いのでとても助かります。
 キャラクターのステータスシートにあるデフォルトの口調ではない場合は、特にご注意下さいませ。

・発注内容は、なるべく起承転結を詳しく書いて下さい。
 何時、何処で、など、記載の不明慮があります場合、一旦ノミをお返しさせて頂くこともあります。
 オチお任せ等は歓迎です。

・誤字にはお気をつけ下さい。
 意味が全く変わってしまう場合があります。

・当方の納品物には、大好物の台詞や心情がアドリブとして多く盛り込まれる可能性があります。
 ヤメロ、ということでしたら一言申して頂ければ幸いです。

・同行者さんがいらっしゃる場合、その方との関係や呼び方呼ばれ方、想いや日頃の弄り方弄られ方などを記入して頂けると、作成する上で非常に助かります。

■□■ジャンルについて■□■
 WT納品物(リプレイ)では、主に心情、コメディ、戦闘が多いです。
 日常系のほのぼの、切ない物語、ラブストーリーなども好みです。
 描写傾向としまして、抽象的な表現が多いかもしれません。
 ファンタジーやメルヘン(絵本みたいな感じ)とかも大好きです。
 その他のジャンルでもご依頼があれば精一杯書かせて頂きますが、不安な場合はFLにてお気軽にお問い合わせ下さい。

■□■ノミネートについて■□■
 ノミのお返事までお時間を頂戴しがちです。
 制作期間も通常より多めに頂いておりますが、なるべく早めの納品を心がけます。

■□■ファンレター■□■
 いつもありがとうございますっ!!
 宝物です。ニマニマしながら拝読しております。
 現在はお返事が出せない状況となっておりますが、大変嬉しい限りです。
 今後とも、ご縁がありましたらよろしくお願い致します。

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■商品価格について

 大変心苦しいのですが、値上げをさせて頂いております。
 時期によって変動あり。

・基本価格(全てのノベル商品) → +500~700
・おまけ → +100

 申し訳ありませんが、よろしくお願い致します。

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■サンプル1(抽象的なファンタジー風物語)

「En-Trance」


 祖母が言っていた。
 世界は楽譜の上に成り立っている音符みたいなものなのよ。だから貴女は自分を誇ればいいの。貴女の歌はいつか、世界を響かせるものになるわ。

 そう信じたまま、祖母は死んだ。

**

 オト。
 空気の様に軽やかで、水滴の様にたゆたう歌が響いていた。
 人魚に愛されたかの様なその声のメロディが、ふっと途絶える。声の主はベッドに預けていた腰を浮かせて、

「兄さんと姉さん、無事だといいな……」

 自室の窓を開け放つ。
 鳥籠を彷彿とさせる窓柵にそっと触れた彼女――マヤは蒼穹のパレットを仰いだ。空はあんなに美しいのに、自らの胸の内はくすんでいる。暗に揺れる理由。

 ――私には何の力もない。

 人や家畜を襲う存在、マモノ。正体不明の世に蔓延る畏怖。
 一説には悪魔が産み落としたモノ、人間に罰を与える為に天使が翼から生み出したモノ、と。だが、確証たる説はない。
 マヤは兄や姉の様に、剣や魔法の才覚があるわけでもなかった。日々、マモノ討伐の依頼の為、身を粉にする兄姉はマヤにとって尊敬と懸念の存在であった。

「(私が誰かの為に出来ること……私、私には……何もない)」

 強いて一つ。祖母が誇れ、と言ってくれたこと。

「……歌うこと、なのかな」

 マヤは細い声で呟くと、もう片方の手を何気なく窓柵に添えた。その瞬間、



 軋む金属音。



 手の平からソレが否応なく伝わってきた時には、既に遅かった。空を掴むも自らに翼などなく、外れた鳥籠を茫然と視界に入れながら、マヤの身体は屋敷の三階から落下した。





 ――はず、であった。

 音楽が聞こえる。
 天国で奏でられるオトがあるとしたら、こんな音色なのかもしれない。

「…………私、生きてる?」

 意識を失っていたのか、そうでなかったのか。非常に曖昧な時の流れに身を委ねていた様な感覚。少なくとも、一切の衝撃を受けなかったのは確かだ。
 髪と服の乱れを整えながら、マヤは伏せていた身体をゆっくりと起こす。

「ドコだろう……ココ」

 不安に翳り、琥珀色の大きな瞳に映るのは見覚えのある庭ではない。其処は、何かが捩じれた寓話の挿絵――という印象。
 澄んだ空気の中央には大樹、壁と天井には十字架や蔦、花々をモチーフにしたステンドグラス。其処から差し込む光は雪の結晶のように美しく、不安定で。床の所々には墓石の様なものが埋め込まれている。そして、絶妙な加減で響くヴァイオリンの波がそれら全てを“調和”しているかの様で――。
 広くはないけれど、不思議と“納まる”空間。

「誰か、いるの……?」

 小さく漏らしたつもりが思いの外、反響した。すると、不意に音楽が途絶え、

「――いるよ」

 遅れて言葉が降ってくる。
 頭上だ。マヤが大樹を見上げると、フワリ、太い幹から何かが落下してくる。後退りをする余裕もなく、半ば茫然と前にしたのは――、

「こんにちは。ふふ、可愛らしい客人だね。何日ぶり……いや、何ヶ月――ん? 何年ぶりだったかな? トコヨの秒針は旋律を奏でないから音譜を忘れてしまう」

 一人の男。
 年の頃はマヤよりも五つか六つ、上、恐らく二十代半ば辺りであろうか。白に近い銀色の髪。肩には外套を掛け、慎ましさな黒を基調とした装いだ。首に下げた紐組みのネックレスが、服の一部の様に釣り合っている。
 そして、左手にはヴァイオリン、右手に弓。思考するまでもなく、この場を支配していた奏者であろう。

