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『THE BIG G 』
宇奈月・慎一郎2322)&鈴木・恵(NPC0354)


 世の中には、通常考えられない事が存在する。
 某熱くスパークする漫画家が生み出したセリフから拝借すれば、“牛丼屋なのに牛丼が食えない。”と言った所である。まぁ、確かにそれがお寺の申し出であれば、牛肉どころか豚肉だろうと食っちゃいけないだろうが、例えお寺からの申し出では納得出来ない事も。
 召喚獣なのに、召喚出来ない。
 喫煙室なのに、喫煙出来ないくらいの不条理である。しかして世の中とは複雑に意思が絡み合い、それが一番いいというのは解っていても、禁則事項にしなきゃならん事もあるのだ。見よ、日本の法律を。家に空き巣に入られても、それが三十年前に蒸発した父親だと解った場合、血縁者の場合は裁きを下せない。母と再婚した相手に、母の娘が惚れる事になり、遺産のみを奪って無理矢理離婚をした母が去っていても、法律上、“一度親子になってる訳だから、倫理的にやばいじゃーん?”という根拠で、娘はそのかつての父との婚姻は許されないのだ。今は改正されてるかもしれないけど、確かめるのはめんどくさい。
 だから、寺から施しをもう一度と言われたのであれば、きちんとそれを認めなければならいし、その範囲で作り上げるのが人としての勤めというものである。いや、けして、誰かの涙交じりの声をお送りしている訳ではない。
「にしても本当、どうしましょうかねぇ」
 某おでん屋台にて、その不条理に嘆いているのは宇奈月慎一郎であった。シャンプーのCMに出演出来そうなツヤツヤの髪を、しだれ柳のように肩を過ぎて垂らし、細面の柔和そうな顔に、丸眼鏡が特徴的な男である。
 十一月――先月末まで訪れなかった、待ちに待っていた木枯らしの到来を背中にひっさげ、この寒さの中でこそ、熱さ、美味さが極みまで際立つ、おでん屋台までやってきたのであるのだけれども。
 ちくわは美味いが、召喚出来ないのは悲しい。
 器具である携帯電話には、思い出という名のメモリーが一杯詰まっている。もう会えぬのか、会えるのか、鶴と亀が滑っても、後ろの正面にゃ立つ事無いか。
「今宵の卵は、涙の味ですねぇ」
 嘆く彼を気遣ってか、屋台の主人は巾着袋をサービスする。中に入っていたのは餅、更にそれに包まれていたのはうずらだ。……卵が連チャンしている。
「はぁ」
 トマトのおでんに箸を伸ばす。しっかり中まで出汁が染み込んだこの赤い身体は、口の中で甘く爽やかに蕩け、予想外に和風の出汁との相性を発揮するのだが、宇奈月に笑顔を取り戻すには至らない。
 全く、まさにわいは翼をもがれた天使、もう二度と空へはばたく事はあらへんなぁうけけのけーと言う台詞を翻訳した標準語かつ敬語の台詞でのたまった時、
「うあっちゃ!?」
 顔面に、最早重要無形文化財といった趣である、定型ギャグを使う三人組の太くて丸い人みたく、こんにゃくが当てられた。な、何するんですかー!? と耳たぶを掴む宇奈月。意味無い、それ意味無い。
 しかして、主人はその事について謝罪せず、腕組みをして言うのだ。嘆かわしいと。
 無くしてしまったのなら、作ればいいじゃないかと、
 大根が無ければ、育てればいいじゃないかと、
 いや、それ宇奈月君のケースに当てはめると、“恋人が死んだから同じ恋人を甦らせる”という、マッドサイエンティストにありがちな発想になるのだけど、宇奈月ぴょんは普通に感銘を受けた。とうとう彼の顔に笑顔が戻り、そして、
「そうですね、彼がもう召喚出来ないのなら、作ればいいのですね!」
 丸眼鏡がくるりと輝く。
「伝説の巨大ロボ、THE BIG Gを!」
 湯気でくもって、前が見えなかったが、根拠も無く未来は見えていたのだった。


◇◆◇


 失われた技術によりこのTHE BIG Gを鋳造するには、様々な条件がある。で、様々な条件があるのが、ここにその事を仔細に記録すると、北の国からお叱りを受けるかもしれず、ていうか叱られたかもしれないので、用意していた419文字分の代原として、シチュエーションショートノベルでお楽しみください。

