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『『船上からあけましておめでとう』 』
平・代真子4241



○オープニング

『ニューイヤーパーティー・2006、ただ今受付中』
 そんなチラシが、旅行ガイドに記載されていた。それを目にした客は、旅行案内の女性に、首を傾げて尋ねてみた。
「このパーティーは、船の上で行われるのかい?」
「はい。港を31日の夕方に出発し、ディナーや余興を楽しんだ後、船上でカウントダウンを行います。そして、カウントダウンのあとに、船の上でご自由に過ごしてもらい、明け方、船の上から、一番に見える初日の出を見る、という流れになります。もちろん、初日の出のあとも、ご自由にして頂いて構いません。船内で、スタッフ達が料理や音楽、ショーや映画等、様々なイベントを行っておりますから」
「成る程な。じゃあ、客は基本的に、船の上で自由にしていていいわけだな。どんな船なんだ?」
 客に言われ、女性は笑顔で、その船の上のパーティーのガイドブックを差し出した。そこにある写真には、豪華客船の姿が雄雄しく映し出されていた。
「楽しいイベントも盛り沢山です。是非、お友達やご家族と、御参加下さいね」



「今年の新年は寂しくないぞー!!!」
 寒空の下、港に唐沢・公平(w3b175maoh)の叫び声が号泣と共に永延と木霊した。
 目の前には、今夜ニューイヤーパーティーが行われる豪華客船が聳え、見る者を圧倒している。
「ふっふっ、今日はアリッサねぇさんと、代真子さんと一緒ですからねえ。両手に花というやつですよ」
 公平が好青年的笑顔を振舞っているそばで、公平の義理の姉であるというアリッサ(w3b313ouma )は、空を見上げながら呟いた。
「何だかよく分からないけど、いきなり船の上で年を越すことになりました。ごめんなさい」
 アリッサが誰かに向かって謝っているようであったが、おそらくは夫であるという、彼女の魔皇に対してなのだろう。
「まあでも、せっかく来たのだし、めいっぱい楽しまないとね!」
 すぐに楽しそうな表情を取り戻したアリッサは、このカウントダウンパーティーに巻き込んだ張本人である、平・代真子(たいら・よまこ/4241)へと顔を向けたのであった。
「ここへ参加する事になったのも、代真子さんのおかげですからね。楽しみにしていますよ」
 アリッサの言葉に、代真子は無邪気な笑顔を浮かべながら答えた。
 公平を連れたアリッサがこの港を散歩したいたので、代真子は思い切って、この二人にカウントダウンパーティーの誘いをしたのであった。
「町内の福引でパーティーのチケットが当たったから。けど、一緒に行ける人がいなかったので、チケット余らせたまま、ここまで来たのよ。そしたら、二人がちょうどそばを歩いていたから、ね」
 どうせなら、皆で楽しんだ方がいいと、代真子は思ったのである。
「ま、楽しい年越しを過ごせるなら、それはそれでいいかなって思いましたし。突然の事だったから、あの人を連れてこれなかったのが残念ですけど」
 代真子の言葉に、アリッサが答えた。
「僕なんて、アリッサねぇさんに強引に連れて来られてしまいましたけどー」
 そう言って、公平がまわりを見渡している。
 すでに船の上では、客を歓迎するかのように、軽快なバンドミュージックが流れており、自分達のまわりには、母親に手を引かれた幼女、杖をついた老人、友人同士で騒いでいる女子学生に、落ち着いた雰囲気の中年夫婦等がいる。皆、代真子達と同じく、この船で行われる年越しイベントに、参加する者達なのだろう。
「でも、賑やかな年越しになりそうですね!さ、早速船の中へ行きましょう。早くしないと、出発してしまいそうだもの!」
 代真子達は、船の入り口へと向かい、そこで代真子から渡された参加チケットをスタッフへと渡した。



「ようこそ、平様。お部屋へとご案内致します」
 女性スタッフのあとにつき、代真子達は自室へと向かった。通路には、すでに沢山の乗客がおり、皆、それぞれに歓談を楽しんでいるようであった。
 船の中とは言えども、造りは豪華なホテルのようで、代真子はここが船の中であると、実感出来なかった程であった。いや、ここは海の上に造られた、ホテルと言っても間違いではないだろう。
「こちらが、平様のお部屋です。何か御用がございましたら、室内の電話でお申し付け下さいませ」
 代真子にルームキーを手渡すと、女性スタッフは一礼してから去っていった。
「えー、公平と同じ部屋なのー?」
「もともと、3人一組のチケットだしね」
 部屋のドアを開けつつ、アリッサが公平の方を見つめて、眉をしかめてみせる。
「いやですねえ、アリッサねぇさん。僕をそんな目で見ないでくださいよお」
 公平がアリッサに、笑顔で言葉を返してみせる。
「何かまずい事でも?」
 事情のわからない代真子に、アリッサが小声で答えてくれる。小声と言っても、公平には十分に聞こえるであろう大きさであったが。
「あの人、撫でマニアなんですよー?同じ部屋にいたら、1日中撫でられちゃいますよ?」
 とは言え、アリッサがどことなく楽しそうな表情をしているところを見ると、3人が同じ部屋になったのを、それほど気にはしていないのかもしれない。
 代真子達の部屋は、白の壁が何とも上品な雰囲気のある部屋で、壁には海の風景画が描かれた絵画が飾られていた。白いシーツのかかったベッドがとても柔らかく、テレビや冷蔵庫もついている。
「船上で新年迎えられるなんてうれしーい。うわーい!」
 おそらくは代真子が、一番この中で喜びを露にしているに違いないと、自分でも思っていた。公平が撫でマニアである事など気にもせず、窓から見える海の景色を見て、子供のようにはしゃいでいた。
 代真子達は、船の出発時刻になるまで、部屋で歓談をしていたが、やがて、クラシックのような音楽と一緒に館内放送が流れるのを聞き、船が出発した事を知ったのであった。
「船の、色々なところを見に行こうよ!」
 早くも、うずうずとした表情で、代真子は公平とアリッサを船の探検に誘う。
「うん、まあ、せっかくだし、いいんじゃないですかね?」
 今にも部屋から飛び出してしまいそうな代真子を見て、公平がアリッサへと言う。
「そうですね、この船、かなり大きそうだし、こんな時でもないと、見られないものもあるでしょうし」
 公平の言葉に、アリッサも頷いて答えた。
「そして、探検の後は、僕が代真子さんを秘密の船室へお持ち帰り〜」
 アリッサは突然、義弟にアッパーと肘鉄を食らわせる。とても変わっているがこれもしつけのひとつなんだろうかと、代真子は思った。
「ね、ねぇさん、早すぎてカウンターをする暇もなかったですよ」
「駄目ですよ、お持ち帰りなんてしたら。さ、代真子さん、行きましょう。船の探検へ!」
 痛みで小刻みに震えている公平を残し、アリッサと代真子は一緒に部屋から出て行く。
「待ってくださいいい。それならねぇさんと代真子さんを、セットでお持ち帰りにー」
 そう叫びつつ、公平も部屋を飛び出して出た。



