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『 とっておきの悪戯 - PC SIDE - 』
白樺・雪穂7192

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 トリック・オア・トリート!
 可愛らしい仮装に身を包んだ子供達。
 思わず微笑んでしまう、その姿。
 屈託のない無邪気な笑顔と元気な声。
 それを目にする度、耳にする度。
 沸々と込み上げてきた、悪戯心。
 今夜くらいは、良いじゃない?
 とっておきの悪戯を仕掛けても。

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「るんるんる〜♪ らんらんる〜♪」
 ご機嫌絶好調、スキップで歩く雪穂。
 これまた珍妙な姿である。
 猫の耳と尻尾がついている……。
 二階テラスからセントラルホールを見下ろし、
 ご機嫌な雪穂の姿を確認した梨乃と千華は顔を見合わせて笑う。
 また何か、コスプレでもしているのかと思った。
 もしくは、またおかしな発明品の仕業かと思った。
 けれど、そうじゃない。なるほど、そうだ。
 今日はハロウィン。
 あの姿は、仮装の一種なのだろう。
 まぁ、普通はね、モンスターに扮装するんだけども。
 まぁ、特に決まりがあるわけじゃないし、本人が楽しければ良いもんで。
 クスクス笑う梨乃と千華を見つけ、ニコリと微笑んで駆け寄る雪穂。
 彼女が持つ可愛らしいカゴの中には、美味しそうなお菓子がたくさん。
「あらぁ。随分たくさんゲットしたのね」
「雪穂ちゃんに悪戯するぞ! って言われたら、みんなビクッとしちゃうもんね」
 笑いながら、功績を称える梨乃と千華。
 確かに、雪穂が言ったなら。
 お菓子をくれなきゃ、悪戯しちゃうぞ! と言ったなら。
 みんな、冗談だと捉えることが出来ずに苦笑いを浮かべてお菓子を差し出すことだろう。
 けれど、雪穂が持つカゴの中にあるお菓子の大半は、貰ったものではない。
 珍しく、彼女がお菓子作りに挑戦したようで。
 どれも見事な出来栄えになったが故に、あちこちで配り歩いているのだそうだ。
「はい、どうぞ〜。召し上がれ!」
 ニッコリと微笑んで、梨乃と千華に手作りお菓子を差し出した雪穂。
 差し出したのは、コロンと丸く可愛らしいパウンドケーキ。
 ふんわりと香る、この香りは……紅茶の香りかな?
「へぇ〜。いい香りね。それに、とっても綺麗だわ。上手に出来たわねぇ」
「うん。とっても美味しそう。食べても、いいかな?」
 梨乃の問いかけに、雪穂はコクリと頷いて言った。
「大丈夫〜。大成功だよ。味見してもらったからね〜」
 食べても、いいかな? そう尋ねたのに。
 大成功だよ! という返しは……妙ではなかろうか。
 そうは思ったが、梨乃も千華も、既にケーキを口にしていた。
 そうか、あぁ、そうか。なるほど、そうだ。
 今日はハロウィン。
 で、雪穂は悪戯が大好き。
 ハロウィンのモンスターも、全員が全員、お菓子で大人しくなるわけじゃない。
 中には、お菓子を貰っても悪戯を続けるモンスターもいるわけで……。
 そう把握すれども、時、既に遅し。
「うきゃ〜〜!! きゃわいい〜〜!!」
 ピョンピョンと飛び跳ねて大喜びしている雪穂。
 彼女を御満悦にした光景。それは……。
「これは……」
「うわ……す、すごいかも……」
 アニマルスタイルというか、アニマルコスプレというか。
 梨乃には、兎の耳と尻尾がポコンと生えて。
 千華には、狐の耳と尻尾がポコンと生えた。
 触れてみれば、これまた見事な出来栄えだ。
 この触り心地は、本物のそれと何ら変わらないであろう。
 雪穂の悪戯、トリックケーキに弄ばれた梨乃と千華。
 とてもささやかで、微笑ましい悪戯に二人は笑う。
 可愛いものが大好きな雪穂は、ハイテンション。
 先ほどから、動物と化した梨乃と千華を、パシャパシャとカメラに収めている。
 楽しそうな雪穂を見やりつつ、千華は笑う。
「何ていうか……無邪気よねぇ」
「そうですねぇ」
「それにしても、これ凄い出来栄えよね……ふわふわしてるし」
「魔法の一種なんですかね。これも」
「私、前から思ってたんだけど。ゆっきーちゃんって……凄いコなんじゃないかしら」
「今更ですよ、千華さん……」
 一見すれば、ただの悪戯。
 けれど、よく考えてみれば、大したものである。
 要するに、ケーキに悪戯魔法を仕込んだということ。
 誰にでも出来ることじゃない。
 常日頃から、魔法と道具を絡ませる作業をしている者でないと、出来ないことだ。
 梨乃や千華が真似て作ったとしても、同じようなものは出来ない。
 それこそ、一発で見破られてしまうことだろう。
 それだけ、物質に魔法を溶け込ませるということは、難しい技なのだ。


