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『【見えない真実の中で――第二章――激烈編】 』
風祭・烈(w3c831)&エメラルダ(w3c831)

 ――サルデス(中国)地方。
 復興が進んでいる或る町の一郭に、一台の大型バイクが停まっている。月明かりに浮かぶエンジンは、微かな余韻を洩らしており、つい先ほどまで路上を爆走していたであろう事を物語っていた。
 駐輪場の直ぐ傍に建物があり、大き目の窓から明かりが漏れる。何処にでもあるような町の酒場だ。
「キメラだと? そんな情報は知らねぇな」
 屈強そうな風貌の男が酒を煽ってから答えた。視界に映るは、風を浴び大きく暴れたような黒い長髪のライダースーツを着込んだ青年だ。どこか少年ぽい風貌が落胆の色を浮かべ、軽い溜息を吐く。
「そうか‥‥ありがとな」
 二本の指を額に当て、協力に礼を告げると、風祭烈は赤いマフラーに弧を描かせ、酒場を再び歩き出した。聞き込みを続ける中、カウンター席でカクテルを上品な仕草で飲む、一人の美女を捉える。エメラルドグリーンのロングヘアが照明を浴び、キラキラと照り返していた。その端整な風貌も然る事ながら、優麗なラインを浮かばせるスタイルも魅惑的だ。青年が近付いた事に気付くと、エメラルダが青い瞳を流す。
「期待できる収穫は無かったって感じの顔ですわね♪」
「あぁ、サルデスでキメラが出現した記録は無いって話だ。‥‥そっちは?」
「同じですわ。サーバントハンターが集う酒場でも情報が無いなんて、可笑しな話ですわね」
 二人はサルデス地方で活動している魔皇と逢魔である。数日前、或る村で遭遇したキメラの情報を探っていたのだが、一向に進展は見られなかった。彼方此方の町で情報収集を試み、サーバントハンターの拠点ともなっている町を訪れた訳だが、結果は同じらしい。
「あぁ、可笑しいって事は何かあるに違いない! 俺は諦めないぜ! ここで止める訳にはいかないからな! 必ず手掛かりを掴んでやる!」
 拳を滾らせ、未だあどけなさの残る精悍な風貌に不敵な笑みを浮かべて見せる烈。熱いスピリットは更なる闘志に燃えているようだ。逢魔の美女は優しげな眼差しを向け、微笑む。
「相変わらずですわね☆ でも、くれぐれも無茶はしないで欲しいですわ」
 正義感故、時には無茶も起こしてしまう青年である事をエメラルダは知っている。魔皇を愛し守る逢魔として心配するというより、ヤンチャな弟を窘めるような響きだ。
 そんな中、酒場のドアが来客を知らす鈴の音を響かせ、烈の隣に腰を下ろす。
「外のバイク、キミのでしょ?」
 投げ掛けられた声は女のものだ。青年が恍けた表情を向ける。視界に映ったのは、エメラルダに負けず劣らずの美女だ。逢魔の美女を清楚と例えるなら、隣の席に座った美女は妖艶という感じか。
「あぁ、そうだけど‥‥何か用かよ? お、おいッ」
 ツーと美女の手が青年の頬から顎へと撫で流し、悪戯っぽい眼差しを向ける。突然来店した挙句、馴れ馴れしい素振りを見せる女に、エメラルダが愛らしく頬を膨らました。
「キメラの情報を探っているんですって?」
 途端に烈の顔色が困惑から変容し、美女にズイと顔を近付ける。背後の逢魔は「あぁっ!」とでも声をあげたいような表情だ。
「知っているのかよ!」
「もお、焦らないの☆ 何か奢ってくれるかしら? 選んで下さらない?」
 ピッと青年の口に人差し指を当てる美女。好い様に弄ばれているような烈に、エメラルダの顔は崩れっぽなしだ。「あぁ」と応え、魔皇が顔を向けた途端、逢魔の顔からコミカルさが掻き消えた。
「マスター、これと同じカクテルを彼女に」
「ど、どうしてわたくしのと同じものを注文するんですの!?」
「俺、カクテルとか知らないからな。なに機嫌損ねてるんだよ?」
「別に、何でもありませんわ! 早く情報聞いて来たら?」
 ぷいと赤く染まった顔を逸らし、苛立たしげに言い放つ。首を傾げて訝しげな表情を浮かべる烈は未だ女心というものを理解していないようだ。
 互いのグラスを鳴らし、情報の遣り取りは行われた。焦らし誘惑するような美女の素振りに、エメラルダが注文するカクテルに拍車が掛かる。そんな中、核心的情報が入った。
「定期的に噂が流されているだって?」
 それも極一部にとの事だ。
 ――何故定期的にキメラの噂が流れる? 定期的に流す意味が何処にあるのだ?
