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『イノシシをつかまえてっ 』
烏有・大地5598


「そう、これは夢なのよ」
「年越しの準備は忙しいですもの。ほっと安心したら眠くなってしまって当然ですわ」
 何をいきなり言っているのか――そんな事を、深く追求してはいけない。何故ならここは本当に『夢の国』なのだから。誰が何と言っても、そうなのだ。
 現に、二人の女性の後ろには、美しい純白のお城――ただし和風。立派な天守閣だって聳えてる。その周囲にはメリーゴーランドやお化け屋敷、360度回転のジェットコースターに、可愛らしいアフロウサギグッズが売られているお土産屋さん、他にも様々なアトラクション。
 これが夢じゃなかったら、何なんだ。いや、まんま遊園地でしょ、とかいうツッコミはこの際だから聞こえないフリを通す。断じて貫き通す。
「というわけで。貴方たちには逃げ出したイノシシを捕まえて欲しいの」
「逃げたイノシシは8頭。それら全てを捕獲して、あの天守閣に飾らないと、幸せな新年はやってこないんですわ。もし叶わなければ、悪の大魔王が支配する新年が……っ」
 代わる代わる喋る女性二人。一人は真紅のパンツスーツに身を包んだ、パリっとした風情の美女。もう一人は、艶やかなドレスを纏った、豊かな緑の髪が印象的な艶美人。
 どこかで見た覚えがあるような、ないような。あってもなくても、何の影響もないのは確かだが。
 話が長くなりそうなので、ここで彼女たちの話を要約。
 どうやらこの世界で飼っていた8頭のイノシシが、二人の隙をついて逃げ出してしまったらしい。
 それらを捕まえないと、この世界はとっても困ったことになるとかで。
 偶然(?)迷い込んだ貴方たちに、イノシシを捕獲して欲しいということだ。
「イノシシには全て名前がついてるの。それぞれ性格に特徴があって、それらを頭に入れながら探すと見つけ易いと思うわ」
「素直なものから捻くれたものまでおりますの。中には自分を捕まえようとする者に反撃をしてくるものもいるかもしれません。重々お気をつけ下さいませ」
 そういうと、二人は一枚の紙を配り始める。そこには全てのイノシシの名と特徴、そして不思議な★マークで囲まれたマスが一つ。

 A…名前:ホクト/外見:毛並みは漆黒。黒マントを羽織る/性格:律儀で真面目。裏表がない。影を好む。
 B…名前:トウカ/外見:毛並みは青。見るからに威風堂々/性格:知的で策略。やや短気。隠れる事を良しとしない。
 C…名前:サイキ/外見:白い巻き毛のイノシシ。トウカと双子、やや控えめ/性格:おっとり天然。腹は……微妙。トウカにくっついている。
 D…名前:ナオ/外見:ふわふわピンクの小柄イノシシ/性格:素直で元気。好物は甘いもの。エサでつれる。
 E…名前:いち/外見:金茶毛ツンツンのイノシシ。狼を気取っている/性格:悪ぶっているが、根は素直。怖がり。
 F…名前:ゆかり/外見:漆黒毛のイノシシ。瞳の色が紫/性格:めんどくさがり、他力本願、性悪。
 G…名前:てった/外見:薄茶毛のイノシシ。がっしりした体躯/性格:真面目で素直だったが、最近少々思い詰め。走り出したら止まらない。
 H…名前:みどりこ/外見:薄茶毛のイノシシ。てったの双子。細身/性格:頭脳派、常に冷静。てったを罠にかけようとしている。

「で、この★マスだけど」
「ふふふ……実はこのイノシシたちには捕獲ポイントというのがあってですわね。イノシシによってそのポイントは違うんですけど」
「そうそう。捕まえたらそのイノシシのポイントが表示されるようになってるのよ」
 ご都合主義爆発だが、念の為説明しておきましょう。
 イノシシにはそれぞれ『捕獲ポイント』があり、つかまえると★マス内に数字が浮かび上がる仕掛けになっているのだ。
 勿論、捕獲が難しいイノシシほどポイントが高いのは言うまでもない。
 さらに、さらに!
 その総ポイント数で新しい年の運勢が分かってしまうとかっ!!
「あら、地の文が先に説明しちゃったわね」
「ふふふ……地の文、後で血祭りですわ――それは冗談として(ホントに冗談か!?)、皆さま、気合を入れてイノシシを捕獲して下さいませね」

 にこーと不気味に笑んだ緑髪の女性は、ぴしっと突き刺すように一点を指差す。
 そこには美しき天守閣と鐘。ごーんと鳴る、あの鐘。
「タイムリミットはあの鐘が108つ鳴るまでの間よ。それを過ぎると、この世界は魔王に侵食され始めるからv」
 今度は赤いスーツの女がバチっとウィンク。あまり嬉しくないのは、彼女の語った内容のせいに違いない。
 まぁ、こんな世界。魔王に侵食されても痛くも痒くもないかもだが――それでもこの世界は救いの主を待っているのだ!(ずびし)
「そんなわけで、よろしくね」
「よろしくなんですわ」


