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『Red moon in the night.?X 』
高科・瑞穂6067)&鬼鮫(NPCA018)

 悶絶を繰り返す瑞穂の額からの血乱暴に拭い去り、鬼鮫は目を剥いて瑞穂を見下ろしていた。
 横を向き、地面を左手で掻き毟ろうとしている瑞穂の臀部に、鬼鮫は容赦なく深く重い蹴りを喰らわせた。
「ぐあぁあぁぅ!」
 砂煙を上げ、瑞穂の身体は横滑りに転がった。
 砂煙が治まるのを待ち、鬼鮫が瑞穂の様子を窺うと瑞穂はそれでも立ち上がろうとガクガクと打ち震えながらも、上体を起こそうと試みる。しかし最終的に力が入らずその場に突っ伏すように崩れ落ちた。
 ズキンズキンと額が痛みで脈打つのが分かる。骨を砕かれた頬も、腹も至る所にまるで心臓が出来たかのように脈打っていた。
「おいおい、大丈夫か?」
 気遣うような素振りを見せる鬼鮫の言葉など、当に耳に入る余裕は無い。鬼鮫は執拗に瑞穂の臀部に蹴りを入れてくる。
「ひぃ! ひやあぁぁぁッ!!」
 ズダン! と言う大きな音が響き渡り、同時に悲痛な叫びがこだまする。
 全身を駆け抜ける痛みは、瑞穂の言葉もハッキリとは話せなくさせていた。完全に呂律が回らず額と尻を押さえ込み、瑞穂は芋虫のようにのた打ち回る。
 臀部の痛みと額や腹部の痛み。全ての痛みにどうしていいか分からなくなりそうだった。
 何度も何度も身体を丸め込ませ、反り返る。
 身体が丸くなる度にジタバタと揺り動かす瑞穂の白い足と尻は修道服から覗き見え、身体を反る度に大きな胸は揺れ動く。
 地面に幾度となく叩き付けられた瑞穂の修道服は所々破け落ちていた。肩や腰周りはその隙間から色白の細い素肌が覗き見える。
「そんなに身体を捩ると、みっともねぇぜ!?」
 あられもない姿を晒す瑞穂に、鬼鮫は更に攻撃を加えた。
 ゴリン、ドズン、と低い音が響き渡る。
 仰向けに倒れる瑞穂の腹目掛け執拗なまでに何度も足を踏み下ろすと、瑞穂の身体は電気ショックを浴びた時のように身体が跳ね上がり、身体を折り曲げざるを得ない。
 鬼鮫は瑞穂を無理やり立ち上がらせると、続け様にその腹部目掛けて拳をえぐり込ませた。
「うぐぅぅッ!」
 地面に座り込むような形で崩れ落ちる瑞穂に、鬼鮫は唾を吐きかけた。
「まだやるか?」
「………」
 全身を震わせながらも両手を突き、顔を俯かせている瑞穂に最後の情けと言わんばかりの言葉を投げかける。
 瑞穂は込み上げる吐き気を堪えながら歯を食い縛り返事を返せずにいると、鬼鮫は先ほどと同様に瑞穂の前にしゃがみこみ髪を掴むと無理やり顔を上げさせた。
「………わ…」
 空気を漏らすように、消え入りそうな声を瑞穂は発した。
「……らけんひゃ…らい…わ」

 ――“ふざけんじゃないわ”

