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『苦しみの道を行く貴方のために 』
鬼山・真吾7343)&ソフィー・ブルック(7344)&(登場しない)

 ソフィー・ブルックは今日も楽しげに、鬼山家で夕食の準備をしていた。
「ああソフィーちゃん、その味付けはそうじゃないのよ、こっち」
 と将来の義母が丁寧に教えてくれる。
 そう、将来の義母。
 そうなのだ。
 ソフィーは将来、この鬼山家の一人息子である鬼山真吾と、結婚する予定なのである。
 本人たちの意思ではなく許婚だ。許婚だが――出会った時、すれ違いかけたソフィーと真吾の心は、運命的に通った。
 ソフィーはそれが、たまらなく嬉しかった。最初は許婚だなんて突拍子のない話だと思ってもいたが、真吾を知って彼に惹かれ、日本に慣れようと一生懸命努力した。
 彼女は人間ではない。
 「魔物の母」として有名なエキドナの末裔だ。
 けれど、長く人間との交わりを繰り返してきた末に出来た子である彼女に、すでに邪悪な心はない。
 実際の体は半人半蛇という、エキドナ特有の体のため、一応完全に人間に化ける必要はある。高い魔力も残っている。けれど。
 人間である真吾を伴侶とすることに、彼女は何のためらいも感じていなかった。
 ――たとえ彼には、退邪士の能力があるとしても。
 彼に一目惚れしてしまった彼女は、鬼山家でホームステイという名の押しかけ女房をしながら、日々優しい真吾の両親に日本の生活を教えられ過ごしている。
 ソフィーは煮物を煮込む時間を計るふりをして、時計を見た。――もうすぐ9時。
 真吾が、通っているボクシングジムから帰ってくる時間だ。
 今日は平日だから9時だが、次の日が休日だったりすると10時までにも至ることがある。
 ボクシング。
 真吾が婚約者でなければきっと縁がなかった、とソフィーは思う。あんな、殴り合いの、時に血みどろの格闘。
 テレビでボクシングの試合を見て、彼もこんな世界にいるのだと思うと最初は怖気がたった。
 やめてほしい――と思った。
 けれど、彼のプロボクサーへの思いは本物で。
 あまり口数の多くない彼が、たまにぽつりと話すプロへの決心を聞くたびに、ますます真吾に心惹かれて。
 だからソフィーは決めていた。彼の夢のために、自分は役立てる存在になる……と。

 けれど、それはまだまだ生半可な決心だったのかもしれない。

 9時を回り、真吾が帰ってきた。この家では両親も真吾に合わせて、こんな遅くに夕食を取る。家族の輪を大切にするからだ。
 最もソフィーは世間一般の常識を知らないので、夕食とはこういう時間に取るものだと信じていたのだが――それはともかく。
 帰ってきた真吾は、いつものように仏頂面で「ただいま」と言いながら居間を通り過ぎようとする。
 ソフィーは彼の動きに合わせて動きながら、彼のコートを取って、
「もうちょっとしたら夕食にしようね」
 と華やかな笑顔で言った。
 夕食の時間。暖かい時間。
 学校も同じクラスだが、家で一緒に過ごす方がなんとなく好きだ。
 真吾は立ち止まってソフィーを見つめた。
 ソフィーはどきっとする。こんな急に見つめないで、恥ずかしい、髪型崩れてない? 服は乱れていない?
 そんなことを考えているソフィーを見つめる真吾の黒い瞳は、仏頂面の中にどこか申し訳なさそうな気配があった。
「ごめん」
「え?」
「今日からしばらく夕食はいらない」
 ソフィーは唖然とした。「あら」と背後から真吾の母の声がした。
「また試合なの?」
「ああ」
「残念だなあ、ソフィーちゃんの力作だぞ」
 からかうように居間のソファから言ったのは真吾の父だったが、
「まあ、今回も頑張れ」
 と言うだけで、無理やり夕食の輪に入れようとしない。
 真吾は台所を一瞥して林檎を見つけると、それを一個わしづかんでそのまま2階の自分の部屋へと行ってしまった。
「しょうがない。ソフィーちゃん、夕食にしよう」
「ま……待ってください、お義父さん、お義母さん!」
 ソフィーは両拳を胸に当てて、嘆きに似た声を出した。
「なぜですか!? なぜ真吾は夕食を食べてくれないのですか!?」
「試合が近いんだろう」
 と義父が言った。
「試合……?」
「ボクシングのだよ、ソフィーちゃん」
「し、試合に何の関係が……」
 あの、殴り合いの戦い。あんな試合があるのなら、むしろご飯をたっぷり食べて栄養補給をしてしかるべきじゃないのか。
 しかし義母が苦笑して首を横に振り、
「ボクシングにはねえ……減量が必要なのよ」
「げ……ん、りょう……?」
「そう。ボクシングは体重で階級別に分かれる。あの子は身長が高いくせにそれに見合った階級を選ばずに、あえて中軽量級を選んでいるから」
「………?」
 聞き慣れない言葉だらけだった。そう言えばテレビで観た時には、ヘビー級とかライト級とか、聞いたような気もする。
 中軽量級? なんだろうそれは。