★夢物語の開幕。否、いっそ夢のままであってくれ。

 世の中は広いようで、狭い。
 例えば住んでる町から遠く離れた駅で、地元の友人に偶然遭遇しちゃうくらいに。
 かと思えば、狭いようで、広い。
 そう、都心のマンションではお隣さんの家族構成や、顔さえ暫く目撃しないなんてのはままあることだ。階が違えば、そこは異国も同然。
「で、だから何が言いたいわけ?」
 確か草間宅で新年の準備をしていたはずなんだが。いつの間にか炬燵でうとうとしてしまったのかもしれない。そんな自分の行動を振り返りつつ、シュライン・エマは火月(仮称)に素敵な笑顔で詰め寄った。いやん、怖いv
「やーねー、シュラインさんったら。別に『(仮称)』なんて面倒なものは要らないわよ〜。ここは夢の世界、そう、なんでもありなのよっ!」
 真紅のスーツの女こと、火月――多分。本人がそうだと名乗っているのだからそうなのだろう。きっと――は、緑色の美女と顔を見合わせニコリと笑み返し。
「そうですわ。世の中、難しいことを考えてはいけませんのよ」
 言いつつ、彼女――面倒だから、この際だからぶっちゃけスピナッチと言っておこう。どちらのスピナッチさんかは知る人のみぞ知るで。っていうか、しつこいようだけど夢だから、全くもって夢だから。さらに言うなら誰の夢の中のスピナッチさんかもわかんないから――は自分と同じ色の髪をした少年を両腕に抱きこんでいる。
 彼の名は藤井・蘭(ふじい・らん)。外見は10歳程度でぱっちりとした銀の瞳が非常に愛らしい――どうやら、その辺がスピナッチのツボを刺激したようだ。それ、いったいどんなツボかなんて問い質しちゃいけない。
 まぁ、スピナッチの名誉の為に付け加えておけば。彼女、どこかで蘭に自身と通じる何かを感じ取ったに違いない。
 スピナッチ。某野菜と果物の王国の女王さま――もとい、お妃さま。参加者比率的にちょっと解説。
「ねぇ? イノシシさんをつかまえないとどんなことになるの?」
 スピナッチのふわふわの髪は、少しだけもこもこウサギの手触りに似ている。ちょっとした幸せに浸りながら、蘭はふっと思いついた事を訪ねてみた。
 らば。
「――っ!!」
「そっ――そんな恐ろしい事、とても口に出しては言えませんわっ」
 ピシリと固まる、火月&スピナッチ。表情も、まるで一昔前の少女マンガちっくに稲妻招来。どんがらがっしゃん。
「……な、なんだか大変そうだね。よーし、僕も頑張るからねっ」
 あまりよくわからなかったが。雰囲気に気おされ、蘭とりあえず納得。ついでに小さい手をぐっと握って、高らかに決意表明。頑張れ少年、未来は君の手にかかっている。
「そしてアフロウサギさんもゲットなんだよーっ!」
「可愛いフリして何気にちゃっりしてますね」
 ほえほえほえー。ふわり。
 可愛いもの好きのスピナッチは聞かなかったフリを決め込んだ、蘭の密かな第二の野望――世間では、それを『本命』と言う←勝手に――をさらりと受け止め、ほこほこと大人し気に笑いながらつっこんだのはマリオン・バーガンディ。
 本日の可愛いもの勝負で、ちょっぴり蘭に遅れをとってしまったのがしっくりジェラシー(嘘)な外見年齢18歳。あくまで外見。拘っちゃいたいくらいに、外見年齢。
「……そんな微妙な拘り要りませんよ?」
 キラリと彼の金の瞳が猫――科のちょっと大型獣ちっく――のように煌きあらぬところを睨んだ。いやん、猫って人には見えない気配を察するって言うものね。
「だから、こんなところで油を売ってないで先に進めましょうね。だってほら、参加者紹介の章だって言うのに、ここまででまだ私を合わせて3人ですよ?」
 はうわっ! い、痛い所をっ。
 そんなわけで、マリオンの大人し気な外見に騙されないよう皆さん気をつけましょう。さらに、彼にハンドルを握らせるような真似は厳禁です。
「だから……先、進めましょうね」
 はーい。
 そんなこんなで場面は少し変りまして。
 なんだかとっても筆舌に尽くしがたい雰囲気を発している一団へ。
「まーなー、世の中っていろいろ忘れたいこととかあるしなー。一瞬の現実逃避も必要なときもあるし」
 綺麗なお姉さんは好きですか。はい、大好きです。そんな返事を素で行く――そしてきっと「貴方の方が綺麗すぎて困るのよ!」と返されるに違いない――ここでも外見年齢を主張したい18歳の少年、多祇(たき)。背中に生えてる翼は立派に空だって飛べる。
「それにしても……いや、ここは夢だし。何があってもつっこんではいけないんだな」
 でもって。多祇と向い合って何やら苦悶の表情を浮べているのが清芳(さやか)。漆黒の宣教師服に身を包む化粧っ気皆無の美女。
「いいんです。清芳さんは化粧などしなくても綺麗ですから」
 あうち。いきなりのろけられましたよ、どうしましょう。コンチクショウ。悔しいから、一つ除夜の鐘をついてやれ、ゴーン。
「地の文はさっくりスルーして。はい、清芳さん。あっちで売ってたんですよ」
「――っ!! それは幻のぺろぺろキャンディー! しかも七色っ!!」
 のっけから天の声を撃沈しつつ、それでいてさり気なく点数UPを計ったのは馨(かおる)。名実ともに清芳の伴侶であり、時としてありあまる甘味地獄に引きずりこまれる悲劇の人。
「いいんです。愛がありますから」
「そうだそうだ」
 や、顔とおんなじくらいの飴を舐めながら言われたって説得力ないから。
「えぇなぁ、その飴。どこに売ってたん?」
「あちらの入り口付近の売店ですよ。多祇さんもお一つ如何です?」
「馨さん! それならやっぱり保存食用にあと100個は買い占めてこないとっ!!」
 話が飴の方に逸れてしまっておりますが。そんな彼らに先ほどまで、珍妙な哀れみの視線を向けられていたのは榊・遠夜(さかき・とおや)。
 夢の中でもしっかり陰陽師服を着ている彼は、既に日本のサラリーマン気質が備わっているのかもしれない。苦労性、世に憚る――ちょっと違う。
「そうなんだ――これは夢なんだ」
 そうです。これは夢です。
 間違いなく夢です。
「だよね。夢なんだよねっ!」
 えぇ、100%。なんだったら101%とか言い切っちゃってもいいぞ。
「よし、それで納得」
 ふむっと頷いた遠夜は、何かを振り切るように顔を上げた。
 そう、しつこいようだがこれは夢。色々なものが交錯する夢。
 だから逃げたイノシシになんとなーく聞き覚えがあるような気がしても、知らないはずの人に見覚えがあるような気がしても、さらにはその人たちに『記憶喪失?』なんて哀れみの視線を向けられちゃっても――あくまで仮定の話v――へっちゃらなのだ。
 夢は夢。あるがままを受け止めるがいいっ!!
 というか。
 受け止めてください、お願いします(平身低頭)。
 と、とりあえず。こっちの一団も一段落したんで、最後のペアへ。皆さん、青い風が吹きます、準備はいいですか? 今、一人で寂しい人は、懐に猫さんかウサギさんでもつかまえてきて入れて下さい。
「……外野、五月蝿いな」
「なんだ、基。なにかいるのか?」
「いや、いるっていうか、耳元でがなりたてられてるっていうか」
 どこか寛いだ感じのある普段着に身を包み、ラフな装いの高校生男子二人。彼らは、年越しのパーティー開催中で、ついさきほどまで炬燵のなかにいたはずなのだが。
「それにしても……」
 ぽぽぽ。
 それは頬が僅かな紅に染まる擬音。でもって、花も恥らう乙女みないたことをやってるのは烏有・大地(うゆう・だいち)。別称、送り狼。
「なんだ?」
 どことなく言いよどむ風情の大地に対し、全くの頓着を見せない天然っぷりを披露しているのは環和・基(かんなぎ・もとい)。別称、行き倒れの環和。
 彼らの別称に関する詳細は、今回は割愛する方向で。やー、人生長いと様々なことがあるもんですよ――って、彼らは人生語るにはまだまだ青い17年の月日しか過ごしちゃおらんけれども。
「あ、いや――そんな真顔で聞かれても困るんだけどな」
 ぽり、と大地、頬を掻く。まさに絵に描いたような照れ姿。
「猪狩り、なんて変な夢だなーって思ってさ」
「確かに。なんでイマドキ猪狩りなんだろうな。イノシシ年を迎えるにあたって、干支を狩ってどうするって感じなんだが」
「だよなー」
 大地、微妙に視線を逸らす。ついでに話の方向も――って、それじゃ君が頬を染めてる理由が読者さまに伝わらないでしょ! ほら、男の子なんだから、ここは潔く!
「……大地、なんか励まされてるぞ?」
「え? なんだそれ」
 いや、だからこっちのことは気にしないで。っていうか、このまんまだと先に進まないからっ(切実)。
「………物凄い、勝手な意見だな」
「なんだかよくわかんないけど……まー、なんだ。最近、気が合うな。俺の夢にまで出てくるなんて」
「そうか? こんなの偶然だろ」
「まぁな。それにしても出現率高いぞ、お前」
 指先で鼻の頭をかきつつ、はははと笑って誤魔化す大地。密かに私は思う、いったい君はこれまでどんな夢を見てきたんだ! 今度ゆっくり聞かせておくれ。
「あー、はいはい。青い春劇場もこの辺にして。さぁ、我が精鋭たちよ、頑張ってイノシシを狩ってくるのよーっ!!」
「そうなのですわーっ!!」
 あ。火月さんとスピナッチさんがついにキレた。
 そーゆーわけで。
 みなさん、どんと頑張って行ってきちゃってください!
 夢ですから! 何があっても夢ですからーーーーっ!!


★色んなものが釣れてます。飛んで火に入る夏の虫。

 正確には冬のイノシシ――タイトル長くなっちゃったんで、こんなとこで補正してみつつ。
 はてさて最初にカメラが走りましたのは、スイーツゾーン。
 あっちからもこっちからも素敵な香りが漂う、ダイエット中の乙女には危険度MAXの場所。
 だがしかし。ここには己の体重を気にするような御仁はいなかった。それよりも、脅威の胃袋の所持者が!
「馨さん! 見てくれ、こんな可愛らしいケーキがっ!!」
「大変だ、馨さんっ!! この焼き菓子には中にみっちりクリームがっっ」
「かおるさんっ!!! ここにはこんなにのび〜るアイスクリームがっっ」
「かーおーるーさぁぁぁぁぁんっ!!」
 はじめのうちは顔を喜びのピンクに染めていた清芳、だがそのうち目が血走ってきたような気がするのは――きっと気のせいだ。
「……おかしいな。ナオさんを餌付けするつもりが、清芳さんまで」
 言いつつ、手にはこの冬限定の特大モンブランケーキをホールで持つ馨。最初はナオを呼び寄せるための甘いもの探しのはずが、今では立派に清芳のためのスイーツ調達係と化している。
「いいじゃないですか。これは夢なんですよ。夢ならどれだけ食べてもお腹は膨れません。せっかくの機会ですし、清芳さんには思う存分食べてもらいたいんです」
 そう、ここなら腐敗する心配もないし。
 ぽしょりと小さく付け加えた馨の声は、甘い香りを運ぶ風に誘われ消えた。そこにどれほどの哀愁が込められているかを知るものはいない。うん、腐敗を気にしないのっていいよね。
「あのね、あのね。僕も甘いもの大好きなんだよっ」
「おや、私もなんですよ。なんだかナオと私達とでは通じるものがありそうですね」
 るるん、たった♪
 二人の足取りを形容するならば、まさにこんな感じだろうか。
 仲良く並んで歩くのは蘭とマリオン。しかも手にはカラフルなチョコやらフルーツやらがトッピングされまくった巨大アイスクリーム。
「む、それはまた美味しそうなアイスだな。どこで売っていたんだ?」
「あのね、お店行列の端っこの方にテント出してるお店だよ♪」
「カラフルだからすぐ分かると思いますよ」
 ねーっと満面笑みの可愛い二人に後押しされ、清芳、猛烈ダッシュ。当然、「清芳さん、財布財布」と馨もその後を追う。
 ……なんだか深刻に食べ歩きツアーの様相を呈して参りましたが、収拾はつくのでしょうか?
「大丈夫です。ナオは甘いもの好き! だから私たちがこうやって自ら囮になれば、彼はきっと……っ」
「っはわぁっ!」
 マリオンが電波からの疑問に冷静に回答をくれている間、その事件は起こった。
 なんと、お約束通りに蘭が僅かな段差に足をとられたのだ!!(ちゃららーん、と事件発覚風のBGMよろしく)。
 まるで漫画か何かのように見事な孤を描き、宙を舞う巨大アイス――の突端。
「あーーーっ!!」
 悲痛な声を上げる蘭。以上、若干のスローモーション再生でお届けしました。
 かくて哀れアイスクリームは、アフロウサギの姿が刻まれたタイルの床にびろーんと、びろろーんっと。
「はわわ、僕のアイスがー……」
 めしょり、と地面に座り込んだ蘭の瞳に涙がきらり。
「大丈夫ですよ。ほら、私のを半分……」
 名実共に年少者である蘭を、マリオンが優しく気遣おうとした瞬間。その奇跡は訪れた。
「イノシシさんだ〜!!」
 どこから現れたのか、ふわもこピンクのイノシシが広がったアイスをふごふご鼻を鳴らして舐めている。
「イノシシさん、げっとなの♪」
 そのまま、蘭。むぎゅっとイノシシ――ナオ捕獲。なんだかあっさり過ぎる気がしないでもないが、甘味につられる人(?)の心は万国共通。深く考えてはいけないのだ。
「おや、蘭さんに先を越されてしまいましたね」
 そう少し残念そうにしながらも、マリオンは一人と一頭の姿を眺めてほっこり笑む。
 ちらりと見えた蘭の持つイノシシ名が書かれた紙の★マスに浮かび上がったのは『1ポイント』の文字。これから頑張れば、まだまだ挽回はいくらでも可能なはず。
「まずは蘭さんが一勝、ですね」
 きゃっきゃっきゃっきゃとナオと幸せそうにじゃれる姿を眺めながら食べるアイスの味は、これまた格別だった。
「………って、全然割り込めないっ」
 と。その頃、近くの物影では。
「いや、別に僕も甘いもの嫌いじゃないし。でも、それでもあんなに食べてたら年をとってからの糖尿病が危険なんじゃないのかな?」
 魅惑のスイーツゾーンに入り損ねた――正確には、先人たちのあまりの勢いに出そびれた――遠夜が、ものすごーく遠い目をしながら、将来に対する不安を抱えていた。
 ちなみに、しつこいようだがこれは夢なので、そんな不安を抱く必要はないのだよ。
「そっかー。それなら僕も心置きなく――」
 自分自身を解放して――どう解放するのだろう?――イノシシ探しに没頭できる、と遠夜が謎の悟りを得た瞬間、彼の視界の端に巨大な漆黒の狼が映る。
「む、こっちから四ノ宮先輩の匂いがするっ!」
 しかも、喋る。
「ははは、さすがは夢だなー。動物が喋るなんてファンタジーだ」
 例えばその声が、さきほど聞いた大地の声に似ているだとか、そんな事は気にしないことにして。
 猛烈ダッシュで走り出した狼の後姿を、遠夜は夢見る少年の瞳で見送ったのであった。

