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『try one's skill 』
円居・聖治6603)&円居・英志(6746)&(登場しない)

 師走の忙しさは年の終わりに近付くにつれ、加速度的に増していく。
 それは長男が独立、次男が半独立状態にあり、且つピアニストである家長からして仕事で寄りつくことの少ない円居家に於いても例外ではない。
 暮れにかけては、どんな人気のない家でも、所用雑用を要するにそれなり、人の出入りは多くなる。
 とはいえ、その日、円居聖治と円居英志が実家で鉢合わせたのは、事前の打ち合わせがあった訳ではなく、全くの偶然であった。
 勿論、双方目的があっての事だ。
 聖治は正月の下準備、英志は大掃除……と、母を亡くしてからこちら、男所帯故に自然と分担する形になった家事、各人の受け持ちに対する責任感はそれぞれ別に居を構えるようになっても簡単に払拭出来る類の物ではないようだ。
 いの一番に実家のピアノの調律を終え、午後から台所の備品整理に入っていた聖治は、弟の思わぬ入来に、僅かに笑う。
 今年は父親は年末から年始にかけ、欧州に演奏旅行に出てい不在にしていても、元旦を実家で過ごす通例は、特別念を押す必要もないらしい。
 到着早々、屋内ながら上着の着用を厳命して、英志は家中の扉や窓を開け放ち、人の動かぬ間に積もった埃を叩きだしている最中らしい。
 窓からは冷たい空気と共にバタバタと、座布団を打ち合わせる音が入り込んで賑やかしく、それは急き立てられるようでいながら、年末の風情を醸す一助でもある。
 気温こそ低いが薄く雲を刷いた空は青く、雨の心配はない。
 この分なら、自分も英志も滞りなく用事を済ませられるだろうと、聖治は消費期限の切れた食材を空の段ボール箱に放り込む作業を続ける。
 父の不在時も、週に一度は昔馴染みのハウスキーパーが家を整えてくれるものの、私的な空間の掃除や備蓄の管理までは頼めない。
 処分した調味料や保存食の補充ついでに、夕食の買い出しも済ませないと、と午後の予定に新たな項目を付け加え、聖治はふと手元、貰い物と思しき讃岐うどんの乾麺を見て立ち上がった。
 キッチンの戸口から顔を出し、二階と吹き抜けの空間を有する、玄関ホールに続く廊下に向かって声を放つ。
「英志! 夕食は食べて行くでしょう?!」
「あんの?!」
「うどんでよろしければ!」
「食う!」
バフバフと、今度は布団を叩いていると思しき音と、隔てた距離に相応の張りを持った遣り取りを簡潔に済ませ、聖治は手にした乾麺の消費期限を再度確認した。
 ……期限を三日ほど過ぎているが、直ぐさま腐る訳ではない。
 今消費しなければ、先に廃棄するしかない域まで放置される事を見越しての胸算用にさり気なく弟を巻き込み、聖治は買い出しリストに葱、蒲鉾等のうどんに必要な食料品を書き加える。
 更に、絶望的に期限切れをしていた七味や、いつの開封か判然としないとろろ昆布の存在をゴミ袋の中に放り入れる事で忘却の彼方に追いやり、聖治はその品目を追加しようとしてメモを睨んで考え込むことしばし。
 きつねうどんのつもりで書き込んだ具材の内、揚げに斜線を引いた真横、牛肉(切り落とし)と書き加えて、予定を肉うどんに変更する。
 育ち盛り、とは言えないがまだまだ食べ盛りな弟の……せめて腹持ちを良くしてやろうという、聖治の優しさを装った贖罪だった。


 聖治が一番近隣の食料品店に買い出しに出掛けてから、戻るまでに費やした一時間の間に掃除はあらかた終わったようだ。
