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『櫻花神殺行 』
ジュドー・リュヴァイン1149

 いつの頃からか、ジュドー・リュヴァインの夢に何度も姿を見せる少女がいた。
 いつ出会っても時代がかった和服姿で、帯や小物まで白でまとめた少女は白妙と名乗った。
 白妙を夢に見る間隔はまちまちで、続けて数日彼女と出会う時もあれば、数年の空白が訪れる時もあった。
 けれどいつでも、桜の咲いている季節だったように思う。
 夢で訪れた場所は広々とした祭殿で、至る所に桜が植えられていた。
 雰囲気は神社に似ているかもしれない。
 白妙の世話は、赤い袴に白い着物を身に着けた巫女装束の女性たちがしているようで、時折祭殿の中で姿を見かけた。
 夢の中、朱塗りの柱が幾つも建てられた間を通り、細やかな砂利を踏みしめて祭殿の格子戸を開ければ、変わらぬ少女の姿で白妙が微笑んでいた。


 桜の花びらが風に運ばれて二人の髪の上にも舞い降りる。
 二人――怒りとやるせなさに拳を握るジュドーと、白い和服姿の少女に。
 「……どうして自分から諦めてしまう?
逃げているだけだ、それは」
 ――初めて私に願い事を言ったと思ったら……いくら私が刃持つ者とはいえ。
 ジュドーは目の前で震える少女に、厳しい言葉を突きつけた。
 今まで声を荒げた事のないジュドーの激昂に、白妙は俯いた。
 そうさせてしまったのは白妙自身なのだから。
 少女の名は白妙という。
 白妙は姿こそ人間と変わらない存在だったが、ある信仰の対象となる神だった。
 神力を搾取され続け、姿は少女のまま時を過ごしてきた。
 しかし過ぎ行く時の中で、かつて白妙の愛した民は信仰を失い、争いを続けるようになった。
 白妙の加護に甘えた結果だった。
 少女神はそんな日々に倦み疲れ……たった今ジュドーに『自分を殺して欲しい』と言っってしまったのだ。
 ――あんな風に苦く笑われて、斬れる訳がない。 
 ごめんね、と白妙が気丈に見せた笑顔は、ジュドーの心を切なく締め付けた。
「私が組んでいる相棒は、あれで頼れるんだ。
口が悪い所を差し引いても、お釣りが来る位に。
……新月の晩、二人で助けに行く」
 ――だからそれまで、待っていて欲しい。
 夢の世界に朝の光が差し込んでゆくのを感じ、ジュドーは白妙に背を向けた。

 
 そして新月の晩。
 明日には出立が決まっている。
「あの、さ」
 革袋に身の回りの物を詰めているエヴァーリーンへ、言いにくそうにジュドーが声をかける。
「……何?」
 そっけなく答えるエヴァーリーンの腰掛けているベッド脇まで歩み寄り、ジュドーが口を開いた。
「頼みがあるんだけど」
「……一応聞いてあげるわ」
 ジュドーは手にした桜の小枝を枕元のテーブルに置き、エヴァーリーンと向かい合う形で隣のベッドに腰掛けた。
「助けたい子がいるんだ」
 ふぅ、とわざと大きくため息を付いて見せ、エヴァーリーンはジュドーに視線を移す。
「……またお節介?
でも、今に始まった事じゃないわね……続けて」
 ジュドーは夢の中で出会った少女の事を話しだした。
「ついこの前、久しぶりに白妙を夢に見た。
そしたら……」
 白妙がいる祭殿は現実の地平に存在する場所ではなく、夢でしか辿り着けない場所である事や、自分がある宗教で祀られた神であるという事を白妙は告げたのだった。
「もう神でいるのは疲れたって……自分を殺してくれって……頼まれた」
 ジュドーの夢の中で、白妙は幼い少女の頬に諦観を含ませて微笑んでいた。
 唇をかみ締めるジュドーへ、エヴァーリーンが問いかける。
「……私に神殺しを手伝えと言うの?」
「違う!」
 思わず出した声の大きさにジュドーは慌てて声を低くし、否定した。
「そうじゃない。
そんな頼み、聞けるはずないだろう。
白妙を祭壇から連れ出したいんだ。
……できるだろう?
私と、エヴァでなら」
 一瞬エヴァーリーンの黒い瞳に、揺らめく炎のような輝きが灯る。
「……そうね、あなただけじゃなく……私もいれば」
 エヴァーリーンは唇の端をゆっくりと持ち上げ、不敵な微笑をジュドーに見せた。