 くんかくんかくんか。
 ところ、変りまして。
 さきほど遠夜に目撃された狼が突撃した先は――ホラーハウス。ちなみに既に狼の姿はなく、あるのは烏有大地、その人のお姿。この辺も深く追求すると色々面白いことになりそうなのだが、本人無自覚であるがゆえにさっくり割愛。
 割愛しすぎて「わけがわからんわー!」と仰る方は、無自覚コンビ烏有&環和の来るべき未来を少しだけ案じてあげてください。
「いちってヤツ、なんだか四ノ宮先輩に似てるな〜……って思ったんだけど、これってやっぱり当りか?」
 病弱で体力皆無の基の分まで! と張り切る大地、イノシシの『いち』を名前から学校の先輩でもある四ノ宮・一を連想したらしい。
 他にもやっぱり名前から色んな人物を想像した人がいるようだが、その辺は、まぁ、その、あれ、それ。だって夢の世界なんですもん♪←たいがいしつこい。
 かくて大地、野生の勘に任せてホラーハウスの中をまったり徘徊。
 かと、思ったら。
 ここでも聞こえて参りました、例によって例の声。
「ふむ……なんだか迷いこんだようですね」
 や。さっきのゾーンにいて、どこをどうやったらここに迷い込めるか謎だから。つーか、むしろどうやって迷い込んだかを聞きたいから。
「なるほど、ホラーハウスというやつだな。しかしソーンでアンデッドを見慣れているから、別に怖くもなんともないな」
 しかも! そんな驚かす係の人をがっくりさせるような言葉をシラっと。シラーっとっ!
「見てください、清芳さん。こんにゃくが飛んできましたよ。さすがにこれはちょっとぬるっとしますね」
「いや、ここはヒヤっとするところだろう。馨さん」
 頭上に飛来したこんにゃくをしっかりキャッチした馨、今晩のおかずに持ち帰るものいいかもしれない。ってことは、今夜はおでんでしょうか――と頭の中で想像を膨らませる。
「ダメだぞ、馨さん。今夜は大晦日で、明日は元旦なのだから。今夜は年越し蕎麦で、明日はおせち料理と決まっているんだ」
「っは! そうでしたね」
 思考をしっかり読まれたことに対するツッコミも忘れ、馨は清芳の弁に至極納得。
「それならこのこんにゃくはおせちのお煮しめに使うことにしましょう」
「それはいい考えだ。ところで馨さん、栗きんとんの準備は万全かな?」
 聞こえてくる会話はほのぼのまったり。
 さて、ここで軽く現状を注釈がてら記載しておくと。二人の周囲には機械仕掛けの骸骨が槍だ剣だをもってずらりと取り囲んでいたりしました。
 やー……緊迫感ないって凄いね。否、慣れの勝利って怖い、かな?
「って。そうじゃなかった。せっかくだからここでいちさんを探しませんか?」
「おぉ、それは確かに。怖がりほど、こういう場所に引き寄せられると言うしな」
「……別んとこ探そう」
 馨と清芳が本来の目的を思い出した瞬間、大地はくるりと二人に背を向ける。
 このまま彼らの近くにいては、いちは幸せオーラに当てられてヘバってしまうかもしれない。っていうか。あの二人の近辺だけ、全然ホラーハウスが意味をなしていないから。
「んー……怖いから、狭いとことかに身を隠してそうなんだけどな。って! そうか!」
 てくてくと歩きながら物陰の多い場所に到達した大地は、何かを思い付いたように顔を輝かせた。ち・な・み・に。なんだかんだ言いながら、彼自身もホラーハウスの趣向を一切無視しきっているのは言うまでもない。
 哀れ……ホラーハウス(ほろり)。
「お化けが出たぞーーっ!!!」
 って、突然なにっ!?
 うっかりぼんやりしみじみしていた地の文さえも驚かすほどの大地の絶叫。あまりに突然の出来事に、周囲に控えていたスタッフ――いるんです、一応――の寿命も5年ほど縮まった――かと思ったら。
「四ノ宮先輩、めーっけ!」
 既に名前が『いち』から『四ノ宮先輩』に摩り替わっちゃってるのはさて置いて。それはまさに早業、肉食獣のような機敏であり獰猛な動作。
 大地の腕の中には、がくがく震える一頭のイノシシの姿がしっかりと。
「ふっふっふ。驚かせれば出てくるって思ったんだよな〜♪ 案の定、案の定」
 ちょっとばかし説明くさい台詞をどうもありがとう、烏有くん。
 そうなのだ! 物影に潜んでいたいちは、大地の雄叫びに動じて飛び出してきてしまったのだ。
 悲しいかな、怖がりの性………。
 とにもかくにも、大地の★マスにも『1ポイント』の文字が輝いたのであった。

「ふむーん、お化け怖いだよ〜」
「あれ? 藤井?」
 ホラーハウスから出口を目指して歩き始めた大地、唐突ですが膝を抱えて蹲る蘭を発見。
 どうやら、彼もいちを探しにここまで来たらしい。
 そいでもって、さっきの大地の雄叫びに思いっきり当てられちゃったらしい。
「もう大丈夫だぞ。ほら、一緒に出口に行こう」
「んーんー。そのいち貸して? 一緒にメリーゴーランド乗るの」
 上目遣いの瞳うるうる攻撃!
 大地のハートは射抜かれた!!
 →烏有大地取得ポイント、そのまま藤井蘭に移行。
 い〜んです。可愛ければ! 天がそれを許すんです!!

 【ただいままでの鐘の数:32】

「ねぇねぇ、ところで。イノシシの雇用状態ってどうなってたの?」
「へ? 唐突に何かしら? シュラインさん」
「だってねー。逃げ出すからには、それなりの理由があるんじゃないかしらって」
 その頃のシュライン、何故か火月とスピナッチの控え室に←あったんです。
「う」
「何、どもったってことは心当たりあるの!?」
「まぁまぁ、シュライン様。追われたら逃げたくなるのがイノシシの性ですわ(きっと)。それより……何をさり気なく耳を欹ててらっしゃいますの?」
 別に後ろ暗い所は何もないんだが。探偵業務百戦錬磨のシュラインにつめよられ、思わず言い淀んだ火月――そんな可愛いタマではない気がするが、これは夢――に、スピナッチがすかさず助け舟を出す。
 いや、単純に気になった事を聞いただけかもしれないが。
「んー……なんとなーく聞き覚えのある名前とか多い気がしたから。案外、他の名前のも隠れてないかなって思ってv」
 言いつつシュライン、指折り具体的に名前を挙げようとして――火月に口を塞がれてしまった。
「ダメよ、シュラインさん。そこから先は、これからのお楽しみっ!」
 以下、続く!!


★二兎追うものは一兎も得ずと言うけれど、二兎追うものは命危うし?