 後はワックスをかけるだけと思しき廊下の輝きを踏みしめ、聖治はテレビの声が聞こえて来る居間に向かって帰宅のみを告げて即、台所に向かう。
 出掛け、火にかけた鍋の存在だけは英志に知らせておいたのだが、程よい頃合いで出汁昆布は取り出されており、代りに煮干しと削り節が投入されて弱火で更に煮込みを加えられていた。
 何処で覚えてきたのやら、と感心しながら玉杓子で味を見てみれば、出汁が濃すぎずにいてしっかりと味を有している。
 納得に一つ頷くと、腕を捲って早速料理の準備に取りかかる背後、廊下を近付いてくる足音に聖治はそちらに気を向けた。
「聖治、まだ食えない?」
「麺を戻せばすぐにでも」
案の定、食事の催促にやって来た英志に、学生時代もこうして空腹を訴えては台所に姿を見せた物だと、懐かしく思い出しながら、聖治は予め想定していた事態に、スーパーのビニール袋を菜箸の先で示した。
「クリームパンを買ってあります。堪えられないようでしたら、それでしのいでいて下さい」
すぐ、とは言っても、麺を茹でるのに十分はかかる。
 存外、肉体労働である掃除を一手に担った為か、空腹は如何ともし難いらしく、待つ間にひもじい思いを抱えているのが嫌なのか、テーブルについた英志がガサゴソとビニール袋を漁る。
 そうして時間を稼いでる間に、聖治は手際よく小鍋に出汁を取り分けた。
 濃いめの味付けを施し、肉を味付けるためのタレを作る……隠し味に砂糖を入れるのは独立してから覚えた一味である。
「英志」
ぐつぐつと沸騰する鍋、湯の中に泳ぐうどんを見据え乍ら、聖治は背後に声をかけた。
「何」
呼ばれた名に短く応じた英志に、聖治は我に返る。
 つい、昔と同じ心持ちで呼びかけてしまったが、学校はどうだとか授業で解らない所はないかとか、英志が小中学生と同じ頃と同じ話題を振ろうとしている。
 未だ大学生とはいえ、成人に達した弟相手にそれはないだろう、と、聖治は視線を泳がせ、急ぎ他の話題を探した。
「……そう、今年は掃除に取りかかるのが、少し早くありませんでしたか」
「何だよ、その微妙な間は」
聖治の逡巡を敏感に感じ取り、ポイントを押さえて突いてくるものの、それ以上の追求はしない英志である。
 最も聖治の言うとおり、互いに実家に起居していた頃は、新年の準備はもっと年の瀬になってから、実質的には冬の長期休暇に入ってからかかるのが常だった。
 未だ月の半ばである今から、本格的な料理や掃除にかかるのは気が早い。
「そう言ってる聖治もだろ」
パンの入っていたビニール袋を、くしゃと丸めて英志が指摘する。
「私はイブに予定が入ってますから」
肉を入れて一度沸騰した出汁に、酒を回し入れて温度を下げ、更に刻んだネギを小鍋に投入してしなりすぎない程度に火を通す、作業の合間に聖治は何気なく告げた。
 イヴ……直訳すれば前夜。それは間違いなく大晦日を意味しているのではない。
「彼女が?!」
イヴに予定が埋まる、となればイコールで繋がってしまう思考は、一概に英志が世の風潮に毒されすぎだと攻められない。
「……あぁ」
特にそれを意識しての発言でなく、そもその可能性を全く除外して思い至らなかった聖治は、弟の驚愕に情報を補足した。
「仕事で。最近テレビでお見かけするようになったお客様が、クリスマスにコンサートを催されると仰るので、調律と音響設定のお手伝いを少し」
そう聖治が告げるあるアーティストの名に、英志が不満げに鼻の頭に皺を寄せた。
「それ、俺、チケット取った」
英志は英志で、イヴの予定を観劇で埋めた為、予定を前倒しにしたらしい。
