●華鬘の向こう側  エトファリカ連邦国を形成する国のひとつ、詩天が首都若峰を守護する即疾隊局長の江邨はとても困った様子を見せていた。  胡坐をかいて身を丸め、膝に頬杖をついて唸っている。  視線の先にあるのは一通の手紙。  差出人は江邨が成人したての頃、修行の旅に出ていた。その旅の中で縁あって商家の世話になったことがあった。  金銭も碌に持っていなかったので、彼は「何か困ったことがあれば言ってほしい。この俺にできることがあれば必ず助けます」と……。  その言葉が現実になり、江邨は唸るしかなかった。  内容の方は久しぶりに顔が見たいから温泉宿でゆっくりしようというもの。  江邨は現在、即疾隊局長の任務を行っており、おいそれと留守にすることはできない。  場所は海を渡った港町に隣接する山の向こうの温泉宿。 「ぶっちゃけ、隊員全員連れて行きたいくらいなんだがなぁ……」  全部向こうで費用を持ってくれるので、偶には隊員に羽を伸ばしてもらいたいと思ったが、若峰の守りが薄くなるのでそうもいかない。 「まぁいいか……」  揉めるのは前提で江邨は副局長と一番隊長、主治医を呼んだ。  すったもんだの末に江邨のお使いをすることになったのは和彦だった。  主治医の越乃初名も連れて行ってはという江邨の意見は副局長の前澤と和彦によって一蹴された。  先日に初名は旅に出て歪虚に絡まれてしまったのだ。  そもそも、ハンターや覚醒者でもない女性が旅に出ることなど一生に一度あるかどうか。旅から旅をする者もいるだろうが、初名は元武家の娘。  軽々しく旅に出ることなどないし、兄妹のような関係とはいえ、未婚の男女が共に旅に出るなんて女の方に何かと支障が出る。  そんな訳で和彦だけ江邨のお使いに行くことになったのだが……。 「迷った……」  鬱蒼とした木々の中を歩いていた和彦はぽつりと呟いた。  一時は迷ったこともあったが、無事に華鬘荘に到着した和彦が出迎えてくれた女将に名を名乗り、待ち合わせ人の話をする。 「その方でしたら、明日到着するとの事です」  嬉しいことに、その待ち人は和彦が早く来ても宿代を世話をしてくれると言っていた。  壮麗かつ瀟洒な建物のいたるところに華鬘が飾られており、飾りの形に違うもの  他にどんな客がいるんだろうな……と、和彦は  麻貴がぐるりと玄関口に視線を巡らせた。  本来交差するはずのない二つの世界を受け入れたこの華鬘荘は他の世界も受け入れるかもしれない。  今はそのような様子を見せることなく、華鬘の飾りがそっと揺れる。 依頼内容  華鬘荘で楽しみましょう。 皆様は様々な経路で華鬘荘に足を踏み入れました。 同じ日時に和彦と顔を合わすことになります。 温泉に入るもよし、壮麗な宿の中を探索するもよし。 和彦を構うのも良し。 美味しい季節の料理に舌鼓をうちましょう。 宿の破壊や迷惑行為はご法度です。 MSより お世話になっております。鷹羽柊架です。 今回、どさイベということで、架空のOPを制作してみました。 少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 会場限定ノベルも開けておりますので、ご縁がありましたら宜しくお願いします。