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『光の螺旋 』
リラ・サファト1879


●序

 海に面してある、銀河遊園地。普通の遊園地と同じく、ジェットコースターや海賊船、メリーゴーランドやお化け屋敷といったものがたくさんある。そんな中でも一番の目玉は、海を一望できる観覧車だ。
 銀河遊園地は、今年のホワイトデイ企画としてその観覧車を一時間だけ貸し切る事ができるという告知をした。葉書で応募すれば、一組だけに観覧車を貸し切る権利を与えるというものだ。
 観覧車が丁度一番上に行った時に、5分間だけ止める事もできる。星とネオンがきらきらと煌く海と空を一望するのもいいだろう。
 観覧車自体に施されたネオンに文字を映すこともできる。普段は言えないような事を、ネオンの輝きに託すのもいいだろう。
 観覧車に乗り、一時間かけてゆっくりとゆっくりと回るのもいいだろう。二周するのもいいだろう。その間、二人きりでロマンティックな世界を満喫するのもいい。
 巨大な観覧車を、一時間だけ貸し切る。それに対する応募は、観覧車で誰と何をして過ごしたいかを書き添えるならば一人何枚でもして良かった為、予想をはるかに上回る葉書が寄せられた。大半がカップルだったが、中には友達同士で満喫したいというものや家族で緩やかな時間を過ごしたいというもの、はたまた一人きりでじっくりと考え込みたいというものまで様々であった。
 そうして、ホワイトデイの前の日。その権利を手にする事が出来た者に、運命の葉書が到着するのだった。


●13日

 かたん、と何かが郵便受けに入ったような音がした。
「……来たか」
 藤野・羽月(とうの うづき)は小さく呟き、立ち上がった。それに気付き、向こうからリラ・サファト(りら さふぉと)が声をかける。
「羽月さん、お手紙なら私が取ってきますよ」
「いや、気にしなくていい。ちょっと、気になっていることもあるし」
「気になっていること?」
 きょとんと小首をかしげるリラに、羽月はこっくりと頷いてから郵便受けに向かう。手を突っ込んで確認すると、郵便受けには一枚の葉書が入っていた。
 取り出して見てみると、それは当選葉書であった。おめでとうございます、と確かに書いてある。
「よし」
 それを見て、羽月はそっと微笑む。当たるかもしれないという予想はあったが、本当にこうして当選葉書が来ると嬉しいものである。
(バレンタインでは、リラさんが当ててくれたからだな)
 羽月はふと、バレンタインでの出来事を思い出して微笑む。ちょうど一ヶ月前に二人で見た、星達を。その美しいきらめきは、リラがくれたものなのだ。
(あの時、私も応募したが当てられなくて。それよりも二人ともで応募していた事が嬉しかった)
 二人とも、バレンタインの応募を同時に行っていた事が妙におかしく、そして嬉しかった。同じような考えをもっていることがくすぐったいような、そんな気分だった。
(そして、今回は私が当てる事ができた)
 今回こそ、と羽月は思っていた。今回こそは、と。
「羽月さん、何か手紙が来てましたか?」
 リラが顔を覗かせる。羽月は微笑みながら葉書をリラに差し出した。リラはそれを受け取り、小首をかしげながら読む。
「遊園地、ですか?」
「ああ。今度は私が当てたから、一緒に行こう」
 羽月の言葉に、リラは満面の笑みになって「はい」と頷く。
「それじゃあ、私はお弁当を作りますね」
「ああ、楽しみにしている」
「そんな事言われたら、はりきっちゃいます」
 リラはそう言って、にっこりと笑った。羽月はそれに笑みながら答える。
「私、遊園地って見た事ないんです」
「そうなのか」
「はい。だから……とても、楽しみで」
 リラはそう言い、頬を赤らめてじっと羽月を見つめる。羽月はそんなリラを見つめ、柔らかな眼差しを向ける。
「私も、久々に行くんだ。リラさんと一緒にいけて、嬉しい」
 羽月の言葉に、リラは再びにっこりと笑う。突如冷たい風が吹き、リラは思わずくしゅんとくしゃみをした。羽月はそっとリラの肩に手を回して「入ろう」という。
「風邪をひいてはいけない。早く中に入ろう」
「はい。明日、行けなくなったら勿体無いですもんね」
「違うよ。……リラさんも私も、元気な状態で楽しめる事が一番なんだ」
 羽月の言葉に、リラは頬を赤らめて頷いた。そして小さな声で「はい」と微笑みながら返事をした。羽月はそんなリラの様子を見、肩から暖めるかのようにそっとリラの体を引き寄せ、家の中へと急ぐのだった。


