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『秋の行楽、彼らの山遊び 』
天波・慎霰1928)&和田・京太郎(1837)&伍宮・春華(1892)&(登場しない)

「な、春華」
 ある日、天波慎霰は伍宮春華に声をかけた。
「うちの天狗の里、今いい感じに秋だぜ。紅葉を見にいかねぇか?」
「慎霰のところに?」
 春華はきょとんと聞き返した。
 慎霰は満面の笑顔でうなずく。
「そ。俺とお前と京太郎でさ」
「京太郎も一緒に?」
 春華は嬉しそうににっこりした。
「楽しみだな!」

 慎霰と春華は天狗である。ただし種族がやや違う。春華の場合、平安時代に悪戯を繰り返して封印されていた天狗だが、慎霰は現代のこの世で「天狗攫い」によって人間から天狗になったのだ。
 慎霰の言う「天狗の隠れ里」とは、慎霰と同じように人間から天狗になったものたちが集まる里だった。その場所は特殊な場所にあり、日本でも山の山の奥、山の神々や妖怪たちのいる「山界」のなかでもさらに奥にどしりと構えている御神木から、空間移動しなくてはたどりつけない。

「と言ってもうちの里は人間を受け付けてくれないからさあ」
 慎霰と春華、二人で御神木のもとへ飛んでいく最中、慎霰はぼやいていた。
「京太郎のやつ、相変わらず『自分は人間だ!』って言ってきかねえんだよなあ」
「それでも里には入れるのか?」
 一行に京太郎の姿がないことをしきりに不思議がる春華は、素朴な疑問を口にする。
「まあ、なんとか」
 二人はすとんと御神木のもとへ降り立った。
 慎霰は、にやりと笑った。
「――策は弄してあるさ」

 天狗である二人は軽々と御神木から空間移動を行う――
 やがてたどりついた「天狗の隠れ里」に足を踏み入れるなり、春華は立ちすくんだ。
 目の前に。

『歓迎 春華 慎霰』

 と書かれたふんどし一丁の和田京太郎が――木につるされていた。
「きょ、京太郎……?」
 さすがに驚いた春華がかけよる。
 京太郎は縄できつく縛られたまま、体をゆすって慎霰をにらみつけた。
「しーんーざーんー!」
「だってよお、お前自分のこと人間って言ってきかないからよ」
 うちの里には決まりごとがあってさ、と慎霰は言う。
「人間を受け付けないとは言っても、侵入者の場合は捕縛して里内にとらえておくことになってんだ」
「てめえ! 俺を騙しやがったな!」
 京太郎は顔を真っ赤にしてますます体をゆすった。
「騙したって、何をどう騙したんだよ」
 春華が不思議そうに慎霰を見る。
 慎霰はえっへんと胸を張り、
「京太郎を形式上ででも侵入者扱いしなきゃならねえからよ。こいつの怪奇事件の依頼だって嘘ついて、待ち合わせはあの御神木のところでって言ってやった」
「あ」
 春華はなるほど、と手をぽんと打った。
「それで、御神木が特殊異界点だって知らない京太郎はこっちにワープしてきちゃった、と」
「そうそうそこで俺の後輩たちに頼んで、捕縛しとけってな」
「ちくしょーーーーーー!!!」
 ぎしぎしぎしぎし
 京太郎が体をゆするたびに、木がきしむ。
 春華は京太郎の体を手でとめて、にっこりと笑った。
「やったな京太郎。これで三人で遊べるぞ」
「俺は関係なーーーーーい!!」
「京太郎」
 慎霰が、ぽんと裸の京太郎の肩を叩いて、
「決定事項には従うのが男ってもんだ」
「何が決定事項だーーーーー!」
「ふんどし一丁、よっ男前!」
「慎霰てめえ殺す! 絶対殺す!」
「うーん……」
 春華が京太郎の姿を眺めてうめいた。
「どうした? 春華」
 慎霰が、今にもかみつきそうな京太郎から一歩退いて春華を見る。
「ふんどし一丁……」
 春華は真剣な顔でのたまった。
「似合う。似合うぞ京太郎」
「はるかーーーーーーーー!!!」
 まあそれはそれとして……
 どのみち、捕縛されてしまった京太郎はほとぼりが冷めるまで里から出られない。京太郎は服を返してもらって、しぶしぶ慎霰と春華につきあうことになった。