【中でおでん】

 突如の寒さに頭がぼうっとした所、この店に辿り着いたのだ。
「いやぁ、こう寒いとうちでのおでんも楽しみになりますねぇ」
 屋台で食うのもなかなかだが、家でのんびりやるのもいいものだ。鰹節のいい香りが鼻をくすぐる、早速、しらたき、次にはウィンナー巻、定番の大根を何時口に放り込むか、そのタイミングを計るのも楽しみで。
「はぁふぅ」
 噛み締めるとタネから、口の中でじゅわと出汁が溢れる。一口放り込んだ後日本酒を、飲めない方にはウーロン茶を煽って頂ければ、冬の季節に花が咲く。
 全く、誰が考え付いたか。おでんとは英知の結晶だ。深夜のこの店、客は自分以外おらず、店主もどうやら留守にしているようだが、お勘定は後にして頂かせてもらおう。全く、地獄に仏とはこの事――と、どうやら奥から主人が戻ってきたようで、
「どうもすいません、一杯やらせていただいてます」

 コンビニにてレジ前のおでんを勝手に食べるわ勝手に飲むわをやらかした宇奈月慎一郎は、危うく通報されかけた。

 まぁそういう訳で、賢者の石とかも必要である。
 で、その手をパンと合わせるのやサナギから蝶になった変態になった錬金術師達が鋳造できなかった物が、ちゃっかり宇奈月のポケットに入っておった。様々な条件をこなした今、THE BIG Gは九分九厘出来上がっており、残りの一厘、かけて一輪の花こそがこの賢者の石なのだ。
 これこそクリーンなエネルギー、四人パーティーで役立たずに持たせておくと役立つものなのである。食事をし、風呂に入り、黒いスーツもとい早速白い宝塚的戦闘服を身に付け、格納庫へ足を運ぶ。鼻歌するのはTHE BIG Gのテーマ。なお前半部分だけしか聞いてないのに、カラオケで歌ったりすると、全く知らないメロディが溢れてきたりするので注意が必要だ。そうウキウキ気分、だが、背後に生まれる気配、
 何者です、と気配に向って言葉を放ったその瞬間には、
 釣り針という物凄い単純な手法で、ポケットから賢者の石は奪われた。
「な、なんたる事!?」
 どうせなら右のポケットにあるはんぺんを奪えばいいのに「おどれポケットに何ほうりこんどんねん!」
 緊張した、関西弁である。それも何処かで聞いた事のある、
「いや、これはおやつ代わりで」
「ああなるほど! お腹がペコったらスニーカどあほう!?」
 ノリツッコミ!? まさか、この東京でこの伝説の秘技を使いこなすのは、宇奈月の知識において、彼女しか存在しない。それは正しく伝説である、だって、おでん屋の主人の昔話からなのだから!
 そう、呼んでみよう彼女の名前を。後ろに十人の影を従える女子高生を、
 古に封ぜられた、呪文のように――
「鈴木、恵さん?」
 彼女はその言葉に、ふっと笑って、「否」と、「否、断じて否」と否定した。
 ならば誰だ、彼女は、
「うちは、うちらは!」
 奪った賢者の石を天空に構える!
「うちらの名前はダンダ団!」
「ダ、ダンダ、ダンダ団ですってぇ!?」
 滋賀に、一つのミステリーがある。
 琵琶湖の西岸に位置する比良連峰は、平安中期、天台宗の修行場となった場所であり、多くの寺が建設された。
 まさに神の国、聖地といった装いではあったが、戦国乱世の時代、一人の魔王がこの聖地を焼き尽くす。織田信長、日本という国を一つに纏め上げた後、世界へ駆け出そうとした野心家。破壊の後に創造する事が彼の天性であったが、事仏教に関しては、根絶やしという言葉しか当てはまらない。
 だが、ここには残っているのである。その寺院の庭の後が。
 比良にある寺全ては、延暦寺と共に尽く潰されたはずだのに、ここだけは残っている。見逃すなど有り得ない、一体どうしてか、どういう所以があるのか、
 ただ、一つ確かなのはこの場所が、
 ダンダ坊遺跡と呼ばれている事。
 寺。未だに歴史という、大いなる謎が残された大地の名前。
「で、それとは関係あるんですか?」
「んな事うちが知るかぁ!」
 素晴らしくキレのある逆ギレであった。まるで、元ネタが解らなかったから検索エンジンで検索してみたらこれがあったしこれでいいかこれにしようといった態度のものであった。
「まぁ知らないんでしたらいいですけど、やっぱり鈴木恵さんですよね?」
「知らん!」
「いやでも、聞いた話と特徴がそっくりなのですが」
「だから誰やねんその鈴木恵て! だいたいうちがその本人やとしても、某殺しちゃったり異界でラスト、しんみりと出演しただけで終わって、普通の女子高生AD見習いに戻ります発言をしたっぽい関西弁娘が、今更のこのこと復活できるかぁい!」
「やっぱり恵さんじゃ!?」
 一言で言えば空気読めてないである。でも呼ばれたら出っぱらなあかん、悲しいけど、これって寺なのよね。と遠い目をする関西弁少女。
 まぁ、それはおいといて。と、政治家のように重要な問題を棚上げにした彼女、鈴木恵もといダンダ団リーダーは、
「ともかく、おのれの賢者の石はうちが奪ったぁ! 早速この石でアフロンジャーロボを」「恵さんでしょう! やっぱり恵さんでしょ!?」
 というつっこみ虚しく、うひょひょーと奇声あげながら去っていく、彼の手元には釣竿などないから、奪い返すのも侭ならない、やばい、この侭では東京のおでんが、かんと炊きの世界になってしまう! そもそも今の関西人、いちいちかんと炊きなんて言わない!
「……いちかばちか、ですね」
 宇奈月慎一郎は、決意し、そして、
 イッツショータイムとは都合上言えなくとも――


