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『目覚める力、新たに宿る神の獣は 』
赤羽根・灯5251)&伊葉・勇輔(6589)&赤羽根・円(7013)&黒崎・潤〈暗黒騎士化〉(NPCA051)

 炎の鳥の力が彼女に戻る時。
 白い虎と炎の鳥の力が混ざりあって金色の龍が目を覚ます。
 金色の龍の力、黒い邪龍の力――。
 果たしてどちらが相手を上回るのか‥‥。
 どちらが勝っても、世界を揺るがす力となるだろう。
 優しき少女、強き母、にゃふんな父親――三人の物語も終盤へと進み行く。


「灯!!」
 邪竜クロウ・クルーハの間へとやってきた赤羽根・円と伊葉・勇輔の二人が目の当たりにしたのは大事な娘である赤羽根・灯が冷たい地面へと倒れようとしている姿だった。
「貴様ァァァァッ!!」
 倒れようとしている灯にトドメを刺すべく、ずしん、ずしん、と地響きのような音をたてながらゆっくりと灯へと近づいていく。
 そして鋭い爪が灯の身体を切り裂く――寸前で勇輔が邪竜クロウ・クルーハの攻撃を受け止めた。
「俺の娘に何してンだ? てめぇみたいな明らかに人間以外の奴との交際は認めねぇぞ!」
 にゃふーんとパンチを繰り出しながら勇輔が邪竜クロウ・クルーハに攻撃を仕掛けて、奥の壁へと叩きつける。娘に怪我をさせられた怒りからか、普段より勇輔の力が強くなっているような気がするのはきっと気のせいではないだろう。
「大丈夫か、灯」
 ひんやりとした地面に頬をつけ、倒れている灯に勇輔が駆け寄って抱き上げる。
「う‥‥ん‥‥」
 耳元で大きな声を出されているせいか、沈んでいた灯の意識が浮上して閉じていた瞳がゆっくりと開く。
「灯、大丈夫か?」
 先ほど問いかけた言葉を再び勇輔が投げかけると「‥‥‥‥」と灯は無言だった。
「灯?」
 何処か強く打ったのかと心配していた矢先の事だった。
「タヌキ猫‥‥‥‥ぷっ」
 それだけ言葉を残して、灯は再び意識を失ってしまった。
「‥‥‥‥円」
 それからどれくらいの時間が経ったことだろう、暫くの間放心状態だった勇輔がポツリと円の名前を呼んだ。
「え? 何? あんたどうかしたの?」
 円が目を瞬かせながら聞き返し、勇輔の口から出た言葉は「オレ、帰る」というKY極まりない言葉だった。
「は!? 何言ってるの?」
「娘にまでタヌキ猫って言われたしさ、しかも最後に『ぷっ』って笑われたしさ‥‥俺、此処にいる意味がないような気がするんだよな」
 真剣な表情で勇輔は円を諭すように言っているけれど、簡単に言うと『娘にまでタヌキ猫って言われてショックだから帰るね』と言う事なのだろう。
「あんたは‥‥自分の娘がこんな目にあってるって言うのに、自分の事ばかり! それでも父親なの?」
 出来る事なら娘である灯を傷つけた邪竜クロウ・クルーハより目の前のタヌキ猫を退治してやろうか、と円はふるふると怒りに拳を震わせながら呟いた。
 その時、円は灯の他に倒れている人物に気がつく。邪竜クロウ・クルーハの尾に近い所で鎧を身に纏った灯と同じ年代の少年。攻撃を受けていたのか傷だらけで整った顔も苦痛に歪んでいた。
「そもそも、俺がこんな姿なのはてめーのせいだ! この引きこもりドラゴン野郎!」
 勇輔は少年――黒崎・潤に気づいていないのかそのまま邪竜クロウ・クルーハへと攻撃を仕掛ける。言っている内容は逆ギレのような事なのだが、実際に邪竜クロウ・クルーハが灯をアスガルドに攫わなければ勇輔がタヌキ猫へ変身する事もなかったのだから全てが逆ギレという事もないのかもしれない。
「まったく、あの人は‥‥見境なく攻撃したら灯たちまで危ないというのに‥‥」
 円は大きくため息を吐きながら勇輔の攻撃に巻き込まれないように灯と黒崎を助け出した。
「‥‥う」
「気がついた?」
 黒崎が意識を取り戻した所へ円が声をかける。
「あんたは‥‥」
「私はこの子の母親、あなた‥‥この子に何をした? この子の中にあるはずの朱雀の力を‥‥あなたから感じる」
 じろり、と円は少し強い視線で黒崎を睨みつけながら問いかける。朱雀の巫女として異形と戦っていた円には確りと感じる事が出来た。黒崎の中から感じる灯の中にあるはずの朱雀の力を。
「これは‥‥俺が奪ったものだ、もう俺が奪った力は残り少ないけれど」
「だけどその力はこの子のものだ、返してくれる?」
 円が有無を言わさない口調で問いかけると黒崎は目を伏せ、そして首を縦に振った。
 黒崎はよろめきながら灯へと近寄り、円の腕に抱かれている灯を抱き寄せ、そして口を重ねる。これは二度目、一度は朱雀を奪われた時、そして今回の朱雀を戻すため。今回は灯が意識を失っている為に覚えている事はないかもしれないけれど。
「あれに見られると話がややこしくなるな」
 円は邪竜クロウ・クルーハと戦う勇輔をチラリと見ながら呟くと、勇輔に見られぬように自分達の周りに炎の結界を張る。
「これで、すべての力が戻ったはずだ」
 黒崎が灯を円に返しながら言葉を紡ぐ。
「娘を危険な目に合わせた事は直ぐには許せないけれど、力を返してくれと言う頼みを」聞いてくれた事に関しては礼を言う。ありがとう」
 円の言葉に黒崎は少しだけ目を丸くして「おかしな奴だ、張本人に礼を言うとは」と目を細めて笑って言葉を返した。
「しぶとい奴だな、このやろう!」
 勇輔が叫びながら邪竜クロウ・クルーハに攻撃を仕掛ける。外見はタヌキ猫でも本来の勇輔の力は邪竜クロウ・クルーハの想像を超えており、圧倒的に押されている。
「邪竜クロウ・クルーハを‥‥押している?」
「当たり前やわ、普段はフザけた事ばかりだけど自分の娘が危ないんだ、怒らないわけがない」
 そう言い終わった後で『‥‥もしかしたらタヌキ猫のせいかもしれないけど』と戦う勇輔の姿から少しだけ顔を逸らして心の中で呟いたのだった。
「何か様子がおかしい?」
 勇輔によって壁に叩きつけられた後、ぴくりとも動かなくなった邪竜クロウ・クルーハを見て円が眉間に皺を寄せて呟く。
 その時だった。

