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『ホロビとの恋 』
風宮・駿2980)&ホロビ(NPCA056)


 膝を崩し、身を、前にのめらせて、
 まるで古代の巨人、空を飛ぶ鳥、あるいは、単純に神へ服従するような行為ではあるのだけれど、
 その眼に写すのは、灰色の大地である。
(はて、アスファルトはそのような色を湛えていたのだろうか)
 湛えていたのは心。瞳、涙で滲み、目を細めているから、景色は過去のようにモノクロームだった、セピアにすら届かぬ程、彼の心象風景は色を失っていた。
 一体幾度恋をして、一体幾度振られただろうか。
 もしもこれが呪いを通り越して体質であるのならば、もう、諦めてしまった方がいいのに、だのに、
「貴女が好きです」とか、「俺と付き合ってください」とか、「幸せにします」とか、
 何時も何時も、本気なんだ。だから、何時も、本気で悲しい。
 涙なんて枯れ果てるものじゃない、砂漠で喉が干上がる事があっても、感情は、そう易々と失われやしない。以前までの自分を無くしても、それは普遍だったのだ。
 それが、風宮駿の常態だった。
 辛い記憶を繰り返し、絶望の怨嗟を吐きながらも、いつも、いつも新しい希望を求め、破れて、そして絶望の中、再度希望の為に起動する。だから、
 ホロビの、人を寄せ付けようとしない、まるで蚊取り線香みたいな能力も、
 己の絶望から作り出した根を触れさせる事で、心の中を覗き、辛い記憶を壊れたレコードのように何度も何度も何度も何度もリピートさせる能力も、何時もの事だから、
 何時ものように、絶望して、何時ものように、希望を見出した。
 目の前のホロビに――恋した。
 地面に怠惰に寝そべる、赤いドレスを纏った、麗しい肢体。あの研究所の所長と同じ、豊満で、でも澄み切ったようで綺麗で、底が知れぬ不思議な魅力を持っていて、
 静寂を求めるのに、どこか、寂しがりや、ゆえに人の心を覗きたがるなんて、天邪鬼な性格も含めて、そうそこまで風宮は、きっと己の変身時間よりも早く到達したのだ。
 だから「貴女が好きです」と言って、「俺と付き合ってください」と続け「幸せにしますから」とそして、
「絶対に」
 嘘偽り無く、真の心でそう呟いたのだけれど、けど、
「嫌」
 そう……何時ものように、何時ものように振られてしまった。
 そして彼は、目の前で這い蹲るホロビに習うように、くずおれた訳なのだけれども。今の彼が人間の姿で良かった、絶望してはいけない、ヒーローの姿でなくて良かった。
 挫折という重力で押し潰されそうになりながら、
 どうしてと、疑問を放つ。
「なんでですか」と泣き言を、「どうして、俺の何処が」と未練がましく、
「どうして」
 好きだから、
 初めて出会ったこの人を、
 どうしようもなく、全身で、心から、
 好きだから――
 ……誰に対してもそれを繰り返すのは、浮気者と呼ばれても仕方ないけれど、けれど、何時だって彼の想いは本気なんだから、ホロビよ、彼女は、真摯な気持ちへ、きちりとした返答を。
「理由は」
 くずおれる風宮駿に、尚、低い位置から聞こえる声。
 出会いは、


◇◆◇

 そもそもこの出会い自体が、何もかもが不可思議で、
 何処か違う場所に居るはずのホロビが、こうして、誰も居ない路地、風宮の目の前にふうと現れたという事。
 そして一瞬でその範囲が、黒い根によって包まれたという事も、肌に映らなくなるくらい、……彼はそれを運命の出会いとした。偶然をそう呼称する行為は、何時だって勇気がいるもので、そして勇気は希望を落とし、ゆえに希望は人を生かし、
 同時に、殺したりして。
 殺されたのだけど。
 何時も通り。
 今希望はその要因を語ろうとして、ホロビという名前を負って、
 更に、彼という心を滅ぼそうと――

◇◆◇

「姉ショタに、ならないから」

◇◆◇


「……ウェーイ?」
 違っていた。
 反応的に、違っていた。というかまずかった。でも思わずそんなとってらぴんな反応が出る程、風宮駿は納得できませんでした。
「え、えっと、今なんて」
 ホロビは、目を不可思議なアイマスクで覆った彼女は、抑揚無く繰り返す。
「姉ショタにならないから」
 なんでやねん。
「い、いやどうしてなんですか!? ていうか、姉ショタって!? ええ!?」
 変身ポーズよりやり慣れた(そもそも最近は決まった変身ポーズなんてものが無いけれど)よつんばいうなだれーのから起き上がり溢しにウィンクしながら立ち上がって思わず叫ぶ、いや、姉ショタっていうのは、
 こう小さい少年がお姉さんにもふもふされる事であり、世の中の恋愛事情はなべて男性がリードするものだけどそれが逆転しているシチがそそるというかまぁぶっちゃけ少年がうりうりと虐められたり可愛がられたりするのってなんかいいじゃないですか、で、少年の方も一応やめてくださいよーとか言うんだけど、心の底からは嫌がっておらず、顔を真っ赤にしながらもう、「もう、他の人にしてたら、怒りますから」ってお前どこの乙女やねんみたいな反応するのがってそうじゃなく、
「……えーと、ホロビさん、姉ショタが好きなんですか?」
 黙して、語らない。
 確かに神様が逆立ちしたって、本来は起こらぬ事である、ていうかそんな設定などあるはずがない、一体どういう事なのだ、何故姉ショタなぞホロビが求めて、
 いやけして自分のせいじゃないとなんか声が聞こえてくる。プレイングの通りに書いているだけだものと付け加える。だけど、草間のなんちゃらが実は男の子で、ホロビの事が好きな中学生でそこらあたり葛藤するって設定だったらもっと依頼出しまくったのにとかいう意見も聞こえてくるが、
「納得できないけど、納得しました。俺が、ショタになればいいんですね」
 絶望よ去れ! 今希望来る! だから俺はこうやって!
「ホロビねーちゃーん、甘えさせてー」
 とか恥も外見も捨てて両手広げてぶりっこってみた23歳はあろう事かホロビに十六文キックを受けて後ろ向きに三回転くらいころがった後例のポーズとなって姉ショタなんか嫌いだと呟き固定された。
PCシチュエーションノベル(シングル) -
エイひと クリエイターズルームへ
東京怪談
2007年02月22日

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