「黒幕がいるかもしれないって事か‥‥。面白くないな、俺達を試してやがるのかよ」
 酒を一気に煽り、釈然としない状況に奥歯を噛み締めた――――。

 ――烈にとって釈然としない状況は一つではない。
「おい、なに怒っているんだよ?」
「べ・つ・に、怒ってなんかいませんわ」
 酒場から出ても、エメラルダの機嫌は斜めだった。まぁ、その後も色々とあったのだが、制約に抵触するので割合しよう。ツンとした態度のまま駐輪場までの夜道をスタスタと歩いてゆく。男にとってほんの些細な事でも女の琴の緒に触れる場合もある。ここで「困った女だな」と乾いた微笑みを浮かべられるほど大人じゃないのが烈だ。
「怒っているじゃないか! それに呑み過ぎだぞ?」
「なに言ってますの? わたくし達は酒に酔わないのですから構わないでしょう?」
 立ち止まり、肩越しに呆れたような視線を流す美女。ほんのりと紅潮しているのは酔った雰囲気になった所為かもしれない。彼女としても魔属が酔える酒があるなら呑みたいという心境の顕われだろうか。
「そんな事は分かっている! 酒だって金が掛かるって言いたいんだ!」
 否、そんなクダラナイ事を言いたい訳ではない。売り言葉に買い言葉が何故か無意味な方向に流れただけ。しかし、そんな言葉は状況を悪化させるのみだが‥‥。
「お金? 足りなくなったら野宿でも何でもしてあげますわ! 食料が買えなくなったらわたくしが何とかしますわ! 烈の為なら何でもできますのに‥‥」
 解き放たれた激情は、やがた哀愁を漂わせ、静かな呟きへと変容した。ようやく気付いた青年が俯いた美女に歩み寄り、ゆっくりと包み込む。
「分かっていますわ‥‥情報収集の為ですもの‥‥でも、わたくし‥‥」
「済まない‥‥これじゃヒーロー失格だな」
 どうやら夜明けには二人の絆はより強固なものになっていそうだ――――。

●コンビネーションバトル! 廃墟の激闘!
 翌日、烈達は再び情報収集するべく町を散策した。
 しかし、噂は広がりを見せないのか、なかなか有力な情報には辿り着かない。
 既に歩き回って数時間が経過し、蒼穹の空は夕焼けへと移り変わろうとしていた。
「噂が流れていたのは確認取れましたけど、それ以上の手掛かりは見つかりませんわね?」
 疲労を伴うような溜息を洩らすエメラルダであったが、魔に属する者は人間のように歩き疲れる訳ではない。尤も、数時間同じ目的の為に歩き回り、収穫が無いのだから精神的な疲労感というものだろう。烈はそんな素振りも見せないが、次第に噂に関してそれ以上のものは無いと思い始めていた。
「俺の取り越し苦労だったかな? ‥‥!!」
 刹那、瞳を研ぎ澄ませた青年の変化に、美女は小さな声で訊ねる。
「どうしましたの?」
「‥‥尾行されているようだな。このまま歩くぞ」
 二人は復興の進んだ街並から離れてゆく。次第に人影すら見当たらなくなり、魔皇と逢魔の靴音だけが、ヤケに響き渡った。或る一角を抜けると、視界に広がったのは神魔戦線の傷痕が色濃く残る広大な廃墟区画だ。殲騎やネフィリムの残骸に破壊された住居等が至る所に点在しており、彼方此方に大きなクレーターが覗いていた。豊かな胸元に手を当て、エメラルダの青い瞳が憂いに染まる。
「こんな区画があったなんて‥‥」
「復興が進んでいると言っても、町全体の修復は新東京以外、何処も同じさ。簡単な事じゃない‥‥そろそろ姿を見せたらどうだ? つけていたのは分かっているんだぜ?」
 背後に視線だけを疾らせ、叫んで見せる烈。廃墟に吹く一陣の風が青年の声を空へと舞い上げてゆき、やがて静寂に包まれた。
