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『+ それはまるで縁を結ぶ指先と赤 + 』
ルド・ヴァーシュ3364)&ザド・ローエングリン(3742)&レノック・ハリウス(3131)&(登場しない)



 ルド・ヴァーシュは自分の中にある確かな変化に気付いていた。
 それは今彼の隣を歩く黒髪赤眼の子供、ザド・ローエングリンと出会ったためだとはっきりと解る。ザドはと言えば先日衣服を購入した際に貰った赤いリボンの入っている小袋をやたらと気にし、暇さえあればそれを開きリボンを風にそよがせて遊んでいた。
 残念ながらリボンの使い方は分かっていないらしく、まるで安全を確認する動物の様に口に入れることもしばしば。その度にうえっと舌を出し眉を寄せていた。
 そんな相手を見るとルドの中では温かい不思議な感情が湧く。この世界全てに興味を持つ純粋無垢なルドを見ていると自分の中が洗われる様な錯覚さえあった。


 二人で始めた旅、その休憩中にもザドはリボンを取り出す。
 また手の中で遊びそよぐ其れを見てルドはザドの手を取った。無言で伸ばした手ではあったけれど、ザドは吃驚する様子もなくリボンを彼に受け渡す。


「良いか、これはこうやって使うんだ。髪を束ねて結ぶ、人はこうやって自分を飾ることもある」


 くせのある髪の毛を手で左耳の上辺りで束ね、リボンを結わう。
 本当は紐や髪ゴムできちんと結わえた方が纏まりやすいがあいにく手持ちがない。使い方を教えるだけなのだから簡単で構わないだろう。
 ザドは顔の傍に手があることに対しくすぐったそうに眼を瞑る。


「似合うよ」


 髪を、リボンを、風が遊ぶ。
 ルドは出来るだけ柔らかくザドの頭に撫でた。それに応える様に自分の手の下でザドが心から幸せそうに微笑む。店のガラスに反射する自身の姿を気に入ったらしく、ザドは何度も何度も確かめるように自分の髪に手を伸ばしては離す。何処か心温まる空間にルドもまた癒される気がした。



■■■■



 ルドとザドが出逢って数日後。
 彼らは一人の冒険商人と会っていた。


 相手の名はレノック・ハリウス。
 ルドの古い知り合いだ。かつて敵同士という立場ではあったが、互いの存在を認め合う旧知の仲である。
 そんな彼を交えた三人はエルザードへと向かう道の途中にある山の一角にテントを張り、焚き火を囲む。ザドは火の揺らめきに興味を持ったのか膝を抱えるように座り、赤い瞳で凝視していた。
 そんなザドを見守りつつレノックは自身の顎に生えている髭を撫でる。そしてルドの方へと視線を向けると青い瞳を細めた。


「巷じゃお前さんの噂が流れておるぞ。『ルドがレプリスに殺された』とな。当のレプリスは行方不明、いまだに上の連中率いる賞金稼ぎの奴らによって捜索中だそうじゃ」
「そうか。やっぱりそう思われているか」
「だが、久しぶりに逢ってみればお前さんはぴんぴんしとるし、問題のレプリスは唯の愛らしい子供ときておる。やはり風の噂はあてにならんようじゃのう。お前さんこれからどうする心つもりじゃ?」
「エルザードを目指すよ。あそこなら詳しい情報が入手出来るかもしれないからな」
「ふむ、聖都か……なら安全な逃走の道筋を考えておかねばならんのう」


 揺れる火と影。
 彼らは頻繁に連絡を取りあっているわけではないが、出会えば互いの近況を語り合い、情報を交換する。他愛のない雑談も交わす。
 ザドは結ばれたリボンが気に入ったらしく指先で髪と其れを撫でては嬉しそうに表情を綻ばせていた。
 ルドは火で温めておいたミルクをカップに注ぎ飲みやすい温度まで冷ましてからザドに手渡す。
 レノックは荷物の中から一枚の地図を取り出し指をさす。
 ルドはレノックにもミルクの入ったカップを手渡した後、自分の分を口付けながらその手元を覗き込んだ。


