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『【恋する漢女】マチョッ子めぐたん 』
風閂(w3g785)
【プロローグ】
 現在、ハロウィン全土に警戒令が出回っている。
『筋肉質の男。恵が異界人の男を襲っています。変身していないと華奢なた
め、ご注意ください。討伐をしていただいた方には謝礼もあります』
 背筋が寒くなる思いを異界人の男性陣は得たという。
 立ち向かう強者(もののふ)はまだ現れてはいない。

【一】
「ここはどこだ!」
 力強い男の叫び声が響き渡った。
 男は紋付袴で、右手には野菜などの入ったビニール袋を握っている。
 輪をかけて、周囲の家屋らしきものはお菓子でできていた。
「ええい、これでは主にまたしかられてしまう」
 風閂は今日の夕飯になるだろう豆腐や白菜の見えるビニール袋をぎゅっと握り締めた。
 出口を探して風閂は歩き回ると、ひとつの立て札を見つける。
 見たこともない文字だが、風閂にはなぜか読めた。脳内に言葉がリピートされてきた。
「厳戒令? 筋肉質の男が異界人の男……」
 そこまで聞こえてきたとき、風閂は口をあんぐりとあけて、肩の力が抜けた。
「筋肉質の男とこれほど縁があるとは、呪われていたりしないのだろうか……」
 本気で除霊などを考える風閂であった。
 風閂は夕暮れの町を歩く。御伽噺にでてくるような風景が続き、一見平和そうに見える。
「とくに妙な事件がおきている様子はないな」
 いろいろな世界から呼ばれているのか、風閂の世界では見られない人々も混ざっている。
「この世界も……本当はあれておるのかもしれぬな」
 被害の話を聞きながら、風閂は事件の発生している場所へ向かった。

【二】
 町から離れ、郊外へゆくと右脇の茂みの奥で寝ているような人影を風閂はみた。
「む、この時間にねているとは風邪をひくな」
 茂みをがさがさと掻き分けて進むと、そこに横たわっていたのは全裸の男だった。
「こ、これは惨い……」
 思わず口を押さえ、すぐさま羽織を着せた。
 がたがたと振るえながらも男は風閂の袖をつかみ、伝えてくる。
「不意打ちで……やつはくる。気をつけ……ろ」
 男の言葉を聞き入れ、ぐっと拳を風閂は握った。
 しかし、背筋が急に寒さを感じる。
「な、なんだ気合を入れたはずなのに悪寒が……」
 風閂の頭に浮かんできたのは、数々歴戦(?)を戦ってきた漢女(おとめ)たち。
 うっふぅ〜ん、あっは〜んなどという野太い声までも聞こえてきた。
 頭を振って、風閂は雑念を取り払う。
 男はそのまま気絶してしまったため、風閂は担いで町まで運ぶことにした。
 日も落ちて、夜になる。遠くに見える町の暖かな光は、ここも自分のいる世界もあまり変わらない。
「しまった! いつの間にか、日が暮れてしまったではないか! あ、主に叱られる」
 一人でうなっていると、道端に少女が泣いている姿を見かけた。傍らには黒猫がいる。
「おぬしもここで迷子にでもなったのか?」
 風閂の優しい言葉に顔を上げる少女。華奢な体をしている。
 学生服を着ているから、風閂と同じ異世界人かもしれない。
「そこの少女よ。この辺は危険なようだから立ち去るがよい」
 凛とした顔で風閂は言い放った。
「はい、すみません……でも、心細くて……」
 震えながら少女は周囲を見回す。
 しかし、風閂に隠れてその顔は獲物を見つけた猟師のように光っていた。

【三】
「!」
 鋭い視線を感じて、風閂は周囲を見回した。
 だが、そこには少女がいるだけだ。
「気のせいか……」
「どうかしたのですか?」
「いや、そうだな……町まで送ろう。筋肉質の男が襲っているようだからな」
「ありがとうございます……わたしは恵です」
「俺は風閂だ」
 名前を名乗って風閂は恵の手を握り、ぎゅうと彼女は握り返した。
「ぐっ、握力が強い……まさか、こいつが!」
「本気狩る(まじかる)、本気狩る、ぼでぃーびーるっ!」
 風閂がしまったと思うも、恵の姿はまばゆい光に包まれて、衣装や体型が変わっていた。
 背丈は風閂以上になり、肉厚も増した。
 制服がはじけ、ピンクのフリルな衣装へと変わる。
「変身完了! まちょっ子めぐたん、参上!」
「ぐっ、やはりか!」
 ふんっと気合を入れて手をはずし、背負っていた男を木の下へ一度寝かす。
「はぁふぅーん、ステキな体。ドキドキしちゃうわぁん」
 大きな口をあけて、荒い息をするめぐたん。
 少し前の少女だった面影はなく、どうみても女装したプロレスラーだ。
 息をさらにあげて、ぴちぴちで、むちむちの体が風閂に迫りくる。
「しかし、なぜ俺はこのような変態に付きまとわれる!」
 風閂は自分に問いただした。思えば昨年の除夜の鐘からだ。
 この悪夢は始まり、いくつもの強者(もののふ)と戦ってきた。
 手に持っているビニール袋も置き、近づくめぐたんを見すえる。
「主を護るための試練と思うしかないか」
 風閂は腹をすえて、めぐたんへ向きなおり構えた。

