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『ヴァレンタイン叫走曲 』
五代・真1335

≪序曲≫
 金色に染めた髪をツインテールで、ピンクの口紅をつけて。
 服はゴシックロリィタと呼ばれるひらひらのフリルのついたかわいらしいものを着こなしている。
 近寄ると漂う香水の素敵な漢女(おとめ)は街を歩いている。
 ここは東京某所。オタクの街と称され、さまざまなコスプレをした人が街を歩いている。



 それでも、彼…もとい漢女(おとめ)は浮きに浮きまくっていた。
 出ているところはでていて、しまるところはしまっているナイスボディ―ただし、その8割は筋肉―が原因なのだろう。顔が世紀末救世主伝説にでてきそうなも特徴である。とにかく、『すごい』としか形容しがたい外見だった。唖然とした顔で道行く人々は雅下嵐を見ている。
 もっとも、親子づれにいたっては見ちゃいけませんとしかっているのだが…
「ああ、世間の男達の視線は私に釘付け、美しさって罪よねっ」
 うふっと笑い投げキッスをする。それを受けた男は失神していた。
「私の美貌で気絶しないような、たくましくて素敵な殿方はいないのかしら〜」
 トスッと肩がぶつかる。
「おっと、おっと、ごめんよ。大丈夫…み、みたいだな…。ハハ…ハハハ。そ、それじゃ、俺はこれで…」
 乾いた笑いを浮かべ立ち去ろうとする着流し姿の男。
 きらーんと嵐の目が光る。獲物を見つけた鷹のごとく、鋭い目だった。その視線が着流しの男を捕らえた…

≪第一楽章≫
 冬にこの格好は不味かった。
 それが着流し姿の門屋・将太郎 (かどや・しょうたろう)が抱いた感想だった。
 ダイエットが成功し、ボディが引き締まったのはいい。それを見せようと思って二月のアキバをこれで歩いたのは失敗だった。
 ビル風が容赦なく横っ面を叩き、裾を捲り上げようと吹き付ける。
「う〜さぶっ!! Tシャツ下に着てるけどさぶいぜ」
―ゾクリ。
「なーんか、鋭い視線を感じるような…」
 そ〜っと、後ろを向く。そこにはゴスロリを着たピッチピッチでムッチムッチな漢女(おとめ)『雅下嵐』がいた。
「さっきぶつかった人だな…よく見ると男なのに似合いもしないゴスロリ着てやがる…ってこっちにきてる!?」
 そんな門屋を熱い視線でみつめたゴスロリ漢女(おとめ)、雅下嵐はクラウチングスタートをして門屋のほうに走ってきた。
「どうわぁぁぁ!? こっちにくるなー!!」
 門屋と雅下嵐の追いかけっこが始まった…

≪第二楽章≫
 悪寒を感じた。バイト帰りでアキバを通っていた“バックパッカー” 五代・真は周囲を見回した。そこには着流しの男を追いかけているゴスロリの人物が…
「だ、ありゃ。仮装でもやってんのか?それにしても、いかにも「漢」って奴がゴスロリ着てアキバ系オタクが好みそうなアイドルっぽいのになりきってるなんて…。気色悪ぃ」
 見ているだけで、おなかいっぱいになり、さらに吐き気すら来た。
「ん?こっちに近づいてきてる!?」
 巻き込まれまいとと自力で逃げ出す。愛用のマウンテンバイクは駅においてきたのが痛かった。
 走りには自信のあるほうだが、距離は離れるどころか狭まっていく。着流しの男も、ゴスロリ衣装も、走りづらい格好のはずなのになぜか速い。
「おおーい、そこのお前、こいつを何とかしてくれ!!」
 着流しの男、門屋が五代に向かって助けを求める。
「初対面にそれはねぇだろ!! こんなバケモノ相手にしていられるか!!」
 バケモノという言葉に嵐はカチンと来る。
「誰がバケモノだ。この野郎!! って、あらやだんっ」
 野太い声で叫び、その後はっとなって恥ずかしそうに頬を両手で押さえる。その隙を逃さず、五代はMTBを全力でこいで距離を開ける。
「何怒ってるんだよ、本当のことじゃねぇか。それに、俺以外にもあんた好みの奴がいるだろ!あいつとか、そいつとか…」
 器用にも後ろを時折見ては言葉をはなち、片手を離して他人を指差す。指を差された人はさぞ迷惑なことだろう。
「いやねぇ、そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。オネェサンがやさしくしてア・ゲ・ル」
 ンチュッと投げキッスを飛ばした。
「「うぇぇっ」」
 その光景に二人はそろって吐いた。投げキッスで吐くなんて一生に一度あるかないか…いや、これっきりにして欲しいと思った。
「畜生、何で俺がこんな目にあわなきゃなんねぇんだよ」
「それはこっちも一緒だ!」
 今日はバレンタイン。告白するカップルやチョコを渡す人たちを尻目に、後ろから迫る恐怖から全力で逃げる二人。
 それでも話しながら逃げられるのだから、相当体力があるのだろう。
「さぁ、二人とも私の腕の中で幸せな世界へ!!」
「「いけるか!!」」
 とまって、突っ込みを入れる二人、しまったと思うも時すでに遅し、相手の間合いに入った。
「雅下ぶりぃぃぃぃかぁぁぁっ!!」
 がしいぃっ!!と二人を両腕でつかんでサバ折体勢に入る
「うぐぅ!?」
「ぐぉぅ!?」
 二人の腹に巨木のような腕がめり込みだした…そのとき