「俺はカデンツァ。此処、トコヨの独裁者だ。君の名を聞いてもいいかい?」

 切れ長の吊り目――カデンツァと名乗った紫水晶の瞳が、マヤを映して微笑む。
 何故だろう。マヤの全身からするりと、警戒の糸が解けていく。不思議と、得体の知れないこの男に恐怖が湧かないのだ。本能的な“何か”がそう告げている様な――……。

「……マヤ」
「マヤ、か。無垢で可憐な響きだね」
「……あ。ええと、その……ココって、」

 ――“トコヨ”。彼は先程、そう言っていた。馴染みのない言葉。馴染みのない空間。自分が知らないだけで、現実に存在する確かなモノなのだろうか。
 いや、そもそも自分は本当に――、

「君は死んでないよ。大丈夫、俺も、この空間も、幻じゃない。此処は在るべき境にあり、在るべき人にしか訪れることを許さない域だ」

 胸の内が、安堵の灯りを照らした様な気がした。その言葉が信じるに値するかどうか、何を持って基準なのかどうかもあやふやであるというのに、見透かされた心は涼やかな声に包まれる。

「じゃあ……夢、でもないの? だって、その、とても不思議なことが起こったの。私、自分の部屋に居たんだけど……窓柵が外れて、一緒に落ちてしまって……でも、その一瞬の後、場面が変わるみたいに、」
「気づいたら此処にいた?」
「――っ! そう! ねぇ、貴方はココの住人なんでしょ? 私に何が起こったの? 何故、私はココに来てしまったの? 私はちゃんと元の世界に帰ることが出来る? ねぇ、お願い。何か知っているなら教えて欲しいの!」

 焦りの余り、うわずった早口からマヤの感情の揺れが伝わる。問いの渦にカデンツァは気分を害することもなく、穏やかな眼差しを彼女に向けたまま、

「君がトコヨに来たのは、君がそう望んだからだ」

 教本を読むかの様に言った。そして一度、睫毛を伏せると、マヤの横を通り過ぎてある位置に落ち着く。

 ――ピアノだ。ステンドグラスの光を浴びて、オーロラの如く輝いている。カデンツァは手袋を口で外すと、言を次いだ。



「――マヤは、“力”を切望したね?」



 突然、閃光が瞬くようにマヤの脳裏で彼の言葉が爆ぜた。
 ――どうして。そう、どうして。カデンツァの言葉が嘘ではないことを知っている。故に、何故、何もかも見透かされているのか。
 力のない私。力を欲する私。心の深い部分で、どちらも既に理解している“私”。

 彼は大樹の根元で枯れかけていた花――牡丹であろうか、それを一輪摘むと、ピアノの端に置く。

「俺が叶えてあげよう、君の全てを」

 彼の行動の答えを聞く間も、知る間もなく、カデンツァは穏やかな表情そのまま、ピアノの前へ腰を下ろす。そして、白い鍵盤を軽やかに弾いていく。

「実際にやってもらった方が早い。さあ、歌ってごらん――マヤ。君の“特別”が“全て”へと進化する瞬間を見せてあげよう。それが、俺の役目だからね」

 言うなれば、混乱と誘惑。
 何故、自分の願いも、自分の誇りも、カデンツァの瞳に映っているのか。それらに五体を縛られながらも、マヤの眼差しも、声も、心も、彼の幻奏に縋っていた。
 何が正しくて、何が間違っているのか。ただ、この渇望は真実で、自分には歌うことしかない。

 ならば、



 ――歌う。柔らかな光に、大樹の猛き生命に、肌を愛しく撫でるメロディに乗せて。
 すると。命を潰えようとしていた牡丹に変化が訪れる。その身を淡い輝きと色が灯り、それが包みきって弾けた瞬間。

「――……っ!? ……嘘……咲いた……まさか、命を吹き返した、の?」
「ああ、そうだよ。君の力だ」

 最も美しい時の姿へ変えた牡丹の軸をカデンツァは摘まみ上げる。そして、初めて見せる真摯な目元で彼はマヤに言った。
 だが、代償が必要だ――と。

「この力を得たまま元の世界に帰りたければ、代償を払ってもらう。君の場合は……そうだね。



 ――“聴覚”だ。
 ふふ、怖がらないで。これは俺からのプレゼント」

 マヤの怯えた瞳を、鮮やかな牡丹の色で抱擁するかの様に。カデンツァは、そっと彼女の左の耳元へ癒された命を添えた。

「この牡丹を耳元に挿していれば、音は消えない。平素と同じに聞こえる。だが、大切にしてくれ。枯れることはないが、壊れないわけではない。
 ――さあ、どうする? マヤ。



 選択の時だ」

 マヤは唇を結ぶ。
 得ることが幸せとは限らない。知らないことが幸せなこともある。だが、自分は知ってしまった。力の内と外。そんな境界など、もはや自分の中では些細なものとなってしまったことに気づいた時、





 彼女は笑った。
 世界に響く“力”の為なら、“アクマ”の声にも耳を傾けるだろう。誰だって、きっと――。

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