▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『+ 護衛依頼面接へ + 』
ルド・ヴァーシュ3364)&ザド・ローエングリン(3742)&マーディー・ララ(3755)&(登場しない)



「いらっしゃい。さあ中にお入りよ」


 護衛の仕事の面接にララ香辛料店にやって来たルド・ヴァーシュとザド・ローエングリンを迎えてくれた色黒の女性は依頼主のマーディー・ララ本人だった。
 「ララ香辛料店」はエルザードに店を構える香辛料問屋。料理用から薬用、香料としての用途まで幅広く取扱っており、店頭での小売販売も行っている。中には数人の従業員の姿が見えた。
 マーディは頭に帽子のように布を巻いており、そこから肩よりやや長い黒髪を零しなびかせながら店内に二人を案内する。その黒い瞳は依頼相手かつ訪問者であるルドとザドの二人の姿を優しく眺めながら。


 店の奥、応接部屋へと案内すると彼女は従業員の一人に耳打ちする。
 やがてその従業員は飲み物を持って皆の前に現れ、そして茶器を置いてその場を去った。


「さてと依頼の話をしようか。私の名はマーディー・ララ。此処、ララ香辛料店の店員さ。といっても、この店は家族ぐるみで経営しているから今回の依頼の件は私に一任されている。実質依頼主は店ではなく私と言ってもいいかもしれないね」
「俺達は護衛の任務だと聞いている。その件についてはどうなんだ」
「私たちは香辛料を売っている。皆が日常使用するものから希少なものまで、ね。そして今回お願いしたいのはどちらかというと貴重かつ希少な分類に入る香辛料を運ぶ仕事の護衛だ。道程はソーンの僻地からこのエルザードまで。その間に盗賊団やモンスターに遭遇する可能性があってね」
「なるほど。用件は分かった」
「まあでもうちは隊商だから、殺し合いをするつもりはない。あくまで護衛なんだ。其処は安心してくれて構わないからね」
「では雇用条件の話を」
「簡易では有るが契約内容を書いておいた。今から簡単に説明していくから分からない事があれば何でも質問しておくれ」


 マーディーの細い指先が用意されていた紙を一枚捲りルドに手渡す。
 ルドはその紙に書き記されている契約内容を素早く読み取り始めた。女性特有の柔らかな声が契約の内容を読み上げ、詳しい説明を付加していく。時折「質問は?」と区切りをつけてくれるので其れに応じてルドも質問を返した。


 そんな風に二人が契約について話し合っている傍でザドは物珍しそうに店先に並んだ香辛料をじっと見つめている。
 袋に入った色取り取りの粒、種子。それもまたザドにとっては目新しいもの。だけど契約内容を話している最中立ち上がることは出来ない。それくらいの分別はザドにだってある。だからこそちょっとむずむずと視線を動かす状態で留まっている。
 だがその様子に気付いたマーディはくすりと笑み、そして言った。


「私のワガママだけどね。腕がたつのに加えて、香辛料の大切さを理解してくれていたほうが、なおいい」


 こっちにおいで、とマーディーは香辛料が多く並ぶ店先に二人を案内する。
 彼女がそう言ってくれた事によってザドもまた目を輝かせて店の方へと足を運んだ。


「これは加工前の胡椒。これを乾燥させて粉状にしたものが皆が知っている胡椒の形になる」
「くろいのとしろいのがあるよ?」
「胡椒には黒胡椒と白胡椒がある。黒胡椒は主に肉類……牛肉なんかとは相性が抜群だ。それに対して白胡椒は魚類との相性がいいんだよ」
「へー、しらなかった」
「これらは強力な殺菌、抗菌作用があってね。昔から保存料として良く使われているのは知っているかな」
「んーんー、しらない」
「じゃあ、今度はこっち」


 マーディーの説明に真剣に耳を傾けるザド。
 そんな二人の微笑ましい光景を優しく見守りながらルドは契約書に目を通す。


「今日は面接に来たはずなんだけどな」


 そう呟きながらも悪い気分ではない。ルドは正式の契約書ではないが、きちんと清書されたものを見て雇用条件としては充分だと確認する。
 依頼側に偏りすぎず、こちらにもそれなりにメリットがあるように振り分けられている。それにマーディー自身も「殺しあいをするつもりはない」と断言していた。これならば採用された場合、ザドにも仕事をこなせるだろう。