 天狗の隠れ里、紅葉の季節。
「ほら、綺麗だろう? 春華」
「ああ」
 赤や黄色、緑も混じって美しいグラデーションが山々に出来上がる。東西南北どの方向を見ても色は鮮やかで、それぞれの場所にまるで絵を描き出したような模様があるような気がした。
「綺麗だな……」
 春華がふう、と感嘆の息をつく。
 彼ら二人は、天狗の翼で空を飛んでいた。上空からはすべての方向の紅葉が見えて贅沢だ。
 京太郎はと言えば……
「降ろせ! 降ろせこの野郎!」
 二人の少し下あたりでじたばたと暴れていた。
 慎霰が下を向いて、「ちょっと静かにしてろよ」と口をとがらせる。
「念力で人ひとりつるすってのはけっこう大変なんだぜ。おとなしくそこで紅葉見てろ」
「知るかーーーー!」
 翼を持たない京太郎は、慎霰の念力で空を飛ばされているのだった。上からつるすように。
 京太郎の叫び声が、山々にこだまする。
 知るかー 知るかー 知るかー……
「これはこれで風流かもな」
 春華が笑顔でつぶやいた。
 下の京太郎を見ていた慎霰は、ふと閃いてにやりとした。
「動くなよー京太郎」
 言うなり――
 ひょこ
 京太郎の右ひじが持ち上がった。
 ひょこ
 今度は左ひじが。
 それはまるで、糸でつるされた人形のように。
 ひょこ
 前のほうに右ひざが出る。
 ひょこ
 後ろのほうに左足先が。
「しんざ……、てめえ!」
 京太郎の言葉などどこ吹く風。慣れてきた慎霰はますます面白そうにひょこひょこ京太郎の体を動かした。
 あちこちの関節や先っぽを操られ、京太郎はこっけいなポーズをとる。
 鳥の格好、カエルの格好、逆立ち、変な踊り……
 それを見た春華が大爆笑した。
「きょ、京太郎、似合いすぎ……!」
「黙ってろ!」
 真っ赤な顔で、京太郎が怒鳴った。
 黙ってろー 黙ってろー 黙ってろー……
 京太郎の声はやはり山々に響いて、やがて小さくなって消えていった。

「ちぃーっと山におりてみっか」
 慎霰の提案で、山界に降りた一行――
「山か」
 春華が嬉しそうな顔をした。「懐かしいな……俺も以前は、自分で山菜採りしたんだ」
「山菜採りかー。いいねー」
 慎霰があごに手をやって、「じゃ山菜採りやっか」
「俺はどれがどれか知らねえぞ」
 ぶすっとしながら京太郎が言う。慎霰はあははと笑った。
「何言ってんだ。おいしそうなやつ採ってこりゃ大抵まずい」
「ぁあ!?」
「何てのは置いといて」
 慎霰は鬼の形相の京太郎を無視し、「なあ春華。いっちょ見本見せてくれよ」
「……分かった」
 春華は木々にさえぎられた山道をすいすいと進み、姿を消した。
「ふうん……本当に山には慣れてんだな」
 京太郎が意外そうな顔をし、慎霰は自分のことのように胸を張る。
「さっすが春華だぜ」
 待つこと十数分――
「お待たせ」
 春華が帰ってきて――
 その手元を見た慎霰と京太郎、一瞬言葉をつまらせた。
 うにょろうにょろとうねる生きているような草。
 どう見ても毒キノコにしか見えない色が鮮やかすぎるキノコ。
 赤黒い色をした、木の実。
 その他、怪しすぎる物体もろもろ――
「これ、うまいんだぜ」
 春華は京太郎に向かって言った。「京太郎は食べたことないだろ。やるよ」
「い、いらな――」
「本気でうまいぜ?」
 春華の、ぶっきらぼうながら真剣な物言い。そして京太郎を信じている純真な瞳。
 きらきらきらきら
 その瞳の輝きに、京太郎は焼かれるような気分になった。
 そして――
「わ、わぁーったよ!」
 京太郎は、折れた。
 慎霰が拍手をする。
「さすが、おっとこまえ!」
 京太郎は春華に食べ方を教えてもらいながら、涙目で慎霰を見て、
「後で本当に殺す……」
 低い低い声音でつぶやいた。