 飽くまでも客としての付き合いしかない聖治に知る由はないが、件のアーティストはクラシック畑で育った音感とコンクールでの入賞実績を鳴り物入りに芸能界入りした途端、若さに見合わぬ実力派として上り調子に名を上げている。
 その事実を知らずとも、留学費用を貯める為、バイトに血道を上げる英志が、休日のクリスマスという、人手不足に時給に色を着きまくる日の特別手当に目を瞑っても、観劇したい程度には好みのアーティストなのだろと、察しをつけた聖治は一つ手を打つ。
「あぁ、でしたら。バックステージパスをお譲りしましょうか」
短時間で弟の心情を察した聖治は、ふいの思いつきを、妙案とばかりに嬉しげに申し出た。
「……何だと?」
聖治の提案に、ぴきり、と英志が動きを止める。
「仕事と言っても、控えているだけみたいなものですから……そうだ助手という事にして一緒に行きましょうか。ステージが始まったら関係者席で観ててかまわないそうですし」
更に案を重ねる聖治に、英志が斜めに傾ぐ。
 テレビやラジオの露出が多くなり、知名度が上がるにつれコンサート・チケットが入手困難になるのは必然だ。
 英志が労したのを裏付けるように、現時点、既に完売したチケットのごく一部がネットで出回り、かなりの高値がついている。
 その貴重な舞台のバックステージパスを得て、手持ちのチケットを売り飛ばせば特別手当以上の儲けが出る。
 そんな邪念に心を動かしかけた英志は、パンと小気味よい音を立てて卓を叩いた。
「勝負しろ聖治」
話ながら機嫌良く大鍋を掻き回し、うどんの茹で具合を見ていた聖治はその音に驚いて手を止める。
「俺が勝ったらそのパスを貰う。それでいいだろう」
英志の唐突な提案、と言うよりも断言に聖治は目を丸くして振り返った。
「そんな事をしなくても、クリスマスプレゼントとでも思ってくれれば……」
「勝・負・し・ろ」
スタッカートを効かせた主張に、譲る余地はない事を示し、聖治は英志の意図を掴めないまでも、経験則に従ってこうなれば退かない事を理解する。
「でしたら」
一歩退くべきは自分、と聖治は打開案を提示した。
「ワックス早掛け競争というのはどうでしょう。より早く美しく床を磨き上げた者が勝者と言うことで……」
「誰が判定するんだよ」
審判を下す人員不足につき却下。
「じゃ、お節作りに勝負を持ち込むのは。黒豆なら結果も一目で解りますし……」
「一昼夜も煮込み続けてられるか」
勝負に時間が掛かりすぎ、拒否。
「……餅つきはどうですか? 丸餅を作るのは技術を要しますよ」
「正月から離れろ!」
聖治の意見は悉く一蹴され、平和裡に事を納めようとする兄の心を知らずして、英志は肘を支点にテーブルに腕を立てた。
「腕相撲でいいだろう! 来い!」
「お断りします」
きっばりと拒まれて、今度は英志が鼻白む。
 聖治が断りを入れるときはやんわりと、しかし理由を確として納得を促して頭から撥ね付ける事は先ずない。
「うどんが煮えすぎます。続きは食事が終わってから」
麺はゆで加減が命。成る程最も優先すべきを目の前に、英志は素直に従った。


 食事を終えて落ち着いた所で。
 先の勝負を蒸し返されて、今度は聖治は難色を示していた。
「怪我でもしたら、どうするんですか」
腕相撲は公式競技としてマイナーなのかメジャーなのか微妙な位置にあるが、立派なスポーツである。
 しかし状況に因っては骨折の危険を伴うなどし、商売柄、手と耳の扱いにナイーヴな聖治にとっては回避したい類だろう。
 けれども英志は迅速に勝敗を決するにはこれしかない、とばかりに、うどんを食べ終わるや否や、どんぶりをいそいそと片付けて布巾でテーブルを拭き、腕捲りまでして万全の態勢を整えている。