「や。確かに堂々としてて隠れるのが嫌いとは書いてあるけどさ」
 大地、呆気にとられて天を仰いだ――まさに字の如く。
 思わずポカンと口が開いてしまうのも仕方あるまい。何故なら、振り仰いだ視線の先にイノシシの姿が二つ。
「……イノシシって高所恐怖症とかじゃないのかな?」
 いや、その感想もちょっとビミョーだから。
 なんて思わず地の文にツッコミをいれられたのは遠夜。ちなみに本日の遠夜、何かがおかしい。どことなく、夢見る眼差しがいつもと違う。
「高所恐怖症の女の子を助けるイベントでフラグが立つだろ。でもって実は彼女には双子の妹がいてさ。そっくりの外見に戸惑い、やがてはすれ違う恋心」
 もしもーし?
「恋したのは外見なのか、それとも中身なのか。試されるうちに、ますます募る思い。けれどそれは、もう一人の女の子のハートにも火をつけて」
 もしもーっし!?
「榊!? 榊!?」
「ここまで来たら双子ルートは確定だろ。あとはベストエンディングにもっていくか、それとも友情エンディングにもっていくか――はたまた禁断の双子エンディングに流れ込むか」
 待て、本当に待って! 帰ってきて、榊くんっ!!
「ホントだぞ、しっかりしろ榊! 目を覚ますんだっ!!」
 電波からの心配を嗅ぎ取ったのか、はたまた深刻に背筋が寒くなったのか。大地、たまらず遠夜の両肩をつかんで乱暴に揺さぶった。
 がくがくがく。がっくりがくがく、がくがっくん。
「っは!? 僕は」
「良かった……気がついたか?」
 きっかりしっかり8回ほど肩を揺さぶられ、遠夜ようやく正気を取り戻す。彼の瞳に宿った真っ当な輝きに、大地の額に浮かんだいや〜な汗を安堵の溜息と共に拭う。
「しまった。知り合いに借りた恋愛ゲーに頭が飛びかけたよ」
 がくり←今度は大地の肩が落ちた音。
 うん、まぁ。確かにあーゆーのはハマるからね。ハマるから気持ち分かるけど、本当にどうした!? 榊遠夜! 今日は本当に何かの解放記念日か!?(←失礼な)
「別にそう言うんじゃないけど。でもさ、やっぱりこういう時に狙うのなら女の子の方がいいじゃない。サイキちゃんとかトウカちゃんとか」
 既に「ちゃん」付けになっているのはさて置きまして。今じゃすっかり立場逆転し、著しく遠い目モードに突入していた大地は、長い長いながぁーーーい溜息にシビアな現実を織り交ぜた。
「まぁ、榊の心意気はわかった。そしてあの天守閣のてっぺんにいるイノシシもサイキとトウカだと俺も思うが――残念ながら俺たちには翼がない」
 そうだ、俺たちは地上の星なんだ。天の星には手が届かない――なんだか大地も壊れてきた――と彼が指差した先は、この一帯で一番高い建物であるお城の天守閣。
 なんとその屋根の上に、まさに「威風堂々」の構えで昼寝をしているイノシシと、その影に隠れるようにしているイノシシが各一頭。
 元は地上の星である彼女――ということにしておこう――たちがいったいどうやってあそこまで登ったのかは、後ほど明らかに。
「なーんだ。そういうことなら、式神の汕吏を呼び出せば問題ない♪」
 そういうと、遠夜は己の式神である鷲の汕吏を呼び出そうと符を構えた。が、それを哀れむような視線の大地に留められる。
「今からじゃ追いつかない」
「へ?」
「あそこに翼のあるヤツが」
「紹介、ありがとさーん♪」
 ふわさ、ふわさ、ふわさわさ。
 軽やかな羽ばたき音と共に、地上の二人の耳に暢気な関西弁が届いた。
「しまった! それは反則だっ!」
「反則ちゃうよー♪ 持って生まれた体は有効に使わなあきませんって事やん♪」
 地団太を踏んで悔しがる遠夜に、そんな台詞を贈ったのはもちろん多祇。そうです、彼の背中には立派な翼があるのです! なんて便利! 渋滞知らず、信号知らずっ!
「ふっふっふ〜。点数には拘らへんし、みんなで一緒に幸せなれればそれが一番やけど。そいでも女の子は譲られへんな〜」
 今にも口笛吹き出しそうな勢いで、多祇、るるるんっと空を華麗に舞う。転がり込んできた絶好のチャンスに、思わず空中三回ひねり。
 どんがらぴっしゃーーーんっ!
 ひゅるり〜〜らら。
 どすん。
「なっ!?」
「あのイノシシ、魔法を使う!?」
「や……出来たら僕のことも、ちょっとでいいから心配してくれたらえぇなぁ……なんて(ぷすぷす←何かがくすぶる音)」
 突然の激音にざわめく地上星組。
 ここで先ほど起こった音の原因を説明しよう。

 1.どんがらぴっしゃーーーんっ!
   トウカとサイキが合体魔法で雷を打った音。
 2.ひゅるり〜〜らら。
   放たれた雷が多祇を直撃し、そのまま彼が落下する音。
 3.どすん。
   天空の覇者だった多祇が、地上星組の仲間入りを果たした音
   (ようは地面に激突した音)

「せやった……あの双子のお姫さんは、魔法が使えるんやった……」
「なるほど、それであの天守閣まで登ったってわけか」
 多祇の末期の言葉に、大地はイノシシが高い場所に登っていた事に得心する――でもって、彼の視線はイノシシに集中しているため、多祇を介抱する余地はない。
「それに、僕もいまはそんな余裕なし!」
 見事な宣言、ありがとう。
 かくして遠夜、ずびしっと構えた――発言通り、多祇はスルー――呪縛符を目にもとまらぬ速さで2頭に向かって放った。
 え?
 地上から天守閣のてっぺんまで符が届くんですかって?
 ノンノンノン。遠夜くんは立派な陰陽師ですよ。それくらい朝飯前なんですっ!
「今日の呪縛符はちょっと凄いよ〜、何せ来る年はイノシシ年だからっ!! 猪突猛進の年、万歳!」
 や、それはそれでやっぱりちょっとわかんないんだけど。えぇーい、今日の遠夜はなんでもありだっ!
「そう。今日の僕はなんでもありなんだ。だってこれはまさに夢だから。ってことで、烏有くんっ」
「へ? 俺??」
 一枚目の符がひらりと双子イノシシにかわされたのを見て、遠夜、くるりとずびしと大地に向き直る。
「そう、君! 烏有くん、体力ありそうだから僕をおんぶして走るっっ」
「はいーー!?」
 大地の声、見事に裏返った。さもありなん。
「だって見てごらんよ。あの双子の見事な連携プレー」
 見ると双子イノシシ、遠夜の呪縛符に危険を察知したのか。トオカがサイキを背負い、猛烈な勢いで城の側面を駆け下り、そのまま長い長い直線コース――あったんですっ!――を怒涛の勢いで駆け出した。
 なんだか色々物理法則とか大事なことを無視しちゃってるけど、それが魔法。OK?
「そう、見たものこそが真実。だから、僕らも二人であのイノシシを追うんだ」
 言うが早いか、遠夜は軽い身のこなしで大地の背に自分のポジションをゲット。
「さぁ、行くんだ! 烏有くん。全ては君の肩にかかっている」
「かかってるのはお前の体重だーっ!!」
 なんで一緒に走るってことを思いつかない!?
 とゆーか、どーして俺が基以外の(ぁ)男を背負わなければいけない?
 それよりなんだ、異様に重いぞ、衣装のせいかっっ!?!?
 渦巻く疑問はそれこそ山、山、山、山のよう。しかしそれら全てをぐっと飲み込み、大地は何かをかなぐり捨てるように走り出す。
 何がなんだかもうめちゃくちゃだが、とにかくイノシシを捕まえなくてはいけないのだ。そのためには、あの双子を今ここで見失うわけにはいかない。ならばもう、背中の重さなんか無視して突っ走るしか彼には道が残されていないのだ……?
「うーん、素直に振り落とすんが早いと思うけどなぁ……」
 たまらず零れた多祇の感想は、まさに風を切る勢いで走り出した大地の耳には届かない。さすがだ、これこそ苦労性の鏡。涙を誘う光景ですっ!
「うぉぉぉぉーーーーっ!」
「凄いぞ、烏有くんっ!!」
 漆黒の弾丸と化した二人――と言ってよいのか微妙に申し訳なさがいったりきたり――は、みるみる間に双子イノシシとの差をつめる。
「そしてっ」
「は?」
 残りの距離が10mほどになった頃、大地は不意にジグザグ走行を開始した。それに背中の遠夜が疑問の声を上げた瞬間、直線コースで走っていたらば居たであろう場所に、炎の柱が立ち上る。
「片方が背中にいるならば、魔法を使ってくるのはセオリー! 相手が魔法使いとわかっていれば当然の対処だっ」
「なるほど!」
 その後も、襲い来る氷の刃や水の嵐、光の壁に落とし穴、風の槍の攻撃を奇跡の運動神経で見事にかわし、大地はイノシシたちに大接近。
「今だ、榊っ」
「了解っ」
 疾走する背中の不安定さをものともせず、それまで気合という気合を込めていた呪縛符が遠夜の手から放たれる。
 白い燐光を帯びた紙は、まるで空を薙ぎ払う刃のような鋭さでピトっと二頭に張り付いた。
 途端に、まるで急ブレーキでもかけたように下のトウカの足が止まり、上のサイキがころりと転がり落ちる。
 烏有&榊のゴールデンペア――いつの間にかそんなことに――の作戦、無事に成功!
「やったね、烏有くん」
「いや、榊の符の力のおかげだ」
 二人の少年が互いを労うように――この場合、労われるのは大地だけでいいような気がしないでもないのだが――爽やかに互いの手を取り合った。
 様々な苦難もあったが、無事に捕獲できたのならば、それで何もかもが報われた――そう、信じて。
「ダメダメや〜ん。女の子には優しくせな、紳士たるもの」
 信じ――て?
「「!?」」
 さっきまで遠くでヘバっていたはずの関西弁が二人の耳を掠めた瞬間、ふわりと優しい一陣の風が吹き上がる。
 慌てて身を翻す、元祖地上星コンビ。
 だが、時は既にとっても遅かった。
「窮屈なお城暮らしにあきあきしたん? せっかくやから空の散歩でもして心和まそな」
 ふわりふわふわ、ふんわりふわ〜
 有翼人、多祇。別に決して他意があったわけではありません。ただただ純粋に、とってもとってもとーっても純粋に、女の子――イノシシだけどね――の身を案じただけ。でもって彼女らを空中散歩にお誘いしたかっただけ。
 そんなわけで。トウカとサイキを両脇に抱え、大地と遠夜からは手の届かない遥か高みへレッツゴー。
 その時、多祇の★マスには2行の文字が浮かび上がったのだった。
 『トウカ……3ポイント』
 『サイキ……4ポイント』
 合計7ポイント、多祇ゲット。

「なぁ、烏有くん。僕は多祇くんめがけて呪縛符を投げてもいいかな?」
「あぁあぁ……俺、ポイント略奪2回目ーっ!」
 そうそう、確か榊くんも基本は苦労性だったっけね。そんなわけで、苦労性が二人集まればこんな結果になるんです。まる。

 一方、その頃。
「わはは、凄いぞ、凄いぞ! 回る、回るぞ馨さんっ!!」
「…………(目ぇくるくる)」
「飛べ! メリーゴーランド! これで大地を追いかけるんだ」
「きゃ〜! いち、メリーゴーランドくるくるだよ〜♪ ナオも楽しい?」
「GOGOGOGOGO!」
 清芳は猛烈にコーヒーカップを回し、ついでに馨の目まで回し。
 基はメリーゴーランドの馬車に謎の命令を下し。
 蘭は当初の目的通りイノシシたちとメリーゴーランドを堪能し。
 マリオンはゴーカートに乗って人格が変っていた。
 ………うん、いいけどね。遊園地堪能してもらって。でも着実に鐘はつかれ続けてるってのだけは覚えといてもらえたらな〜……なんてね。
 まぁ……どーでもいいけどさ。
 はっはっは。

 【ただいままでの鐘の数:61】


★そして再び双子地獄。と言っても地獄なのは……?

