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『【魔道空母に桜の花を】 』
ユーリ・ヴェルトライゼン0204
●プロローグ
 ‥‥帝國。皇帝‥‥の治める専制君主の国。その国では、既存の産業と融合し、蒸気巨兵と言う巨大人型兵器を、多数所有している。だが、周囲にはまだ『蛮族』と呼ばれる自給自足の生活を送っており、彼らが『狩場』と呼ぶ自然豊かな場所も多く、モンスターの脅威にさらされているのもまた、事実だった。
 その帝國が誇る兵器の一つ。それが、蒸気魔法を駆使した空母‥‥魔道空母スチームパラダイス号である。艦載機は言うに及ばず、蒸気巨兵と呼ばれる人型兵器も多数搭載しており、さながら海上要塞と言ったものだ。
 今回は、その蒸気空母が、物語の舞台である‥‥。

 シナリオは、魔道空母ではなく、帝國に存在する蒸気盗賊『ムーンナイト』のアジトから始まる。蒸気巨兵『ルシファー』を所有する彼らは、もはや単なる犯罪者集団ではなく、1個の国家として機能していたのだが‥‥。
「魔道空母に忍びこむぅ? 薫はん、本気かいな」
「ああ。今度、皇帝陛下が艦上視察に来るからな。一緒にあの男もいるだろう。鼻を明かしてやるのは、持ってこいの舞台だ」
 金髪碧眼の美貌の首領。名前は薫。見た目は20代そこそこと言った風情だが、その通りの年齢ではあるまい。彼が口にしたのは、スチームパラダイスで行われる威信行為を、台無しにする事だった。
「せやけど、大丈夫かいな。いっくらちまっこつぅたかて、警備は最上級やで〜」
 それを相手にする女性は、人の姿をしていたが、背中に黒い一対のコウモリ翼。いわゆる異種族と言う奴だろう。
「ヴェリオール。何か取ってくるわけじゃない。むしろ、置いてくるほうさ」
 そう言って、薫が見せたのは、ピンポン玉二つくらいの大きな種だった。
「巨大櫻の種だ。こいつを動力源の宝玉に叩き込めば、一瞬で大きくなる。中の人々を傷つけずに船を無効化出来る、素敵な花さ」
 どうやら薫は、スチームパラダイスに潜入し、これを植え付け、空母の上に、巨大な桜の花を咲かせてしまおうと言う魂胆らしい。金属と魔法石を養分とする特殊な櫻だが、大きさ的には、動力部分が台無しになるレベルで、沈みはしないらしい。
「ま、おまいさんが大丈夫つーなら、大丈夫やろ。気ぃ付けてな」
 念のため、ルシファーは何時でも出せるようにしとく。と、そう付け足す彼女。こうして、魔道空母に巨大櫻をプレゼントするべく、数匹の麗しきネズミが、潜入する事になるのだった。

●帝國上港
 ここ蒸気帝國には、2種類の港が存在する。一つは、飛空戦艦など、空中を往来する船用の港、そして、もう一つは、ごく普通の船が行き来する港である。
 空中用は『上港』、海上用は『下港』と呼ばれ、主に上港は政府関係者が。下港は一般市民や商人が使用していた。
 準備を整えた帝國側は、ムーンナイトが狙っていると言う事実を伏し、予定通り艦上視察を行う事にした。と言うのも、空母の視察は威信行為を兼ねている為、中止にするわけには行かないと言う、宰相の主張である。その為、下港に停泊したスチームパラダイスの周囲には、一般市民を含めた、多数の観客が訪れていた。
「すごい人‥‥。大丈夫かな‥‥」
 その姿に、すっかり気後れしてしまっている様子のシラト。その姿は、サリーを纏い、田舎の少数民族が、見物しに来たような格好になっている。装飾品が沢山ついている所を見ると、踊り子なのだろう。
「これだけ人が多ければ、脱出も容易だろうがな」
「そ、そうかな‥‥」
 背中合わせになるような位置に、ボスである薫がいた。不安そうな彼に、「‥‥うまくやれよ」と言い残し、薫はそのまま人ごみの向こう側へと消えるのだった。

