▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『お楽しみもレベルアップ! 』
月夢・優名2803)&秋山・美菜(NPC2979)


 ゆ〜なと美菜は『エレメンタルゲート』のレベルアップをすることになった。ふたりの分身たるキャラクターは以前の冒険で目的を達成したため、報酬とともに経験値が与えられた。それがレベルアップという形で反映されるという。この作業を行うのは、もはやおなじみとなっているゆ〜なの自室だ。作業とはいっても、以前とまったく変わらない。必要なものはルールブックとサイコロ、それに筆記用具。実際に遊んだ時とまったく同じものを使う。

 「レベルアップ……キャラクターが成長するんですか?」
 「そういうこと! まず能力がちょこっとだけ上がって、新しい力が手に入るんだよ。まずは成長するためのポイントをサイコロで決めて、それを能力に割り振るの。」

 精霊の世界でウンディーネとして存在するゆ〜なは魔力が高い。レベルアップの際に考えることは『長所を徹底的に伸ばす』のか、それとも『弱点を克服する』のか……美菜はここを考えるとわかりやすいと説明した。ゆ〜なは以前に攻撃魔法で敵をやっつけたことを思い出し、魔力を中心に上げていくことにする。方針を決めた後でサイコロを振ると、美菜が驚くほど大きな目が出た。

 「あっ! いいなー。ゆ〜なって、ずっと出目がいいよねー。」
 「そうなんですか?」

 このゲームにおける運は、ほぼサイコロの出目に左右される。そういう意味では、ゆ〜なは幸運だ。ここぞの場面で判定に失敗しない勝負強さを持っている。一方の美菜は人並みな出目や結果が多いが、ゆ〜なよりもルールを熟知しているので、ある程度までならカバーできる。致命的な欠点を作らないような割り振りをし、ふたりとも無事に能力を成長させた。

 次に新しい力の説明が始まった。
 未来のテレビアニメでもそうだが、レベルアップするたびにキャラクターは新しい力が使えるようになる。ウンディーネは『癒しの水』、そしてシルフは『戸惑いの風』と名づけられた能力だ。ゆ〜なが新たに得た能力は、まさに「読んで字のごとく」である。敵からの攻撃などで受けたダメージを回復させることができる魔法だ。それに比べて、美菜の能力はわかりにくい。ゆ〜なは小首を傾げた。

 「えーっと、美菜さんはどんな力を手に入れたんですか?」
 「あたしはね、敵ひとりに絡みつくような風を送って、動きを鈍くさせる魔法だよ。この魔法を使えば攻撃を当てやすくなったり、敵の移動スピードが遅くなったりするんだよ!」
 「それは便利ですね。前みたいな攻撃が、もっと当たりやすくなるんですね。」
 「でも、大地の精霊のノームには効かなかったりするんだよねー。なんでもありってわけじゃないんだー。」

 どうしても魔法と言われると、万能なものだと思ってしまう。それはゆ〜なも例外ではなかった。ウンディーネは火に触ることができないのと同じで、精霊同士でも相性というものが存在する。これがこの世界でのお約束であり、魅力として輝く部分でもあるのだ。


 普段からゲームに触れていれば、レベルアップとの出会いは多い。しかし、ゆ〜なにとっては非常に珍しく、これにどんな意味合いがあるのかが純粋に気になった。

 「美菜さん。レベルアップって、何が起きたんでしょうね?」

 美菜は「うーん」と考え始めた。自然と麦茶の入ったコップに手が伸びる。何も気の利いたセリフを言いたいわけではなかったが、普通に説明してしまうのは面白くないと思ったのは確かだ。どんなゲームにも判断材料として数値を用いている。ということは、レベルアップもまた『数値では計れない何か』を表現しているはずだ。美菜は一生懸命に考えたが、いい言葉が思いつかない。

 「じゃ、今度はそれを探しに行こっか!」
 「え……成長した意味、ですか?」
 「だって、それが大事な気がするから。あたしもゆ〜なと一緒に探しに行くね!」

 わからなければ、一緒に行けばいい。美菜はいい解決方法を見出した。ゆ〜なもまたこのゲームの楽しみが広がった気がした。あの世界は、いつもふたりの近くにいる。
PCシチュエーションノベル(シングル) -
市川智彦 クリエイターズルームへ
東京怪談
2009年08月21日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.