 新月は世界を等しく闇に包んでいた。
 枕元に置いた桜の花に導かれた者たちが、夢の小路を辿り集う。
 ジュドー・リュヴァインとエヴァーリーンは注意深く辺りを見回した。
「ここにいるのは私たちだけなのかもしれないな」
 ジュドーは『蒼破』を手にしたまま森の梢を見上げる。
 もしも白妙の願いを聞き入れ、彼女を殺す為にこの場所を通る者が現れたとしたら?
 ――私たちにその者を敵に回す資格があるのか。
 ジュドーもエヴァーリーンも、自分たちの行いが善行だとは思っていない。
 しかし、白妙を殺す事で安らぎを与えようと考える者も否定できない。
 束の間思いに沈むジュドーの耳に、鋼糸が空を切る音が響く。
「……隠れていても無駄よ。
私の糸はもう、あなたに届いているもの」
 エヴァーリーンは極細の鋼糸を武器にする。
 鋼糸に囚われたが最後、獲物は死を待つしかないのだった。
 かすかに煌く鋼糸の先に、人影が揺らぐ。
 何者かの気配は確かにするのだが、はっきりとした輪郭は見えない。
「ああー、見つかっちゃったか」
 ふっと輪郭が闇の中で形を整え、それは背の高い女性の姿を取る。
 光学迷彩を解いたディーザ・カプリオーレがジュドーとエヴァーリーンの前に立った。
 鋼糸が伝える微細な感覚に、エヴァーリーンは眉を寄せた。
「あなた……人ではないのね……?」
「へぇ、そこまでわかっちゃうんだね」
 ディーザは身体を機械化したサイボーグだった。
 にこりとディーザは微笑んで、鋼糸を握る。
「だったら無駄な争いはしない方がいいと思わないかい?
生身のキミたちに勝ち目ないからね」
「……試してみましょうか?」
 エヴァーリーンとディーザの間に流れる不穏な緊張感に、ジュドーが割って入る。
「ここに現れたのは、あなたも白妙に関わっているからなんだろう?
私は彼女を助けたい。
もし、あなたもそう思ってるなら……力を貸して欲しい」
 エヴァーリーンは鋼糸を操る指を緩めずにいる。
 返答次第で戦力を奪うつもりだった。
 とても人以外の存在だと思えない豊かな笑顔をその頬にのせて、ディーザは答えた。
「私もそう思ってた所。
ようやくあの子、自分の辛さを打ち明けてくれたんだ。
私も手伝ってあげたいんだよ」
 ヒュ、と軽い音を立てて、鋼糸がエヴァーリーンの手に戻る。
「……世の中には随分、お節介が多いものね」
「そのお節介に毎回付き合ってくれる物好きもいるよな」
 じろりとエヴァーリーンはジュドーを一睨みした。
 それには視線を合わせず、
「急ごう、新月の夜が明けてしまう」
ジュドーは先に立って歩き出した。


 篝火の影を巧みに選びながら、三人は白妙のいる場所を目指した。
 巫女たちとの戦いは出来るだけ避けたいというのが、三人の一致した考えだった。
「白妙の事だ。
殺傷は良しとすまい」
 ジュドーは蒼破を携えながらも、全て峰打ちで済ませようと思っていた。
「そうだねぇ」
 頷くディーザは瞳を遠くに向けている。
 暗視能力を使って建物の詳細を伺っているのだ。
「……白妙がいたよ。
でも、一緒に巫女じゃない女の子がいるね」
「……先を越されたのかしら」
 エヴァーリーンが眉をしかめる。
 白妙がその少女に命を奪われてしまっては、自分たちの行動が水泡に帰してしまう事になる。
「んー、何となくだけど、大丈夫な雰囲気……」
 ディーザの言葉を最後まで聞かず、エヴァーリーンは駆け出していった。
「キミの相棒、意外と熱いんだねぇ」
「エヴァは負けず嫌いなんだ」
 エヴァーリーンに少し遅れて、ジュドーとディーザも白妙の元へ走り出した。