●その頃の本命
 さて、別働部隊が、やや危なっかしいながらも、何とか艦内へ潜り込んだ頃、本隊とも言える薫は、ロディ、そして穂積と共に、やはり空母内へと紛れ込んでいた。
「うわ、すげー。俺、初めて見た!」
 ぽかんと口を開けながら、興奮した表情を見せる穂積。今、彼らがいるのは、もっとも警戒の薄いであろう、一般駐車場だ。シラト・ヴェリ班の他、幾つかのルートを、ロディが調べて来たらしい。もっとも、それでも普通の屋内型パーキングより、遥かに大きいのだが。
「海外には、俺の名前の空母がったんだよ。戦争中に作られて未完成だって言う話だけど。鷲って意味だったかな。ヤバい。すげぇうれしい!」
 まるで、初めて大きな船を見た子供のように、キラキラと目を輝かせる穂積。得意げに、自分の知識を語る彼に、薫は少々呆れた調子で、こう尋ねた。
「騒ぐのは結構だが、どうするんだ?」
「ん? やるやる! 桜を咲かせに乗り込むんだろ? 役に立つと思うよ」
 こーゆーの、義賊って言うんだよなっ。と、好奇心全開の彼。入ったばかりの新入りに、薫は念を押すように言った。
「今からやるのは、その愛しの空母を無力化するものなんだが‥‥」
「いーんじゃない? 皇帝さんも、目の前で桜が咲いたら、きっと喜ぶよ。まだ小さいのに頑張ってるだろうしさ」
 だがそこは、盗賊側の人間。はしゃぎながらも、自分の役目は心得ているらしく、そう宣言してくれる。
「まぁ良い。ロディ、ヴェリオール達の様子は?」
「途中で余計なのを拾ったみたいだが、何とかなってる。もう暫くは、大丈夫だな」
 薫が尋ねると、ロディはそう答えた。手元のモバイルには、簡略化されたスチームパラダイスの図面が映っており、ピンクと白の光点が重なっている。その周囲には、翠の光点が二つあり、彼らだけではない事が、表示されていた。
「シラトもあれで、蒸気巨兵は動かせるからな。では、こちらも行動を開始するとしようか」
 彼らが向かっているのは、巨兵が納められた格納庫だ。それを確かめると、首から、変装用の魔法石を下げ、そう言う薫。いよいよと言った雰囲気に、穂積が尋ねる。
「乗り込めるのか?」
「潜入ルートはチェック済みさ。ほら、こいつ持って。花びら付きで、派手にしてある。音はでかいけどな」
 同じ様に変装したロディが渡したのは、ピンポン玉くらいの丸い物体だ。殺傷能力は低いが、目くらましには充分の、いわゆる煙玉である。
「無くても大丈夫な気がするけどな。まぁ、良いか」
 それをポケットに押し込み、移動を始める薫とロディの後をついて行く穂積。だが、それを監視していた者がいた。
「ふふ‥‥。情報部が掴んだ話は、確かなようですね。それでは、お手並み拝見といきましょうか」
 1人、そう呟いた男性‥‥ユーリは、勝手知ったるなんとやら‥‥と言った風情で、路地を先回りする。
「早速お出迎えのようだな」
「おや。もうバレちゃいましたか。いえねぇ、あなた方の噂を聞いて、帝國も一枚岩ではない事をお伝えしようかと」
 再び現れたのは、薫がその気配に気付いた時だった。ふっと、さも今出てきたばかりのような顔をして、彼らの前に姿を見せたユーリは、彼にそう申し出る。
「ほほぅ?」
「動力炉へ向かうのでしょう? 御案内しますよ」
 私とて、陛下が喜ぶ顔が見たいですからねぇ‥‥と、協力を約束する彼。
「せっかくのご好意だが、こちらも仕事だからね。相手をするわけにはいかないんだよ」
 リーダーの薫は、そう言って首を横に振った。やはり信用されていないな‥‥と感じたユーリは、意識を集中させ、自らの能力を使用する。
「そんな事、仰らずに‥‥ねぇ?」
 甘ったるい声で、猫を撫でる様に訴えるユーリ。精神を支配するそのテレパス能力に、まずロディが引っかかった。
「薫。彼の言う通りです。裏切り者がいるなら、利用しないと」
 まるで無意識の様に、彼を信用するよう、告げる彼。
「わかった。好きにしろ」
「信用していただいて、ありがとうございます。では、こちらです」
 ややあって、薫がそう言ったのを聞き、ユーリはくるりと背中を見せる。ところが薫は、それに従いながらも、こっそりと囁いた。
「‥‥穂積」
「ん?」
 反応を見せる彼に、薫は動くな‥‥と前置きしてから、続けた。
「警備の巡回、それから動力炉の反対側で、人が集まっている所を調べろ。ただし、2人にバレないようにな」
「‥‥わかった」
 どうやら薫には、ユーリが何らかの力を使った事が、わかっているらしい。言われるがまま、壁に手をつき、その『記憶』を探る。それによれば、何箇所かに警備兵が固まっている所があるとの事。
「あれ? ユーリさんの向かってるの、そっちの方向‥‥」
 1つは、シラト達が起こした配管破損事件だろう。中心部にいたのは、おそらく動力部の警備。その他、詰め所や居住区等があった。だが、それとは別に、もう1つ、明らかに不自然な‥‥人の集まりがあった。しかも、ユーリが何食わぬ顔で案内しているのは、そのルートだ。
「やはり待ち伏せか‥‥」
 確信した表情の薫。と、遅れている2人を、ユーリが気付き、「何か?」と振り返る。
「いや、なんでもないよ」
 そう言って、足を早める薫。そんな彼に、穂積が尋ねる。
「どーすんだ?」
「ロディを見捨てるわけにもいくまい。なぁに、帝国兵の20人程度なら、どうにか切り抜けられるさ」
 でなければ、ムーンナイトの頭目なんぞ務まらん。と、自信たっぷりにそう言う薫。
「だったら、俺も手伝う。俺の力なら、裏を書く事も出来そうだしさ」
 こう言うの、義賊って言うんだよねっ! と、怪盗ごっこらしいミッションに、胸を躍らせる穂積だった。