【四】
「来るならばこい、相手にとって不足はないっ!」
「わたしの愛を受け取ってぇぇぇっ!」
 大柄のめぐたんが、叫びをあげて飛んだ。
 月夜に筋肉質の男の影が浮かび、ひらひらとフリルスカートを翻して落ちてくる。
 ひらひらしたスカートの中はくまさんパンツがはっきりくっきりもっこり見えた。
「ぐおつ、同じ手にはまってしまうとは」
 襲い掛かってくる吐き気に口元を押さえる。
「すきありっ!本気狩る(まじかる)にーどろぉぉぷっ!」
 おおよそ、魔法少女の使う攻撃とは思えない体育会系の攻撃が降りかかった。
 胸に直撃し、地面を削りながら、わき道の大木へ風閂がぶつかった。
 ミシィッという大きな音が聞こえたが、大木は折れない。
「く、これが、魔法の力か……」
 口から流れる血を拭って風閂はつぶやいた。
 立ち上がり、風閂のジャブによる反撃が始まる。
 めぐたんはボクサーのようなフットワークで難なくかわしている。
「どうしたのぉ、その程度じゃわたしはたおせないわよぉん」
 風閂の攻撃をかわしながら、めぐたんも反撃のジャブを打つ。
 鋭い一撃が風閂の頬を叩いた。
(もともと少女と思うと強く攻撃できん……)
 風閂は心の中で舌打ちをした。
 そのとき、めぐたんのジャブから、ワン・ツーそして腹を強烈に叩くブローへ流れた。
「しま……た」
 戦闘中に意識を離したことに後悔するも、痛みと痺れが風閂を襲い続ける。
 膝が地面につき、片手を地に付けて上体を支えた。
 「チャーンス到来っ! いくわよ、わたしの必殺わざっ!」
 めぐたんが新たに構えなおした。

【五】
 めぐたんの闘気が高まっていくのを風閂は感じた。
「くっ、何かくるっ!」
 よろけながら立ち上がるも、まだ膝が笑っている。
 めぐたんは両手をぐぐっと広げ、だっだっだっと駆け出してきた。
 その動きは猛獣ようにみえ、まるで獲物に襲い掛かる獅子そのもの。
「本気狩る(まじかる)べあはぁぁぐっ!」
「んっ!」
 さすがに直線的な動きだったため、横転して何とかかわした。
 めぐたんはぐっと右足に力をいれて、右にスピンターンをした。
「奇怪な動きを!」
 立ち上がって逃げようとするが、ガクンと足が沈む。
「めぐたぁぁぁん、ぶりぃかぁぁぁぅっ!」
 逃げようとする風閂をめぐたんの両手は捕らえた。

【六】
「さぁ、わたしの胸の中でおやすみ」
 にやぁとめぐたんが微笑み、化粧の濃い香りと口臭が風閂を攻め立てる
 そのとき、風閂の何かがキレた。
「いい加減に離れろぉっ!」
 風閂がめぐたんの服をつかむっと、風閂の腕が爆音と共に火を噴き出した。
「地獄の果てへ飛んでゆけっぇぇぇっ!」
 腕が飛び、めぐたんを掴んだまま虚空へときえ、星になった。
 キランと星になっためぐたんを確認して一息ついた。
 いつの間にかギャラリーができていて、異界人があれはロケットパンチなどといっている。
「おい、そこロケットパンチというな! 俺はロボットではない!」
 ふんと鼻を鳴らして、助けた男を預けた。
 風閂はそのままずかずかと町へと歩いていく町の明かりはもう目の前だった。

【七】
 ふっと何かが通り過ぎた感じがした。
「! ここは……いつもの世界、か?」
 町まで着たとおもったら、そこはいつも見ている街だった。
「今のは夢だったのかもしれないな」
 腕を見た。どこも異常はない。買ったはずの食材もない。
「夢ではない! 買ってきた食材を置いてきて……」
 風閂の背筋に別の悪寒が走った。
 きびすを返し、商店街へと向かう。
 街の明かりは暖かく、冬の風は冷たかった。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
 w3g785ouma/風閂/男/35歳/レプリカント

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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どうも、お久しぶりです。

参加していただいて、感謝しています。
前回のときより、いろいろと学んで書き方や構成に多少凝ってみましたがいかがでしょうか?
楽しんでいただけたのなら、幸いです。

これからイベントシナリオが多いので、このカマものもやっていきたいなぁと思います。
そのときは、よろしければ参加していただきたく思います。

それでは、また出会うその日までごきげんよう。
お菓子の国の物語 -
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神魔創世記 アクスディアEXceed
2006年11月20日

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