 キャッキャと楽しそうな笑い声に惹かれるようにして、ホールへと集う仲間達。
 ゾロゾロと集まってくる仲間達の姿を見て、梨乃と千華は思わず吹き出す。
 全員が動物と化しているではないか。
 みんな、雪穂の悪戯の餌食となったのだろう。
 仲間を一ヶ所に集め、動かないでと指示する雪穂。
 可愛い仲間達と一緒に、集合写真。
 言われるがままに並び、あるいはポーズをキメる仲間達。
 シャッターが下りると同時に、雪穂は満面の笑みを浮かべた。
「はふ〜! 最高だね〜! 最高の夜だよ〜!」
「雪穂ちゃん……あのね、これ、いつになったら戻るの?」
「ん? わかんないんだ〜僕にも」
「えぇっ!?」
「大丈夫だよ。多分、明日の朝には戻るから」
「そ、そっか……」
「ほらほら、せっかく可愛い格好なんだからさ、このままパーティしちゃおうよ〜!」
「パーティ? でも、準備なんて何も……」
 首を傾げた梨乃。そんな梨乃の背中を叩く千華。
 ん? と振り返れば、千華はピッと中庭を見渡せる窓を指し示した。
 確認できる、テーブルの上に並ぶ御馳走の数々。
 既に準備は整っているということのようだ。
 何ていうか……ちゃっかりしてるのよね、雪穂ちゃんって。
 無邪気で可愛いんだけど、先々の計算も済ませてたりして。
 ある意味、曲者なんじゃないかしら。
「ほらほら、早く〜! 料理が冷めちゃうよ〜」
 ブンブンと手を振って急かす雪穂について行きつつ、梨乃と千華は笑う。
 彼女は、将来、どんな女性になるのだろう。
 そんな、姉のような、母のようなことを思いながら。

 集えアニマル、中庭へ。
 ハロウィンナイトは、笑顔に満ちて更けていく。
 笑い声が飛び交う中庭で、雪穂はキョロキョロと辺りを見回した。
 あれれ? 来てないみたいだなぁ、あの二人だけ。
 どこ行ったのかな? お出かけでもしたかな?
 早く来ないと、料理冷めちゃうよ〜?

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 7192 / 白樺・雪穂 (しらかば・ゆきほ) / ♀ / 12歳 / 学生・専門魔術師
 NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / ラビッツギルド・メンバー
 NPC / 青沢・千華 (あおさわ・ちか) / ♀ / 29歳 / ラビッツギルド・メンバー

 ハロウィンイベント参加ありがとうございます。
 とても可愛らしい悪戯に、心がほっこりしました(ほっこり?)
 ラストで雪穂さんが口にしている『あの二人』は、例の二人です。
 仰せのままに、繋がっている感じで。
 このまま、もう一方のハロウィンイベントへ続きます^^
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 2008.09.30 / 櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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ハロウィンカーニバル・PCゲームノベル -
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東京怪談
2008年09月30日

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