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『お菓子迷路食べ歩きツアー 』
デリク・オーロフ3432

 目が覚めるとそこは、甘い匂いの漂うお菓子の迷宮でございました。
「またお菓子迷路に迷い込んだ者ぢゃな?」
 と、頭上から声が響いてくる。
 見上げるとそこには、14歳くらいの少女がバームクーヘンの塀に座りにこにこと笑顔を浮かべていた。
「どこから来たのか知らないが、折角だ。迷路をクリアしていくとよいのぢゃ。ゴールにはきっとお前の好きな菓子があるぢゃろう」
 と、言われたならば、行くしかないだろう。
 そういうと少女は身軽に迷路の中へと、消えていった。
 入り口は、目の前に。



「ふむ、お菓子迷路ですカ……」
 魔法使い姿、黒いマントを翻し、デリク・オーロフは迷路を進んで行く。さりげなく光る銀のアクセサリーもその身につけて。
 手に持った怪しく光るカボチャ頭のランプからは、その口からお菓子がぴょっと飛び出して、歩いた後にテンテンと落ちてゆく。
「お菓子が壁に埋まっテ……キラキラ……」
「キラキラなのじゃー!! えい、これとれぬのじゃ、えいえい」
「……ドコカで聞いたことのある声ガ……」
 正面は突き当たり、左右に迷路が広がっていた。
 声の聞こえてきた方向、右を見ると。
 お菓子の壁に張り付いて何かにご就寝の蝶子がそこに。
「……やっぱり蝶子サンでしたか」
「え、あれ、デリク君!? あ、見た、もしや見ておったのじゃろうか!?」
「ちょっとダケ。声が響いてましたヨ、キラキラなのじゃー!! と」
 デリクが苦笑しながら言うと、蝶子はまずいところを見られた、と照れて笑う。
「で、何にキラキラはしゃいでいたんですカ? ああ‥‥キラキラ‥‥」
 お菓子でできた壁に埋まっている、キラキラ光る包み紙。
「もしかしたら、ゴールにもいっぱいキラキラのお菓子があるかもしれませんヨ」
「キラキラッ! 行くのじゃデリク君!」
 えいえいおー、と掛け声しそうな勢いで、蝶子は走り出す。
「お元気ですネ……」
「デリク君早くなのじゃー!!」





 特徴的なお菓子を目印にしつつ、迷路探索。
 ここは一度通った、まだ通ってないとはしゃぎつつ、二人は歩いて行く。
「お菓子がいっぱいあると、なんだか和むのじゃ。あ、キラキラの飴」
「そうですネ、この雰囲気の中ではのんびり、なごんでしまいマス。蝶子サンそれ食べちゃダメですよ」
「キラキラのお菓子ー!」
 と、こうして騒ぎつつ楽しくはしゃぐ。
「! 今小さな人影が動いたのじゃ!」
「え、どこですカ?」
 視界の端に、小さな人影がと言って蝶子が指差した先。
 お菓子でできた壁からひょっこり姿を見せる小さな人。
 それは。
「ジンジャーブレッド・マン!」
「神社? ぶれっどまん?」
「こんな時にボケですカッ! 追いかけますヨ!」
 ジンジャーブレッド・マンは驚いたのか、スタコラ迷路の中へ走って行く。
 魔法使いの服の裾翻しながら、デリクも追いかけ始め。
「ま、待つのじゃー!」
 それに蝶子もちょっと遅れて走り出す。
 そして、そのジンジャーブレッド・マンはというと。
「デリクくーん」
「なんとなく、言いたいことはわかりますがお聞きしまショウ」
「増えてるのじゃ!」
「そうですネ、増えてますネ!」
 いつのまにかわらわらわらわら。
 どこから出てきたのかと思うほどにわらわらわらわら。
 増えてゆく、ジンジャーブレッド・マン。
「分かれ道から合流したり、上から降ってきたり……大忙しなのじゃ」
「食べられたくなくて、オーブンから逃げ出してきたんでしょうカ」
「メルヘン……! でも食べられる運命なのじゃよ!」
「食べられるために焼かれるモノですからネ」
 こうしてどたどたと、どんどん細い道へと入って行く。
 それは誘われているのか、追い込んでいるのか。
 そしてふっと、視界が一瞬真っ白になる。
「眩しっ」
 思わず瞳を閉じて、恐る恐る瞳を開けると。
「あれ?」
「いないですネ……」
 ジンジャーブレッド・マンの影も形もなく。
 いや、少しだけそれは残っていた。
 ぽつんとおかれたティーセット。
 そこにお食べなさいというように動かない、ジンジャーブレッド・マンが。
「……ここはもしや、ゴールということデ?」
「良いみたいじゃ……」
 二人はそのティーセットの方へ進む。
 特に何も罠もしかけもなく、本当に純粋にどうぞ、という雰囲気で。
「……イタダキマスカ?」
「いただくのじゃ」
 ティーポットからは暖かい紅茶が。
 そしてジンジャーブレッド・マン。ちょっと食べてしまうのに気が引けるが一口。
「……懐かしいデス、私がまだ小さい頃、母がよく焼いてくれまシタ……」
「デリク君にも子供時代が……」
「無いわけが無いでショウ」
「そうじゃね。うん、おいしいのじゃ、ジンジャーブレッド・マン」
 一口食べては思い出す、子供の頃。
「……なんじゃ、気のせいじゃろうか……眠い」
「あれ、蝶子サンも……です、カ?」
 うつろう視界。
 やっぱり迂闊においてある食べ物に手を出すのではなかった、とひっそり後悔。
 眠気に襲われ立っていることができずに膝をつく。
 と、いつの間にか周りにはジンジャーブレッド・マンがいつのまにか現れて、取り囲む。
 薄らぐ視界の中で、ジンジャーブレッド・マンたちは笑っているようだった。





「……ジンジャーブレッド……マン……」
 ふと目を覚ますと、そこは良く知っている自分の寝台。
「……夢オチ、ですカ……」
 と、思いきや。
 かさ、と何か触れるもの。
 それは、袋に入った―――




<END>



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【3432/デリク・オーロフ/男性/31歳/魔術師】

【NPC/蝶子/女性/461/暇つぶしが本業の情報屋】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 デリク・オーロフさま

 いつもお世話になっております、志摩です。
 またまた素敵なアイテムお持ちで登場ではないですか…!と私、勝手にウキウキもりあがっておりました(笑)
 いつもながら楽しく私も書かせていただきましてありがとうございます。ノベルで楽しんでいただければ幸いです。
 ではでは、またお会いできれば嬉しく思います。
お菓子の国の物語 -
志摩 クリエイターズルームへ
東京怪談
2006年11月30日

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