「白妙から離れろ」
 そう言って刀を樋口真帆に突きつけたのはジュドーだった。
 静かな闘気が闇の中でも揺らめくのがわかる。
「待って下さい!
……あ、あれっ?」
 慌てて手を上げようとした真帆は、身体の自由が利かない事に気付いた。
 エヴァーリーンの鋼糸が真帆の身体に巻付いていたのだった。
「二人とも顔怖いよ。
この子おびえちゃってるじゃないか。
ねえ?」
 にこりと笑顔を見せながらディーザが真帆とエヴァーリーン、ジュドーの間に立つ。
 白妙も真帆を庇って口を開いた。
「この人は夢渡りの途中でここに来て……私には関係ないの!
だから、この人と戦わないで」
「私は助けに来るって約束したろう?」
 ジュドーはそう言って刀を納め、エヴァーリーンによる真帆の戒めも解かれた。
「……悪かったわね」
「あっ、もう気にしてませんから!」
 気まずそうに謝罪するエヴァーリーンに真帆は手を振った。
 こうして顔を合わせた四人は、白妙をこの桜の祭殿から連れ出す為に集まった事になる。
 エヴァーリーンが小柄な白妙の顔をまじまじと覗き込んで言った。
「……殺してほしい、ですって?
残念ね……その依頼は、受けれそうにないわ」
 たしなめるような視線をジュドーから向けられたが、エヴァーリーンは言葉を続ける。
「……だって、あなた、私が殺す程の神じゃないもの。
……私に殺されたいなら、それに相応しい神になってからにする事ね」
 緊張した面持ちをエヴァーリーンに向けていた白妙だったが、次の言葉にほっと息をついた。
「……その為には、あなたをここから連れ出さないと、ね」
 小声でジュドーが呟いた。
「……相変わらずの物言いだな。
ああ、いや、何でもないデスよ」
 上ずった語尾を咳払いで誤魔化し、改めてジュドーは白妙に聞いた。
「白妙、ここには祭壇か何かがあるのか?
もし白妙をここに縛りつける物があるなら、私はそれを斬る。
呪術の解除ならエヴァが得意だ」
 黒い自動小銃型に見える物を掲げてディーザが言葉を繋ぐ。
 それは聖獣装具の一つ、魔神銃・クーデグラだった。 
「護衛なら私に任せて。
私の武器は銃だけど、大丈夫。
皮膚の一枚、髪の一筋掠めるだけ……ただ、ちょっと、魂をもらっちゃうから、しばらく正気を失うだろうけどね」
 真帆も言葉を添える。
「私は直接戦うのは苦手ですから、幻術の桜吹雪で巫女たちにめくらましを。
私は夢渡りですから、不安定なこの世界でも道案内ができると思います」
 にこりと真帆が白妙に笑いかけた。
「だから安心して下さいね」
 一瞬涙の浮かんだ瞳を揺らめかせたが、白妙は一同に深々と頭を下げて礼を言った。
「……ありがとう、皆」
 白妙によれば、祭殿奥に一本の神木、白妙桜を祭った場所があるのだという。
 呪符を張り巡らし、結界のようなものを作った中に神木を置いて、その力を現実世界へと送っているようだ。
 白妙桜は常春のこの世界でも、花を付けず、幼木のまま時を過ごしている。
 時の流れから切り離された世界で。
「白妙桜は私自身なの。
現実世界と同じ、ずっと子供のままの……」
「神木のまわりに警備はいるのか?」
 ジュドーの問いかけに白妙が頷いた。
「武器を持った巫女たちが守ってるわ。
私がいなくなってしまっては、この世界も民に渡る神力も、消えてしまうから」
 この場所は誰かが見ている夢の世界であると同時に、白妙がまどろむ夢の形なのかもしれない。
 今、醒めない夢に別れを告げ、少女は現実へと向き合う。  
「巫女と戦うのは避けられない、か」
「私が神木の前まで皆さんをお連れしますよ」
 思案顔のジュドーに真帆が言った。
「少しはそれで、時間が稼げるはずです」
 真帆の近くの空間がたわんで、見える風景が二重写しになった。
 ディーザが咥えた煙草の火を消して白妙に言った。
「それじゃ行こっか」
 まるで散歩に誘うように、気軽な口調なのが白妙には嬉しく感じられた。
 真帆の導きを受けながら、五人は神木の元へ向かった。