 刹那、廃墟の壁が炎に吹き飛ばされ、横殴りに放たれた火炎と共に瓦礫が烈達に襲い掛かる。二人は地を蹴って跳び、宙に舞う僅かな瞬間に魔の力を解放した。青年のスレンダーな身体が金色のオーラに包まれ、魔皇の刻印を輝かせる中、美女が逢魔の刻印を浮かび上がらせると、幾つものシャボン玉が舞うと共に、纏っていた衣服をスルリと抜け、魅惑的な肢体を渦巻いた水の粒子が包み込んでゆく。忽ちそれは水の衣を模り、端整な風貌に覗く耳が美しいヒレへと変容した。手に出現させるは『流水の竪琴』だ。華麗に着地すると同時、セイレーンの逢魔が優雅な旋律を奏で、修羅の黄金となった魔皇が風車のついた変身ベルトを腰に覗かせ、ポーズを決め指差す。
「平和に潜む悪の‥‥!!」
 しかし、得意の前口上は、上空に浮かぶ大きな影を確認すると共に掻き消えた。二人は軽く地を蹴り、一気に数十メートル後方へ跳ぶ。先ほどまで居た場所に叩き落されたのは巨大な棍棒だ。烈が瞳を研ぎ澄ます中、舞い上がったコンクリートの破片と砂煙に浮かぶ巨大なシルエットを捉えた。
「オーグラかよ」
 青年の瞳に映るは、2m以上はある濃い褐色の肌を浮かばせる凶悪な風貌のオーガだ。頭には二本の角を生やしており、隆起した筋肉が強靭な肉体を物語っていた。神帝軍が神魔戦線時に異世界から送り込んだサーバントと呼ばれるモンスターである。
「烈! オーグラだけじゃないですわ」
 エメラルダの瞳が一匹のパイパーウルフを捉えた。どうやら壁を砕いて炎を放ったサーバントのようだ。
「パイパーウルフは群れを成して行動する肉食獣だが、どうやら普通の奴じゃないらしいな」
「ええ、パイパーウルフは炎のブレスを吐いたりしませんもの!」
 つまり――――キメラ型サーバントという事か。
「気をつけろエメラルダ!」
「ええ!」
 烈が金色の粒子を肩に集束し、魔皇殻『真ショルダーキャノン』を出現させ、エメラルダが手に水流を纏わせると『流水の太刀』を形成して身構える。
「唸れ! 真ショルダーキャノン!!」
 魔皇の肩から炸裂弾が放たれた。周囲が爆発音と共に爆炎に包まれる中、ほぼ真横から炎のブレスが襲い掛かる。二人が驚愕の色を浮かばせながら炎の洗礼を辛くも躱す。刹那、跳び込んで来たのはオーグラだ。烈は手に『真グレートザンバー』を出現させ、叩き込まれた棍棒を太刀で受け止めた。青年の精悍な風貌が歪み、膝を僅かに屈伸させると同時、足元の地面が罅割れ陥没する。
「残念だったな、悪魔化魔皇の一撃すら受け止めたこいつはその程度では砕けはしない。それにしても、なんてパワーだ!」
「烈ッ!!」
 切迫した逢魔の叫びに青年が瞳を流す。映し出されたのはパイパーウルフの火炎ブレスだ。直ちに高く跳躍する中、オーグラは俊敏な動作で次のターゲットへ迫る。狙うは戦慄の表情を浮かべる美女。逢魔は魔皇ほど身体能力は飛躍的に向上しない。棍棒といえど叩き込まれれば無傷とはいかないだろう。
「エメラルダ!!」
 空高く舞い上がった烈は腕に『真ステイクランチャー』を出現させると、狙いもそこそこに杭を連射した。元々命中率の低い魔皇殻だ。威嚇になれば最悪の状況は凌げる。魔皇の狙い通り、命中はしなかったものの、オーグラは瞬時に軌道を変え、エメラルダへ洗礼を叩き込む事を断念した。僅かに安堵の色が青年と美女に浮かぶ。
「烈‥‥」
「エメラルダ、逃げるぞ!」
 逢魔の元に着地すると、烈は動揺するエメラルダの手を握り、再び跳躍、廃ビルの屋上へ着地した。
「烈‥‥逃げるって‥‥」
 ――烈らしくないですわ‥‥わたくし‥‥お荷物になっていますの?