 真吾に聞きに行けばいい――
 いや、それ以前に目の前にいる義父母に聞けばいいではないか――
 しかしソフィーはそのどちらもせず、ただうつむいて夕食の用意を続けた。
「ソフィーちゃん」
 と義母の声がした。
「あの子と付き合っていくならね、これから先こんなことがいっぱいあるからね」
「………」
 ソフィーはゆっくりと、丹精こめて作った夕食を居間のテーブルに置き、
「いっぱい……食べてください。お義父さん、お義母さん」
 一番大切な人の名前だけを呼べないまま、そっと、そう言った。

 ■■■

 ボクシングの勉強をしなきゃ。
 ソフィーは強くそう思った。次の日の放課後、すぐに本屋に走った。専門的な本であるだけに、小さい本屋ではなかなか見つからない。
 色んな本屋をめぐり、やがて小さいけれど専門書が多い本屋を見つけると、たくさんの本の中からようやく目的の本を探し当てた。
 ボクシング。
 しかし最初に手に取った本は、ぱらぱらめくってみても何が何やら分からなかった。
 焦って本棚をもう一度見る。ボクシング、他にボクシングの本は――
 すっと、傍らに誰かが立った。
 びくっと横を向くと、そこには人の好さそうな老人がいた。
「何をお探しかねお嬢ちゃん」
 私はこの店の店主だよ――と老人は言う。
「あ、あの、ボクシングを知るための本を」
 人見知りをしている場合ではなかった。ソフィーにとって一番大切なのは真吾なのだ。
 真吾のために。真吾のために。真吾のために。
 早く、知らなくてはならないことがある。
「ボクシングかい。ふむ……プロに関することかね?」
「え?」
 思ってもいないことを尋ねられ、ソフィーは詰まった。
 そう言えば一体何から調べればいいのだろう?
 沈黙してしまったソフィーを眺めていた店主は、やがて、
「それならこれがいいじゃろう」
 と本棚から一冊の本を取り出した。
 ほどほどにぶ厚い本。老人は中をぺらぺらとめくってくれた。見やすい字の本だ。
 タイトルを見ると、「ボクシング 初心者編」。
「あ、の。これに、減量、とか、中軽量級、とか。載っていますか」
「分かると思うよ」
 ソフィーはぱっと顔を明るくした。
「ありがとうございます!」
 そのままレジに行き、お金を払って、その本をしっかり胸に抱きソフィーは鬼山家へと飛ぶように走って帰った。