●14日

 銀河遊園地は、人が多くも無く少なくも無く、ほどほどに客が入っている状態だった。寂れているわけでもなく、かといって乗り物一つ並ぶのに一時間も二時間も待たされるような状態でもない。
 ぐるりと園内を見回すと、遠くの方にジェットコースターの長いレールが見えた。その他にも、馬や馬車がゆっくりと音楽に合わせて回るメリーゴーランド、大きなカップがくるくると回るコーヒーカップ、巨大な海賊船が前後左右に大きくゆれるバイキング、おどろおどろしい雰囲気をかもし出しているお化け屋敷、そうして目玉である海に面した大きな観覧車が見えた。
 あちらこちらに兎や猫といったきぐるみが、風船を持って手を振っている。夢の国、と称しても良いような雰囲気だ。
「凄いですね、羽月さん!」
 リラはそう言って、嬉しそうに笑った。
「そうだな。どれから見ればいいのか、分からないくらいだ」
「ああ、本当ですね。……どうしましょう」
 リラはそう言って辺りを見回して「うーん」と考え込む。羽月はそっと微笑み、ふと目に入ってきた案内地図を指差す。
「リラさん、あれを見て決めよう」
「はい」
 二人でぱたぱたと急ぎ足に近付き、園内地図を見回す。現在地、と赤い字で書かれているところから一番近い乗り物を確認する。
「観覧車は夜だから……最終的にそこに辿り着くようにしよう」
「ええと……それじゃあ、これがいいです」
 リラはそう言って、メリーゴーランドを指差した。羽月は微笑みながら「分かった」といい、地図を確認する。
「それじゃあ、まずはメリーゴーランドからいこう」
 羽月はそう言い、そっとリラの手を取る。リラはその手を見つめ、それからにっこりと笑って「はい」と応え、手を握り返した。
 そうして、二人揃ってメリーゴーランドを目指していった。


 メリーゴーランドは、白と黒と茶色という三色の馬、それに馬車が回っていた。
「わあ、どれに乗ろうかな」
 リラは色とりどりの馬や馬車を見て悩む。一口に馬車といっても、メリーゴーランドで回っている馬車は何種類もあるのだ。
 悩んでいるリラの手を、羽月はそっと引っ張る。
「リラさん、馬車に乗ろう」
「馬車ですか?」
「お姫様は馬車に乗るのが定石だ」
 きっぱりと言い放つ羽月に、リラはほんのりと頬を赤らめる。
「私、お姫様ですか?」
「お姫様だよ」
 にこやかに答える羽月に、リラは「それじゃあ」と言って微笑む。
「それじゃあ……羽月さんは王子様ですね」
「騎士でもいいな。リラさんを守れるのだから」
 羽月はそう言い、馬車に乗り込んでからリラに手を差し出した。リラはほのかに熱い頬を確認し、それから羽月の手を取る。二人並んで馬車に座ると、音楽が聞こえてきてメリーゴーランドが動き始めた。
 軽やかなオルゴールのような音に合わせ、上下に優しく動きながら回る景色。
「楽しいですね、羽月さん」
「ああ。こうしていると、本当のお姫様みたいだな」
 羽月の言葉に、思わずリラは「え」と言って頬を赤らめた。
「私がお姫様みたいなのは……羽月さんがいるからです」
「リラさん……」
 二人で見詰め合っていると、ゆっくりとメリーゴーランドが止まっていってしまった。呆然として馬車に二人で座っていると、係員が近付いてきて「終わりましたが」と声をかけてきた。
 リラが残念そうに立ち上がろうとしたのを見て、羽月は「すまないが」と口を開く。
「もう一度、乗ってもいいか?」
「ええ、いいですよ」
 係員は快く承諾して去って行く。リラが「羽月さん」と声をかけるのに、羽月はそっと微笑んで返す。
「どうする?お姫様」
 羽月の言葉に、リラはにっこりと笑って羽月の手をぎゅっと握り締めた。
「次は、あの白い馬が良いです」
「一緒に?」
「一緒に!」
 嬉しそうなリラに羽月は頷き、手を添えて馬車から下りる手助けをした。そおして白い馬に乗り、リラを引っ張り挙げて自らの前に乗せた。
「まるで、本当に馬に乗っているみたいですね」
「そうだな」
 微笑みながら頷く羽月に、リラは「ふふ」と言って笑う。
「白馬の王子様ですね、羽月さん」
「じゃあ、やっぱりリラさんはお姫様だな」
 二人は顔を見合わせ、くすくすと笑った。そうして、また再び音楽と共にメリーゴーランドが動き始めるのだった。


