▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『結局子供なのです。 』
飛鷹・いずみ1271)&連河 楽斗(NPC3697)

 かなり、高価な割烹料亭の座敷。国の議員や組織の幹部が会合するような重い雰囲気のある場所。そこに、派手な衣装に身を包む男と、その場に居てはおかしい少女が居た。一応ビシッとおめかしはしているが、はやりなじめない。異空間にとばされた感じがすると、少女は思っている。
 彼女は、キョロキョロ見渡しているので、男は笑いが止まらないらしい。
「な、何ですか! なにがおかしいですか?!」
「あははは、慣れないか?」
「そんなことはありません」
 と、少女はそっぽを向く。
 少女は日鷹いずみ。
 目の前にいる男は、連河楽斗。
 ある、キーパースンとの関連で、妙に気が合うらしい。今回は一寸違う様子だが。
「まあ、未成年だから、ジュースな」
 と、かなり高価らしいオレンジジュースと美味しそうな料理が並んでいる。
「でもあなたも未成年でしょう?」
「ん? ああ、だからノンアルコールビールだ」
 近頃、子供もビールみたいな飲み物が出来た。かなり便利になった気もする。
「……変なところで律儀」
「で、まあ、俺の仕事を止めようとしたからには、何か知恵を出してくれるんだろ?」
 楽斗は、料理を食べながらいずみに言った。
「ええ、あなたは、イノシシみたいに突撃する悪い癖があります。一応、人間なんですから冷静に対応してください」
 ため息を吐く。
「一応かよ! まいったな!」
 わはは、と楽斗は笑った。
 楽斗は影の方で色々仕事をする。暗殺業がメインだったが今では、其れはない。体勢が変わればやり方も変わるというモノだ。過激な動きを好む楽斗を引き留める事。いずみはこの一族と関連しつづけていた、彼女がなせるというモノで、どっちが保護者なのか分からないこともある。
 的確に今回の仕事のアドバイスをしてから、お開きになるはずだった。そう思う。
「とりかく、単に突っ走るのではなく、自分手は汚さずに、利益を得ることも大事だと思いますね」
「ほほう、ヤバイこというじゃないか。つうか汚れ役ばっかりだから、たまには美味しいこともしてみたいけどな」
「でも、其れをするにはリスクが……慣れないこと……」
 小学生が話している内容にしては恐ろしい話題が多く持ち上がる。
 つまり、あくどい知恵を貸している。
 もし、彼女が大人であれば、まさしく料亭の雰囲気に合っていただろう。ただ、まだ子供なのが悔やまれる。大人になっているならば、どちらかというと、おしゃれなバーが良いだろうが、其れはお楽しみに取っておくべきであろう。
 ただ、確実に楽斗に大きな貸しを作るというトンでもないことをしているのが彼女である。ああ、恐ろしい。

「そこまで徹頭徹尾っていうのも、あいつがかわいそうだ」
 くっくっ、と楽斗が笑った。
 当然、いずみは「なにが?」となる。
「いや、あいつがどうしてあんたみたいな怖い女が好きなのか、わからねなぁ」
「な、何ですって!」
 ばんとテーブルを叩く。
 “あいつ”を持ち出されるといずみは冷静でなくなる。そこが可愛いところであるのだが、普段はどぎつい。
「あいつの行動管理どころか、財務大臣閣下。彼はもう17だぞ? 自己責任が良いんじゃないか? 遊びたいだろうし」
 楽斗は笑う。
「何を言うのですか! あの人は世間知らずも良いところです! 1万円渡してみなさい! 全部甘いモノに消えてしまいます! もしくは、悪い人にたかられてしまいます!」
 この辺の微妙な発想は子供っぽいというか、その人に性格を網羅しているからだろうか?
「だからって、あいつの家計簿つけて、小遣いや生活費の指定をしないでも良いだろう? なに、あいつはお前のペット?」
 楽斗はさらに続ける。
「ぺ、ペット……」
 その言葉で、いずみは頭がパンクした。
 色々思考できる為か想像力豊かな為か、色々な妄想が走馬燈レベルの早さで駆けめぐるのである。いやはや困ったモノだ。
 あの人の笑顔、天然さ加減など、彼女にとって“ツボ”なのだ。実際、あの人をじっと見ることは好きで好きでたまらなく、恥ずかしくて出来ない。なので、いつも小言を言って起こっている感じになっている。甘えたいのだが上手く甘えられない。
 その辺を、楽斗は知っているようで、からかいたいらしい。ネタには困らない様子。
「ほどほどになぁ〜。あいつの可愛い性格が無くなると困るだろ〜。本当はどうなんだよ。あれお前の外面か?」
 楽斗はにやにやしながらいずみに聞いた。
「ち、違います!」
 いずみは混乱している頭の中で、照れを耐えて変なことを言ってしまった。
「何を言っているんですか……。 あの人は……あの人は私があの人の好みになってくれる方が……本当は、いいのです! 私も其れを……」
 いずみは心の奥の方で、「あれ?」と思っていたが、余り気にもしていない。
「ほほう! あいつはどんなことが好みかなぁ〜。本当に好きなら、何だってするのか? いずみ?」
 楽斗はニヤニヤしながら煽る。
「も、もちろん! あの人が望むなら、メイド服を着てご主人様って読んで、色々ご奉仕もします!」
 いずみの言葉で、楽斗が爆笑した。
「ぎゃははは! いいぞ、やれやれ! あいつも喜ぶぞ! 今までツンツンしていて、思いっきりデレデレ甘える為にメイドになるのか! まさしく今時のはやりじゃないか!?」
 と、腹を抱えて笑いが収まらない。
 というか、いつ“その言葉”を覚えた? とつっこみたい読者はそのままつっこんでおいて欲しい。
 いずみは、今の状態が、完全にからかわれていると理解するのにはかなり時間がかかる。多分この会合が終わってからだろうか? その人の顔を見た時とか……。
 そのあとは、楽斗のペースにはまったいずみが、赤裸々に惚気やらを連発。貸しを作ったのだが、弱みみたいなモノを握られたのにも気が付いていない。さすがに色々裏を知る楽斗には後一歩の所にて、からかう手腕が劣っているのだろうか?
 楽しいから良いのだろうけど、ネタにあがったあの人の社会的地位は確実に落ちている。

 会合がおわり、楽斗が部下と車を呼んでいずみの自宅近くまで送った。
 そして、別れ際。
「お前、ひょっとしたらいい女になるかもな」
 と、言う。
 いずみはそれに対して自信たっぷりに、
「私は今でもイイ女ですよ? ただ将来はもっとイイ女になっているだけです」
 いずみの微笑んでいた。
 その表情で、楽斗は安心したような笑いを浮かべるのであった。

 完?
PCシチュエーションノベル(シングル) -
滝照直樹 クリエイターズルームへ
東京怪談
2006年07月13日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.