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『思い出納め 』
空月・王魔(w3d549)

時は12月31日…大晦日。
聖夜の祭で浮き足立った世間の波も、今では落ち着き。きたる新年に向けて、遣り残したことを片付けようか…そんな少しせわしなさの漂う空気があたりを満たす、その日。
残すところはあと何時間? 時を逃さぬよう、時を知るために身につける時計が、逆に人々の背中を押してゆく。
そんな喧騒の片隅で…私は何を見つけたのだろう?

●暮らすと言うより。
引っ越してきたばかりなの? そう言われてもおかしくないような、生活感の希薄さ。
それが、この部屋の主の内面をうつしとったはずの、部屋のありようだ。
流したままの銀髪を、さらりとかきあげたその人物――主であるところの空月・王魔――はそれだけ生活らしい生活をしてきていなかった…ということになるのだろうか。

「まだ、早いな」
メタルの時計を一瞥し、さてどうしたものか、と一思案。
友人との約束までには、まだまだ時間が余っている。この隙間を何で埋めようか。
「それほど散らかしてないが…たまには」
年末の大掃除…世間の流れに乗るというのも悪くない。

●形ばかり。
天気がよければ、布団を干し、窓を開け放ち…新しい空気を入れることも出来たのだが。生憎お天道様の機嫌は芳しくなく、雪でも降ろうか降るまいか…と寒空を見せつけたまま。
「そう大掛かりなことは出来ないようだな」
でもきっとこれは、気持ちの問題なのだ。
たまには波に飲まれても悪くないと思う自分がそこにいる。
それは昔の自分ではありえない思いだけれど。

机の上や本棚を整頓し、照明や家具に積もった埃を軽く取り除く。
窓や床などは時間もかかるから、新年明けてからでいいだろう、大掃除とはいえ、年末に拘っているわけでもないから。
思いつく限りを挙げて、その思いつくままに手をつける。普段から物で散らかる部屋でもないから、ひとつひとつの場所に時間はそうかからない。
大きく模様替えをするつもりもない。ただ中の物を出して、わかりきっている位置を確認して、また並べて入れなおすというように、単純な作業が、ひとつのリズムを刻むように続いていく。
あらかたの場所を終え…あとは、最後にやろう、そう思っていたひとつを残すのみ。

●鉛玉。
締めくくりは、寝台の横の小物などがしまってある戸棚。
とは言うものの、髪飾りや紅といった可愛らしいと呼べるものはなく、筆記用具やらの小道具や、昔愛用していた相棒――苦楽を供にし、その命を護る術となった武器の整備道具等――が収められている。
勿論それだけではなく、今でも使う筆記具やら服の留め具などの雑貨も収めてあるのだが。
外観こそ他の家具と大差はなく、ただそこに在る、と見えるが…そこに収められるものはすべて、彼女の記憶と人生の欠片を物語ることが可能な、特別な存在なのだ。
それがわかるからこそ、過去をしまう引き出しを普段は開くことがない。
今日くらいは、片付けと称して昔を振り返るのも悪くない…つい意識して、最後になるまで手を出せなかったけれど。

引き手を引いた途端に、当時の記憶が流れ出す、と言う程ではないが、ひとつひとつそれらを手に取るうちに、何処か懐かしいような、苦いような思いが身のうちに染みこむ感覚に襲われる。
眩暈がするほどではないが、そう浸っていたいものではない、と思う。
コロリ。
何か冷たい感触が手のひらに落ち、過去に飛んだ思考を現実に呼び戻す。
「…これは…そうか、あのころのものか…」
再び思いは過去に飛ぶ。
手の上の鉛玉をもてあそび、青の双眸を閉じる。あの頃の記憶を呼び起こすことなど、造作もない。

硝煙の匂いが立ちこめる中、私は銃を手に独りで生きていた…ただ、生き延びる事だけに必死で。
必要なもの――欲しいものではなく、生きるために必要な物――は奪え。誰も何も与えてはくれない。そう、思っていた。
だが、ある野営地での夜に出会ったあいつは違った。
独り傷の手当をしている私に、何が面白かったのか、気安く話しかけてきた少年兵…どこの生まれだの、何だの、他愛のない話ばかりだったが…
最後にお守りだと、投げて寄越したもの…それがこれだったか。

目を開け、改めてそれを見やる。
何の気まぐれだったのだか…あのことは私もまだ子供だったし、何か近いものを感じていたのかもしれないが…
「でもこれは、初めて誰かにもらったもの、だったな」
だからこそ、今もこうして残っている。
「まったく、柄にもないがな」

●今、私はこの場所にあり。
再び時計に視線をやる。
そろそろ、出かけてもいい時間だ。
「予想より、時間はかかったか…まぁ、悪くない」
もっと早くに終わるかと思っていたけれど。
今はあの頃とは違うのだから、そう急ぐ必要もないか。
ぼんやりしているだけでは死に急ぐあの頃とは、全く違う…変わったから、取り巻く世の中も、そして自分の持つ力も。

「待たせるわけにもいかないか」
獅子吼がそう時間にうるさいとも思えないけれど。
最後にその鉛玉をしまい、軽く身支度を整えて…王魔は部屋を後にした。

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┏┫■■■■■■■■■登場人物表■■■■■■■■■┣┓
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┗━┛★PCあけましておめでとうノベル2006★┗━┛

【w3d549maoh/空月・王魔/女性/25歳/孤高の紫】
【w3d795maoh/剣皇寺・獅子吼/女性/26歳/修羅の黄金】

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■         ライター通信          ■
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一月も下旬となりましたが、あけましておめでとうございます!
このノベルがあけましておめでとうノベルであるかぎり、意地でもそう挨拶します…改めて初めまして、桐島めのうです。

年末の話題でのシナリオでしたので、ご参加いただけるか不安な面もあったのですが…ご参加ありがとうございました!
お二人での描写は、個別受注と言うことを優先して控えさせていただきました。ドライな関係であることを考えると、名前を出す程度がそれらしいかな…と。

それではまた機会に恵まれました時には宜しくお願いいたします(礼
ありがとうございましたっ♪
PCあけましておめでとうノベル・2006 -
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神魔創世記 アクスディアEXceed
2006年01月23日

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