◇◆◇


 何処にでもあるような戦隊物のロボ、一つ違うのは頭がアフロ。
 それ行け僕らのアフロンジャーロボは、賢者の石によってスムースに動いておった。搭乗者は鈴木恵で、他の団員はいちいち描写すると大変なので乗っていない。
「ははは! 凄い、凄いぞ! 流石のアフロンジャーロボ弟のお兄さんだ!」
 背中に蝶を発動しそうなセリフを言いながら、ヘルメット代わりに地毛じゃないアフロを被り、東京をガシコシ歩き回る巨大ロボ。尚、東京といってもビルが立ち並ぶ場所ではない、底が浅い海辺の方だ。外の世界からの闖入者という形で、この調子で人類アフロ化計画を、ん?
 モニターに、走る影が映る。「宇奈月慎一郎? 性懲りも無く……」
 踏み潰してやろうか、そう、思った時、
 彼は携帯を取りだし、ボタンを押して、
 叫ぶ。

「ビッグジー、開演ッ!」

 携帯の液晶に、青い輪が二つ作られ、それが水の波紋を巻き戻しするように収縮していく。
 刹那、大地が震え、それに伴い大気も振動する!
「な、な、なん、なんや!?」
 何? へ、それは、と、
 続けるように地上が割れ、大木が競りあがってくるように現れたのは、
「THE BIG G!?」
 黒金に光る具体的に描写してしまっては怒られるボディ、具体的に描写してはいけない鼻とト、具体的に描写してしまってはお飯食い上げの頭部に乗せるものがギラリと輝き、安定性という面では他の追随を許さない。さてさて、びゅびゅーん! と宇奈月が搭載する!
 コクピットに入った彼は、コア、エンジン、モニター、扇風機、湯沸しポット、電源を様々入れていった。そして、目の前の画面に、流れ出す英文。

 CAST IN THE NAME OF GLASS HOPPER
(背が高い人の名前においてこれを手作りする)
 YE NOT ODEN
(汝におでん無し)

「そんな殺生なぁ!?」
 あんまりな宣告の前に、うるうると涙を流す宇奈月、その時、右にウィンドウが表示された。アフロンジャーロボからのコンタクトである。「こ、こらおのれどういう事やねん! なんで賢者の石無しにTHE BIG Gが」
「はんぺん入れてみたらOKでした」
「賢者の石必要あったんか!?」
 ポケットの中には色々忍ばせておくものである。でも、実際そうすると人との対面時かっこ悪いが。
 ともかく――出汁が良く染み込んだ練り物によって動いてるTHE BIG Gの中で、宇奈月慎一郎は不適に微笑み、「ビィイイィィックジィアァアクショォオオン!」と、やけに巻き舌で叫びながら、リング状になっているラインに、扇的に配置された両サイドのレバーを、後ろから前へ一気に滑らせる。THE BIG Gの拳が合わされ、鼻の部分が赤く光り出した。
「雨の中、傘を差さずおでんを食べる人間が居てもいい。自由とはそういうものです」
 食べてもいいけどおでん冷めるし濡れるよ。
 ともかく、海に居並ぶ三体、じゃなかった一体に向って、THE BIG Gは光線を放とうとした、その為に、
 宇奈月慎一郎は、再び叫んだ。

「ビィッグジー、カイエェンッ!」
 放たれた真っ赤なお鼻ビームの軌道は、アフロンジャーロボへ吸い込まれるように――そして!

 次回に続「え、ここで終り!? いやそんななんでこんなええ所で、ちょ、おま!」
 第二期みたいなのがあるかは知らない。
PCシチュエーションノベル(シングル) -
エイひと クリエイターズルームへ
東京怪談
2006年11月14日

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