「のう、ルド。ワシにはそのレプリスは戦闘用だとは思えんのじゃ」
「……ああ、俺も最初はただのガキにしか思えなかったけどな。だが戦闘能力は高かった。この俺が近付くのに戸惑った程だぜ」
「ふむ。しかしな、この子には生まれてすぐ戦場に立てるようにと戦闘用に通常入れられてるはずの擬似人格も入っていない。戦闘本能が無いように思えるんじゃ」
「どういう意味だ?」
「あくまで戦闘用としての仮定じゃが、『不完全体』である可能性もあるということじゃ。だが不完全体と判断されるようならこの年頃まで普通は生かしてはおかんじゃろう。何か理由があるのかもしれん」
「と、言う事はザドが作られた目的は戦闘用じゃないかもしれないってことか」
「命の源である魔石に深い関わりがあるかもしれん。だがこの様子じゃこの子自身は何も分かっておらんじゃろうし……、まあ、錬金術師が生きておれば詳しい話も聞けたかもしれんがのう。今は彼岸を渡ってしまった、残念な事じゃ」
「……確かに変な話だな」


 ルドはレノックが綴る言葉に自身がいかに危険な事柄に足を突っ込んでいるのか再確認し眉を顰める。受け取ったばかりのミルクを味わいながらレノックは指で逃走経路を示した。
 名を呼ばれた事に反応したザドは伏せていた顔を持ち上げる。その瞬間緩んでいたリボンが解け地に落ちた。慌てて拾い上げ習った様に髪を纏めて結わおうとするも指先がもつれ上手く結べない。結べたと思えばぐしゃぐしゃで飾りとは呼べないものが出来上がる。


「ぅー……」
「ザド、何をやっているんだ」
「りぼんがむすべない」
「確かにぐしゃぐしゃだな」
「うー……ぐしゃぐしゃー……」
「指先を動かすと言う事は頭を動かす事にもなるらしいぞ。自分で綺麗に結べるように頑張ってみろ」
「……ルドー……」
「……俺が手伝ったら練習にならないだろう? 蝶々結びは覚えておいて損はない」
「ルドー……」
「涙目で訴えてくるな……」
「……」
「…………」
「………………」
「……次は綺麗に結べるように頑張れよ」


 見かねてルドがザドの髪の毛を結わえ直す。
 元通りリボンが括られれば涙目になっていたザドはすぐに涙を引っ込める。そんな二人の可笑しな遣り取りを見ていたレノックは声をあげて笑った。


「ふぉっふぉっふぉ、お前さん達は兄妹のようじゃな。よかろう、ワシも冒険商人として出来る限りの手助けはしようかの」


 その瞳は慈愛に満ち、二人を包む。
 今はまだ静かに時が過ぎていく。時が残酷な風を贈ろうとしても彼らは進む。
 ただ前へ、前へ。



■■■■



 ルド、だいすき。
 ルドのおおきなて。
 ゆびさき、きゅっと、にぎりかえした。


 夢の中。
 無垢な子供は幸せを感じて眠る――。







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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【3364 / ルド・ヴァーシュ / 男性 / 26歳(実年齢82歳) / 賞金稼ぎ / 異界人】
【3742 / ザド・ローエングリン / 中性 / 16歳(実年齢6歳) / 焔法師 / レプリス】
【3131 / レノック・ハリウス / 男性 / 52歳(実年齢57歳)/ 冒険商人 / 異界人】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、発注有難う御座いました!
 今回は会話も多めに。けれど距離感も大事に描写させて頂きました。じれったく、けれど確かに縮んでいく関係。そしてレノック様の情報。まだまだ謎が多そうです。
PCシチュエーションノベル(グループ3) -
蒼木裕 クリエイターズルームへ
聖獣界ソーン
2009年06月29日

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