 瑞穂はこうまでなっても、相手に屈する事をしない。
 鬼鮫は乱暴に瑞穂の髪を離すと、瑞穂の両腕を後ろ手に組ませ容赦なく捻り上げた。それにより瑞穂の胸は大きく前に突き出され上体は必然的に後ろに仰け反る形になった。
 本来なら曲がるはずも無い方向へ捻り上げられ、肩や肘に痛烈な痛みが走り抜ける。
「ひぃやあぁああぁぁあぁぁぁーっ!」
 瑞穂は耳をつんざく様な悲鳴をあげた。ここで相手に助けを請うた所で、攻撃の手を止めるような鬼鮫ではない事は、瑞穂自身良く理解できた。
 本当は根を上げてしまいそうになるが、瑞穂自信のプライドがそれを言わさないのは玉に瑕とも言えるだろう。
 鬼鮫はなかなか根を上げようとしない瑞穂に続け様に関節技を浴びせかけた。
 うつ伏せに倒れ込んだ瑞穂の片足を掴み上げると、勢い良く背中目掛けて反り返させる。瑞穂はそれを逃れようと身を捩るが鬼鮫の手からはどうやっても逃れられない。瑞穂に最初の時のような力があればそれも容易だっただろう。
 ピシピシと関節と言う関節が鳴り、鬼鮫の力の掛け方一つで瑞穂の骨が砕けるも外れるも容易だろう。
 幾つもの関節技を仕掛けられる度に、瑞穂の身体はしなり、その場には似つかわしくない異様なほど色香を漂わせるかのように、その胸も四肢も全てがあられもない状態に晒される。
 屈辱的だった。抵抗するにも力の入らない自分を恨めしくさえ思える。
「そろそろくたばった方が楽なんじゃねぇか? なぁ、超能力者さんよ」
 叩き付けるようにして、瑞穂の顔面を地面に手放した。
 瑞穂はただ何も言えず、ヒクヒクと身体を痙攣させながらその四肢を投げ出している。
「っち」
 鬼鮫は小さく舌打ちをした。その瞬間に背後で小さく揺れ動く石の音を聞きつけ振り返った。
 浮かび上がるまではいかずとも、地面で小さくカタカタと打ち振るえ鬼鮫の方向へ向かって動いているその小石から、鬼鮫は瑞穂へと視線を動かした。
 完全に虫の息状態の瑞穂にまだ超能力を使おうとしている余力があるのかと、鬼鮫は目を剥いた。
 鬼鮫もまたギリッと奥歯を噛み鳴らすと両手をきつく握り締め、渾身の力でうつ伏せに倒れ込んでいる瑞穂の背中に叩き落す。グキリ…と音がすると同時に、背後の小石の動きも止まった。
 瑞穂は短く呼吸を吐きながら、完全に意識が飛んだ。
 目は虚ろに見開かれ、どこを見ているとも分からない状態で時折大きく身体を痙攣させていた。
「随分とてこずったぜ」
 フンと鼻を鳴らし、鬼鮫はそんな瑞穂をしばし眺めた。
 最初に見た時とは全くの別人がそこに倒れている。
 自信に満ち溢れ、背筋をピンと伸ばし勇ましく現れた当初の瑞穂からは、まるで想像できないみすぼらしい姿。
 キッチリと着込んでいた修道服も今は破け、乱れ、あられもない。履いていたストッキングはボロボロになり白くしなやかな細い大腿部などの生足が露になっていた。
 ヴェールに包まれていた髪は本来光を反射するほどのツヤを持ち、細い肩や腰周りをサラサラと滑らかに滑っていたが、今では砂埃にまみれてくすみ、攻撃の合間に振りほどけた白のケープから覗く白い胸の谷間に流れ込み、瑞穂の頬にも乱れ落ちていた。
 細くくびれた腰周りも部分的に破れ滑らかな肌を露にしている。
 どれくらいそんな無様な姿を晒した瑞穂を疎ましく眺めていただろうか。鬼鮫はヒクッヒクッと絶え絶えな息を継ぐ瀕死の瑞穂の白い足を掴み上げると、そのままズルズルと引きずり廃墟から立ち去った。
「どこか足のつかねぇような場所に捨てねぇとな」
 鬼鮫は独り言のようにブツブツと呟きながら瑞穂を引きずって歩いた。

 夜の闇の中、戦いに敗れた女を引きずり歩く男の異様な姿を見た者は誰一人としていない。
 白々と照らしていた大きな満月だけは、そんな二人を静かに、そして冷ややかに見下ろし物言わぬ目撃者となっていた。
 その月もまた、あれほど白くなっていたと言うのに、この時は血を塗りこめたかのように赤く染まっていた。
 まるで瑞穂の姿をそのままに写し取ったかのように…。
  物音一つしない茂みの中を引きずられる異様なズルズルと言う音、草木を掻き分けるガサリ、パキ、と言う音が気味悪く辺りに響き渡る。
 真っ暗な闇の中、瑞穂は何処かへ連れて行かれその後行方不明となった。
PCシチュエーションノベル(シングル) -
りむそん クリエイターズルームへ
東京怪談
2009年03月30日

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