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『偽りの花嫁〜イロモノとあなた〜 』
松本・太一(w3a176)

 うっかりうたた寝でもしていたのか、起きると自分がどこにいるのかわからなかった。
 なんだか甘い香りのする部屋で、窓が開けられ気持ちいい風が白いカーテンを揺らして入ってくる。
 もうひと寝入りでもしようかと目を瞑ったとき、ある異変に気づいた。否、早く気づかねばならなかったのだ。
「失礼します。式の準備はもうすぐ終わりますのでそろそろ、よろしくお願いします」
 いつの間にか清潔そうな正装に着替えていた事もだが、窓から外を見て唖然とした。

 ここは、教会だ。


「それでは、また何かございましたら、お呼びください」
「えっ、あ、あの……ってあれ?!」
 頭にお皿をのせた女性がぺこりとお辞儀し、扉を閉めてしまった。
 あ……お皿が落ちてる。
 伸ばした腕は妙に細く、高く上げにくい。目線を下げる。
 ……着物? しかも、白い。
 ある物が視界に入って、恐る恐る右を向く。
 ――姿見――
「……教会……この純白の着物…これが白無垢ですかね……それで式の準備ときたら……」
 松本・太一は寝ぼける頭を奮い起こして考える。考える、考え――
 今日の晩御飯は手巻き寿司と、結論が出たところで、
「つまりは、これからあたしの結婚式が行なわれるって事? って、一人称まで変わっている!?」
 声が、妙に甲高くなっている。ような……。
 妙な雑念が湧いて出てきて頭を振る。
「目が覚めたら教会にいて、しかも女になっていて……とにかく、勝手に結婚式なんてしたら逢魔になんていったらいいか」
 ようやく正論が出たところで、この部屋には太一以外、誰もいない。隠れることができる場所もないので隠れて此方の様子を見ていることはないだろう。
「相手、相手は誰なんだ。あたしが女ということは、相手は男性……。逃げよう……」
 ゆっくり、扉を開ける。ここは2階だ。窓から逃げ出すことはできない。恐る恐る、顔を出す。幸い、廊下には誰もいなかった。
 白無垢を含む体全てを廊下に出して、扉を閉めた。とりあえず、右に進む。移動中はもちろん、曲がり角に差し掛かると通行人がいないか否かを確認しながら足を進めようとした。慣れぬ着物のせいで思うように足が進まない。高価そう故にあまり汚すのも気が引けた。
 3回目の曲がり角に差し掛かり、通行人の有無を確認する。
 ――よし、誰もいない。


 ガチャッ
「あ」
 身長は太一より低かったが、紋付袴に身を包んだ男が、ちょうど前を通りかかった扉を開けて、白無垢姿の太一と出会った。出会ってしまった。
「キミが……?」
「さ、さようならー!」
「ちょ、ちょっと待って!」
 エッケハルト=ベルリヒルゲン。聖獣界ソーン、エルザード軍と対抗する勢力、アセシナート軍の摂政という地位につく、背の低い男。とってつけたような似合わない袴姿のエッケハルトは太一の腕をとると、ぐっと引き付けた。
「逃げないでよ。せっかくの機会なんだから、ゆっくり楽しもうよ」
「あたしはそんな」
「僕がその気にさせてあげるよ。僕の名前はエッケハルト。キミを求める者さ」
 エッケハルトはおもいっきり背伸びして、できるだけ太一の目線の高さに合わせようとしたが、何十センチという慎重さに足はぷるぷる振るえ、また、通行人A,B,Cからの目線も痛々しく、エッケハルトは顔を真っ赤にさせた。
「キ、キミはなんでそんなに、せ、背が高いんだ」
「そういわれても…」
「と、とにかく! 僕と結婚しよう!」
「それは困ります。あたしははっきりいうと逢魔以外の方と結婚する気はありません」
「物語の進行上しかたがないのだよ」
「……あたしが知ったことではありません」
 エッケハルトは考え込むように腕を組んで、はっと思いついた。そのときの表情は、直感的に嫌な予感がした。
 太一はいつでも逃げられるよう周囲を見渡した。
 2本足のタコに、カッパに、やたらベッタリとしているヒトに……あ、どうやら怪物の類だったようだ。頭が食べられた。それでもベッタリ仲よさそうに隣同士で座っている。あ、生えた。
「……って!! 聞いてますか?」
「あ、あぁ、すいません」
「じゃあ、もう1回言いますね……。いまのままじゃあ、この教会からは抜け出せませんよ。だって考えてみてください。このあたりは時空でも曲がったのではと思うほど現実離れしています。……まるでソーンのように」
 たしかに、頭を食べられて平気な生き物は……。
「ソーンでは考えられるのですか?」
「い、いや…決してそういうわけでは」
「では、どうしたら」
「あー!」
 2人の背後からいきなり大声が響いた。
「もう式がはじまりますよ! 早くこっち、こっちに来てください!」
 はじめ、部屋に来たお皿をのせた女性が腕をひっぱった。
 見た目以上に力強い―――いや、あたしは、あたしは―――
「あたしは、エッケハルトさんと結婚する気はありません。あたしは、あたしは逢魔以外と結婚する気は……って」
「新婦、太一子は新郎エッケハルトと生涯をともに過ごすことを誓いますか」
「……誓いません!」
 ハリセンボンにスケトウダラの親子の間をすり抜け、トーテムポールとハニワを飛び越え、走りぬけ、扉にむかって体当たりした。
 日の光がまぶしく、太一を照らす。

 イロモノ教会、新婚旅行は火星一泊XX日。




━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【w3a176maoh/松本・太一/男性/18歳/直感の白】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 大変遅くなってしまい申し訳御座いませんでした。
 ただいま、納品させていただきました。
 イロモノということで、うきうきしながら書いていたのですが……まだ、なにか物足りないような気がします。あまり度がすぎたものはアレかと思ったのですが、筋肉山盛りワキ絞めあたりもいれたほうがよかったのではないかなあ、など思いながら書かせていただきました。
 エッケハルトさんは、公式NPCでありながら頻度も絵もない方ですが、最近気になるNPCとして登場していただきました。

 それでは、失礼します。
 大変遅くなってしまい申し訳御座いませんでした。
PCゲームノベル・6月の花嫁 -
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神魔創世記 アクスディアEXceed
2007年07月17日

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