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『『満月の花嫁(後編)―魔女の礼―』 』
レナ・スウォンプ3428

 眠れない夜を過ごしていた。
 食事も殆ど喉を通らない。
 幸い、あの男は姿を現さなかった。
 時折現れるメイドが、自分の世話をしていく。
 こんな時でも。いや、こんな時だからこそ、レナ・スウォンプは何かを喋らずにいられなかった。
「あなたは人間よね? どうしてこんなところで働いてるの? あの男はいつもこの屋敷にいるの? こういうことは頻繁にあるの? ねえ、ここから出る方法ないかな?」
 浴びせられた数々の質問に、メイドは無愛想ながらも返答をした。
「私は人間です。雇われているから働いているだけです。連れてこられたのは貴女が始めてです。出る方法……私を殴り倒してドアから出てみますか?」
 メイドの言葉に、レナは小さく吐息をついた。
「……それが、可能なら」
「ドアの外には出れるでしょうけれど、ご主人様が外出されている時には、屋敷内には結界が張られていてます。ですから、今は私もあなたも外に出られません」
 淡々とそう言い、メイドはレナのサイズを測り、紙に記入をすると、部屋から出ていった。
 レナはソファーに腰掛けて、両手で顔を覆った。
 目を閉じても、開いていても、浮かんでくるのは、赤い色。
 一人でいることが、怖かった。
 返答がなくてもいい。表情一つ変えなくてもいいから――無傷の彼の、傍にいたかった。
 また、夜がやってくる。
 殆ど欠けていない月が浮かび上がる。
 明日は、満月だ。

     *     *     *     *

 満月の夜。
 自分は自分の意思で動けなくなる。
 違う。
 それも、自分の意思ではある。
 自分の一部である魔の力。
 満月の光が、自分の中の魔を呼び起こす。

 レナは、黒いドレスを着せられていた。
 手に持たされたのは、やはり黒い花。魔界の花だという。
 カーテンを閉めていた彼女の元に、あの男が姿を現す。
 黒く長い髪。目は緋色。
 肌の色は白い。
 そして、手袋の色も白だ。
 黒いタキシードが良く似合っている。
 長身で整った顔立ち。一見良い男だ。
 だけれど、異性としての魅力は感じられない。
 男がレナに手を伸ばしてきた。
 レナは手を握り締めながら、顔を背ける。
 男の手が、レナ頭に触れ、強く仰向かせた。
「貴様等は、満月の光を浴びれば魔性が露になるそうだな」
 笑いながら、男はカーテンを開けて、窓を開け放つ。
 レナをバルコニーに押し出し、自らもその後に続いた。
 月が、見ていた。
 魔族と魔女が手を伸ばす様を。
 求め合うように、近付く様を――。
 何も、妨げる物はない。
 月の光は、2人だけに降り注いでいた。
 体内から力が湧いてくる。
 男は緋色の瞳で黒き魔女を眺めた。
 美しい女だった。
 緑の髪は、淡い風の中、ふわりと揺れていた。
 銀色の眼は、真直ぐ自分の眼を見ている。
「まさかお前のような美しい女が手に入るとは思わなかった。この世界に下りてきて、正解だった」
 今宵、契りを交せば、この女は自分の物となる。
 男の手が、レナの頬に触れた。
 レナの手も、男の頬に触れて、指を男の髪に絡ませた。
 2人、そうして長い間、見詰め合っていた。