●あちこち大騒ぎ
 さて、盗賊達があの手この手で、動力炉へ向かっている頃、それを迎え撃つ側の人間達はと言うと。
「ユーリから通信。月はわが手の中にあり‥‥だって」
 パイロットスーツ姿のこずえが、竜平にそう報告している。本来、そう言った行為は、部下の役目だが、まぁ2人が恋人同士である事を考えると、多少は大目に見てもらっているようだ。
「上手く誘導出来ているようだな」
「もうすぐここに到着するわ」
 監視用レーダーには、ユーリを示す薄紫色の光点。その周囲に、3つの赤い光点があるのは、おそらくムーンナイトの3人だろう。
「的は少数だからこそ、きっと狙い目指して、素早く切り込んでくるわ! だから、囮や陽動に引っかかったりしないようにねっ!」
 乱入してくる事を知ったこずえは、並んだ部下達に、そう檄を飛ばしている。一方で、竜平も動力部分をガードする部下に、指示をしていた。
「流れ弾の危険がある。銃は出来るだけ使わず、近接武器を使え!」
 彼が腰から下げているのは、高周波サーベルとナイフ。いずれも、鉄をも切り裂く帝國魔道科学の賜物だ。
「この扉を開けると、動力炉の裏側に出ます」
 彼らが待ち構える部屋の前で、扉に手をかけるユーリ。後は、ここに3人を叩き込めば、任務は完了する‥‥筈だった。
「ご苦労。後は眠っていていいよ」
「え‥‥。うあっ」
 薫がそう言うと、直後、後頭部に痛みが走る。床に転がりそうになった彼を受け止め、傷つけないように、壁にもたれさせる彼。
「死んでるのか?」
「いや。気を失ってるだけだ。可哀相に、そんなに負担になるなら、もっと違う方法にすればよかったのにな‥‥」
 穂積が恐る恐るそう尋ねると、薫は首を横に振った。見れば、ユーリの額にはうっすらと汗が浮かんでいる。彼の精神操作には、身体にある程度の負荷をかけるもののようだ。薫はそれを敏感に感じ取ったのだろう。流れた汗をふき取ってやり、自身の上着を毛布代わりにかけてやっている。
「で、どうするんです?」
 穂積がそう尋ねると、彼は指揮官の顔へと戻り、こう指示をした。
「まずは戦力の確認だ。何人いる?」
「んー‥‥20から30人って所」
 壁伝いに確かめてみると、中にいるのは赤いパイロットスーツに身を包んだ女性指揮官とその部下、そして黒服姿の男性と、同じ様な格好の部下達。一瞬考えた薫は、ぼんやりしていたロディに、こう尋ねる。
「今、シラトとヴェリはどのあたりにいる?」
「え? あ、えーと‥‥。なんだ、丁度反対側だな。格納庫のあたりだ」
 はっと気付いて、モバイルツールを確かめるロディ。自分が何故本来予定していたルートから、それてしまっているのだろうと思ったが、そのまま彼らの位置を報告する事にした。
「ならば、奴には、そのまま脱出するように伝えろ。ただし、なるべく派手にな」
 不敵に笑ってそう言う薫。どうやら、2人を囮に使うつもりのようだった。