「なんて顔してるんだよ。二人がバラバラになってたら狙い打ちされるだけだろ? 俺に考えがある! エメラルダはビルの中で見つからないように逃げてくれ」
「え、ええ、分かりましたわ。‥‥烈? 無茶はしないでね」
「あぁ、エメラルダもな」
 二人は僅かな刻を見つめ合った後、逢魔は屋上からビル内へ走った。最愛のパートナーの背中を見守った後、青年は金色のオーラを滾らせる。
「真狼風旋<ハウンドヘイスト>!!」
 ダークフォース(DF)を行使すると、魔皇は疾風の如く廃ビルを駆け抜け、次から次へと飛び移りながらショルダーキャノンを放った。サーバントの思考能力は高くはない。獲物を捉えたオーグラとパイパーウルフが烈を追い掛けてゆく。目まぐるしく移り変わる景色の中、青年が背後を振り返り、追撃して来る二体のサーバントを確認して不敵な笑みを浮かべる。
「やはりオーグラが俊敏だといってもスピードはパイパーウルフが上か」
 魔皇はDFのスピードで重力に逆らい、廃ビルの壁を走りながら窓から身を滑り込ませた。瓦礫やガラスの破片が散らばる室内に転がり込むと、再び逃走を開始する。キメラ型サーバントといえど、DFの行使されたスピードに敵う訳がない。パイパーウルフは標的を見失い、嗅覚を頼りに探索を試みた。床に頭を近付け、匂いを追って一歩一歩階段を降りるサーバント。1階フロアに出た刹那、狼は笛のような遠吠えを響かせた。匂いを見失ったのである。
 ――今だ!!
 それこそ烈の狙いであった。彼は1階まで走った後、一気に床を蹴ってフロアが覗く外へ飛び出したのである。魔皇の瞳にパイパーウルフの後ろ姿が映り、肩の魔皇殻が狙い定めてゆく。
「室内じゃ簡単に逃げられないだろう。轟け! ショルダーキャノン!!」
 鈍い轟音と共に炸裂弾がフロアの柱目掛けて飛び込んだ。周囲3mに同一のダメージを発揮する砲弾は命中と共に一帯を爆炎に包み込み、老廃が進んだ廃ビルの天井は勢いよく崩れ狼のサーバントを呑み込んだ。仮に絶命を免れても、逃れられない炎に包まれた挙句、廃ビルの下敷きともなれば瀕死の重傷となるだろう。
 残す敵は一体! 烈は反撃の狼煙をあげた。
「エメラルダ!! オーグラを叩くぞ!!」

●切り裂け! 必殺十文字斬り!!
 ――逢魔の歌声が響き渡ってゆく。
 セイレーンの特殊能力『伝達の歌声』を行使したのだ。届けたい者に伝えるエメラルダの紡ぐ歌詞は、居場所を示し、魔皇を導いてゆく。青年はDFを駆使して彼女の隠れている廃ビルへ辿り着いた。
「烈! 怪我は?」
「あぁ、傷一つ負っちゃいないさ!」
 二人が束の間の無事を喜び合った刹那、オーグラが壁を棍棒で叩き壊し、姿を現わす。しかし、これはこれで結果オーライだ。分断して各個撃退が目的だった為、一旦見失ったサーバントがわざわざ出向いてくれたのだから。
「所詮は付け焼刃のコンビってやつだ。おまえ達が俺達の愛と正義の絆に勝てる訳がない! 本当のコンビネーションってやつを見せてやるぜ!!」
 今風に言えば恥かしい台詞だが、ヒーローに憧れる烈にとっては当然の熱血発言だ。魔皇が片刃で反身の長大な太刀の刃を煌かせ、逢魔が日本刀の切先を夕焼けの明かりに照り返す。獣の咆哮を轟かせてオーグラが棍棒を振り被って飛び込む中、再び刀身で受け止める青年の瞳が鋭利な眼光をギラつかせ、不適な笑みを浮かべて見せる。
「ワンパターンだな! 忘れるなよ、あの時みたいにパイパーウルフはエメラルダを威嚇していないんだぜ!」
 その意味を理解したか定かで無いが、オーグラが逢魔を捉え様と顔をあげた。刹那、強暴そうな瞳に映し出されたのは、太刀を真横に構えて飛び込む美女の姿だ。
「えぇぇぇぇいぃッ!!」
 素早く身を退いた烈の一瞬の差でエメラルダが太刀を横薙ぎに斬光を疾らせてゆく。素早く身を翻す度にエメラルドグリーンのロングヘアが舞い踊り、血煙を棚引かせる。
「烈ッ!!」
「おぅッ!! 必殺ッ!!」
「「十文字(じゅううぅもぉんじいぃぃ)斬ぃりいぃぃッ!!」」
 最後の一刀を煌かせた後、逢魔が退くと同時、オーグラの頭上に跳んだ烈が渾身の一撃を脳天へと叩き込んだ。勢い良く放たれた鋭い刃は容易くサーバントの肉を切り裂き、瞬く間に血の十文字を刻み込む。醜悪な鬼に踵を返し背中を見せる中、刻まれた赤い閃光が弾けると共にオーグラを絶命させるに至ったのである。

