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『櫻ノ夢【狂華乱舞】 』
平・代真子4241

 真昼の日差しの下に晒された、櫻の花弁の散り際はまるで雪が降っているようで……
 暖かい気温が眠気を誘う。
「場所取りも大事だよね」
 一足先に訪れていた平・代真子が大きく伸びをして見事な櫻の古木を見上げる。
「ホントに見事な櫻だね……」
 神秘的な空気を纏うそれはどこか浮世離れしていた。
「ん〜……ちょっと早く来過ぎちゃったかな?」
 果たして……どうやって此処に来たのか……代真子はハテ? と軽く首を傾げて見る。
 気が付けば、持参した重箱を手にここにいた。
 そもそも、どうしてここに来ようと思ったのか……
「ま、いいか」
 細かいことは気にしない、此処で宴会が行われることが重要であった。
 しこたま食べる気満々の代真子は一人張り切っていた。
「こういうのって、えーと、『花も団子』っていうんだっけ?」
 正確には『花より団子』であるが、それを指摘するものはまだ誰も来ていない。
「少しだけ………」
 欠伸をかみ殺し、辺りを見回す。まだ他の面子が来る気配はなかった。
 張り切ってお弁当を作ってきたおかげで、寝不足であった。
「少しだけならいいよね」
 櫻の古木の下で、持参したござを広げて横になる。
 それほどたたずに、代真子は夢の囚われ人となった。

 暗い闇に浮かび上がる櫻。
 その幹に腰掛けるように、一人の女性が遠くを見つめていた。
 彼女は一体……
 はらり、はらりと舞い落ちる花弁の一枚を手のひらに受け止め静かに微笑む。
「……貴女も……迷い込んでしまったのですね」
 迷い込む……? 彼女は何を言っているのだろうか……
「これは全て櫻の見る夢の欠片……貴女が此処にいることも全ては夢なのかもしれません……」
 代真子に気付いているのかいないのか……口元に微笑を称えながら浮世離れした女性がすっと指を指し示した。
「これは夢……でも……一概に現実と全くのかかわりのないものではないのです……」
「……?」
「全ての夢は、櫻の為に……」
 まってと、止める間もなく櫻に溶け込むように女性は姿を消した。


「おら、しぃ! つまみがたんねぇぞ!!」
 酒だ酒!
 夜桜の幻想的な様子は何処吹く風、華のあるところで飲む酒はまた格別だ。
「あら、こちらのお惣菜は……」
「餃子の皮にチーズをまいてあげたんです」
 重箱に所狭しと詰められた、つまみを突き黄昏堂の看板娘が目新しい料理のレシピに目を輝かせる。
「簡単なんですけど、以外につまみに会うみたいで……」
「こちらの酒はこれまた一風違ってよい味じゃ」
 どこか浮世離れした、緑の髪の女性が琥珀色の蒸留酒に目を細める。
「……人間とはこんな事をするもんなのか……?」
「このジュースおいしいね」
 浅黒い肌の男の袖を引き淡いピンク色の髪の少女がふわりと微笑む。
「深く考えると、はげるぞ」
 黄昏堂の店主も杯に花弁を浮かせ、黙々と杯を重ねていた。
 果たしてどのような、流れでそうなったのか……
「やっぱ宴会ときたら……一発芸だよな」
「芸ならまかせとけ!!」
 骸骨がカタカタと顎を鳴らし、その腕の骨を誇示してみせる。
「芸か……さて、人に見せられるようなものはあったかな……?」
 宴もたけなわ、程よくアルコールも入り花見の酒宴はどこかサバトの匂いがしてきた。

「……ん……」
 近くで誰かが話す声がする。
 うっすらと瞳を開けると既にその場は宴会ムード一色に染まっていた。
 気が付けば随分な人数が集まり思い思いに寛いでいた。
「ちょっとー、来てるなら起こしてー」
 ずるーい! 折角場所取りしていたのにと憤慨しながら代真子が体を起こした。
「いやー、すっごく幸せそうに寝てたから」
「起こすのが悪い気がしてな」
 バツが悪そうに鼻の頭をかきながら言い訳のように告げる。
「ひどーい、ってことは寝顔見られてた!?」
 慌ててよだれをたらしていなかっただろうかと口元を拭う。
 間抜けな寝顔を見られていたともなると赤面物である。
「う〜……」
「とりあえず、全員そろったようだから仕切りなおしでもう一度乾杯するか?」
 誰かが代真子に紙コップを差し出す。
「あ、あたしソフトドリンクでお願いします」
 日本酒から洋酒。お茶にジュースと飲み物も随分いろいろな種類が用意されていた。
 料理も各自が心づくしの物をもちよって随分豪勢な料理が並んでいた。
「あ、あたしもお料理もってきました!」
 重箱に詰められた料理を差し出す。
「……なんで、穴が……?」
 代真子の差し出した重箱の中身の所々は虫食い状態に隙間ができていた。
 重箱の弁当といえば、普通はびっちり料理が詰められているのが普通である。
「えへへ……作ってる時に腹が減っちゃって食べちゃった♪」
 味見、味見とついつい、つまみ食いをしてしまったらしい。
「味は普通だから、きっと大丈夫!」
 拳をにぎりながら代真子が力説する。
「ま、いいけどな」
 酒の注がれたグラスを傾けながら、一人が代真子の重箱に箸を伸ばす。
「偶にはこういう普通の花見もいいよね」
 向こうでは、誰かが腹踊りをはじめ。
 反対側では、何故か飲み比べがはじまっていたがいたって普通の宴会の風景がそこにあった。
 散り行く花弁を目で追いながら代真子が呟いた。
 極普通の春のひと時……どこかありふれた風景でありながら、それはどこかで現実と一線を画していた……


「極普通の夢……偶にはこういうものもいいかもしれません」
 これも一緒に眠らせてしまいましょう…… 
 そう呟くと、櫻の古木に腰をかけ宴会の様子をみまもっていた女性はふわりを笑みを浮かべ一片の花弁を胸に抱きしめた。






【 Fin 】



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【4241 / 平・代真子 / 女性 / 17歳 / 高校生】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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平・代真子様

お初お目にかかります。
ライターのはると申します。櫻ノ夢ノベルへのご参加ありがとうございました。
比較的軽めにかかせていただきましたがいかがでしたでしょうか?

イメージと違う!というようなことが御座いましたら、次回のご参考にさせて頂きますので遠慮なくお申し付けくださいませ。
PCゲームノベル・櫻ノ夢 -
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東京怪談
2006年05月29日

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