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『おちゃめな精霊ゲーム 』
月夢・優名2803)&秋山・美菜(NPC2979)


 どんな形でも留学というものには、何かにつけ「レポート」がつきまとうらしい。ゆ〜なの友達である美菜がレポート目的で『テーブルトークロールプレイングゲーム』なるもので遊ぼうと誘ったのだ。略して『TRPG』というらしい。ところが、ゆ〜なはテレビゲームに触れたことがほとんどなく、美菜のいうゲームも満足にできるかどうか不安だった。ところが勧めてきたゲームは電子機器の類はほぼ使わないタイプのもので、今回は遊べる人数が集まらないため『キャラクターメイキング』だけをするらしい。準備はすべて美菜がするというので、ゆ〜なは神聖都学園の女子寮にある自室で彼女の到着を待った。

 しばらくすると美菜がやってきた。いつもの調子で明るく話すふたり。しばし雑談に興じた後、美菜がいよいよゲームの準備をし始めた。いったい何が出てくるのか……ゆ〜なは興味津々のまなざしで見守る。ところが珍しいと思えるものといえばサイコロくらいで、他は市販の文庫本に筆記用具、あとはかわいい柄のマイバッグからお菓子とジュースが出てきただけ。さすがのゆ〜なもこれには戸惑った。

 「あ、あの、美菜さん? ゲームって、これだけ?」
 「あっ、そうそう。これにキャラクターシートがいるんだった。うん、これで準備完了!」

 美菜は出し忘れていたものを慌てて出すが、それもせいぜい5枚程度のコピー用紙……たったこれだけでゲームができるという。早々とゆ〜なは感心しきりだった。美菜は向かい側に座っているゆ〜なの前にレポート用紙とキャラクターシート、そしてサイコロひとつに筆記用具を置く。気取らない性格の美菜だから、ゆ〜なも気楽に接することができるが、どうやらゲームの方もそういう雰囲気のものらしい。彼女はあまり構えずに、美菜の説明をよく聞いて楽しむことにした。

 「えーっと、このゲームは私の時代に流行ってる『エレメンタルゲート』っていうんだよ! プレイヤーはファンタジー世界で有名な精霊さんになって、いろんな物語を楽しむのね。未来だとアニメとかもやってて、すごい人気なんだ〜。」
 「精霊さんっていうと……羽を持った妖精さんのこと?」
 「近い! 火の精霊サラマンダーとか、風の精霊シルフとか、そういうのが出てくるんだよ。ほら、この本にかわいい挿絵つきで載ってるから読んでみて!」

 文庫本はルールブックだったらしく、そこにはさまざまな精霊の紹介が記されていた。設定を読んでみると、精霊のサイズは人間の約半分。選んだ種族によっては空を飛ぶこともできる。つまりゆ〜なが想像したものに近いキャラクターも作れるようだ。つまり『精霊の司る元素によって使える力が変わること』がわかればいいと、美菜は説明した。
 まずは個性的な精霊のひとつを選ぶことから、キャラクターメイキングは始まる。選べる精霊は8つほどあったが、ゆ〜なは水の精霊ウンディーネを、美菜は風の精霊シルフに決めた。これらの種族には能力的な差があり、ウンディーネは力が弱いが知力や器用さに優れ、シルフはとにかく敏捷に長けているという特徴がある。これらを表すのが『能力値』と呼ばれる数値であり、それを決めたりするのに使用するのがサイコロなのだ。

 大まかな仕組みを知ったゆ〜なは、さっそくサイコロを振って能力値を決める。修正値が加算されるところで大きな出目を出す一方、減少するところで出目が小さくなるという、なんとも特徴的なキャラクターができあがった。続けて美菜もやってみるが、全体的に上下の幅がなく落ちついた感じになった。平凡と言えばそれまでだが、オールラウンドなキャラクターとも言える。ゆ〜なと美菜はお互いのキャラクターを見て、どんな性格でどんな風貌なのかを想像しながら、しばし談笑した。

 「TRPGって、ずーっと話しながら進んでいくんだよ。だから、みんなで物語の舞台とか風景を想像すると面白いよ!」
 「え……じゃあ、みんなでお話するためにキャラクターを作ったの?」
 「あ、忘れてた。TRPGをする時は『ゲームマスター』っていう役がいて、その人がシナリオの進行役をするんだよ。私たちは作ったキャラクターになって、その世界を冒険するんだ〜。」

 美菜に言わせれば、ゲームの仕組みはこれでほとんど説明済みらしい。あとは本に書かれた世界観を少し頭に入れるだけで、十二分に楽しめるという。ゆ〜なは美菜から『エレメンタルゲート』を手渡され、また今度遊ぶ時までにさらっと読んでおいてほしいと言われた。それと自分の分身となるキャラクターの名前を決めてほしいと。
 いきなり名前と言われてもパッと思いつかないゆ〜なは、次までに考えることを約束した。自分の性格にないキャラクターを演じることもできるというTRPGだが、ゆ〜なはあえて初めて作ったキャラクターは自分のままでやろうと決めていた。彼女は決定した数値を見ていると、不思議なことにだんだん自分に似てる気がして仕方なかった。あえて違うところを挙げるとするなら、水の精霊という設定という部分だ。この変化を演じるだけでも楽しいとゆ〜なは思っていた。

 その後は美菜が持ってきた『エレメンタルゲート』のマンガを読んだりして、楽しい時間を過ごした。ゆ〜なのウンディーネと美菜のシルフが活躍する日は、そう遠くない。
PCシチュエーションノベル(シングル) -
市川智彦 クリエイターズルームへ
東京怪談
2009年02月06日

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