「ぎゃあああああ」
「うわあああああ」

 城の至る所から耳を塞ぎたくなる程の絶叫が響き渡る。
「な、なんだ!?」
 流石に勇輔も驚いて、邪竜クロウ・クルーハにトドメを刺そうとしていたのだが足を止めて周りを見渡す。
「ぐ――‥‥」
 黒崎もガクリと膝をつき、邪竜クロウ・クルーハを見る。
「おい、何が起きてるんだ!?」
 勇輔が少し離れている円に問いかけるが、彼女は何も言葉を返す事が出来なかった。彼女自身も何が起きているか分からないのだから。
「命が、全て奴に吸われていく――恐らく、邪竜クロウ・クルーハは城にいる魔物達の命を吸い取る事で自らの力を増幅させているんだろう」
 黒崎も力が抜けていくのか苦しそうに小さな声で呟く。その様子を見かねた円は先ほどよりも強い炎の結界を張り、黒崎を庇うように覆う。朱雀の力で邪竜クロウ・クルーハの力が僅かに減少しているのか、黒崎を襲う力は少しずつ減っていく。
「きさまぁ‥‥さっきまでの借りは、返すぞぉぉ」
 ふぅ、ふぅ、と息荒く邪竜クロウ・クルーハはずしん、と重い音を響かせながら勇輔へと近寄る。
 城にいるすべての魔物の命を吸い取った邪竜クロウ・クルーハを勇輔の力だけでは止める事が出来なくなっていた。
「このままじゃ殺られる、一度引いて態勢を整えなおすべきだ」
 黒崎の言葉に「いいえ、それは必要ない」と円が優しげな表情で言葉を返す。彼女が見つめる先には意識を失い、眠りに落ちたままの灯。
「円!」
 勇輔の言葉に円は静かに首を縦に振る。
 白虎の勇輔の血と朱雀の円の血を受け継いで生まれた子供、それが灯。生まれながらにして白虎と朱雀の両方の力を合わせ持つ。
 そしてその力は彼女が生まれてから16年間、彼女の中で互いの力を融合しあっていた。
 その力は白虎でも朱雀でもない、全く新たな神獣。
 四神の中央に座す金色の龍――黄龍。

 そして、新たな力を身に纏い、灯が眠りから目を覚ます。


TO BE‥‥?


――出演者――

5251/赤羽根・灯/16歳/女性/女子高生&朱雀の巫女

7013/赤羽根・円/36歳/女性/赤羽根一族当主

6589/伊葉・勇輔/36歳/男性/東京都知事・IO2最高戦力通称≪白トラ≫

―――――――

赤羽根・灯様>
赤羽根・円様>
伊葉・勇輔様>

こんにちは、いつもご発注ありがとうございますっ。
今回はシチュエーションノベル・グループ3の発注をありがとうございましたっ。
内容の方はいかがだったでしょうか?
気に入ってくださるものに仕上がっていれば良いのですが‥‥。
それでは、今回は書かせて下さりありがとうございましたっ。
またご用命の際は一生懸命書かせて頂きます!

2009/7/31
PCシチュエーションノベル(グループ3) -
水貴透子 クリエイターズルームへ
東京怪談
2009年08月03日

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