 メリーゴーランドを後にし、次に目に入ったのはコーヒーカップだった。
「どのカップがいいでしょうか?」
 リラはそう言って、赤や緑、それに青のコーヒーカップをきょろきょろと見ながら羽月に尋ねた。羽月は少しだけ迷った後、薄紫色のカップを見つけて「これがいい」という。
「ほら、リラさんに良く似ている色だから」
「羽月さん……」
 二人で頬を赤く染めながら微笑みあい、向かい合わせに座る。リラは真ん中についている丸いハンドルを持ち、左右に捻る。すると、座っているカップも左右に回った。
「回るんですね!」
「自分で好きなように回せるんだ」
 羽月の言葉に感心していると、音楽がなり始めてカップ自体がゆっくりと動き始めた。思わず「きゃ」と小さく叫ぶリラを見て羽月は微笑み、それから少しだけハンドルを回してカップを動かした。
「羽月さん、負けませんよ」
 リラはそう言って、負けじとハンドルを回してカップを回す。羽月もそれを見て悪戯っぽく笑い、リラが回したのとは逆方向に回す。そうしたら、次はリラが回す……。
 二人で競い合うようにハンドルを握り、交互に回す。必死になって回していると、あっという間に音楽が鳴り止んでしまった。
「リラさん、終わってしまったな」
 羽月が少しだけ残念そうにそう言って立ち上がる。リラは「はい」と返事をして立ち上がろうとしたが、回しすぎた為かふらりと体制を崩してしまった。
「大丈夫か?」
 倒れそうになったリラを、羽月は慌てて支える。
「は、はい」
 リラはそう言って、恥かしそうに笑った。「ついつい、回しすぎちゃいました」
「無理しないように、ゆっくりといこう」
 羽月はそう言って、リラを抱き上げる。いわゆる、お姫様抱っこだ。リラは頬を真っ赤にして「きゃ」と小さく叫ぶ。
「う、羽月さん!」
「無理をするな。……大丈夫、そこのベンチで少しだけ休もう」
 優しい羽月の言葉にリラは頷き、羽月の胸に顔をうずめた。気恥ずかしさと嬉しさが同じくらいに込み上がり、頬が熱くなっているのを確かに感じた。
 暫く休みがてら、リラが作ってきたお弁当を食べる事になった。大分よくなってきたリラは、バスケットから紙のお皿と割り箸を取り出して羽月に手渡す。
「お昼からはどうしましょうか」
「そうだな、まだ時間があるから……まだ遊園地内を遊べる筈だ」
 羽月はリラの作ってきたお弁当箱を広げながら答える。リラは「それじゃあ」と言ってにっこりと笑う。
「お化け屋敷が良いです!」
 リラの言葉に、羽月は一瞬だけ固まってから頷いた。その顔はどことなくぎこちなかったのだが、はしゃいでいるリラは気付かなかったのだった。


