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『■今も昔も変わらぬは■ 』
高峯・燎4584)&高峯・弧呂丸(4583)

 こどものせいちょうは はやく
 ひとばんねたら もののみかたもなにもかも
 かわっていることも あるということでございます



 ぱら……

 兄、燎の部屋へと向かう途中、突然に雨が降り出した。
「天気予報では降らないと言っていたのに」
 ひとりごち、傘を持っていなかった弧呂丸は足を速めた。
 今日も今日とて、世話女房の如く通いつめる弧呂丸である。
 雨は次第に足を増し、弧呂丸が燎の家に着く頃には彼の着物はびっしょりと濡れきってしまっていた。
「燎! 燎!」
 チャイムを鳴らし、呼びかけても応答がない。留守、なのだろう。
「はあ……」
 仕方なしに、徐に鍵を取り出す。
 ───いつの間にか燎の許可なく勝手に作っていた合鍵である。
 これを使って中に入っていれば何を言われるか知れようというものだが、そんな事を言っている場合ではない。
 もどかしく扉を開けて部屋に入り、雨のせいで薄暗くなっていたので電気を点ける。
「さて、今日も始めるか」
 腕まくり───しようとして、手が止まる。
 いつもならば、
 店の書類関係の用事や部屋の掃除、洗濯をするところである。
 だが、今は。
 腕まくりした手が、ぐっしょりと雨を吸った着物の重みを伝えてくる。
「このままでは何も出来ないし風邪を引いてしまう」
 ぽつりと呟き、シャワーを借りることにした。



 一方その頃、燎はと言えば。
 雨に濡れてもいないのに、クシャミが出た。
 大丈夫かと、今夜一緒に楽しむ予定のとびきり上等の女が聞いてくるが、その女に傘を傾けつつ「ああ」と応える。
(まさかコロ助が来てる、とかじゃないだろうなぁ)
 とんでもない事を考えてしまったように、燎はぶるぶるとかぶりを振る。
 大体、女と楽しく過ごそうという時に限って悪い事が起きる。それも決まって弟の弧呂丸が原因で、だ。
 実は燎、結構な遊び人で女性関係もそれなりに派手でモテるのだが、弟弧呂丸を浮気相手と間違えられ、フラれること多々あり。
 弧呂丸は弧呂丸でそのつど、自分のせいで女性にフラれることが多いというそのことはどうでもいい感じで、寧ろ「女性」に間違われる事がショックのよう。
 だからそういう事が起きる度にいちいち凹んでいるのだが……。
(今夜こそは)
 燎はその嫌な考えを頭から追い出そうとする。
 何しろ、今夜の「お相手」は仲間内でもとびきりの女だ。
 こんな雨でじめじめした夜には、特に楽しく過ごしたい。
「もうすぐ着くから」
 女を、というよりは自分を安心させるかのように笑い、女の肩を再度抱きしめる。
 部屋の前に行き、鍵を開ける。
 そしてノブに手をかけ、扉を開いた燎は───

 ───そこに、
 地獄を見た。



「ひどいわ!」
 パァン、と夜の雨空に高く鳴り響いた平手打ち。
「待て、こいつは俺の双子の弟だ!」
 慌てた燎が追いかけるが、二度目の平手打ち。女のその瞳が怒りの色に染まっている。更に「嘘つき」とも言っている。
 確かに───扉を開けた瞬間そこに、燎のシャツを借りて羽織った艶っぽい弧呂丸を「男だ」「双子の弟だ」などと説明してもあまりに意味がない。
 その意味のなさ加減に頭痛を感じながら、燎は女を追うことを諦めた。
 思い切り眉をしかめ、ずかずかと部屋に入る。
 そこでシャワーを浴びた後で髪をタオルで拭きつつ着物を乾かしていた弧呂丸に、「いつものように」怒鳴りつけた。
「てめぇは、人んち来て何勝手に俺の服着てんだ!」
 燎は完全にキレていた。それもそうだろう、女に逃げられたばかりか、きっと仲間内でも話題になるに違いない。
 いきなり怒鳴られ、またまた女性に間違われてへこんでいた弧呂丸のほうも、むっと返す。
「しょうがないだろ! 部屋にお前がいないから悪いんだ! この馬鹿!!」
 反省するどころか逆ギレの弧呂丸。
 そこからはいつも通りの喧嘩、喧嘩、喧嘩。


 昔は瓜二つだった双子なのに、今は見た目すっかり恋人同士に見えなくもなく───当の本人達は心底それが嫌なようだが───成長した二人の喧嘩を、近所の者は「またか」という感じで苦情すらよこさない。


 やがて雨は上がり、月が真上に来る頃には───燎の部屋は静かになっていた。
 思う存分喧嘩をして疲れ果て、二人ともいつの間にか眠ってしまっていた。
 燎はベッドを背にして座ったまま。
 その隣には、その燎の肩にもたれかかるようにして座った弧呂丸がいる。
 着物は乾いたのか、喧嘩のせいで乾いたことにも気付かなかったのか、変わらず燎のシャツだけのままで。
 これでは恋人同士と間違われても仕方あるまい、という図で。
 それでもいつか昔の夢でも見ているのだろう、時折互いの名を呼び合う。
 こんな成長の仕方も、
 また一興と世間は言う。



 しかしてそのてんまつが
 こいびとにみえるというものがたりも
 このよになかなかに ありますまい




《END》
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こんにちは、ご発注有難うございます。今回、「今も昔も変わらぬは」を書かせていただきました、ライターの東圭真喜愛と申します。コメディタッチをと心がけていたのですが、普通のノベルになってしまった気がします(汗)
もう少し掘り下げて書きたかったのですが、それには第三者の女性がこの場合必要だな、第三者はあんまり描写できないな、ということでこんな感じになりました。喧嘩を広げて大破壊とかも考えたのですが、最後の描写を書いてみたかったのでこれだけにとどめました。
「ここはもっとこう」「こんなことはしない」などありましたら、遠慮なく仰ってくださいませ。今後またご縁がありました時の参考にさせて頂きますので♪

ともあれ、ライターとしてはとても楽しんで書かせて頂きました。本当に有難うございます。
お客様にも少しでも楽しんで頂ければ幸いです。これからも魂を込めて書いていこうと思いますので、宜しくお願い致します<(_ _)>
それでは☆

【執筆者:東圭真喜愛】
2006/04/24 Makito Touko
PCシチュエーションノベル(ツイン) -
東圭真喜愛 クリエイターズルームへ
東京怪談
2006年04月24日

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