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『blow.?W 』
高科・瑞穂6067)&鬼鮫(NPCA018)

 瑞穂は小刻みに何度も息を吐きながらズリズリと身体を引きずり、近くにあった壁際に擦り寄る。そして壁に寄りかかるようにしながら再び立ち上がった。
 鬼鮫はピクリと片方の眉を上げ、その瑞穂の姿を見て目を細める。
 まだやる気なのか。この女…相当タフだな。
 鬼鮫自身、もうさすがにあれだけ足元がおぼつかない状態になっているのだから、立ち上がる事はまずないと踏んでいた。が、その意に反して瑞穂は立ち上がった。
「お前、相当タフな女だな」
「……そ…そ、それは…どうも…」
 醜く歪んだ表情ながら、瑞穂は精一杯の強がりにも見える笑みを微かに浮かべた。その口調は痛みに耐えるかのように流暢には話せない。
 鬼鮫は小さく舌打ちをする。
 そんな強がりを言える余裕がまだ残っていやがるのか…。と、半ばうんざりしたように心の中で呟いた。
 全身ボロボロになりながら、何とか立ち上がった瑞穂に気を取られていた鬼鮫は、背後で微かにうごめく古い木製の椅子や資料の入れられた分厚い木箱には気づいていない。
「わ、私、こんな事で…諦めるような女じゃないの…」
「だろうな。しつこい女だぜ」
「……それは、光栄、ね。有難く、褒め言葉として…受け取っておくわ」
「フン、鬱陶しいほどめでたい女だな」
 カタカタと小さくうごめいていた椅子と木箱が、鬼鮫の言葉が終わるか終わらないかの瞬間にまるで生きているかのようにふわりと宙に舞い上がる。
 瑞穂は鬼鮫を睨み付けると、再び小さく微笑んだ。
「ど、どうでも良いけど…背後が…ガラ空きよ」
 瑞穂の言葉に、ようやく背後に気配を感じた鬼鮫は勢い良く振り返る。
 まさかこいつ、超能力を扱える奴だったのか!?
 そう思うが早いか、鬼鮫の背後に舞い上がった数々の小物たちは凄まじい勢いで鬼鮫に襲い掛かってきた。
 ガツン! バラバラバラ! と激しく鬼鮫に衝突し、ぶつかる傍から足元に落ちていく。
 上手く力の扱えない瑞穂は、鬼鮫の上にある明り取り窓にまで小物たちが吹っ飛びガラスを割り、その破片が鬼鮫の上にも降りかかる。
 もともとこの場所に長く置かれていた小物たちと、掃除を一切されていない床からモクモクと埃を巻き上げ一気に視界が悪くなった。
 割れた明り取り窓からは冷たい空気が流れ込み、さらに埃を舞い上げ視界は真っ白に染まる。
 瑞穂もまたその埃を極力吸い込まないようにと顔を背け、ある程度落ち着いた頃を見計らって目を開く。
 その瞬間だった。突然の事に理解する間も与えられず、目の前が暗闇に染まり全身が浮き上がるような衝撃を喰らった。
「ぐえぇぇえっ!!」
 ズドン! と深く鳩尾にめり込む怒りの一撃。
 先ほどの超能力で仕掛けた攻撃は、鬼鮫に切り傷と打撲こそ与えたものの全く効いた様子はなかった。むしろ、その攻撃によって更に鬼鮫の逆鱗に触れた事は明らかだった。
 額に浮かび上がる血管の数が増し、怒りのあまりに目は血走り身体は打ち震えている。
 瑞穂は抉られるほどの衝撃に胃の中の物を吐いてしまった。そしてメリメリと軋む胸骨にただならぬ激痛が走り抜ける。
「随分とナメた真似してくれるじゃねぇかっ!」
「あぐぁぁ…っ!」
 鬼鮫の攻撃の手が離れる瞬間に壁から崩れ落ちそうになるも、怒りに震える鬼鮫の攻撃の手は休まる事無く繰り出される。
 大きく整った形の胸を、拳を唸らせ打ちのめす。ドスッ、ガスッ、バチンッと留まる事無く音を立て、攻撃される度に瑞穂の豊かな胸は衝撃に震えた。
「ひゃあぁあぁッ!」
「ふざけやがって! ぶっ殺してやるっ!」
「ぐぶっ!」
