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『〜なにか越しの相手〜失恋王旋風 』
風宮・駿2980)&牧・鞘子(2005)&かわうそ?(NPC0132)

 酷暑。
 このうだるような暑さの中、彼はある旋風を独りで巻き起こしている。
 失恋。
 風宮・駿は、そんな人である。女性にあったら一目惚れして、告白してそのまま玉砕。ちまたでは失恋王として名をはせている。単純に一目惚れして、すぐに告白し、玉砕するなよ、と誰もが突っ込むわけで。本人は頭のネジ一本飛んでいることで気がつきもしない。切り替えが早いというのか、何というか。まともな人生送れない。記憶喪失で、明るく振る舞っても影のある人間設定とかあるあけないが、シリアスに全く向かない人になっているのは確かだ。

|Д゚) すげーもったいねー

 と、なんか言っている変な物もいるが。風宮くんには聞こえない。

|Д゚) まーなー
|Д゚) つーか
|Д゚) かわうそ? 変な物ちゃう


 とある、ショッピングストリート、原宿やらそのあたりとして、若者の通りで歩く風宮はナンパしては玉砕し、仕方なく帰ろうとしたところである。ポニーテールで、眼鏡、明るい感じの女性が鼻歌交じりで、ショウウィンドウを見て回っていた。
 風宮は知らないが、彼女の名前は牧・鞘子。きれいな肌に健康なスタイル、其れでいて、派手でもない夏服を着ている。日焼け対策はもちろんばっちりしているが、風宮にとっては眩しすぎるほど、彼女が印象に残った。

 胸をハートの鏃がついた矢にクリティカルヒット。
 風宮の悪い癖発動。またも一目惚れである。

 風宮は近寄ろうにも、運悪く、牧の携帯が鳴る。着信音は何処かで話題でもないもの。J−POPでもない。
「鞘子 でろ 鞘子 でろ」
 なんか、調子の抜ける着信音である。
「また、あの子変な着信音に……。はい、もしもし?」
 鞘子は電話に出る。
 風宮は近くの、ガードレールに座って、遠巻きに牧の電話が終わるまで待つことにした。
 牧鞘子の相手は、どうも男らしい。
「ん、……くん。どうしたの?」
「おなか減ったの? 一緒に食べる? 私の手作りを食べたいって? もう、色々作れるのに、何いってんの。」
 と、笑顔で受け答えしているようだ。
「夏だから、やっぱりカレー? 餃子も良いよね? そのあとビール? って、まるで、親父みたいじゃないの?」
 笑顔はとてもすてきだった。
「いまどこ? もう家にいるの? 早いね。」
 彼女の会話はとても明るい。
 しかし、色々風宮にとってダメージの出る言葉が彼女の口から出る。

 ――食事?
 ――手作り?
 ――家で待っている?

「嗚呼、やっぱりあんな素敵な娘には彼氏の1人や2人いて当然だよな。もてそうだもんな。じゃ、俺なんかと違って……」
 その場で滝のように涙を流す、男が一人。
 その名も失恋王・風宮・駿。
 周りは気がつかないが、もう失恋旋風である。こんごは失恋革命でも起こしてくれ(どんな革命だ)。
 失意の打ちに、まだ電話中の牧鞘子に背を向け、泣きながら走り去って行くも、途中に捨ててあったバナナの皮で滑ってしまい、ゴミの山に突っ伏してしまった。
 あまりの不幸さ加減に、ぴくりとも動かない。
 周囲の人々は、彼を白い目で見ていた。



 なにか、後ろの方で、ざわざわするのに気がつく牧。
|Д゚) どったの?
 電話の主が尋ねる。
 かわうそ?であった。
「うーん、なにか誰かが転けたみたい。あ、でも大丈夫そう。」
 そう返す。
|Д゚) ふーん
|Д゚) まあ、まっている。
「好きな物は何?」
|Д゚) マグロはこのごろ高いので
|Д゚) ホタテ!
「なるほど。うんうん。んじゃ、トマトとホタテの貝柱でなにかパスタにしようか?」
|Д゚) パスタうまー
|Д゚) ところで、鞘鞘
「何で鞘鞘なの?」
|Д゚) 何となく呼んでみただけ
|Д゚) ところで、
|Д゚) 彼氏見つかった?
「居ないわよ。運命の出会いなんてまーったくなし。」
 牧はため息をつく。
 ――まあ、この電話がなかったら、ある意味運命の出会いだったろうが。
 このナマモノの所為とは言えない。たまたまかけてきただけなのだから。鞘子自体も風宮のことを気がついてないわけだから、誰の所為でもない。
 ――ぶっちゃけると、一目惚れして勘違いして、ゴミ置き場に突っ込んでしまった失恋王の暴走だけである。
 なので、誰も悪くない。
「じゃあ、買い物すましてくるね。」
|Д゚) あいおー
 と、電話を切り、牧はその通りを後にした。

 牧の家。
 かわうそ?と一緒に食事をする。サラダにホタテの貝柱と野菜、バジルとトマトソースパスタ(うまいのかな?)、ワインが、テーブルに並べられている。
|Д゚) やっぱ、パスタうまー
「ありがと、かわうそ?くん」
|Д゚) でも、彼氏……いや、なんでもないっす。
 笑顔般若の牧。
「ああ、私も彼氏ほしいなぁ。毎年ナマモノに慰められてない?」
|Д゚) あーそだねー
「かわうそ?くんは、もてるから良いね。」
 皮肉を言う。
|Д゚) つか、動物として、萌えられてるだけ、とおもうなりよ?
|Д゚) 恋ということじゃねーとおもう
 ワインを飲んで、妙な格好をつける小麦色。
「あまり絵にならないね。」
|Д゚) ウボアー


 ゴミの山に突っ伏したため異臭がする風宮は、近くの銭湯で匂いを何とか取って帰宅するも、やっぱり、あのポニーテールの女性が気になっていた。しかし、彼氏が居るのだから仕方ない。早く帰って、寝よう。
 夏に出会いがあるとか、そんなことを聞いたことがある。海だろうとどこだろうと。
 それは、幻想だ。まったく、俺は全くそんなことがない。
 居候先に帰っても、子供たちがうるさいために、おちおち寝てられなかった。
 仕方ないので、彼らを構って、今日のことはすっぱり忘れる、と決めた。


 明日には素敵出会いがあるようにと願いながら。

|Д゚) 終わりか?
PCシチュエーションノベル(ツイン) -
滝照直樹 クリエイターズルームへ
東京怪談
2007年08月21日

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