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『【感謝のキスを☆――初めて出会った日だから】 』
クリタ・メルト(w3g546)&エレザガルシャ(w3g546)

 ――デスクのライトに浮かび上がるのは、薄暗い閑散としたクリタ・メルトの部屋だ。
 イジメを受けてから引き篭もり続けた室内に目立った物は無く、最低限の物だけが揃えられている。
例えるなら、生活の匂いすら感じない部屋だ。
 少女に見紛う容貌の痩せた青年は、デスクに肘を着き、頬杖をついて物思いに耽っていた。肩ほどまで伸びたこげ茶色の長髪と憂いを帯びた垂れ目は、一際彼を中性的に描き出し、イジメの要因となった容姿が真夜中の窓ガラスに映る。
 ――出会ってからどれ位経つのだろう‥‥。
 ふとメルトは視線を流す。黒い瞳に映るは、直ぐ傍にあるベッドで寝息を立てる長い金髪の背中だ。「うぅん‥‥」と小さな声を洩らし寝返りを打つと、ライトの明かりに若い女の端整な風貌と、シーツから肌蹴た溢れんばかりの魅惑的な白い柔肉の膨らみが浮かびあがった。一瞬、青年は頬を染めてエレザガルシャから視線を逸らし、ゆっくりと戻す。
 ――エレザガルシャ。
 魔皇に従うインプの逢魔。思い返せば、彼女と出会ったのもこの部屋だ。
 その頃のメルトは女性恐怖症で、触れただけで鼻血が出て気絶する位の重症だった――――。

●邂逅――出会いの刻から
「う、うわあぁッ! く、来るなぁ!」
 バタバタと床に音を響かせ、悲鳴のような声をあげながらメルトは後ずさった。目の前に佇むのは刺激的な色彩の衣服に身を包む妖艶な風貌の若い女だ。エレザガルシャは縊れた腰に手を当て、唖然とした色を浮かべたまま、青いツリ目で腰を落とした青年を見下ろしていた。
「‥‥なに慌ててるのぉ?」
「ま、窓から入って来たら、あ、慌てますよ! な、何なんですか!?」
 ビッと震える指をさしたメルトは既に涙目だ。金髪の娘は口元に笑みを浮かべると、青年と視線を合わせるように四つん這いとなり、まるで女豹の如く彼へと近付く。
「なにってぇ、あなたの逢魔よぉ☆ 魔皇さまぁ♪」
「ま、まおう? ‥‥それって‥‥ッ!」
 衣服から溢れそうな二つの膨らみを揺らし、悪戯っぽい笑みを湛えたままエレザガルシャは、怯えた子犬のような眼差しを向けるメルトに触れた。刹那、青年の鼻からツツーっと鮮血が流れる。慌てて手で抑える様子を見て、美女の悪戯心は更に熱を帯びた。
「なぁに? あなた女の子の身体に免疫が無いのぉ?」
 えい☆ そんな声と共にエレザガルシャが勢い良く飛び掛かり、メルトの華奢な身体を抱き包む。青年の端整な風貌は柔肉の谷間に埋められ、両手をバタつかせた。彼を抱き締めたまま左右に腰を揺らして美女が微笑む。
「どお? どお? エレザの胸って暖かい? 柔らかい? 欲情したぁ? あぁん☆ そんなに息を吹き掛けないでぇ♪」
 刹那、勢い良く噴き出したのは鮮血の噴水だ。鼻血を放出したメルトはグッタリと気を失い、エレザは困惑の後、悲痛な声をあげて泣き叫ぶ。
「え? 魔皇さまぁ? うそッ! やぁーん、せっかく出会えたのにぃ! エレザのメルトさまぁ!!」
 ――いや、死なないって‥‥。
 気がついた青年の瞳に映る彼女は流石に悪く思ったのか、悲しい顔で見つめていた。

 ――あれから、魔に属する者と自覚し、幾多の戦いを二人で乗り越えてゆく。
 時には街中でグレゴールやサーバント相手にダークフォースと魔皇殻を駆使し、エレザはインプの特殊能力で様々な局面でメルトをサポートした。
「メルトさまぁ!!」
 逢魔の瞳に映るは、ディフレクトウォールで防戦一方に陥った魔皇の姿だ。エレザは逢魔の刻印を輝かせ、金髪の脇から2本の角を生やし、背中に小さな蝙蝠の翼を広げた。優麗なラインを描く尻に悪魔の尻尾を生やすと、インプの特殊能力を発動させる。
「さぁ、舞い飛ぶのよぉん♪ 影の蝙蝠たち☆」
 両手を左右に開いた刹那、妖艶な肢体を包む『影の服』から幾つもの黒い蝙蝠が解き放たれ、サーバントやグレゴールに洗礼を浴びせた。メルトが瞳を研ぎ澄まし、ダークフォースを叩き込む。
「ありがとう! エレザさんッ! 三方閃<デルタレイ>!!」
 魔皇の頭上および左右の3方向から閃光が放たれ、神帝軍の騎士を崩した。
 こうして魔皇としての運命を背負い、エレザと共に激戦の日々を経験する中、彼女を大事なパートナーとして感じる様になる。
「エレザさん! 敵はあと何機ですか!?」
「あと2機! メルトさま、10時の方向よぉん☆」
 それは二人のスピリットリンクにより成せる巨人の召喚――殲騎戦の刻だった。オートバイのシートを思わせる狭いコックピットで互いを信じ合い、殲騎ピュアホワイトは女性的なフォルムで風を切り、空を飛翔しながら敵機へと突っ込んだ。空中に浮かぶ防御盾――ディフレクトウォールでネフィリムの猛攻を防ぎ、シュリケンブーメランとシャドウオーブで神機巨兵に洗礼を叩き込み激戦を凌いでゆく。
「メルトさま、あと1機! これに勝てたら一緒にお風呂に入ってあげるわよぉ♪」
「か、からかわないで下さい! そんな状況じゃないでしょう!」
 10発の魔弾の雨――魔力弾<マジックミサイル>――を不規則な軌道でピュアホワイトからバラ撒く中、視界に広がる敵の攻撃や爆風にコックピットが激しく揺れようとも、メルトはエレザの陽気な声に微笑みを絶やさずにいられた。
 ――僕は、エレザがいたからこそ戦って来れたんだと思う‥‥。
 今日は初めて出会ってから同じ日を迎えた記念日――――。