 春華は毒に耐性がある。
 そのことを後から知って、京太郎は深く深く後悔した。
 幸い、さすがに慌てた慎霰が里から解毒剤を持ってきてくれたからいいものの――
「こんなところで死んでたまるか!」
 京太郎の心の奥底からの叫びが、またもや山にこだまする……

「山で紅葉ばっかじゃなくてさ、川で釣りもおつだぜ!」
 慎霰のすすめで川へやってきた一行――
「綺麗な水だな……」
 さらさら流れる水を片手にすくいとって、春華は顔をほころばせる。
 慎霰が用意した釣り道具を分け、慎霰と春華は嬉々として釣りを始めた。
「……おい」
「いやー春華クン、今日は釣れそうな気がしないかね」
「おい」
「……そうだな。なんとなく、いい感じがする」
「おい!」
 がつん! 京太郎の拳が慎霰の脳天を直撃する。「どうして俺の分はねえんだ!」
「いってぇ……京太郎、この里では天狗しか釣りをしちゃいけねえきまりがあるんだよ」
 大嘘である。「ただし、天狗以外のやつらでも参加できる方法がある」
「いや待ていいそれ以上聞きたくな」
「いーから聞けその参加方法はだな」
 慎霰はびしっと川を指差した。
「――直接飛び込んでの魚獲りだ!」
 言った瞬間、
 ずるっどぼんっ!
 京太郎は足をすべらせて川に落ちた。
 慎霰がにやにやする。もちろん彼の念力の力だ。
「……おい、京太郎」
 春華がぼそりと声をかける。
 川から顔を出した京太郎が、怒りのままに「なんだ!」と返事をした。
「こんな綺麗な川で泳いだら、お前すごく肌綺麗になるぞ」
 春華の大真面目な発言に、ごぼごぼごぼと京太郎が沈んでいく。
「おーっと、いけねえいけねえ」
 慎霰の念力で、京太郎は再び川面に顔を出した。
「この川……けっこう深いな」
 春華は他人事のようにそう言った。
 京太郎は春華への怒りを慎霰に向ける。何となく、春華には弱いのだ。
「慎霰ん〜〜〜〜」
 おどろおどろしい声を発しながら川岸へ戻ろうとすると、突然川の流れが強くなった。言うまでもなく、慎霰の仕業で。
「!」
 隙を見せた京太郎は、簡単に流された。「慎霰ー!」という大声を残しながら。
 慎霰は釣り糸を放り投げ、念力と合わせ技で京太郎を釣りあげた。
「よっしゃ、大物!」
 などとほざいて、慎霰は京太郎を川岸にぺいっと放り出す。
 どさりと背中から岸に倒れた京太郎は、しばらくぐったりしていた。
 春華は自分の釣り具を岸に設置したまま、京太郎のところまでやってくると、しげしげとその顔をのぞきこむ。
「何やってんだ? 春華」
 慎霰の不思議そうな問いに、
「いや……肌綺麗になってないなあ……」
 不服そうに春華が答える。
「………」
 すべて聞こえていても、もはや怒鳴る気力のない京太郎だった。

 天狗の隠れ里の温泉は一品である。
「はぁ〜あ」
 今日もからかわれ通しの京太郎は、温泉のあまりの心地よさに眠りそうになった。
 こぽこぽと、どこからか湧き出てくる暖かい湯……
 景色は絵に描いたような紅葉……
「京太郎、もったいないな」
 春華が自分の翼を洗いながらつぶやく。「京太郎にも翼があればいいのに……」
「いや! 京太郎は翼がないからこそ京太郎だ!」
「当たり前だ。俺はただの人間だからな」
 慎霰の言葉に、満足して京太郎がうなずく。
 慎霰はうんうんと同意して、
「翼があっちゃ今までよりもからかい甲斐がなくなる。それはいかん」
「……翼へし折ってやろうか?」
 京太郎の目に真剣に殺意が走ったが――
 こぽこぽこぽ……
 穏やかなお湯の音が、京太郎の心から毒をぬいていく。
「はあ……お前ら温泉でくらいは休ませてくれよ……」
 今にも眠りそうな声で京太郎は言う。
 慎霰と春華はひそかに微笑んだ。
 京太郎は知らなかった。京太郎が温泉で眠って溺れてしまわないように、慎霰が念力で彼の眠気を制していることを――