 ぐいっ。
 突如、男の髪が引っ張られる。強い力で。
 途端、すぽっと音を響かせて、男の頭から何かが落ちた。
「あははは、やっぱりカツラだった」
 笑っているのは……レナだ。
 目を細めて、艶やかに。
「貴様っ」
 振り上げた男の手を、レナは難なく掴み上げる。
「あなたね、何か勘違いしてない? 魔族ぅ? ふふん、上位だかなんだか知らないけど、魔女と一緒にしてもらわないで欲しいわね。あたしは魔女よ、魔族でも人間でもないの」
 言いながら、レナはもう一方の手で、男の鼻をぎゅうっとつまんだ。
「同じなのは、魔力が高いってことだけね。ああ、違うわねぇ。あんたの魔力、大したことないものね」
 レナの中に、力が湧いてくる。
 込み上げる力は、既に男の魔力を上回っていた。
「だ、い、た、い、ね〜」
 男の鼻をぐいぐい引っ張りながら、レナは言葉を続ける。
「魔族ってもんは、人間にやられるものと相場が決まっているのよ! 人間! つまりアンタはケヴィンの引き立て役として存在してんだわ!! ケヴィンは絶対にやってくるわよ、アンタを倒しに」
 男の鼻をつねりながら、思い切り手を離す。
 男は鼻を手で覆いながら、涙目でレナを見ていた。
「そうよ、ケヴィンはやってくるわよ!」
 レナは月明かりの中、くるりと回った。
「……だって、来なかったら、あたしがケヴィンを呪ってやるものっ!」
「…………」
 男は、未知の生物でも見るかのような目で、レナを見ていた。
「そういえば、あたしの戦利品はちゃんと保管してるのかしら?」
 ケヴィンに持たせていた洋服やアクセサリーを思い出す。
「はっ! まさかあの丘に置いてあるまま! いやー! 許せない!!」

 どっかぁーーーーん!!

 レナの言葉が終わると同時に、バルコニーが爆発した。
「あれ? あの男は……どこに行ったの!?」
 レナは消えた男の姿を探す。
 部屋の中にはいない。
 しばらくして、崖下で蹲っている男を見つける。
「逃げる気ーッ!?」
 レナが無意識に起こした爆発で吹っ飛んだのだが、レナはそんなことには気づきもしない。
 飛び下りて、男の元に下り立ったレナは驚愕した。
「あああああ、あんた、髪だけじゃなくて、足も誤魔化してたのね。何よその脱げてる厚底サンダル! ダサイじゃない、ダサイわ! そんな姿であたしに迫ろうとしていたなんて、許せない、断固許せないわーっ!!」
「ちょ、ちょっと待てっ」
「待つかッ!」
 慌てふためいている魔族の男に、レナは散々魔法を打ち込んだ後、髪飾りを抜き取り、魔法でバリカンに変えた。
「でも、この服だけはなかなか気に入ってるの〜。聖都じゃ手に入らないデザインよね。お礼に、カツラを被りやすい髪型にしてあ・げ・る♪」
 ……そうして、哀れな男の(髪の)一生が終わった。

     *     *     *     *

 その時のことは、良く覚えていない。
 なんだか断片的な記憶では……最後に「疲れて眠いから、部屋で寝る!」とか言った気がする。
 気がするだけで、夢だと思いたい。
 全て夢だったと思いたい!
 だけど……自分の元を訪ねてきたケヴィンの痛々しい姿に、目を覆う。
 あの日、購入したレナの戦利品は全部無事だったようで、ケヴィンが腕に抱えていた。
 ああ、やっぱり本当だったんだ。
 あれは、本当にあった出来事だったんだ。
 レナは恐怖に震えた。
 もう少しで……。
 もう少しで自分は……。

 ケヴィンまでスキンヘッドにしてしまっていたかもしれない!!

 ああ、それは な ん と 恐 ろ し い!
 魔力の籠められたあのバリカン。あれは絶対永久脱毛器具だ!
 ケヴィンは包帯を巻いてはいるが、髪は無事であった。いつもどおりであった!
「まさか、カツラなんてことは……い、いやーっ」
 レナは想像してガクリと膝をついた。
 ――しばらく合わせる顔がない。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【3428 / レナ・スウォンプ / 女性 / 20歳 / 異界職】
【3425 / ケヴィン・フォレスト / 男性 / 23歳 / 賞金稼ぎ】
※年齢は外見年齢です。

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ライターの川岸満里亜です。
Bitter or Sweet?・PCゲームノベルにご参加いただきありがとうございました。
意識があったら、「遅い!」と、魔レナさんはやってしまっていた気がします。
って、……な、ななななんか、展開が激しく変わりましたが、これでよかったでしょうか。問題がありましたら、リテイク申請お願いいたします。
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川岸満里亜 クリエイターズルームへ
聖獣界ソーン
2008年03月13日

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