「心配しなくても、手加減はしてやる」
請け負う言葉に自信を覗かせ、且つ挑発も兼ねた断言に、けれど聖治は乗ってこない。
「危ないから駄目です」
子供を諭すように、柔らかな固辞に英志は覚えた苛立ちを抑え込む。
 腕相撲に限らず、そうやって昔から荒事には決して手を出そうとしない兄である。
 英志と聖治は、共に母譲りで色素が薄く、灰色の髪とブルーグレーの瞳は、外観からして目立つ。
 明確な異分子を排除する傾向は子供の集団ほど顕著で、理屈の通らぬ相手は力業に持ち込み、器の差を見せつけてやれば、簡単に抑え込めるというのに。
 持って生まれた怪力に単純に納まるような場面でも、聖治は昔から決して力を振るおうとはしないのだ。
 持てる力を有効利用しようとする自分と違い、我を押さえることで事を納め、且つそうであるように場を持って行くのも巧い。
 それは自分に対する遠慮や、臆病な気性のせいかと思っていたが、それが優しさに起因するのだと、英志が気付いたのはかなり長じてからだ。
 年の差、という要素だけでは、説明も納得も出来ない距離をその優しさで巧みに埋める、兄の器用さは英志にはとても真似出来ない。
「俺が負けたら、何でも言うことを聞いてやる」
元より聖治から提供を申し出たチケットをかけて言い出した勝負である。
 聖治の興が乗らないのも当然かと、英志は自信を包んだ大風呂敷を広げた。
「何でも?」
庇うように、手を胸元に引き寄せていた聖治は、英志の言に気を引かれたようだ。
 その変化を逃さず、英志は対面の席に着くよう、聖治に視線で促す。
 それに素直に従って椅子を引く聖治に、英志は我が意を得たりと笑みかける口元を、意志の力で以て引き結び、平静を装う。
「では、私が勝ったら」
カタン、と音を立てて椅子の位置を調整し、軽く袖を捲ってテーブルに肘を突いた聖治は、にっこりと嬉しげに微笑んだ。
「私のために一曲弾いてください」
それが意味する所は、勝利宣言も同じである。
 鼻先を指先で弾かれた如く、自尊心を刺激された英志は、それでも不敵な笑みを返す。
「やるからには本気を出せよ」
「えぇ、手加減は出来ません」
英志の眼差しを受けて聖治が掌を重ね、互いの指と肘の内側にかけた力で手の位置を固定する。
 怪力を理由に勝利を確信しているだろう兄に燃え上がる対抗心を秘め、英志は携帯電話の受話音量を最大にし、時報に繋ぐと腕の倒れる範囲の外に置いた。
「7時ちょうど」
簡潔に告げる開始時刻に、聖治が無言で頷いて、微妙に肩と肘を動かす。
 折良く、指定の時間まで1分と少し。
 高まる緊張に、英志は唇を軽く舐めて湿らせ、下手に力が入りすぎぬよう深く息を整える。
 この勝負は一瞬で決する……そしてそうでなければ勝てないと、英志は腕相撲を持ちかけた時点、冷静に作戦を練っていた。
 筋力が拮抗するのであれば、競り合いに長時間になりもするが、元より聖治の怪力に勝てる筈はない。
 が、相手の腕を倒せば勝ちという単純なルールは、相手の力に耐え得る筋力よりも瞬発力が決め手となる。
 速さなら、聖治に負けない。
 争いごとを嫌う兄が満足に競った事はないであろうジャンル、最初の駆け引きで遅れを取る筈がないと、慣れも手伝って英志は己が勝利を信じていた。
『午後六時五十九分五十秒をお知らせします……』
ピッピッピッ、ポーンと、時報が知らせる時の流れに、交わし合う同色の眼差しが両者の中心で火花を散らし、押さえた呼吸に静かな緊張が琴線を震わせる。
『午後七時丁度をお知らせします……』
電子音がその瞬間を告げた。
 ふっ、と短く空気を揺らしたその音が、緊張が切れて撓んだ気配なのか、聖治が短く吐き出した息だったのか、英志には解らない。