 夜は宴会。温泉の後のお楽しみだ。
「っかー! うまいぜ!」
 慎霰が天狗の酒を口にして満足の声をあげる。
 隣で春華がちびちびと酒を口にしながら、
「……京太郎は飲まないのか?」
 ひとり、かたくなに酒に手をつけようとしない京太郎に言った。
「俺は未成年だっ」
「異能者に未成年もくそもねーって。飲めよ、うまいから」
「俺は人間だ!」
 慎霰がおちょこをさしだしても、京太郎はがんとしてきかない。
 ほっほーう、と慎霰はにやりとした。
「じゃあ天狗の里に入るために何か修練しなきゃな」
「俺は元々ここに好きできたわけじゃ――」
「芸しろ芸。三回回って天狗鳴き」
「天狗鳴きってなんだ天狗鳴きって!」
「だからそれを」
 慎霰は重々しい面持ちで胸に手を置いて、
「――心で表現するんだよ」
「心で表現か……京太郎にならできそうだな」
 春華が期待の目で京太郎を見る。
「でっ、できるかっ」
 実際天狗鳴きなんてものがあるのか? などと京太郎は真剣に考えたりもしたのだが。
「じゃあ飛んでる真似」
 慎霰が提案する。「こう、手をばさばさと」
「誰がやるかっ!」
「京太郎……」
 慎霰はくいっとお酒を飲み干した後、静かにおちょこをたたみの上に置き、
「この里に入るための修練なんだよ……」
「だーかーらー俺は関係ねー!」
「……俺は見てみたい。天狗飛びしてる京太郎」
 春華がぼそりと言う。
 う、と京太郎がつまった。
「ほらほら、春華がお前の芸を楽しみにしてるぞ」
「く……っ!」
 なぜか春華に弱い京太郎、悩み悩み悩んだあげく、
 両腕をおそるおそる開いて、
 ……ばさ、ばさ、と声で音を出しながら動かした。
 とたんに慎霰が大爆笑した。
「きょ、京太郎すげえ! 本当にやりやがった!」
「慎霰てめえ!」
「京太郎!」
 春華が嬉しそうに声をあげた。
「天狗の鳴き声が聴こえた!」
「マジでか!」
 慎霰がさらに腹を抱えて笑う。
 春華の言葉に、京太郎は冷や汗を流して引きつり笑いをした。
 ――天狗の鳴き声を出せた……?
「そんなもん出したくねえ……っ」
 しぼりだした声は、悲壮感に満ちていた。