 次々と変わる風景の断片を通り過ぎ、五人は神木の前に立った。
 巫女たちは神木の前に設けられた門の前にいるが、まだ一同に気付いていない。
 白く長い呪符がか細い幹と枝に張り巡らされ、包帯を巻いたような痛々しい姿を見せている。
 呪符の一枚一枚に書かれた文字が、絡みつく蛇のようだった。
 呪符で集められた神力は、神木の傍に建てられた社の祭壇にある鏡を通して現実世界へと送られている。
 不安げな表情で立つ白妙の傍にはディーザと真帆が付き添っていた。
 丹念に呪符を調べるエヴァーリーンの手元を、ジュドーが覗き込む。
「エヴァ、解けそうなのか?」
 ジュドーは巫女たちがいつ気付くのかと気が気ではなかった。
「……急かさないで。
白妙を傷付ける訳には……いかないでしょ?
……あったわ」
 すっとエヴァーリーンは神木から離れ、何事か口の中で呟くと鋼糸を神木に向かって振った。
 一寸の狂いもなく、鋼糸は呪符の一枚を切り裂いた。
 戒めの呪術の中核をなす符を切ったのだ。
 それを皮切りに、次々と呪符は神木から剥がれ落ちていく。
 落ちた呪符も鋼糸によって裁断され、粉雪のように辺りを白く染めて舞い降りた。
 それと同時に、その場の空気が変わる。
 新月の闇の空を割って、幾筋も光が延びた。
 朝焼け色の光が。
「……成功ね」
 光を見上げてエヴァーリーンが微かに微笑んだ。
 しかし安堵の時は短い。
 異変に気付いた巫女たちが門を開けて次々と現れる。
「白妙様!?
何故、ここに……?」
 見慣れない外部の人間と共に立つ白妙を目にした巫女たちへ、漣のように動揺が広がってゆく。
 それに向かい、クーデグラを手にしたディーザが言った。
「もう白妙はあなた方のお守りが嫌になったんだよ。
白妙がいなくなって困るのはわかるけど、苦情言われても対応しないからね」
 クーデグラの黒い銃身から魔を帯びた気配が立ち上る。
「泣き声あげて、誰かが全部やってくれるのは赤ん坊まで。
何とかしたかったら、自分達でどうぞ」
 ディーザはにっこり笑って引き金を引いた。
 たった一発の銃声がその場に立つ巫女たちの魂を削り、地に平伏させる。
 それでも残った巫女が駆け寄ろうとする。
「白妙様を取り戻せ!」
 しかしその歩みは見えない障壁によって阻まれる。
 夢を渡る途中でも密かに仕掛けられていたエヴァーリーンの鋼糸だ。
「……邪魔しない方がいいわよ……すでに糸は張り終えている……。
蜘蛛の糸に絡め取られて、生きたまま干からびるのは、嫌でしょう……?」
 鋼糸に身体の自由を奪われた巫女が、白妙に向かって叫んだ。
「我等を、民を見捨てなさるのですか!?」
 真帆の作り出す幻惑の桜に守られた白妙が、一瞬悲しげな表情を見せる。
 が、まっすぐ巫女たちを見据えて答えた。
「わかってる。
どんな理由でも、私は民を見捨てる事になるのだから……その咎も、受け入れるわ」
 蒼破で巫女たちと戦っていたジュドーが祭壇の前に立って叫んだ。
「その覚悟があるなら、武人として応えるまで!」
 蒼い刀身に朝焼けの光が宿り、ジュドーが放つ裂帛の気合と共に蒼破は振り下ろされ――。