●気持ちの解放
「はぁ〜〜」
 メルトは長い溜息を吐いた。デスクの引出を開け財布の中を見て再び溜息。折角女性恐怖症もエレザにだけは慣れて来たというのに、貧乏が身に染みる。青年は再び寝息を洩らす美女に顔を向けた。
 穏やかな表情で眠るエレザ。吐息を漏らす唇が薄明かりに照らされとても艶やかだ。メルトは静かに椅子から腰をあげ、ベッドに身を寄せる。疲れているのか、彼女はグッスリと眠っているようだ。躊躇いがちに顔を寄せると、柔らかいこげ茶の長髪がサラリと流れ、眠り姫の頬に掛かり、慌てて身を退く。息が乱れ、胸を抑えると心臓の鼓動が響き渡るように高鳴っていた。頬に一筋の汗が流れる。
「はぁはぁ‥‥(ん、勇気を出すんだ! プレゼントは贈れないけど、せめて感謝のキスならあげる事が僕にだって‥‥)」
 メルトは右手でベッドを支えにして、左手で長い髪を抑えながら少女のような顔をエレザへ寄せてゆく。彼女の吐息が青年の唇を撫でる中、ゆっくりと瞳を閉じた。刹那、スルリと伸びた白い腕が魔皇の細い首に掛かり。思わず瞳を見開くと、驚愕の色を浮かべて身を退く。しかし、逢魔の腕がこれ以上離れないよう、しっかりと押さえていた。
「え? エレ、ザ‥‥」
 金髪の美女は穏やかな表情のまま微笑み、青い瞳は潤んで熱を帯びている。
「この時をずっと待ってたわ‥‥。私、本当に好きだった。いつまでも、私を放さないでね‥‥」
「え、いえ、これは‥‥うわぁッ」
 身軽な青年はそのまま抱え倒され、体勢を転じた逢魔がメルトをベッドに押さえ込んだ。青年は何が起きたのか分からないまま、長い髪をベッドに乱れさせる。
「‥‥あの、エレザ、さん? 僕‥‥」
 頬を紅潮させ、怯えた子犬のような瞳を向けるメルトに、美女が微笑みながら艶やかな色を浮かべた顔を寄せた。ゆっくりと閉じられる青い瞳。青年も合わせるように瞳を閉じる。
 ――あ、本当は僕が感謝の気持ちを伝える筈だったのに‥‥。
「ん、はふ‥‥エレザ」
 重なった唇が解放されると、メルトは切なげな表情で彼女の名前を呼んだ。逢魔の濡れた瞳は一層と熱を帯び、艶かしい微笑みを浮かべる。
「んふっ☆ 可愛いわぁ♪ メルトさまぁ」
「‥‥!? え? ちょっと、エレザさんッ?」
 青年の顔は忽ち真っ赤に染まった。エレザはメルトの顔から瞳を離さず、淡いピンクのネグリジェの肩紐をスルリと外すと、弾力のある胸元を腕で覆いながら妖艶な笑みを浮かべた。
 その後の事はよく覚えていなかった。否、夢を見ていたのかもしれない――――。

「ん、んん‥‥っ!?」
 まどろみから抜け切れていない瞳に、陽光の陽射しが眩しかった。
 汗ばんだ身体が何となく気だるくて、それでいて清々しい。
「うぅん☆」
 ふと柔らかな感触を細い腕に感じて視線を流す。瞳に映るは、メルトの腕に抱き付いたまま、穏やかな表情で寝息をたてるエレザだ。青年は身体を傾け、ベッドに泳ぐ金髪を左手で掬いながら、愛しそうに撫でる。自然と口元が微笑んだ。
「んぅん‥‥メルトさまぁ‥‥大好きぃ☆」
 青年は腕が解放されるまで、彼女の寝顔を見つめて微笑んでいた――――。


<ライター通信>
 この度は発注有り難うございました☆
 お久し振りです。メルトくんとははじめまして、ですね♪ 切磋巧実です。
 値上がりしているにも拘らず、発注して頂き、誠に嬉しい限りです。
 そうですか、暫らくお休みしていたのですね。し、しかし‥‥流石にこの発注内容では限界があります(汗)。台詞で表現しても厳しいし、メルトくんのモノローグでも無理があります〜。何とか比喩表現で挑みましたがリテイク(涙)。以前のものは期待しない方がいいかもしれません‥‥。
 それにしても出会いがいきなり部屋ですか(笑)。どんな状況故室内なのか、軽く演出させて頂きました。イメージが合っていれば何よりです。
 尚、DFや魔皇殻および逢魔の特殊能力描写は、オフィシャル設定を元にして切磋のオリジナル演出が施されている事を御了承下さい。
 これまで通りのお色気を感じて頂けないと思いますが、楽しんで頂ければ幸いです。よかったら感想お聞かせ下さいね。
 それでは、また出会える事を祈って☆
PCシチュエーションノベル(ツイン) -
切磋巧実 クリエイターズルームへ
神魔創世記 アクスディアEXceed
2006年02月03日

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