 ――サーバントを倒した二人は廃墟から出て町へ戻ろうとしていた。
「ねぇ、烈?」
 たたたッと駆け出し、逢魔の美女は踵を返すと、やや前屈みになって青年の顔を見つめる。悪戯っぽい少女らしい仕草に、烈は僅かながら動揺の色を浮かばせた。
「‥‥なんだよ?」
「愛と正義の絆って言ってましたけど、どっちが上なんですの?」
「な‥‥なに言ってるんだよ。そんなの‥‥」
 再びエメラルダが靴音を鳴らし、今度は魔皇の腕に絡み付きクスリと笑って見せる。
「冗談ですわ☆」
「‥‥変なやつだなぁ」
『流石は魔皇と逢魔というべきか。見せ掛けのコンビネーションでは相手にならなかったと見える』
 刹那、頭上から響き渡ったのは含みのある声だ。周囲の廃ビルに反響し、声の主は見つけられない。
「誰だ! おまえが俺達を尾行し、キメラ型サーバントを嗾けた黒幕かよ!?」
『黒幕? そんな風に聞えるか。キメラサーバントの力を試したいだけなのだ』
「キメラの力を試すだと!?」
「何を考えておりますの!?」
『私の最高傑作に『あの』村を襲わせる。以前のように山に潜んでではないぞ? 村の民家を襲わせるのだ。そうだな‥‥校舎には難民が多数いるそうだな。苦しい生活は辛いだろう。楽にしてやらねばな』
「な、なんだと!! おまえは何を言っているか分かってるのかよ!!」
「烈! 挑発に乗っちゃ駄目よ。罠かもしれないですわ!」
『罠? そう思うのも良かろう。今宵山に解き放っておいたサーバントが目覚める。日没後動き出すだろう。まあ、信じるか否かは好きにするがいい』
「日没だと?」
 罠かもしれない。しかし、僅かでも迷っている時間が最悪の結果を招く要因になり兼ねないのも事実だ。響き渡った声は呼んでも二度と聞こえる事は無かった。
 ――どうする? 俺はどうすればいい?
「行きましょう、烈」
「いいのか? エメラルダ」
「『当たり前の事をするのに理由はいらない』でしょ?」
「ありがとう。子供達だって大勢いるんだ。あの子達の笑顔を守らないとな!」
 魔皇が腰の変身ベルトを覗かせ、逢魔が竪琴を爪弾き、美しい声を奏で出した。
「螺旋の鼓動を刻むものよ! 全てを貫くものよ! 我が身に眠りし大いなる力よ! 今こそ魂の絆の名の下に、その力解き放て! 来れ、螺旋皇帝!!」
 刹那、烈とエメラルダの下にコアヴィークルが出現し、金色の奔流が天を突くと、浮遊バイクは上昇しながら変形を始めた。同時に金の粒子と共に出現した幾つものパーツが組み合わさり、シートに座る魔皇と逢魔を包んでゆく。
 形成された人型の巨人は一気に上昇し、茜色の染まる空へ飛び立った――――。


<ライター通信>
 この度は発注有り難うございました☆
 お久し振りです♪ 切磋巧実です。
 2度に渡るノミネート有り難うございました。1度目はタイミングを計っており、間に合わず申し訳ありませんでした(汗)。合わせてお返事も遅れており、ごめんなさい(汗X2)。
 さて、いかがでしたでしょうか? この位なら良いですよね?(いえ、独り言です) クオリティは勿論「この位」なんて妥協は致しておりませんのでご安心を☆ 演出の為に情報屋が登場しておりますが、あくまで今回の「コンビネーション」を際立たせる為のエッセンスなので、二度の登場はありません事をご了承下さい。あくまでエメラルダを演出する為だけの存在です(イメージを損なっていなければ幸いです)。
 次回があればの話ですが、黒幕(?)に関してのシチュエーションですが、どの位の発注内容が適切かは、オフィシャルに確認を取る事をお勧めします。
 さて、今回の肉弾戦、人間とは違う魔属らしさが表現されていれば幸いです。尚、魔皇殻やDF等は、設定を元に切磋のオリジナル演出が施されております事をご了承下さい。
 PS:次回がありましたらドリルランスはお忘れなく☆ 螺旋皇帝になりませんよ〜。
 楽しんで頂ければ幸いです。よかったら感想お聞かせ下さいね。
 それでは、また出会える事を祈って☆
PCシチュエーションノベル(ツイン) -
切磋巧実 クリエイターズルームへ
神魔創世記 アクスディアEXceed
2006年04月13日

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