 鬼鮫は瑞穂の身体をサンドバッグのように何度も繰り返し打ちのめす。
 左ストレートが離れる瞬間に右ストレートが飛び、瑞穂の胸を目掛けてスパーリングを繰り出した。
 攻撃を打ち込まれて大きく揺れ動き、留まる事がない瑞穂の胸は異様なまでに跳ね回る。
 散々打ちのめした胸部に続き、鬼鮫は瑞穂の顔面を掴むと勢い良く頭突きを繰り出した。
「ぎゃああぁッ!!」
 頭上に叩き落された踵落としの傷も残る上に、強烈な頭突きをされ瑞穂は頭が割れてしまいそうな痛みに襲われていた。
 ぶっ殺してやる…。超能力者など、俺は認めない…。
 鬼鮫の目は完全に血走り、怒りに燃えている。
 ガチンッ! と額を打ちつけ、ギリギリと瑞穂の顔面に指を突き立てるように鷲掴みにした。
「てめぇのような人間が、なぜ生きてやがる!」
 繰り返し、鬼鮫は頭突きを繰り出した。ゴリッと言う骨と骨のぶつかる異様な音が辺りに響く。
 瑞穂の背面には壁、前方には鬼鮫の額…。逃げ場も与えられず、額を打ち付けられる度に瑞穂は大きく身を捻りながら、やり場の無い足は何度も宙を掻いていた。
 ガツンと打ち込まれると、衝撃で後頭部まで壁に打ち付けられる。瑞穂の手も鬼鮫同様に顔を押さえつける鬼鮫の手に爪を立てて掴んでいた。
「くたばれ!」
 止めの一撃と言わんばかりに、力強くガンッ! と激しい衝撃を喰らい、瑞穂はその場に力なくうつ伏せに崩れ落ちた。
 打ち付けられた頭部の痛みは、どんなに顔を歪めても当然の事ながら軽減する事は無く、歪み切った醜い顔を晒して瑞穂の身体は痙攣を繰り返した。
 額からも血が流れ、瑞穂の顔面は真っ赤に染まる。瑞穂は額に手を当て奇声を発しながらもんどり打ち、迫り来る鈍痛に顔は歪み全身はガクガクと打ち震える。
 そんな瑞穂の身体の上に鬼鮫が跨ると、両足を掴むとそのままグイッと力任せに背中に付くほど捻り上げる。
「ひぃやあぁあぁぁぁッ!!」
 背骨と股関節が悲鳴を上げるのと同時に、悲痛な叫びが瑞穂の口から突いて出た。
 無様な上に屈辱的な姿勢を取らされ、ただひたすらに瑞穂は叫ぶしかなかった。が、ギリギリと地面に爪を立てている瑞穂自身、まだ鬼鮫に屈するような様子は見えない。
「いつまでその強がりがもつんだろうな?!」
 鬼鮫は口の端を引き上げほくそえんだ。
 身体の作りとはま逆に捻り上げられ身体中がピシピシと軋み始める。関節が外れるかと思われる手前に力を緩められたかと思うと、背後に回った鬼鮫は瑞穂の腕を掴み後方へ捻り上げる。瑞穂は必然的に胸を突き出すような姿勢を取らされ腕の関節を固められ肩に激痛が走った。
「い、あぁぁあぁっ!」
 腕を固められ、足を固められ、どの関節技も骨が折れる一歩手前まで痛めつけられた瑞穂は、力が完全に入れられなくなってしまった。
 関節技から解放された時には、ただ身体からの反応からくる痙攣にビクビクと振るえるだけ。
「無様な姿だな。…いや、いい姿だと言うべきか?」
「う…くううう…」
 鬼鮫は大きく息を吐き、ゆっくり立ち上がると今一度瑞穂の臀部に力いっぱい蹴りを加える。
 ズバンッ! と大きな音を立て打たれた瑞穂の身体は大きく跳ね上がり、埃を巻き上げた。
「い、ひゃあぁあぁ――っ!」
 瑞穂は涙を零し、痛みのあまり舌の感覚までおかしくなったのか、呂律が回らなくなった。喉の奥から力の限り悲痛に悲鳴を上げる。
 うつ伏せに倒れ、力の入らない体は投げ出されたまま痙攣を繰り返し、時折大きくビクンっと身体が跳ね上がった。
PCシチュエーションノベル(シングル) -
りむそん クリエイターズルームへ
東京怪談
2009年04月06日

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