 お化け屋敷は、待つ事なくすんなりと中に入ることができた。リラはドキドキしながら、足を踏み入れる。中は薄暗く、雰囲気がばっちりである。
「暗いんですね」
 リラはそう言って、羽月の手をぎゅっと握り締める。羽月もその手に答えるようにぎゅっと握り締める。そうして一つ息をついた後、口を開いた。
「……そうだな。こけないように、気をつけないといけない」
 羽月がそう言い終わると同時に、目の前のスピーカーから「ガガガ」というノイズ音が響いた。思わず羽月はびくりと体を震わせる。
「お化け屋敷にいらっしゃいませ。こちらのお化け屋敷は、和洋折衷、いえ和洋中折衷となっております」
 時折ガガガ、というノイズ音が入りつつ、放送が入った。妙に明るい声で言われるのが、何故だか怖い気がする。
「どうぞしっかりと楽しんでくださいませ。……そうして、恐怖を」
 ぶちっ。
 放送はそこで切れてしまった。からからとテープが空回りする音が聞こえる。放送一つで迫力満点だ。羽月とリラは顔を見合わせ、突き進んだ。
 どろどろという音がうっすらと聞こえる中、辺りの景色は廃墟のようなつくりになっている。
「……だ、大丈夫か?リラさん」
「はい。なんだか不思議な雰囲気ですね」
 暗いところになれてきたらしく、リラの表情は明るい。羽月は心内で「平常心」と呟きつづける。お化けという類が、あまり得意ではないのだ。
「あ、羽月さん!」
 突然のリラの言葉に、羽月はびくりと体を震わせる。そして一息ついてから「どうした?」と尋ねる。リラは一方向を指差しながら「あれ」と呟く。
「あの方、血が出てますよ。お怪我をしているようですので、手当てを……!」
 確かに、リラの指差す方向に血を流している人がいた。否、お化けがいた。甲冑に身を包むその人は、甲冑の隙間から赤い血を流している。おそらくは、雰囲気作りのための人形だろう。分かっていても、妙に怖い。
「……それは心配だな……」
「そうでしょう?」
 リラがそう言って甲冑に近寄ろうとすると、設置されていた墓から何かががばっと現れた。
「皿……皿が足りないっ!」
 ぱりーん!
 効果音と共に現れたお化けは、何故かキョンシーの格好をしていた。和洋中折衷とはいえ、ちょっとつくりが酷すぎるような気がする。だが、それでも羽月を驚かせるには充分だった。思わずリラの手をぎゅっと握り締め、リラを後ろに守る。
「ええと……お皿が足りないんですか?」
 緊迫した雰囲気の中、リラの口から出たのは意外な答えだった。恐怖の叫び声でもなく、驚きの声でもなく、疑問の声。
「お皿だったら、お昼用に持ってきた髪皿の残りがあります。……お使いですか?」
 律儀に尋ねるリラに、お化け役の人は思わず首を振った。リラは小首を傾げつつ「そうですか」と呟く。
「なら良かったです。ね、羽月さん」
「ああ」
 羽月はこっくりと頷く。心の中で呟きつづける「平常心」という言葉が波のように押し寄せる。
「なら、何でお皿が足りないっていうんでしょうか?不思議ですね」
 不思議そうなリラに、羽月はただ「そうだな」とだけ答えた。心臓はばくばくと大きく脈打っている。
「話を聞いてくれよ……俺は殺されたんだよ、この遊園地が建つ前に……」
 ふと気付くと、本物の幽霊まできていた。びくりとする羽月とは対照的に、リラは親身になって「それは大変でしたね」と相槌を打っている。
「本当に、呪ってやりたくなるぜ……!」
「それはいけません。どうか、安らかにしてください」
 リラがそういうと、羽月も「そうだな」と頷く。幽霊はそれを見て溜息を一つつき、消えた。ほっと一安心の瞬間である。
 それからも様々なお化けたちと触れ合いつつ、ようやく出口に辿り着いた。羽月はようやく胸を撫で下ろす。どうにかお化け屋敷で取り乱したりせずに済んだと、自らの成功をこっそりと喜ぶ。
「そういえば、羽月さん。手に汗をたくさん掻いているけど……大丈夫ですか?」
「え?……あ、ああ」
「具合が悪いのでしたら、言って下さいね」
 心配そうなリラに、羽月はただ「大丈夫だ」とだけ答える。大成功、とまではいかなかったようである。
「ジェットコースター、行こうか」
 羽月は話を逸らすようにそう言い、ジェットコースターへとリラの手を引っ張っていくのだった。