≪第三楽章≫
 シュシュシュン、ピシッ!
 扇子が飛んできて、嵐の米神に当たった。
「か、顔は漢女(おとめ)の命なのよ!! だれ!」
 扇子が飛んできた先を見ると、そこには紋付袴でいかつい手甲をつけた壮年の男
―風閂(かんぬき)―が立っていた。
「『ふりる』は女子(おなご)が着てこそ似合うもの、男子が着るとは嘆かわしい…」
 ぐぐっと拳を握り己のことのように悲しむ。
「今日は大漁じゃあぁぁぁ!!」
 ざっぱーんと、後ろに大漁旗を立てた漁船の幻が一瞬現れ、そして消えた。
 嵐が盛り上がっている隙に五代と門屋は逃げ出し、風閂と合流した。
「助かったぜ、俺は五代・真。あんた…名前は?」
「風閂(かんぬき)だ」
「俺は門屋将太郎だ。よろしく頼むぜ」
 挨拶を済まし、握手を始める3人。そこへ嵐が割ってはいる。
「ちょっと、おんしら、わしを無視するなっちゅーとろうがっ!!」
 土佐訛りの濃い男声で3人を一喝する嵐。
「うるさい、そのように男として振舞えるのならば、何故そのような格好をする!」
 風閂が一歩前に出て、嵐に対峙した。
「知りたくば拳で語るがはやいっちゃー」
 ぐっと、嵐が構える。その動きに隙はない。
(できるな…)
「よかろう、俺が相手になってやる…その腐った心をたたき直す!!」
 風閂が一歩進み。
「俺も一発殴らなきゃ気がすまねぇ」
 五代が首を鳴らし、それに続く。
「二人ともがんばれよー」
 門屋が二人を見送るなか、どこからともなく、声が聞こえた。

『Final Round』

『Redey』

『GO!!』

 はじめに動いたのは風閂だった。俊足とともに渾身の一撃を放つ。
「でやぁぁ!!」
 頬をとらえた…はずだった。ガッという硬い音が返ってくる。
「何っ!?」
 嵐は軽々とガード、そして、転じて攻撃に出る。肘打ちから裏拳への連続攻撃。
 ガスッ、バキッと胸を穿ち、顔面へと拳があたった。
「くぅ…油断しておったとはいえ…強い」
 口を切ったのか、血の味が口の中に広がる。
「その程度じゃなかろう、おんし」
「てめぇの相手は、そっちだけじゃねぇんだよっ! んなろっ!」
 風閂が体勢を整える前に追い討ちをかけようと動いた嵐に対して、五代が殴りかかった。
 五代の拳を片手で受け止め、五代の勢いを利用して投げ飛ばす嵐。ガシャァアンと五代がコンビ二前の自転車の列に突っ込んだ。
「不意打ちとは男らしくないのう、おんしもそうは思わんか?」
 風閂に対して、嵐はいった。その言葉に対して、風閂はつばを吐いて睨みつつ返した。
「そのような格好をしておるような輩に男を語って欲しくはない!!」
 そして再び、二人の対決が始まる。風閂は片手だというのに激しく攻める。嵐は嵐で武道を心得ているのか、的確にガードし、反撃の手を狙ってくる。
「それほどまでの実力を持ちながら、何故道をはずした!!」
「これだけの技があったからこそ、女に興味がもてなくなったんじゃ!」
 その言葉にふと足を止めた風閂の動きがとまり、嵐がつかんだ。
「しまった!?」
「このまま終わりにしちゃる!」
 狼狽する風閂を思い切り投げんと嵐が投げの体勢に入った。

≪フィナーレ≫
「終わるのはてめぇだよっ!!」
 しかし、投げの体勢に入った嵐に対して、起き上がって隙をうかがっていた五代が横っ面から殴りかかった。
 今まで風閂との戦いに集中しすぎていたため、五代に気がつかなかったのだ。
 ズシンと重い一撃が決まり、嵐の体勢が崩れる。そこを風閂が投げた。
ガシャァンと今度はガードレールに嵐がぶつかり動かなくなった。
「いかなる理由があろうと、道を踏み外すことは道理にかなわぬ。二度とそのような姿を俺の前に晒すな…」
 吐き捨てるようにいうと風閂は羽織を整えきびすを返す。そこへ、五代と門屋もやってきた。
「お疲れ、すごい投げだったな」
「ホントにな…お、そうだあんたら暇か? 暇だったら、飲みに行かないか?ここで出会ったのも何かの縁だからよ」
「いやな縁だけどな…」
「確かにな」
 ゴスロリ漢女(おとめ)に関わったからこそ知り合えた仲。たしかに、あまり人に言える縁ではない。
 だが、3人はともに歩く…夜はこれからだ。気晴らしはいくらでもできるというもの。
 世間ではバレンタインは恋人たちの日といってはいるが、こういう男同士の友情も悪くない。
 

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【PC名(整理番号、ID) / 性別 / 年齢 / 職業】
風閂(w3g785ouma)/男/30歳/レプリカント
五代・真(1335)/男/20歳/バックパッカー
門屋・将太郎(1522)/男/28歳 /臨床心理士


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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どうも、橘です。
 ヴァレンタインというのに、こんな濃い作品に参加していただきありがとうございました!
 では、個別にお返事を書いていこうかと思います。

>五代さん
 はじめまして。橘真斗です。
キャラがつかみやすかったので、書くのは苦労しませんでしたが、いかがだったでしょうか?なかなか設定が生かせず申し訳ありません。
 また、機会あればそのときはよろしくお願いします。
バレンタイン・恋人達の物語2006 -
橘真斗 クリエイターズルームへ
東京怪談
2006年02月08日

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