 宿題なんかどうでもいい。
 自分にあてがわれている部屋に飛び込むと、学校のかばんを放り出し、制服のままソフィーは本を猛然とめくりだす。
 ボクシング初心者……初心者用……
 未知の世界が飛び込んできた。
 テレビで観ただけではとうてい分からなかったことばかり、たくさんの知識が頭にまるでぶつかるかのように痛みを持って入り込んでくる。
 減量のことはすぐに分かった。ボクシング界では当たり前のことなのだ。体重によって決まる階級、それは強さを平等にするために重要な規定。
 階級が違ってくるとどんなに大変かも分かった。
 テレビで、他の闘技も観たことがある。
 スモウ。あれは、体重に関係ないようだ。けれど体重が重いほど有利というわけでもないらしいという印象を受けていた。
 ジュウドウ。あれは、確か「階級」があったように思う。
 実際ジュウドウで戦っている人々を見て、「あの小さいところで優勝した人でも、あの大きい人が集まっているところではとても勝てないだろうな」とおぼろげに思った記憶がある。
 ボクシングも、そうなのだ。
 体格の小さい人は、とてもじゃないが大きい人に勝てない。
 勝てない……と、思う。
 実際のところ、ソフィーにはよく分からない。けれど。

 中軽量級……

 その文字の後に続く文字列を読んでいったソフィーは、やがてバタンと本を閉じて部屋を飛び出した。


 その日はソフィーも本屋を走り回っていたため帰りが遅く、夕食の用意の手伝いが出来なかった。
 真吾が帰ってくるのを待つのに、そう時間はかからなかった。
「真吾!」
 ソフィーは駆け寄った。「お願い、話が、あるの。お部屋、行っても、いい?」
「………? ああ」
 真吾はぶっきらぼうだがソフィーには優しい。ソフィーを連れて、部屋へと上がった。
 かばんとボクサー用具を机に放り出し、コートや制服の上着を脱いでシャツ姿になると、
「で、何だ?」
 とソフィーに椅子をすすめながら尋ねてくる。
 ソフィーは椅子を辞退し、ちょこんと床に正座して、うつむいた。
「その……変だとは思ってたの。学校に持ってくお弁当の量……真吾、他の男子に比べてすごく少ない。夕食も、お義父さんに比べて、食べる量がとっても少ない」
「………。そうだな」
「それって、『減量』のせいなのね?」
 ソフィーは顔を上げた。切ない瞳で。椅子に座った真吾を見上げた。
 それを受けた真吾は面食らったように、
「今頃気づいたのか?」
 と言った。
 ソフィーは胸に痛みを感じた。やっぱり自分は何も分かっていなかった――
「でも、でも……!」
 本で得た知識を思い浮かべ、激しく頭を振った。
「どうして中軽量級なの!? あの体重、真吾の身長じゃ無茶よ! ねえ、無茶な減量で死んじゃうボクサーもいるって知ったわ、真吾、真吾……!」
 お願い無茶はやめて、そう言いたかった。
 しかし、言葉はさらわれた。
「……楽をすると歯止めきかなくなるからな」
 机に頬杖をついて、真吾は嘆息する。
「自分の身長に合わせた減量より、こっちの減量の方がきつい。当たり前だが、その方が精神修行にもなる」
 きつい減量により、よりクレバーに戦える精神を養う。
「………」
「そんな顔すんなよ。俺は今までずっとこれでやってきたし、ジムのおやっさんにもこのスタイルで行っていいと言われている。問題ない」
「で、でも……」
「ソフィー」
 真吾は椅子からおりた。床に正座しているソフィーに視線を合わせるようにしゃがみ、
「……お前、俺の婚約者だろ」
「っ!」
 ソフィーは顔を赤くした。真吾はぽり、と頬を指で引っかいてから、
「……お前にも理解してほしい」
「真吾……」
 ソフィーは金の瞳をうるませて真吾を見る。
「泣くなよ……」
「な、泣かないわ」
 ソフィーは袖口で目元を拭った。うん、とうなずいて、
「うん。はい。私……真吾の支えになれるように頑張ります」
 真吾がわずかに微笑んだ。
 ソフィーは胸に手を置いて、彼のその笑顔を心に刻み込んだ。

