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『『試練』 』
リルド・ラーケン3544)&(登場しない)

 荒野が続いている。
 荒れた土地と、岩。
 そして、岩の間に深い穴。
 穴の向こうに蠢く存在を感じる。
 馬車も通らず、冒険者も立ち寄ることはない。
 殺伐たる光景。
 エルザードを離れて数日、ようやくリルド・ラーケンは求めていた場所に辿りついた。
 リルドは竜と同化した人間だ。
 竜の属性が水である為、水場の近くでは調子が上がり、戦闘能力も増す。
 今回は、敢えて水場から離れた場所を選んだ。
 荷物を岩陰に置き、上着を脱いだ。
 風が、砂を巻き上げる。
 眼を閉じると、瞼の裏に浮かび上がる光景がある。
 燃える山。
 黒い、聖殿。
 小さな村。
 そして――人物。
 男の姿。豪華な鎧を纏っている。自分を見下した態度。
 若作りをした貴族風の女。
 目の前で姿を消した痩せた男。世話になっていた人物だ。自分を友と言ってくれる少女の大切な人でもある。
 巻き込むべきではなかった相手。
 その後の調査により、判明はしていた。
 巻き込んだのではなく、元々彼は関係者であったことが。
 ただ、あの時あの場所で、連れて行かれなければならない理由はなかったはずだ。
 リルドは自責の念に駆られていた。
 多分放っておいても、アセシナートは彼の存在に辿りついただろう。
 だけれど自分の提案は、隠さねばならないものを、引き渡してしまったも同然だと。
 そんな思いが渦巻いていた。

 大きく息をついた。
「一度目は見逃されて、二度目は良くて相打ちってとこか……」
 消えない男の影がある。
 勝ちたいだけだったあの時とは違う。
 奪われた人がいる。
 共に立ち向かう仲間がいる。
 今の自分の実力では、守りたい者を守ることなどできやしない。
 この数ヶ月間で、痛いほど思い知った。
 相打ち?
 いや、相手が万全の状態であれば、十中八九負けていた。
 少なくとも、竜化した状態で倒されている相手だ。
 自身の能力を上げた上で、竜の力も自分のものとせねば、本当の意味での相打ちには持ち込めない。
 そして、更に力を。
 相手も無駄に日々を送ってはいないはずだ。
 死線を潜り抜けている相手に、負けない強さを。
 打ち勝つ力を。

 リルドは竜化を制御する薬を取り出した。
 一気に飲み干して、瓶を捨てると、一部分――腕だけの竜化を試みる。
 なかなか、思うようにはいかない。
 体全体の骨と筋肉が軋み、変化が起こりそうになる。
 更に鋭く、強く、意識を集中する。
 指に、鋭い爪が生える。
 体が鱗に覆われていく。ただし、完全に竜と化したのは、両の腕だけだ。
 竜の気配を察知したのか、暗く深い穴から、魔物が飛び出してくる。
 赤い熊のような獣が、リルドに飛びかかり、腕を振り下ろす。
 リルドの黄金色に変わった瞳が、魔物を睨みつける。
 重い攻撃を、竜化した腕で受ける。
 体に強い衝撃を受けた。剣では受けきれない重さだ。
 しかし、竜化した腕には傷1つない。
 リルドは魔物の攻撃を振り払い、反対の腕で、その腹から胸を裂いた。吹き出る血がリルドに降りかかる。
 魔物の数が増えていく。
 背に集中し、翼を生やす。空中に飛び、魔物の後方へと着地を果たすと、振り向きざまを切裂いていく。
「っ……こんなもんじゃねぇ!!」
 リルドは突如叫んだ。
 倒さねばならぬ相手をイメージしている。
 しかし、全く違う。違うのだ。
 確かに、魔物の攻撃力は強い。
 だが、知能がない。本能だけの存在と、臨機応変に動く、経験豊富な人間では全く違うのだ。
 リルドは飛び上がると、呪文を唱え、雷を打ち下ろす。
 避ける術のない魔物達は、直撃を受け、動かなくなる。
 焦げた大地に着地すると同時に、リルドは魔力を抑える薬を飲んで、瓶を投げ捨てた。
 感情の昂りと共に、自我を失いそうになっていた。
 地に両膝、両腕をつき、荒い呼吸を繰り返す。
 汗が、大地に吸収されていく。
 拳を、大地に叩き付ける。
「こんなモンじゃねぇんだよ……ッ」

 活路が見出せない。
 だが、得られたことも大きい。
 部分竜化は、今後も修行を積み重ねていけば、可能だろう。
 しかし、腕だけ竜化した状態で攻撃を受けた場合、人間の下半身が衝撃に耐えられず、ダメージを受ける可能性がある。
 また、攻撃を行なう際も、踏ん張りがきかない。つまり、本来の力を出し切ることができない。
 ただ、それは魔法で補うことも可能だろう。
 相手は、武術と魔法両方を織り交ぜた攻撃をしてくるはずだ。2度目の戦闘のラストがそうであったように。
 人為的にどれだけの肉体強化を受けているかは不明だが、通常、人が魔術を使う際は、精神集中や、呪文を唱える必要がある。
 そのため、相手は2度目の戦闘時、当初術を使った攻撃が出来ずにいた。
 武術で戦闘をしながらも、精神は別の分野に傾けていたという事実から、相当の精神力、魔術コントロール能力を秘めていると思われる。
 自分は、武術と魔法、そして竜の力を織り交ぜて戦う。
 人間よりも、術の発動は早い。
 そして、竜の力をもっと自然に自分のものと……いや、自分自身と認めれば。
 勝機はある。
 そう、信じたい。
「ケッ、今は見出せずとも、必ずブッ潰す」
 拳を固めて、瞼の裏の男に宣戦布告をする。
 全てを自分の物とし、全ての力を最大限に行かせる方法を――再び相見えるその日までに、会得せねばならない。


●ライターより
ライターの川岸です。
修行シーンを描かせていただけて、光栄に思っております。
リルドさんの葛藤、成長を今後も見守らせていただきます。
発注ありがとうございました。
PCシチュエーションノベル(シングル) -
川岸満里亜 クリエイターズルームへ
聖獣界ソーン
2008年07月08日

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