「なんだかタイトルに全ての状況が凝縮されちゃってるって感じよね」
『ぶひっ』
「それもまぁ、やっぱり大事なのは人の縁ってやつよね」
『ぶぶひひぶいっ』
 こんなんで本当に会話が成立してるのか? なーんてのは相変わらず現在ぶっちぎり進行形でつっこんじゃいけないところだ。
 そゆわけで。
 シュラインとイノシシのみどりこ、なんだかものすごーく意気投合していた。しかも。カフェの真っ白なテーブルの上に、見取り図らしきものを開いて、額をつき合わせていたりする――人間とイノシシだが。まぁ、そこは本人(猪?)たちが気にしてないようだからノープロブレム。
「なんていうか……少しだけ。確かに少しだけだけど、てったっていうイノシシにご愁傷様っていってあげたくなるよな」
 そんな女性――と多祇ならきっぱりみどりこのことも言い切るだろうから、女性扱いで――二人の謎に満ちた作戦会議を横目で見つつ、ちょろっと溜息を零したのは基。
 追求する部分はそこじゃないだろ、と彼の背中をずびしと叩いてあげたいところだが。彼はアレ、見たまんまを現実としてすなおーに受け止めちゃう天然くん。そんな彼には、なんだかピントがずれてますよー? なんて事を指摘させるには、かなーり荷が重い。
 つか、不可能だ。
 何せよく見りゃ、基がまたがっているのはメリーゴーランドで馬車をひっぱっていた馬。もちろん、作り物なんだが――世の中不思議が満載だv
「念じれば、思いは通じるもんだ」
 や……それだけで無生物を生物にされても困るんだけどね。
「だって現実にこの馬は俺をここに連れてきてくれた。立派な移動手段だ。見えるものから目を背けてはいけない」
 ………背けたい現実って、絶対にあるよね。っていうか、意地でも背けたくなることって結構あるよね。見ちゃいけないっていうか、敢えて見ないフリを決め込むことの方が親切だったりすることとか。
「余計な親切、大きな御世話だと思うんだが。この場合」
 誰か!
 誰かこの人を少しだけ黙らせて下さいっ!
 あまりにも真っ白すぎる人は、なんだか毒になることもあるんですね……あはは。
「なるほどね――確かにその作戦ならいけそうだわ」
『ぶひぶひぶぶひ』
 ……なんだかこっちも不思議意思疎通を成り立たせっぱなしだし。
「だって、これは夢でしょう? だから作り物の馬が走ったって不思議じゃないわよ。イノシシと作戦会議ができるのなんて朝飯前でしょ?」
 へぷちっ!
 設定を見事に逆手(?)にとったシュラインは、さっくりと地の文にとどめをさすと、みどりこが取り出した――どこから? とか問うてはダメだ。彼女のお腹には、きっと異空間に繋がる扉があるのだ――何かの携帯端末を受け取った。
 あー、ここで軽くこれまでの流れを軽く説明しておきましょう。
 各所で阿鼻叫喚狂喜乱舞の声が上がる中、シュラインは地道に一つの足音を追っていた。彼女の耳は摩訶不思議な地獄み(以下略)。地面に耳を押し付け、じーっとしている姿は若干微妙であったかもしれないが。
 かくして彼女は目的の人物――じゃなかった。イノシシと見事に邂逅を果たすことになったのだ。そう、てったを狙っているみどりこと。
 暫しじっと見つめあう一人と一頭。間に走るのは捉える者と囚われるものの緊張か!? と思いきや。
 たっぷり一分、じっくり固まった直後。彼女たち二人は、しっかりと互いの手を取り合っていた。片方、前足ってのが正解かもだが、それは彼女の尊厳に傷をつけそうだから言わぬが花。
 かくして無言の密約――実は新春のお節料理で裏取引が成されていようとは、いったい誰が気付いただろう?←テレパシー会話なので誰にも分かるはずがない――により互いの利害が一致した二人は、共同戦線を張ることとなったわけだ。シュラインの★マスには既に『2ポイント』の文字。
『ぶひひひひ、ぶひひひ』
「己のポイントなど意味はない。てったを捉えるためなら、私は死神にでも魂を売るわ――とみどりこさんは言ってるわ」
 おぉ、さすがは翻訳家のシュラインさん。イノシシ語もお手の物?
 言いつつ、シュラインは手元の携帯端末を器用に操る。備え付けられた液晶画面には、ぱっぱっぱっとこの施設内と思われる映像が次から次へと映っては、切り替わる。
「……なるほど。監視カメラの映像、というわけですね」
「そうよ――そして環和くん、君には重要な役割があるの」
 がしっ。
 そう、まさにそう力強く形容するのに相応しい勢いで、シュラインが基の肩を掴んだ。気がつくと、みどりこも額で基の脹脛のあたりを押している。
「は?」
「……貴方、体弱かったわよね?」
『ぶぶぶ』
「え……まぁ、不本意ながら」
「そんな環和くんだからこそ出来る役目、根っからのお人好しの鉄太さん……じゃなかった、てったをつる大作戦!」
『ぶひーっ!』
 それから5分後。
 シュラインとみどりこに案内されるようにしてメリーゴーランドの馬で基が移動した先は、救護室まであと少し――という距離にある散歩コースの一角だった。
 比較的長い直線を誇るこの場所は、イノシシが猛烈な勢いで走るのに適した場所。さらにはシュラインの脅威の耳は、この辺りで蠢く足音を聞きつけていた。
 そして基は今。横倒しになった馬の隣で、ぱったりと倒れている――もちろん、シュラインが指示した絶好のポイントで。
「体調が悪くなった少年が救護室を目指す途中、力尽き倒れた……」
『ぶぶいぶい』
「誰かが助けてあげなくてはっ――この状況をてったが見逃すはずはないわ」
『ぶいぶいぶい』
「そして現れたところでこのロープを引っ張って……」
『ひっ』
 物陰から、こそりと見守るシュラインとみどりこ。
 彼女らの手にしっかと握られているのは太いロープ。どうやらこれを引けば、基が倒れている付近にまで引っぱられたロープがピンっと伸びて、てったの足を止めることが出来る仕掛けになっているらしい。
 果たして彼女たちの読みは――
「!?」
『……ぃっ!』
 ドドドドドドドドドドドドドドドドッ
 遠くに聞こえる雷鳴のように、低い地鳴りとともに濛々とした土煙が上がったのは、彼女たちが作戦の成功を確信した直後。
「来た!?」
『ぶぶぶーっ!』
 がばりっと彼女たちは揃って轟音の中心にいる人物へ視線を向けた――ら、ば。
「もーとーいーっ! 大丈夫か!?」
 ずさーっ←シュラインとみどりこが見事に、ずっこけた音。
「基、どうした? また貧血か? お前は無茶するなって言ったろ」
 ………現れたのは、大地だった。
 策士、策に溺れるとはまさにこのことか。
「しまったわ……。環和くんが倒れたら烏有くんが出ることを失念してたわ……」
『ぶぶー』
 がくりと地面に崩れ落ちる二人――と、シュラインの目の前に何かがどさり、と落ちて来た。
 ぴくぴくと小刻みに体を痙攣させ、泡を吹いているソレは。
「……爆走する烏有くんに撥ねられちゃったのかしらね?」
 シュラインの瞳に、きらりと涙が光る。
 それもそのはず。だって落下してきたのはてっただったのだから。
 彼女の読みは確かだったのだ。てったはシュラインやみどりこの予想通りの行動をしようとして――不幸な事故に巻き込まれてしまったらしい。
「それでも、まぁ。ゲットはゲットよね♪ 烏有くん、ありがとー」
 礼を言う相手の姿は既にない。基の姿も消えているから、どうやら大地が抱えて救護室に駆け込んだのだろう。
「ちょっぴり漁夫の利? 阿鼻叫喚レシピも用意してきてたけど……要らなかったみたいだし」
『ぶいぶいぶひっ』
 シュラインの★マスには新たに『3ポイント』の文字が浮かび上がる。通算、5ポイント。
 てったに合掌。
 ここでさらに恐怖の阿鼻叫喚レシピなんてのを耳元で読まれたりした日にゃ、確実にあの世へ旅立ちますよ、いや、マジで。