 ■■■

 試合が近づくにつれて、減量も激しくなってくる。
 ソフィーは他にもボクシングの本を買って、体験談などを読んだ。それによって支えになる方法を見つけようとしたのだ。
 しかし。
 ただでさえ量が少なかった食事。それがますます減っていき、まず学校のお弁当が消えた。
 次に夕食が消えた。
 そして朝食が消えた。
 ソフィーは信じられない思いで、本の中に書かれていたことが目の前で起こるのを見ていた。
 最初はやはりおろおろするしかなかった。けれど現実はまっすぐソフィーにもぶつかってくる。
 必要なこと。真吾にとって必要なこと。
 それはソフィーにとっても必要なこと。
 やがて……水さえも彼からは奪われていく……
「真……吾……」
 水道の蛇口に手をかけながらも、ひねることができない彼の手を、動かしてあげたいとどれだけ思ったことか。
 時折乾きを訴える彼に美味しいジュースを差し出したいとどれだけ思ったことか。
 けれど、
 “理解する”ということは、そういうことじゃない。
 “支える”ということは、そういうことじゃない。
 そんな彼女に、真吾は言った。
「死にはしないから、試合の日はしっかり応援してくれよ」
 いつものようにぶっきらぼうに、しかし……優しく。
 ソフィーはうなずいた。
 強くうなずいた。

「真吾。体重、順調に減ってるわ」
「真吾。あとちょっとよ」
「真吾、このままいけば無事成功するわ」
 胸の痛みを押し殺して、ただ前向きな言葉だけをかける。
 一日何回も体重計に乗る彼の傍から決して離れず。
 減っていく体重を見て苦しみを覚えながらも、「彼の夢のため」と自分に言い聞かせた。
 プロボクサーになる夢を語る彼が好き。
 支えになれるよう頑張ると伝えた時、微笑んでくれた彼が好き。
 ――頑張っている彼が、大好き。

 だから。

 ソフィーは微笑んで、彼の傍らに在った。
 自分よりずっと苦しんでいる彼の前で、苦しそうな顔は見せまいと、そう決めて。

 ■■■

 真吾が挑む試合はアマチュアの大会だが、プロ入り有望株も多く出場する。
 真吾は当日、がりがりに痩せていた。
 しかしその甲斐あって、体重は無事クリア。中軽量級ボクサーとして試合に出られる。
 ソフィーは試合会場に来ていた。
 胸に手を当て、祈りながら真吾の姿を目で追っていた。

 真吾の試合が始まる。
 相手は、背が高く痩せた真吾とはまったく逆の、中肉中背、がっちりボクサーだった。
 互いに向き合い頭を下げる。
 セコンドはジムの会長。深く話し合い。
 ゴングが鳴った。
「真吾ーーー!」
 ソフィーは声を張り上げた。アマチュアの大会だけに観衆はそれほどいない。周りの人間が驚いてソフィーを見た。
 流れるような金髪に金の瞳。小柄だけれどやたらと妖艶な魅力を持つ少女。目を引いて仕方がない。
 しかしそんな視線を、ソフィーはまったく感じ取らなかった。
 目に入っているのは婚約者だけ。
 相手ボクサーが突撃してくる。真吾の懐に入ろうとする。中軽量級のボクサーはスピードを武器にしている者が多い。このボクサーもなかなかのスピードで、気がつくと真吾は敵のゾーンに入ってストレートを受けそうになっていた。
 しかし真吾の異様に長いリーチがそれを阻む。阻むために腕を使ったその隙に敵はさらにフックを仕掛ける。
 真吾はいったん後退した。フックが空中を打つ。
 敵が舌打ちしたのが分かった。足でリズムを取っているが、こちらへ攻め込みあぐねているのが分かる。
 ――アマチュアボクシング、ジュニアは2分3ラウンド。
 