 斜めに割られた鏡が祭壇から落ちた時、全ての光景が風に舞う花びらさながら儚く消えていった。
 祭殿も巫女たちも、最後に白妙自身だった神木も。
 まだ白妙の傍に残る空間を真帆が維持して、一同は短いが別れを惜しむ時間を持つ事が出来た。
「私、どんな姿になっても、ずっと皆を忘れない。
遠く離れてても、いつでも思ってるから」
 本来の場所へと戻った神力が、白妙の姿を少女から成熟した女性へと変える。
 少し大人びた表情を作り、白妙は微笑んだ。
 その生の行く末には、また新たな悲しみ、苦しみが待つのかもしれないが。
 今はただ、あでやかに微笑んでいる。
「殺してなんてお願い、本当は誰も聞いてくれないと思ってたの。
でも、皆は私を助けてくれた。
……本当にありがとう」
 感謝の言葉を連ねる白妙にエヴァーリーンは視線を外しながら言った。
「別に、善人面する気はないわ。
……ただ、自殺の手伝いを頼まれるほど、安く見られたのが癪に障っただけで……」
 その言葉の裏にある優しさは白妙にも伝わっていた。
 ジュドーも照れ臭そうに言う。
「私もこれが善行だとは思ってはいない。
蒼破で斬るなら、白妙よりも祭壇だ。
そう思っただけだ」
 ディーザも白妙に向かって言葉をかける。
「私たちが手伝えるのはここまで。
ここから先は白妙自身で考え、歩かなきゃいけない」
 手厳しいとも取れる言葉を口にしたディーザだったが、その表情は新しい世界へと向かう白妙を祝福するように柔らかい。
「……頑張って」
 白妙はディーザの言葉に頷いた。
 そんな白妙に真帆がくすりと小さく笑った。
「死ぬのが一番良い事だなんて、間違いだったでしょう?」
「そうね……そう気が付かせてくれたのは、皆……」
 白妙の姿が徐々に薄らいでゆく。
 しかし別離の哀しみはなく、清々しい朝の空気を迎えるような鼓動の高まりだけがある。
「……さよなら。
それとも、おはようって言うのが正しいのかな?」
 そう言って白妙の姿は見えなくなった。
 

 薄闇の中、ジュドーは瞳を開いた。
 まだ夜明けまでに時間があるのか、寝室は柔らかな闇で満たされ、日の出の光を待っている
 枕元の桜は花びらを散らせてしまっていた。
 咲いた花が散る、短くも確実な時の流れ。
 隣のベッドで眠るエヴァーリーンは規則正しい寝息を立てている。
 寝息さえひっそりとした彼女には珍しく、安らぎを含んだ寝息だった。
 深い眠りに落ちている彼女を起こさないように、そっとジュドーはベッドを降りた。
 散った花びらを集めて窓辺に立つと、風がジュドーの手のひらから花びらを連れ去って行く。
 ――……起きたら早速、報酬搾り取られるんだろうなぁ。
 そう思いつつも、ジュドーが浮かべる表情は笑顔だ。
 ――……でもまぁ、いっか。
 夢の中とはいえ、ジュドーの起こした行動が一人の少女を苦痛から解き放ったのだから。
 それは金銭とは換え難い、充足をジュドーにもたらした。
 ――あの子が無事なら、私はそれで良い……。
 ジュドーは夜明けまでの短い時間を再び眠りに費やそうと、ベッドへ戻った。
 出立の朝は近い。


(終)


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【 6458 / 樋口・真帆 / 女性 / 17歳 / 高校生/見習い魔女 】
【 1149 / ジュドー・リュヴァイン / 女性 / 19歳 / 武士(もののふ) 】
【 2087 / エヴァーリーン / 女性 / 19歳 / 鏖(ジェノサイド)】
【 3482 / ディーザ・カプリオーレ / 女性 / 20歳 / 銃士 】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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こんにちは、追軌真弓です。
お届けが遅くなりまして申し訳ありませんでした。
神殺しというテーマの『櫻ノ夢』シナリオでしたが、楽しんで頂けましたでしょうか。
今回モチーフにした『白妙』という桜も実際にあります。
目の前に置いて参考にしたのは彼岸桜ですが。
GWも近いのですがまだまだこちらでは桜も見られそうにありません。
ジュドー様はエヴァ様と同時参加と言う事でしたので、冒頭部分もお二人で描写させて頂きました。
書かせて頂いて良いコンビだなぁと思いました。
ご意見・ご感想などありましたらブログのメールフォームからお寄せ下さいね。
今回はご参加ありがとうございました。
また機会がありましたら、宜しくお願いします!


【弓曳‐ゆみひき‐】
http://yumihiki.jugem.jp/
PCゲームノベル・櫻ノ夢2007 -
追軌真弓 クリエイターズルームへ
聖獣界ソーン
2007年04月24日

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