●脱出・1
 蒸気巨兵が奪われた事で、事態は一気にあわただしくなった。
「雑魚には構うな! 皇帝陛下をお守りしろ!」
 アイビスが、部下に持ち場を離れないように指示を飛ばしている。それを見て、ヴェリはげんなりしたようにこう言った。
「親衛隊が出てきたなー。うちら、坊主にゃ手ぇ出さへんてーのに」
『どうするんです?』
 通信機の向こうから、シラトが尋ねてきた。と、ヴェリはそんな彼に、こう答える。
「まともに相手してたら、身がもたへん。さっさと離脱や」
『はーい。誘導、お願いしますねー』
 空母の真下には、ムーンライト所属の潜水艦が、潜ませている筈。蒸気巨兵の機密性もあれば、すぐに回収してくれるだろう。
「よしよし。ちゃんと自分の役目は果たしているようだな」
「半数は、シラトさんとヴェリオールおっかけてるみたいだぜ」
 その動きを察知した薫、満足そうにそう言った。その傍らで、壁伝いに状況を確かめていた穂積が報告してくる。
「残り15人なら、どうにかやれるな。2人とも、しっかりついて来い」
「あ、消えた?」
 一瞬だけ厳しい表情を見せた薫。その姿が穂積の目の前から消える。
「上から行くって事だな。正面きって的になるよりはマシか」
 ロディも、特に驚く事もなく、同じ様に姿を消した。見れば、通風孔から、気配がする。おそらく、そこから行くのだろう。
「うわー、ホントに盗賊みてー」
 感心してる場合じゃないや‥‥と、後を追う穂積だった。
 
●種
 そして。
「この下が、丁度動力炉のようだ」
 満足げに頷いた薫は、排気管沿いに、目的の場所へと向かった。だが、そこで目にしたのは。
「帝、こっちです!」
「って、なんでこんな所に幼帝が‥‥」
 皇帝を連れて脱出しようとするロミナの姿だった。やっかいな‥‥と言った表情のロディに、薫はこう言う。
「構うな。我々の目的は、船の無力化だ。帝の暗殺じゃない」
 むしろ、手を出すな。と厳命する彼。幼帝は傀儡ゆえ、何も知らされていない。彼が知るのは、宰相を排除するだけの力を身に付けてからだと。
「賊はまだ中にいる。メイン炉だけではなく、サブ炉にも警備をまわせ!」
 しかし、そんな彼らが目にしたのは、動力炉の前で、部下に指示を飛ばす竜平の姿だった。そこにいるだけで、20人近くはいるだろう。
「情報部の奴か。どうやら、近付かせては貰えないようだ。引き上げるぞ」
 身のこなしから、そう判断した薫は、あっさりと、動力炉に種を放り込むのを諦める。
「えー、桜はー?」
「起動さえすれば、後は勝手に増殖してくれるんだが」
 不満そうに口を尖らす穂積に、彼はニヤリと笑って、そう言う。その言い回しに、はたと気付いた彼は、壁に手を当て、記憶を確かめた。
「なるほど。何か他の宝玉で、代用すれば良いって事だな。さてと、何か面白そうな物は‥‥」
 彼らが足場にしている排気管は、艦内中に張り巡らされている。たどれば、魔宝玉の一つや二つ、見付かるだろうと。
「動力炉周りには、警備が張り付いているだろうな。幼帝があそこにいると言う事は、宰相はすでに脱出済。ああ、ブリッジに誰も居ないじゃないか」
 だが、彼が能力を発揮するより先に、ロディが『穴』を見つけ出した。動力に注意が行っているせいで、制御用の部屋が、がら空きになっていると。
「OK。そこに案内すれば良いんだね」
 目的地がわかれば、後は誘導路を探すだけである。すたすたと、見つけ出したルートをたどって行く3人。
「やれやれ。寝たふりも楽じゃありませんね」
 それを‥‥倒れているふりをして見逃したユーリ、ぱちりと目を開いて、かけられた上着を手に、そう呟くのだった。