「そういえば、ザドだったね。君細っこいけど、力仕事は大丈夫?」
「はい、こうみえてもちからもちです!」
「へえ力持ちなんだ。折角だし二人の腕前を見せて欲しい。構わないかな」
「いいですよ!」
「ああ、勿論だ」
「じゃあ店の外へ行こう。……っと裏の方が目立たなくていいか。二人とも、こっちへおいで」


 導かれるままに三人で店を出てそのまま裏へと回る。
 其処には人気は無く、積み上げられた荷が幾つがあるのみだった。ルドは其処からゴミと思われるもの、つまり廃材を幾つか取り出しマーディーに手渡す。彼女は一瞬意味が分からずに居たがルドが懐から銃を取り出し準備するのを見ると即座に理解した。
 廃材を一つ高めに投げてみせる。するとルドはあっさり其れを撃ち抜いた。


「ふぅん。じゃあこれはどうだい?」


 今度は低めに二つ――けれどそれも簡単にルドは撃ち抜く。
 続いて一つは高く、一つは地面すれすれの低さで投げて――けれどそのどれもが次の瞬間身体に穴をあけていた。
 最後に高さではなく素早さを重視し力一杯廃材を遠くへと投げ飛ばしてみる――しかし的が小さくなったとしても同じ事。
 全ての廃材に弾が撃ち込まれたのを見遣るとマーディーは手と手を叩き合せた。そして隣で控えていたザドへと視線を下ろす。


「さて次だけど、君は何が出来る?」
「もやせます!」
「もや……ああ、火属性の魔法が使えるのかな」
「うん! みてて!」


 ザドが掌を広げればそこからは炎が揺らめいた。
 もちろんそれだけで終わる筈が無い。ルドが落としたばかりの廃材へと視線を滑らせた瞬間、赤い炎は蛇の様に細く姿を変えて飛び出し一瞬にしてそれらを巻き込んだかと思うと、やがて無へと還した。
 もやせる、という言葉通り、ザドは今皆の目の前で廃材を燃やし尽くしてみせたのだ。その温度は灰すらも残すことを許さない。


「なるほど、二人は中々の実力者のようだね」
「ルド! ほら、できたでしょ。ちゃんとできるんだよ」
「ああ、知っているさ。よく出来てた」


 褒めてと駆け寄ってきたザドの頭をルドは優しく撫で褒める。
 まるで兄と妹のようなほんわかとした雰囲気。
 再び三人で店内へと向かう。
 二人を待たせるとマーティーはごそごそと店の奥で何かを袋に詰め込み始める。やがて戻ってきた彼女の手には綺麗に包装された香辛料が握られていた。


「今日は来てくれて有難うね。結果は後日必ず伝えさせてもらう。さ、これをあげるよ。使ってみな、お肉を焼くときに使うと、美味しくなるから」
「え、くれるの?」
「美味しい料理を食わせてもらいな」
「ありがとう!」


 掌に乗る程度の大きさの袋。
 それをマーディーから両手で受取るとザドは満面の笑みでお礼を伝えた。ルドも有難うと口にし最後に彼女と握手をかわす。二人でもう一度別れの挨拶を口にし店を後にすれば、マーディーは暫く二人の方に手を振って見送ってくれた。


「ね、ね。これ使ったりょうりって、おいしいんでしょう? きょう、つかうよね? ね?」
「何を持たせてくれたのか分からないが肉料理が合いそうなんだよな。焼いた時に使うといいって言っていたし……、精肉店にでも寄ってみるか」
「おにくー!」


 貰ったばかりの香辛料を大事に握り締めながらザドは期待に胸を踊らせる。
 二人連れ添いながら精肉店の方へと足を向けて。


 後日、二人が作った料理がどんなものになったかは――今は内緒話。







□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

【3364 / ルド・ヴァーシュ / 男性 / 26歳(実年齢82歳) / 賞金稼ぎ / 異界人】
【3742 / ザド・ローエングリン / 中性 / 16歳(実年齢6歳) / 焔法師 / レプリス】
【3755 / マーディー・ララ / 女性 / 25歳(実年齢25歳) / 冒険商人 / 人間】

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

 こんにちは、いつも発注有難う御座います。
 今回は依頼主との面談話となり、このような形に仕上げさせて頂きました。お二人がどのような料理を製作なさったのか想像するとちょっと楽しみです(笑)
PCシチュエーションノベル(グループ3) -
蒼木裕 クリエイターズルームへ
聖獣界ソーン
2009年08月20日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.