 真吾は左腕を下ろして軽く揺さぶる。
 ――ボクシングは左が命。左がなければ力は半分――
 敵は踏み込んできた。左のフック、そしてアッパーへとつなぐコンビネーション。真吾のグローブがそれらを跳ね返す。思いの外動きの速いボクサーだ。
 阻むのは楽だが――攻撃の後にほぼ必ず出来る隙を突こうとしても、すぐに逃げている。
 真吾の背が高いため、ストレートは出しにくいようだった。狙ってくるのはアッパーか。やはり隙の出来やすい技だ、しかし敵は逃げ足も速い――
 攻撃が後手に回ってしまった。これはよくない。
 致命的な打撃は受けていないが、早く決め手を出さなくては判定負けしてしまう。
 苦戦。
 ――婚約者の、必死の声援が聞こえる。
 真吾はうっすらと笑みを浮かべた。試合中は声援など聞こえないものだと思っていたが違った。
 ましてや婚約者の声援なんて初めてだ。
 ひょっとしたらソフィーは、無意識にその声に魔力を乗せて真吾の心に訴えかけているのかもしれない。
(ソフィーの魔力で力が増加、なんてことになったら卑怯この上ないがな)
 そんなことはきっと起こらないだろう。ソフィーは……理解してくれた。
 減量期間中の彼女を思い出す。初めての、「試合前の減量」を見た彼女の、行動。
 急に力が湧き上がって来た。
 減量に協力してくれたのは両親も同じだ。だがソフィーがそれをしてくれるのはまた……違う。
 自分の力は自分ひとりで得たものではない。
 そう思ったら自分の力が飛躍的にアップしたような気がした。クール、クレバー。精神が落ち着いてくる。
 相手の動きをよく見ろ、見ろ、見ろ、
 隙を見つけろ、相手も決め手を出しかねている、勝負手はアッパー、動くのはおそらく右手、
 ――行ける!
 一気に踏み込んだ。敵を抱きかかえられそうなほどにゾーンに入り、左のフリッガージャブ!
 相手の死角から飛ぶ弧を描くようなパンチ。手首のひねりを加えてそれは、まともに相手のヘッドギア越しに頬に入った。
 相手が顔を揺らす。全身を揺らす。そこにすかさず、真吾の長い右腕が右から回り、ロングフックが決まった。
 ヘッドギア越しとは言え、顔をニ連打、まともに受けてはたまらない。
 相手はリングに倒れた。
 レフェリーのカウントアウト宣言が聞こえる――……


「真吾! 真吾! 真吾!」
 ソフィーは飛び上がらんばかりに喜んだ。
 幸いアマチュアはヘッドギアがあるから、血みどろにもなっていない。ソフィーには嬉しい、初の試合観戦だった。
 おまけに真吾は勝った――
 すぐに真吾に飛びつきに行きたい。更衣室に行きたい。そんな考えも頭をかすめたが、ふるふると頭を横に振った。
 違う、やりたいのはこれじゃない――
 ソフィーはリングに向かって手を振る。気づいた真吾がグローブをはずして手を振り返してくれた。
 ぽっと胸があったかくなった。
「……そう、真吾の胸も、あったかくなるものを……」
 何度も何度も真吾の方を振り返りながら、名残惜しく会場を去る。
 そして――

 ■■■

 真吾が試合から帰って来た時、美しき大輪の花のような笑顔が待っていた。
「お帰りなさい。おめでとう!」
 ソフィーの精一杯の笑顔。
 真吾は思わず見とれてから、
「あ、ああ」
 と照れ隠しにそっぽを向いた。
 気がつくと、ほんのりいい香りがしていた。
「………?」
 真吾はソフィーに促されるままに居間へ向かう。
 そこには、色とりどりのおいしそうな料理が――

 真吾のお腹が、ぐーと鳴った。

「……こんなんじゃボクサーやってけないぜ」
 自分で情けなくつぶやく真吾に寄り添って、ソフィーは微笑んだ。
「だって、育ち盛りの高校生ですもの!」
 さあ、祝おう。
 彼の勝利を祝おう。
 彼の努力の勝利を祝おう。
 苦しみの道を歩む貴方のために。

 精一杯の笑顔と、精一杯の手料理で――


  <了>
PCシチュエーションノベル(ツイン) -
笠城夢斗 クリエイターズルームへ
東京怪談
2008年02月22日

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