 一方、その頃。
「大丈夫か、馨さん?」
「ははは……申し訳ないです、清芳さん」
 馨、ぶいぶい回されたコーヒーカップにすっかり酔っ払って真っ青になっていた。降りる時には自分の足で立てず、清芳にしがみついていたくらい←夫婦だからセクハラにはなりませぬ。
 そんな感じで今にも戻し――や、それは彼の顔にはちょっと似合わないから我慢してもらうことにして。コーヒーカップから少し離れたベンチに二人で並んで座って休憩中。
 手には、清芳が馨の身を案じて買って来た冷たい飲み物――さっきちょっと口に含んだら、激烈に甘くて胃の中逆流を更に誘発しそうになった――がしっかりと握られている。
 まぁ、なんだ。
 カップルで過ごすのなら、こんな時間もありなのだろう。
「なんや、馨はん。なさけないな〜」
 でもって、ラブラブの間にはお邪魔虫が乱入するのは、古来よりの慣わしである。馬に蹴られて何とやらって言うけれど、個人的には絶対に馬の方が統計的には強いと思うんだけどどうでしょう?
 そゆわけで、両脇にふりふり衣装を着せた――もちろん、いつの間にやらの彼の手作り――イノシシを抱え、にっこりほわふわな笑顔で清芳の隣――この位置取り、物凄く大事――に陣取ったのは多祇。
「……何の用、ですか?」
「やー、あっち方にめっちゃ美味いチョコレートを売っとる店を発見してな。これは是非に清芳さんに教えたらんとなーって思って」
「何!? チョコレート!?」
 ぎろり、と馨ににらまれても、多祇は何処吹く風でそれを流して、清芳を魅惑の世界に誘う――が。
「そうだな。馨さんが元気になったら二人で買いにいくとしよう」
 多祇の言葉に瞬時に目を輝かせた清芳だったが、多祇とは反対側の隣に座る馨の手をしっかと握ると、まだ青い馨の顔を下から覗き込んだ。
「――だ、そうですよ」
「ちえー。おもろないなー」
 結局、当てられただけやん。
 小さく笑った多祇は、不敵に笑んだ馨に、翼をはためかせて労いの風を送るのだった。

 それから、そして。
「わーわーわー! アフロウサギさんグッズがたくさんですーっ! アフロウサギさん、ゲットなんですっ」
「ふわふわもふもふ……っ」
 いつの間にやら仲良しになったマリオンと蘭が、アフロウサギグッズ売り場でこの世の天国に遭遇していた。
 ちなみにマリオン。てったを狙うつもりでいたのだが、シュラインとみどりこの発する奇怪な空気に、速やかに撤退を選択していた。おそらくそれは偉大な決断。そうでなかったら、今頃マリオンと大地で正面衝突事故が発生していたことだろう。しかも人身事故――ってか、人身だけ事故。
 とにかく、そんな危険を回避した先にあったのは。あっちを見ても、こっちを見てもふわふわもふもふ、もっこもこのアフロウサギグッズが満載ワールド。
 実物大のぬいぐるみから、小さいものではふかふかの小銭入れまで。スイーツゾーンに並ぶ、魅惑ゾーンに二人の瞳はすっかり釘付け。
「あー! マリオンさんっ。こっちのUFOキャッチャーのアフロウサギさん、かわいいですっ」
「それは是非挑戦しないとですね」
 ちゃりーん、とコインを入れたマリオン。操作ボタンをタイミングよく操作する――そして。
「わぁ! すごいすごい!!」
「よしっ!」
 うごごごごっとアフロウサギの山の中に潜り込んだアームは、確かな手ごたえをもって浮上した――ら。
「あれ?」
「……ん?」
 ごいーんと上がってきたアームがしっかりと捕まえていたのは、何故かイノシシ。ふわふわもこもこ純白の、ちょっと耳が眺めのイノシシ。
「これって!?」
「ひょっとして隠れイノシシ?」
 ぴんぽーん♪
 マリオンの★マスには『隠れイノシシ よる ゲット。3ポイント』という文字が浮かび上がっていた。
「へー……こんなとこに隠れイノシシがいるんだな」
「そうだな」
 新たに通りかかったのは、大地と基――ちゃんとさっきの状況は説明済み。
「ははは。俺もなんかゲットしたりしてな?」
 そう笑いながら大地、手近にあったぬいぐるみの山が置かれた籠に手をつっこんだ。
「え?」
「どうした? 大地」
「……あったかい」
 もふ。
 ぬく。
 おそるおそる大地、指先に触れた人肌程度の温もりを引き上げる。
「まさかっ!?」
「………苦労は報われるってことなんだな」
 大地が引き上げたのは、マリオンがゲットしたイノシシとよく似たイノシシだった。ただ、こっちのがちょっと少女ちっく。
 そーゆーわけで。大地の★マスには『隠れイノシシ あっしゅ ゲット。3ポイント』という文字が浮かび上がっていた。

 【ただいままでの鐘の数:89】
 はわわわわっ! 残りは20を切っちゃってましたよーっ!!!


★かくして漆黒コンビ降臨す……って、そんなかっこいいもんぢゃないけど。

「もう残り時間がないわっ! ここはつべこべ言ってないで共同戦線ねっ」
「空からの偵察なら任してや。鳥さんたちにも協力してもらうし」
 シュラインの気合の入った声を受け、多祇の翼がふわりと宙に舞う。
 残るイノシシはホクトとゆかり。どちらも外見は黒を主体としている為、物陰などに潜まれては発見が難しくなるのは必定だ。
「……ホクトさんはともかくとして……ゆかりさんはラスボス、といったところでしょうか」
「ん? どうしてだ馨さん?」
 眉間に皺を寄せ、暗く沈んだ表情――一応、コーヒーカップ酔いからは回復した――馨は、腕を組んだ姿勢で低い唸り声を上げる。
「このイノシシの事が書かれたメモ。ゆかりさんの部分だけ、地の文の悪意を感じるんです」
 ――って、おい。
「……確かにそうだな。あまりと言えばあまりな、ケチョンケチョン具合。これには意図的なものを感じる」
 ……清芳さんにまで納得されちゃったし。
「まぁ、地の文はともかくとして。その名を持つ人物が一筋縄でいかないのは事実ね」
 シュラインさーん。その『ともかくとして』ってゆー扱いも、ちょっと傷付くなぁ……
「とにかく。五月蝿い地の文はさくっと無視して全力を尽くすしかないよね」
 あ。榊くんがいつもの榊くんに戻ってる!?
 捕獲されてないのが男だけになっちゃったから?
「………地の文に呪縛符かけてきたほうがいいかな?」
「それはやめといた方がいいな。呪縛符で固めてしまうと、物語がここから進まないことになる」
「だな。推奨はサイレントとかそーゆー系だな」
「らじゃ」
 もがー!
 もがもがーっっ!
 基と大地の提案を受け、地の文に怪しげな符を放った遠夜。満足気な笑みを携え、現実に立ち返った。
 そうだ、これが現実。
 例え夢の世界であろうと、崩壊の危機に瀕しているのは動かざる真実。
「ホクトは影を好むっていうから、木陰とか建物の間とかそういう所を中心にみて回るしかないわね。ゆかりは……案外灯台元暗しってこともありそうね」
 額に指先を当て、じっと集中するシュライン。鐘の音や、彼女たちの努力を嘲笑うように雑音が増えてきた――きっとそれは地の文の念波――世界の中から、目的の音を探し出そうと極限まで聴覚を研ぎ澄ます。
「……ダメね。まるで何かの怨念に邪魔されてるみたいに、上手く聞き取れないわ」
 だからきっとそれは(以下略)。
「仕方ありません。グループに分かれて四方から天守閣を目指すようにして地道に洗っていきましょう」
「空には多祇さんもいるしな。きっとなんとかなる!」
 肩を落としたシュラインを励ますように、馨が提案すれば、清芳もことさら明るい声で場を盛り上げる。
 大丈夫。
 願えばきっと夢は現実になるのだ。

「ふえぇ……ひょっとして、僕ら迷子ですかぁ〜?」
「………そゆ、ことでしょうか?」
 その頃。
 マリオンと蘭は、困りきった顔で案内板を見上げていた。
 どーやら、彼ら二人。ばっちり迷子になってしまったらしい。
「どうしましょう? どうしましょう? 約束の時間までもう間がないですよ?」
 こうしている間にも、ゴーン、とまた一つ、タイムリミットを示す鐘の音が響く。
「よし! 困ったときは!!」
「困ったときは!?」
 ごそごそごそ。
「………マリオンさん、それ……お布団?」
 ここぞ! とばかりに威勢のよいマリオンに、目を輝かせた蘭。しかしながら、それはみるみる間に雲っていく。
 何故なら。マリオンがどこからともなく引っ張り出したのは、そう! まぎれもない布団一組。
「失礼な。ちゃんと羽毛布団です」
「うん。確かにふわふわのさわり心地」
 蘭、感触を確かめて納得。
「藤井くん、日本には『果報は寝て待て』ってことわざがあるんです」
「へ?」
 マリオン、ごそごそ布団に潜り込みながら、真顔で何かを説きだした。
「果報、つまり良い結果は寝て待ちなさい。慌てず騒がず、こういう時は寝てしまうのが一番なんです」
「……な、なるほど」
 切々とまるで魂に訴えかけるような響きを伴った――そこまで本当に大げさかどうかな著しく謎だが――マリオンの言葉に、蘭は深く感じ入ったかのように静かに頷く。
「というわけで、さぁ一緒に」
「うん! 僕も分かったよ。家宝は寝て待て、だね!」
 やや漢字違いがあるは、そこはそれ。
 かくして案内板の下、蓑虫のようにまぁるくなって眠る可愛いの担当が二人。
 夢の中で、なおも寝る。
 二人ともきっとすくすく、大きく育つに違いない。

