▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『偽りの花嫁〜逃亡、そして?〜 』
北神 志乃(mr0384)


 うっかりうたた寝でもしていたのか、起きると自分がどこにいるのかわからなかった。
 なんだか甘い香りのする部屋で、窓が開けられ気持ちいい風が白いカーテンを揺らして入ってくる。
 もうひと寝入りでもしようかと目を瞑ったとき、ある異変に気づいた。否、早く気づかねばならなかったのだ。
「失礼します。式の準備はもうすぐ終わりますのでそろそろ、よろしくお願いします」
 いつの間にか清潔そうな正装に着替えていた事もだが、窓から外を見て唖然とした。

 ここは、教会だ。



「あれ、気づいちゃった? 寝顔、もっと見たかったんですがねえ」
 従業員らしき人物が扉を開け、「よろしく」などワケの分からぬ言葉を言って早々に立ち去った、その扉の傍からこちらに向かって白い礼服を着た男が歩いてきた。
 私、北神志乃と同じ黒髪、黒目の男だが、肌の色が白く、どこか人間ではない気配を漂わせている。
「そうそう、名前くらいは知りたいよね? 僕の名前はエッケハルト・ベルリヒルゲンさ、志乃ちゃん」
 感情が脳天をついたが、寸前のところで抑えこんだ。一応は、初対面の相手なのだ。あまり感情的になるのはよくない、と思う。
「気安く名前を呼ばないで下さい。この状態だって飲み込めていないのに、いきなり……! とにかく、この格好とここがどこなのかを教えてください」
 エッケハルトは手を組みながら顎を触り、志乃の反応に「ほぉ」と頷いて、近くにあった椅子に腰掛けた。
「ここは教会。教会がどういうところかは知っていると思うから、あえて説明はしないけど、僕は花婿、キミは花嫁。わかるよね? 僕達は結婚するんだ、今日。もうすぐね」
「は、はぁ? あ、あの意味がわからないのですが……それに、人違いという可能性も……」
「僕が志乃ちゃんって呼んで言い返さないってことは、キミは志乃ちゃんってこと。そうだよね? 隠してもダーメ。僕にはすべてお見通しさ。あぁ、可愛い子でよかった! あのアーデスみたいなポンコツだったらどうしようって思っていたけど……!!」
 エッケハルトが話している途中だったが、志乃は思考をめぐらせていた。さっき窓の外を見たとき、ここは2階だった。あまり建物は高くないので怪我をすることはないだろう。いや、でもこのごわごわとしたウエディングドレスならば足をとられかねない。
――逃げる!
「志乃ちゃんのそのウエディングドレス! とっても似合っているよ。その家紋の刺繍はどうかと思うけど、和と洋の組み合わせって感じで好きだなあ。このレースにスベスベする生地。うーん、たまらない!」
 思考に結果が見えたとき、ウエディングドレスに触る魔の手を払いのけ立ち上がった。
「気分が悪いので風に当たってきます」
「それじゃあ、僕も」
「付いてこないでください」
 そう言って素早く窓の枠に足をかけ、飛び出した。風のせいでドレスが激しく乱れる。少々裾を踏みながらも無事着地でき、後ろを振り返らずに走り出した。
「…………チッ」
 地を蹴る音の他に聞こえた音。
 私はその音に気づかないまま、足を進めた。
「しょうがないお嬢さんだこと。僕のどこが不満なのやら。ねえ」


 行き着いた場所は木が立ち並び、根が地から出るほどの大木が並んだ森だった。物音はすべて葉が揺れて重なり合う音だけ。目が覚めたときに感じた気持ちいい風が吹いている。
 息を整え、根に手をかけたとき、肩を誰かが叩いた。
 ゆっくり、振り返る。
 指がほっぺにささる。
「僕はスピードも凄いんだよ」
 たしかあの教会から何キロも来たはずだった。あいつの気配はどんどん遠くなっていって、感じなくなって、とにかく走って、走り続けて……。少なくとも、この森に入るまでには気配はなかった。
 指をどけて振り返りなおす。
「わかった? 僕から逃げる事なんてできない。さあ、教会へ戻ろう。新婚生活のなかでならお互いのことをもっと知ることができるよ」
「黙ってください!」
「僕はいきなりの縁談でも志乃ちゃんを見た瞬間から僕はもう志乃ちゃんのものだよ!」
「エッケルさんがそう思っても、私はそう思っていません!」
「冷たいなあ……でも、その冷たさが魅力だよ」
 どんどん近づいてくるエッケルに私は、私は……
 思いっきりパンチを喰らわせた。
 鼻を押さえるエッケルは逃げ出した私に早々気づき、追いかけてくる。奇術を使うほど手があいていないのか、必死にハンカチで鼻を押さえながら走ってくる。
 木々を避け、草むらを飛び越え、後ろを振り返ると、後ろにはハンカチを慌ててしまい手を伸ばすエッケル。
「おにごっこは終わりだよ。さあ、僕たちの式へ――。出会いはこんな形になってしまったけど、僕はキミのことを嫌いにはなれない」




━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【mr0384/北神 志乃/女性/18歳/精霊友達学(精友学)】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
 大変遅くなってしまい申し訳御座いませんでした。
 ただいま、納品させていただきました。
 志乃様がどういう方なのか、想像しながら、さらなる活躍を期待しています。
PCゲームノベル・6月の花嫁 -
大木あいす クリエイターズルームへ
学園創世記マギラギ
2007年07月09日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.