 理解よりも、そして聖治の腕を倒すよりも先に、消失したのは重力。
 天地の別を失った感覚に咄嗟、状況を確かめる為に視線を巡らす暇すらなく、天井の蛍光灯に目を奪われ、その光を遮って四角く巨大な影に圧し掛かられる。
「うわッ、ぬりかべッ?!」
自分の喉から出た驚愕の声、言葉の意味は、発して漸く認識出来た。
「ごめん、英志大丈夫か?」
腕一本でその影を支え、謝罪を告げる聖治の足が、頭を庇って……床に倒れた自分の真横にあった。
「力入れすぎてテーブルひっくり返しちゃったんだ……どっか変な所を打ったりしてないか?」
気遣う聖治の言に、英志はどうにか状況を把握する。
 テーブルが浮くのにつられ、椅子から転げ落ちたらしい。
 食卓のテーブルはドイツ製の樫細工、生半可な力で、しかも幾ら片側に加重がかかったからと言って浮き上がるような重量ではない。
 側面を床につき英志を押し潰そうとしているテーブルを片腕のみで支え、気遣わしげに覗き込んで、聖治は不意にぶふっとらしからぬ声を洩らした。
「ぬりかべって……英志」
堪えられぬ笑いに肩を揺らす聖治の脛を、英志は力一杯蹴り飛ばした。


 屈辱に頬を染め、憤懣やる方ない様子でも、約束は約束とグランドピアノの前に着く英志に、聖治は痛む脛にさり気なく足を庇いつつ大屋根を開いた。
 専用のピアノ室は防音と音響を目的に設計されており、音量を気遣う事なく演奏に集中出来るのが利点だ。
 音を押さえる必要はないと、大屋根を支え棒で最も高い位置に開き、聖治はピアノ線をざっと目で確認した。
 調律を施したばかりで難が見つかる筈はないが、職業病的な習い性だ。
「俺は気に入った曲しか覚えていないし、弾けないぞ」
英志の宣言に一つ頷いて、聖治は指を立てた。
「でしたら、英雄ポロネーズを」
聖治の即答に、英志は一瞬おかしな顔をしたが、ピアノに真っ直ぐ向き直ると合わせた指をパキポキと鳴らし、鍵盤の上に指を置く。
「全く。女を落とすのでもないのに、人の為に弾くなんて」
それでも割り切れないものがあるのか、ぶつぶつと零す呟きを、聖治は聞き咎める。
「……そんな事をに使ってるんですか?」
ピアノ、及び技能を。言外に籠もる責めを感じ取った英志は、聖治の追求を聞こえなかった振りをして鍵盤から指を浮かせた。
 矯めはなく、強く。
 四つの音階に跨って同じ音、同じ響きが曲の内に引き込み、続くピアニッシモをクレッシェンドからデクレッシェンドに移行する指示を無視してその力強さに乗せたまま繋いでいくのは、英志独特の弾き方だ。
 だからと言って強弱がないのではなく、和音であるべき箇所の音を微妙にずらして和らげ、まだフォルテの指示に和音に戻すという、ある意味横紙破りなアレンジで独特の表現をする。
 譜面通りの正しい音に拘る聖治には、決して真似の出来ない曲を楽しんで弾くという事を、英志は難なくやってのける。
 伸びやかに飾らず、迷いのない音は、彼の心そのままに、素直で開放的だ。
 先までの不満は何処へやら、弾き始めれば途端、曲に集中する英志に微笑み、聖治はゆったりと腕を組む。
 景気が良くて好きなのだと、好んで弾いていた頃の想い出が蘇る。
 瞼の裏の闇に音の奔流が溢れ、予想できない音が跳ね回る懐かしさに、聖治は素直に身を委ねる為に、ピアノに軽く体重を預けて目を閉じた。
PCシチュエーションノベル(ツイン) -
北斗玻璃 クリエイターズルームへ
東京怪談
2006年12月18日

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