「いましたか?」
「いや……どこにも見当らない」
 南の方角から建物に沿って進んでいるのは清芳と馨。
 影という影を覗いて進むが、一向に当りはない。
 逸る気持ちとは裏腹に、虚しく鐘の音だけが重ねられていく。
「――っ!!」
 その時。
 何かに呼びかけられたように、はっと顔を上げた清芳が僅かに息を飲む。
「清芳さん!?」
 生涯の伴侶の動向に身構える馨――そして彼も、別の意味で息を飲んだ。
「……さやかさーん?」
「馨さんっ! どうしよう!! あんなところにお菓子で出来た門松がっっっ!!!」
 清芳、絶叫。
 心の底から、感激の雄叫び。
 清芳の視線の先には、彼女を身を震わせるほど立派なスイーツてんこもりで作られた門松が燦然と輝き鎮座していた。
 ま。人生ってそんなもんです。
「くぅ……こうなったら、全てのイノシシを捕獲して牡丹鍋に……げふがふっ」

 【ただいままでの鐘の数:96】

「大丈夫か? 基」
 大地は隣を並んで走る基の顔色を慎重に伺う。
 確かにここは夢の世界。だがしかし、それは基を構成する礎が変ったということにはならない――つまり、基の意識が『自分は完璧な健康体だ』と心の底から思い込まない限り、彼の体はこの世界でも脆いままだということ。
「大丈夫だ。ここは夢の世界だからな、いつもより体が軽い」
 そういって笑うくせに。
 額に浮かぶ必要以上の汗は何だ。
 お前は走らなくていい。俺が全部するから――そう言いかけて、大地は喉まででかかった言葉を必死に押し留めた。
 馨と清芳とは対極に当る北方から調査を始めた大地と基。目ぼしい収穫は皆無だが、天守閣まで残りの距離はかなり少なくなっている。
 つまり、基がそれだけの運動量に耐えているということだ。
(「体が軽いっていうのも、あながち嘘じゃないってことか……」)
 心の中でだけ呟き、大地は基の腕を取り、駆ける速度を上げた。
 普段の基であれば決して走れないであろう、速度まで。彼が知ることのない、風を正面から受ける心地よさを、最低限の補助だけで基が得られるように。
「無理だって思ったら、言えよ」
「わかってる」
 大地は知らない。
 自分の細やかな気遣いの最中、基が『しまった……メリーゴーランドの馬を回収しとけば良かった』なーんてことを胸の中で思っていようとは。
 ………想い、とは。すれ違うものなり。まる。

「くぴー(寝言)」
「すいよすいよすいよ(寝言)」
「ふにゃ……あふろうさぎさんですー……っ(寝言)」
「ハンドル捌きなら、誰にも負けないっ(寝言)」
 蘭とマリオン。ただいまぐーっすりお休み中。
 果たして本当に果報は訪れるのか!?

 【ただいままでの鐘の数:99】

「どこにもいない……か」
 肩で息をしながら、遠夜は辿り着いてしまった天守閣が聳える白亜の城の壁に手をついた。
 その時、遠夜の頭上に大きな影が生まれる。
「あかんな、空からじゃみつけられへんわ。動いとらんのやろな……」
 影の主は多祇、そして一羽の鷲。
 西方から探索を開始した遠夜は、少しでも範囲を広げようと式神を放っていた。しかし、それでも。目指すイノシシの姿は欠片もみつけられず。
 同様にいち早く空からの調査に飛び立った多祇の方の結果も芳しくない。心を寄せられる鳥たちに助成を頼んでみたものの――
「サイキちゃんたちと空の散歩しとる暇ちがったかな」
「……僕は少し妄想に暴走しすぎたかな」
 後悔とは決して先にたたないもの。
 過ぎてしまった時間を嘆いても、今という時間は決して覆ることはない。
「いや、まだ時間はあるんだ」
「最後まで諦めたらイカンってな。僕らのせいで、この世界が魔王に侵略されたーなんてことになったら、それこそ新年早々夢見が悪いわ」
 多祇と遠夜、互いの顔をしっかと見合わせた。
 その瞳には力強い色が浮かんでいる。過去が覆せないのならば、未来を覆してみせよう――そんな希望を捨てない輝きが。
「僕はもいっかい、空から当ってみるわ」
「ついでにマリオン君と藤井君を探してみてくれ。僕はこのまま天守閣を目指す」
「りょーかい」
 そして再び少年たちは走り始める。
 片方は、びみょーに――いや、かなり外見と実際年齢に詐称があるわけだけど、そこんとこはせっかくのシリアスシーンなんだから無視。
「ん? 地の文。符の効果が切れてる?」
 っは! 気付かれたっ(脱兎)

「すーすーすーすー(寝言)」
「はにゃー……あふろさぁーん……(寝言)」
 ばさばさっ
 ふわり。
 多祇、まじまじと見下ろす。
「……なんや、起こすのえらい気ぃ引けるような寝顔やな……」
 頬をつつけばぷくぷく至福の時が過ごせそうな、そんな寝顔が二つ並んでいる。
 場所は――言わずとも既にお分かりだと思うが。念の為記載しとくと、案内板の真下。しかもちゃーんとふわっふわの羽毛布団にくるまれて。
 ってわけで、もちろんマリオンと蘭なわけだが。
「ん?」
 上空から彼ら二人を探していた多祇は、程なくして発見し――そしてもぞもぞと動く何かに、たった今気付いた。
 もぞもぞもぞ。
 二人が眠る布団の中。
 うごめく何かが――いる。
「………もしやっ!!」
 がばりっ
 多祇、思いっきり掛け布団をめくり上げた。そして、どんな顔をしていいか、かなーり真剣に迷う。
「……確かに。確かに布団の中は影やなぁ……」
 がっくりと気が抜けて、ついでに腰も抜けそうになる。あれだけ必死に探して見つけられなかったものに、こんなところで、しかもこんな状況で遭遇することになろうとはっ!
 マリオンの腕に柔らかく抱きこまれ、黒マントを羽織り幸せそうにもぞもぞと身を揺らしているのはっ!!
「……果報は寝て待てってのは、真実やな……ホンマに」
 ホクト――こんなところに出ましたよー。
 ぴこんぴこん。
 マリオンの★マスには『2ポイント』という文字が浮かび上がっていた。
 いーんです。これで。
 文句は受け付けません!
 果報は寝て待つんだーっっ!!

 【ただいままでの鐘の数:104】

「ホクトの方はみつかったみたいね……」
 シュラインは一帯を見渡すことのできる天守閣の窓から拾うことのできた音に、小さな安堵の息を零した。
 周囲の物音を、例えどんな小さなものであろうと聞き落とすまい――そう意識を研ぎ澄ましたまま駆けてきた東方からの道筋。
 状況はあまり宜しくないと知りつつも、この土壇場で微かな希望が見えてきた――のかも、しれないが。
「シュラインさん!」
「いましたか?」
「こっちの収穫はゼロです……」
 続々と駆けつけてきた大地、基、遠夜ら高校生組に、シュラインは物思いに耽りながらゆるりと見返る。
「あの性格だから、案外この天守閣の屋根裏ででも悠々と昼寝なんてしてるんじゃないかしら……と思ったんだけどね」
 ちょっと読みが外れちゃったみたい、とシュラインは肩を竦めた。
 あと一頭。
 あと一頭なのに。
 ゴーン、とまた一つ。鐘の音が過ぎ去っていく。
「まったく……何処に隠れてるのかしら。あの性悪は」
「……ひょっとして」
 ふっと何かが大地の脳裏を掠める。
 性悪、ということは。
「探せば探すほど、逃げるってことじゃないでしょうか?」
 さらにはめんどくさがり。
「イベント事って……ことごとく顔を出さずに済ましてしまう、とか」
 大地の思い付きを受けて、続きを遠夜が引き取る。
 ゴーン、また一つ。鐘の音が世界に溶けて消えていく。そして、消えた音の質量の変わりに、ぴくぴくと神経質な皺がシュラインの額に刻まれる。
「………って、ことは。なにかしら」
 有り得ないことじゃない。むしろ大ありだ――そう思えてしまうのは、各種イノシシたちが名前の主たちと被りきっているからこそ。
 トウカとサイキが魔法を使ったように、他のイノシシも様々な特殊な能力をそのまま引き継いでいるとしたら。
「……何!? ゆかりは異空を渡っちゃってどっかでのほほーんってしてるってこと? そんなの――っ!」
 捕まえられるわけないじゃない! そう叫ぼうとして、シュラインの脳裏に雷が落ちたような衝撃が走った。
 見開かれる、蒼の瞳。
 そうだ、捕まえなければいいのだ。
「一人で寂しく年を越すといいわっ! 誰が捕まえてなんかやるもんですかってーのっ!」
 ゴーン。
 最後から二つ目の鐘、2006年の終わりを告げる鐘に合わせたように、シュラインの絶叫が夢の世界に響き渡った。
 その時、天守閣の真上の空にピシリと亀裂が走る。
「……ホントかよ………」
「………なんでもありだもんね、ここ」
 空に生まれたひびから、小憎らしいイノシシの鼻先が覗いているのを目視し、大地と遠夜の目が遠く遠く遠くなる。
 さぁ、これで無事に新年が――と思いきや。
「まだだわっ! これじゃ最後の鐘がなるまでに、あのアンポンタンをここまで引き摺り下ろすことができないわっ」
 あーのー……シュラインさん。なんか微妙に私情が混じってませんか? 特に、固有名詞ちっくなとこが。
「いーのよっ! って言ってる傍からっ」
 ゴ――と最後の鐘、つまりは2007年の到来を告げる音が今、まさに響き渡ろうとした瞬間。
 ぞくり、と大地の背筋を寒いものが走り抜けた。
「まさかっ!?」
「そうよ! 呼ばれてもないのに出てくるのが、元ちゃんよー♪ いっけー! ミラクルハイパー元ちゃんばきゅーむあたーっくっ!!」
 ォーーーン。
 皆さん、新年あけましておめでとうございます。
 本年も宜しくお願い申し上げます。


★かくして、夢の世界の平和は守られ……た?