 宴会で散々遊んだ――正しくは京太郎で遊んだ――三人は、そろそろ眠るかと用意されていた座敷に入った。
「といっても若者たちの夜――」
 慎霰が偉そうに両手を腰に当てる。
「これから深夜まで遊ぶのが、俺たちの義務!」
「……義務だったのか」
 春華が驚いたように目を見開く。
「そうだぜ春華。こう、枕をな」
 慎霰は風を呼んだ。
 ひゅおう
 風に乗って枕がひとつ飛び上がり、京太郎の後頭部を強打する。
「何しやがる……っ!」
 宴会で遊ばれた直後の京太郎は、それだけで激昂した。
 京太郎が風を呼ぶ。ただ呼ぶだけならば天狗の二人よりも強い風。部屋に置いてあった枕をすべて巻きこんで、枕たちは慎霰にどかどかどかっとぶち当たった。
 腹をやられた慎霰は、ぐはっとか大げさなリアクションを取りながら、
「や……やるな京太郎……しかし俺も負けてはいられない!」
「俺も混ぜろよ」
 慎霰の呼ぶ風に重なって春華の呼ぶ風がやってくる。ごうごうと座敷が風で埋まっていく。枕がちぎれんばかりに飛び回り、あっちに当たりこっちに当たりと大変なことになっていく。
「はっ。風で俺に勝てると思うなよ……!」
 京太郎は本気モードで風を呼んだ。
 それは枕どころか布団まで巻き上げて――
 ばりぃっ!
 ――布団を障子にめりこませてしまった。
「あ、やべ」
 慎霰が慌てる。
「何事ですか!」
 他の天狗たちがどやどやと集まってくる。
「あなたたちは――はっ。侵入者!」
 天狗たちが京太郎の姿を見て構えを取る。違う違うと慎霰が首を振った。
「あのな、この障子はこの京太郎がやったんだ。風を呼んで布団を障子にめりこませたんだ。いいか、風を呼んで布団を障子にめりこませたんだぞ」
「っんでそこを強調すんだよ……!」
 後ろで京太郎がわらわらと両手をうごめかしたりもしていたが。
「京太郎は人間じゃない。従って、侵入者じゃない。心配ない」
 慎霰はそう言って、他の天狗たちを追い払った。
 京太郎は、慎霰の言葉で目が覚めたようだった。
「俺は……俺は能力なんか使いたくなかったのに……!」
 俺は人間なんだ! と頭を抱えてわめく京太郎の肩に、春華が静かに手を置いた。
「……どっちでもいいんじゃないか」
 春華はそう言った。
「力持ってても持ってなくても、京太郎は京太郎だ。俺は京太郎が好きだ」
 京太郎は顔をあげる。
 少し照れたように、仏頂面の頬を赤らめている春華の姿があった。
「………」
 慎霰ががっしと京太郎の肩を抱く。
「そーさ、俺ら親友だもんなっ」
「慎霰……」
 京太郎はふいに思い出す。
 ――慎霰の自由さに惹かれて、東京へ行った。
 そして今、自分を好きだと言ってくれている春華が目の前にいる。
 京太郎の胸の奥が、じんと熱くなった。
「……今夜だけだからな」
 京太郎は風を呼んだ。
 枕が飛び上がり、べしべしっと慎霰の頭をぶつ。
「いててっ。俺ばっかり集中攻撃かよっ」
「ったり前だ」
 上空で枕を待機させながら、京太郎が「さて次はどこを殴ってやろうかな――」とにやりとしたそのとき――
「……お前たち」
 障子が開いた。
 振り向くと、どっしりとした男性天狗がいた。
 男天狗はにっこりと笑った。
「――障子の張替え、やってくれるな……?」
 おそるおそる見るは、布団がつっこんだ障子――
 にこにこにこ。男天狗は笑みを崩さない。
 その奥にある烈火の炎が恐ろしくて、
「……張りなおさせて頂きます……」
 三人はおとなしく、障子の張替えを承諾した。
 京太郎が上空で待機させていた枕が、風を失い、三人の頭にそれぞれぼんぼんぼんと当たって落ちた。

 こうして、天狗の隠れ里での一日は終わった。
 次の日には、三人は御神木を通じて日本に帰り、東京に戻ってきていた。
「あ、俺今日用事ある」
 春華が時計を見て、しまったというような顔をする。
「おう。行ってこい行ってこい」
 慎霰が軽く手を振って、それに押されるように春華は慎霰と京太郎に手を振り、
「また三人で遊ぼうな!」
 と言って、どこかへ行ってしまった。
「………」
 京太郎はその後姿を見送っていた。
「どーしたよ、京太郎?」
 慎霰がにやにやしながら訊いてくる。
「ほっとけよ」
 京太郎は仏頂面で返した。けれど心がじんじんする。
 ――どっちでもいい。京太郎が好きだ――
 純粋すぎる春華の言葉は、京太郎には重過ぎて……嬉しすぎて。
「春華に惚れたか。俺も愛してるぜ京太郎!」
 ――抱きついてきた慎霰には肘てつをくらわしておいた。

 また三人で遊ぼうな――

(ああ……また、きっと)
 京太郎は思う。
 どうせまた、自分が遊び道具になるのだろうと思って苦笑しながら、それでも春華の残していった言葉は苦痛ではなかった。


 ―Fin―
PCシチュエーションノベル(グループ3) -
笠城夢斗 クリエイターズルームへ
東京怪談
2006年09月29日

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