●光

 一通り楽しんでいると、あっという間に時間が過ぎ去っていっていた。空は暗くなり始め、夕日が沈みそうになっている。
「そろそろ、行こうか」
 羽月の言葉に、リラは頷いた。ジェットコースターの速さに、動きが一瞬止まっていたのだが、羽月の言葉で再び動き始めることができた。羽月はそっと微笑み、葉書を握り締めて葉書を握り締めて観覧車へと向かった。
 観覧車の所には、既に待っている人は誰もいなかった。そろそろやってくるだろうと目星をつけていたのか、既に「貸切」と書かれたプレートが掛かっている。
「今日貸切する、藤野・羽月だが……」
「ああ、はい。分かりました」
 係員はそう言い、二人を観覧車の一つに誘った。羽月はリラの手を取り、観覧車に乗り込んだ。
 二人が乗り込み、扉を閉められてから暫くして観覧車は動き始めた。ゆっくりと、だんだん空へと近付いていく。
「今日は、とっても楽しかったです」
 リラは満面の笑顔でそう言った。羽月はその言葉を聞き、そっと微笑む。
「良かった。リラさんに喜んでもらえたら、言う事は無い」
 ゆっくりと、ゆっくりと観覧車は昇っていく。リラは窓の外を見つめ、暗くなっていく景色を堪能する。
「リラさん、もうすぐ頂上だ」
「はい」
 丁度一番上にやってきたところで、観覧車は回るのをやめた。眼下に、ネオンで彩られた地上がある。空には星が出て煌いている。海がそれらを映している。
 二人でじっと見ていると、突如空に花が咲いた。ぱあん、という轟音と共に。
「花火……花火です、羽月さん」
「……綺麗だな」
「はい!……こんな高いところで見たら、手が届きそうです」
 羽月はそんなリラを見て微笑み、そっと立ち上がって窓の外を見つめるリラの隣に座った。
「当てて、本当に良かった」
 羽月は呟く。リラの喜んでいる表情が、何より嬉しかった。お化け屋敷はどうも好きになれなかったが、他は楽しく過ごせたのだ。
 何より、一緒に来られた。
「空にも、花が咲くんですね」
 リラはそう言い、羽月を見て微笑んだ。ぱあん、という音と共に花が咲き乱れる。光と色が煌く、巨大な花が。
「羽月さんといると、色んな初めてがあって楽しいです」
「私もだ。私も……」
 幸せだ。
 羽月は花火の音に乗せてそう言った。リラの顔が赤く染まり、そっと柔らかく微笑んだ。少しだけ、照れたように。
「これから、どんな発見があるのかな?」
 リラはそう言って、窓の外を見る。窓硝子に写る微笑む羽月、地上のネオン、空の星、大きな花火、煌く海。
 ぱあん、と轟音が響いた。
「あ、大きいのが上がった……!」
 リラが嬉しそうに言った瞬間、頬に暖かなものが触れた。
 優しい、口付け。
 リラが赤くなった頬を押さえながら振り返ると、そこには顔を近づけて微笑む羽月がいた。
「また、リラさんと色々な始めてをしれたら良いな……」
「……はい」
 二人は顔を見合わせ、くすくすと笑った。そうして、窓の外にあがる花火を見つめた。
 最後の花の、花弁一つが消えてしまうまで、そっと手を繋いだまま。ただじっと微笑みながら、見つめているのであった。

<螺旋のように寄り添って・了>

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 1879 / リラ・サファト / 女 / 16 / 家事? 】
【 1989 / 藤野・羽月 / 男 / 17 / 傀儡師 】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 お待たせしました、コニチハ。霜月玲守です。この度はホワイトデイ企画「光の螺旋」にご参加頂き、有難うございます。
 バレンタインノベルに続いてのご参加、本当に嬉しいです。ご結婚されているとは言え、まだまだラブラブだろうと思いつつ書かせて頂きました。砂糖にも負けない甘さを目指しております。如何でしたでしょうか。
 ホワイトデイに間に合わず、申し訳ございませんでした。そ、それでも少しでも気に入ってくださると嬉しいです。
 ご意見・ご感想等心よりお待ちしております。それではまたお会いできるその時迄。
ホワイトデー・恋人達の物語2006 -
霜月玲守 クリエイターズルームへ
聖獣界ソーン
2006年03月20日

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