「まぁね、確かにね。確かに魔王の侵略を防ぐことはできたわけだけどね」
「………この場合、イノシシを天守閣に並べていると言って良いものか、否か……」
 むむっと眉間にくっきり皺を刻んで唸り声を上げているのは、真紅と緑色の美女二人。
 彼女たちの視線の先には、立派に聳える天守閣……屋根無しの。その代わりに、捕獲されたイノシシたちが、数珠繋ぎ状態になり――前のイノシシの尻尾をくわえて繋がっている――壁の端から端までぶらーんと繋がっていた。
 てか。なんか状況を説明しにくいので図解したい気分満々なんですが。
 簡単に例えて言うならば。イノシシで出来た紐で、蓋の閉まっていない箱の両端を縛っているような、そんな感じで。
 端っこのイノシシには相当な重量がかかっているし、宙に浮いてるイノシシには相当な顎の力が強いられている。
 なんでこんな事になったかと言うと。
 世界の究極のピンチに、基と精神やら何やらを共有している双子のおねーさんの元ちゃんが降臨いたしまして。でもって、魔法でイノシシをぶばーっと吸い寄せ集め、さくさくーっと天守閣に並べようとして――威力が強すぎて、天守閣の天井までも綺麗さっぱり吹っ飛ばした………その結果である。
 ちなみに、当のご本人さまは『お疲れさま〜v』と既に肉体を基に返却し退散済みだ。
「……最近の女の子は本当にパワフルだな………」
「や……アレは……ちょっとどうかと」
 遠夜、しみじみ呟けば、すかさず大地が世の女性のフォローを行う。ちなみに大地の膝は、現在進行形で基に貸し出し中。姉の強制的出現ならびに大技発動の反動を喰らい、基は青い顔して完全熟睡モードに移行している。
 なんだか踏んだり蹴ったりだが、どうやらゆかりの4ポイントは、基についたらしいから……ま、そゆことで!
「ふむ、まさにこれが結果オーライということだな」
「やや一抹の不安を感じますけどね」
 力の限り踏ん張っているイノシシたちを見上げ――どうやら元の魔法で『解いて逃げ出そう!』なんて事にはならないようになっているらしい。ご都合主義的だが、気にしちゃいけない――清芳は深い感銘を受けたように呟いた。
 イノシシたちの頑張る様は、まさに新年を迎えたばかりの皆に『今年も頑張れ!』というエールを送っているように見えるではないか。いや、そう見てもらわねば困る。っていうか、お願いだからそんな風にみて下さい。
 確かに馨の言うとおり。世界ってこんな微妙なバランスの上に成り立ってるんだなって不安も感じたりするけれど。でもでも、それでもお天道様は回っているし。
「女の子にあんな無理さすのは悪い気、するけどな……」
「なら多祇さん、変ってあげますか?」
 ひぃ、ふぅ、みぃ、と哀れな乙女たち(?)の姿を数えていた多祇。しかし寝起きのマリオンにズビシっとつっこまれて、そこから先の言葉はぐぐっと飲み込んだ。
 そう、哀れむことだけが愛ではないのだ。時に試練を与えることも愛なんだ! なーんて事を胸の内側で熱く迸らせてたかどーかは知らないが。
「とにかく、これで一件落着だね!」
「そうね〜……と、爽やかに言っちゃっていいかはよくわかんないけどね」
 イノシシさん、頑張って〜!
 そう元気にエールを送る蘭の頭を優しく撫でながら、シュラインは熱くなる目頭をそっと押さえた。
 世界とは何かの犠牲の上に成り立つものだ――そう片付けるには微妙に気が引けないでもないのだが。元を正せば、逃げ出したイノシシたち自身に今回の結末の源流はある。そう、これはまさに自業自得なのだ!
 目先のことから逃げ出しても、結局いずれは自分に返ってきますよ〜という、ありがたい教訓を身をもって知らしめた姿なのだっ!!
 あ……なんだか書きながら、胃がきりきり痛んで来たよ。
「まぁ、地の文も随分弱ってきちゃったみたいだしね」
「違いますわ。書きながら、自分自身への教訓が多すぎて辛くなってきたようですわ」
 黙れ、赤&緑コンビ。
「あら、図星」
「図星ですわ、図星ですわ」
 ………はーわーうー……。
「というわけで、見事に地の文にも反省させた所で。皆さまには一応世界を無事に救っていただき、ありがとうございました、ですわ」
「今年一年が皆さんにとって素晴らしい、そして何より忍耐強さに磨きをかけられる一年になるよう祈っているわ!」
 そんなのに磨きがかからんでも良い平穏な年になりますよう、心よりお祈り申し上げます。


「ん……ぁ……え?」
 ゆるゆるとやってくる現実感に追いつかず、大地は瞬きを繰り返した。
 先ほどまでいたのは謎の夢の国。
 しかし、今の自分がいる場所は。
「って……こっちが現実じゃん」
 つけっぱなしになっているテレビでは、新しい年を迎えた日本列島の様子が映し出されている。
 そうだ。確か、年越しパーティ――と言うには人数が少ないが、そこら辺は本人たちの気持ち次第なので気にしない――を基としていたはずで。
 でもって年越し蕎麦をすすっている間に、どうやら居眠りをしてしまったらしい。
「まったく、年をまたいで妙な夢をみたもんだよな」
 溜息混じりに呟いて、丸くなってしまった背を精一杯伸ばす。その瞬間、更なる現実が大地の目に飛び込んできた。
 自分とは向い合う位置。つまりは真正面。
 そこで腕の中に顔を埋めるようにして寝ているのは――基。
 いや、それまでも二人で過ごしていたわけだから。このシチュエーションに疑うものは何もないのだけれど。
「……基……?」
 起こそうとして、伸ばした手は宙で固まる。
 普段は眼鏡の下に隠された素顔。気持ち良さそうに眠るその表情は、とても幸せそうで――とても、綺麗で。
 起こしてしまうには勿体無い光景に、大地はことさら慎重に腕を引いた。
「ひょっとして、こいつも同じ夢を見てたりしてな」
 照れ隠しに、そう嘯いてみる。
 せっかくだから、もうしばらくはこのままで。起きたらさっきの馬鹿げた夢の話をしてやろう、なんて思いながら。
 密やかな幸せに浸っていた大地。しかしこの幸せが、実は自分ひとりのものではないことに気付いていなかった。
 そう。
 基もこんな無防備に眠れることが幸せなのだと。
 いつでもどこでも倒れる基だが、他人の気配があるところでは早々安眠は得られるものでもないのだ。
 つまりは、きっと。そういうこと。
 二人の青い春はまだまだ――続く?

 烏有大地→取得ポイント:3
 環和基→取得ポイント:4
 青い星の下に生まれた二人。今年もそれなりに順調な一年になることでしょう。
 もしも、何かいま一つ物足りないと思うことがあるのなら――その時は、どこかで一歩踏み出す勇気が必要かも?
 まずはとにかく、何事も自覚することから始めてみませんか?


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┏┫■■■■■■■■■登場人物表■■■■■■■■■┣┓
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┗━┛★PCあけましておめでとうノベル2007★┗━┛

☆ 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 ☆

★東京怪談
 0086 / シュライン・エマ / 女 / 26歳 /
      翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
 0642 / 榊・遠夜 / 男 / 16歳 / 高校生/陰陽師
 2163 / 藤井・蘭 / 男 / 1歳 / 藤井家の居候
 4164 / マリオン・バーガンディ / 男 / 275歳 /
      元キュレーター・研究者・研究所所長
 5598 / 烏有・大地 / 男 / 17歳 / 高校生
 6604 / 環和・基 / 男 / 17歳 / 高校生、時々魔法使い

★聖獣界ソーン
 3009 / 馨 / 男 / 25歳 / 地術師
 3010 / 清芳 / 女 / 20歳 / 異界職
 3335 / 多祇 / 男 / 18歳 / 風喚師

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■         ライター通信          ■
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 新年、あけましておめでとうございます。
 そして新年早々……イノシシちっくに猪突猛進大爆走で申し訳ありませんというか何というか。
 そんなわけで(どんなわけで?)今年も、がっつりモードでスタートしてみましたライターの観空ハツキです。
 この度は、このようなハイテンションあけおめノベルにご参加頂きまして、誠にありがとうございました!

 そんなこんなで。年明け一発目が本当にこんなのでいーのか!? とやや自分に問いかけつつ。はっちゃけ祭りでお届けしましたが……如何でしたでしょうか?(汗)
 心置きなく(……)崩壊の一途を辿ったような気がするのですが、皆さまに少しでも笑って頂ければ幸いです。
 そうです。笑う門には福来る、で!!

 皆さまのステキな行動に後押しされ、今回もとても楽しく書かせて頂きました。本当にありがとうございます。
 滾る想いを書き出せば、終わりが見えなくなりそうなので、ぐっと堪えて今回はあっさり目のご挨拶ということで(笑)
 2007年が皆さまにとって素晴らしい年になりますよう、夢の国の片隅からお祈り申し上げます。

 誤字脱字等には注意はしておりますが、お目汚しの部分残っておりましたら申し訳ございません。
 ご意見、ご要望などございましたらテラコンなどからお気軽にお送り頂けますと幸いです。
 それでは今回はご参加頂きありがとうございました。

 そしてどうぞ今年も宜しくお願い申し上げますm(__)m
PCあけましておめでとうノベル・2007 -
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東京怪談
2007年01月09日

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