●弾丸よりも花を
「思った通り、ブリッジの電源が生きてるな」
 薫が、コンソールを確かめながらそう言った。淡く発光するそれは、いくつかの宝玉を組み合わせた、この空母の頭脳にあたる。
「今の内に、これに着替えな」
「お、ラッキーじゃん」
 装備を物色していたロディが、穂積に制服を投げて渡している。その最中、手早く電源用の宝玉を引っ張り出した薫は、ポケットから種を取り出し、その蓋を開けた。
「「「3.2.1‥‥GO!」」」
 ころんっと宝玉の上に落とすと、種は即座に発芽し、瞬く間に根を伸ばして行く。それを確かめた薫は、すぐさま撤収を宣言。
「陛下、こちらです!」
 一方ロミナは、ようやく脱出口へとたどり着いていた。アイビスを始め、親衛隊の主な面々が、皇帝を逃がそうと、準備を整えて待っている。と、そこへ、一際大きな衝撃が襲った。
「アイビス様! ブリッジから桜の木が!」
「艦砲制御用の宝玉を使われたか‥‥」
 見上げれば、丁度制御塔の壁を這うように、木の枝が絡みつき、申し訳程度についている艦砲に絡みついていた。
「大丈夫ですか? 陛下」
「むぎゅう。苦しいのじゃ〜」
 幼帝を守ろうと、とっさに覆いかぶさったものの、幼帝は彼女の豊かな胸に押しつぶされかけている。
「ああっ。すみませんっ」
 慌てて力を抜き、飛びのくロミナ。と、視界が開けたところで、皇帝は艦砲からにょきにょきと生えた桜を見て、目を輝かせる。
「おや? 大砲から花が咲いておる。今日はこう言う趣向だったのか?」
「いえ、あれはムーンナイト達の仕業です」
 アイビスが、はっきりとそう告げると、彼は手を叩いて大喜び。
「なんと風雅な盗賊達じゃ。艦上で花見と言うのも、美しいのう。よきに計らえ」
「かしこまりました」
 頭を垂れる彼。そのアイビスの表情も、咲き乱れる花を見て、少し優しい表情となっている。
「まぁ、上の装備品だけで済んで、良かったと言う所か‥‥」
 みれば、丁度空母の周囲を取り囲むように、花は咲いていた。まるで、船体に大きな花飾りをかけたかのように。
「仕事が無くなるわけじゃないしねぇ」
「ちょっと間抜けな姿ですけどね」
 肝心の動力部は、竜平とこずえのおかげで、無事である。まぁ、空母の艦載砲台なんて、艦載機や艦載巨兵に比べれば、微々たる物だ。損害は軽微と言った所だろう。宰相は頭を抱えるかも知れないが。
「よぉし。せっかく綺麗なんだし、皆で花見だー!」
「おーーー!」
 無事に脱出したムーンナイト達も、シヴァの煽りで盛り上がる一般市民に紛れて、こっそりと撤収するのだった。
 結論:双方痛み分け?

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【4134/明智・竜平/16歳/男性/帝國情報部将校】
【5154/イスターシヴァ・アルティス/20歳/男性/民間人】
【3206/神崎・こずえ/16歳/女性/帝国蒸気巨兵小隊隊長】
【0289/トキノ・アイビス30歳前後/男性/皇帝直属親衛隊隊長】
【4188/葉室・穂積/17歳/男性/ムーンナイト構成員】
【0204/ユーリ・ヴェルトライゼン/19歳/男性/帝國近衛師団特務部員】
【0584/ロディ・カーロン/36歳/男性/ムーンナイト構成員】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 各PC及び仮想人格の職業は、蒸気帝国内での位置付けとなっております。ご了承下さい。
 そんなわけで、動力炉は守られて、お花も立派に咲きました。まぁ、若干修理は大変かもですが、丸ごと一隻オシャカにされるよりはかなーりマシなので、この辺りで勘弁してやってください。

●穂積
 若い熱血系な少年だったので、入りたてと言う位置づけです。まぁ読んでいただければ分かる通り、モバイルよりもサイコメトリーが役に立った様な感じです。ムーンナイトは仰るとおり義賊なので、例え敵でも、頑張っている子は応援するのです(笑)。

●ロディ
 ホントは囮が良いとの事ですが、消去法と状況判断により、薫と一緒に本体潜入役となりました。その代わり、事前に調べたルートと、囮用煙玉が役に立っています。きっと、咲いた後は、何食わぬ顔して、制服着たまま、逃走したんでしょう。なんとなく、次○とかル○ン三世なイメージですね。

●ユーリ
 本当は一番の爆弾だったユーリさんです。効いたり効かなかったりしたのは、かなり負荷のかかる能力だそうなので、相手の抵抗値によっても効果に差が出る‥‥と言う事にしといてください!(視線そらしっ)
 見逃した『理由』は、きっと上着のお礼なんでしょう。
PCゲームノベル・櫻ノ夢 -
姫野里美 クリエイターズルームへ
PSYCHO MASTERS アナザー・レポート
2006年05月12日

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