「色々なイベントを、あちこちでやっているのね!」
 代真子達は、船の色々な場所を歩き回り、そこで出くわすイベントを楽しんでいた。
 ある場所では手品のショー、またあるところでは、客も一緒に参加出来るゲームコーナー、親子で楽しめる手作りクッキング室、また、船の施設も充実しており、カラオケルームやビリヤード、ボーリング場まであるのには、代真子も驚いたものであった。
 代真子はずっと興奮しっぱなしで、視界に入ったものは全て、気になって仕方がなかった。
「うーん、あの子も、お持ち帰りしたいですねー」
「だから、見てるところ違!!」
 アリッサは、ことあるごとに公平にダメージ付き突っ込みを入れている。代真子はそんな二人を引っ張りまわし、この船のイベントを楽しんでいた。
 そんな事をしているうちに、代真子が楽しみにしていた、ディナーの時間になった。
 代真子達は船の地図を見て、ディナー会場の場所を確認し、早速その場所へと足を向けた。
「すごーい!」
 会場に入ってすぐ、代真子はその様子に目を輝かせた。
 ディナー会場となる大ホールはまるで高級ホテルのような作りで、床には色とりどりの花が描かれた上品な絨毯が敷かれ、天井には、まるで欧州の美術館をイメージさせるような、天使や自然風景等の絵画が描かれている。
 百合のような形のライトがついたシャンデリアがホールを照らし、代真子達がホールに到着した時にはすでに、先に来た客らが食事を始めている所であった。沢山の人が集中している為、かなり大きなこのホールも、いっぱいになっている状態であった。
「腹いっぱい料理食べて、いい年を迎えるぞー、おー!」
 代真子はこぶしを宙に上げて叫んでみせる。
「物凄い混雑ですね。空いている席を探しましょう」
 アリッサと代真子が、空いている席がないかと見回していると、後ろで公平が呼び止めた。
「あー、あそこが空いてますよ。ちょうど、みっつ」
 3人はすぐにそのテーブルへと座ると、今回はバイキング形式の食事である為、早速料理を取りにいく事にした。
「あたし、こういうパーティーの経験ってないの。だから、ついつい感動しちゃって」
 そう言いながら、代真子は鮮やかな手の動きで、取り皿に次々に料理を盛り付けていく。
「代真子さーん、凄くお腹がすいていたみたいですねえぇ?」
 隙間がないぐらい料理を盛り付けた代真子の皿を見て、公平が驚きの表情を見せていた。
 公平も皿に好きな料理を取っているが、代真子の取った量とは比べ物にならない。しかも、代真子は料理がはみ出しそうなほど乗せられた皿を、いくつもテーブルに置いくのであった。
「じゃ、いっただき!」
 代真子は、吸い込むような勢いで次々に料理を吸収していった。
 アリッサは代真子を見つめて目を丸くし、食事の手は止まったままであった。
「成長期で食欲旺盛なのはいいですが、あまり食べ過ぎると太りま」
 代真子は、公平がその言葉を最後まで言うのを許さなかった。無言のまま箸を持っているのと逆の手で公平を殴りつけ、何事もなかったように再び食事を続けていた。
 こうして、一部怪我人を出しつつも食事を終えた3人は、再度船内をまわり、色々なイベントに参加しつつ、カウントダウンの始まる時間までを過ごした。



「いよいよ、年越しですね!」
 代真子達は、カウントダウンの時間に合わせて、メイン会場である船のデッキへと上がった。
 外はかなりの寒さであるものの、そこにはすでに沢山の人が集まっており、皆が年が変わるその瞬間を待ち望んでいるようであった。
 ステージの楽団が音楽を奏でており、その前ではダンサーが数人出てきて、賑やかにカウントダウンを盛り上げていた。
「あそこに時計があるよ!」
 代真子は、船の上の方に取り付けられた、巨大なデジタル時計を指差した。その時計はすでに31日の午後11時30分を刻んでいた。
「もう少しですね。寒いけど、このまま待ちましょう」
 代真子達は、時計を見つめながら、今年が終わり、新しい年が来る瞬間を待っていた。アリッサや代真子が、寒い寒いと言い続けたせいか、公平が二人を撫でて摩擦を起こし、その熱で暖めてあげようか、という案を出したが、即アリッサが却下した。
 時計を見ながら雑談をしているうちに、年が変わるその瞬間がやって来た。時刻は31日・午後11時59分。誰かが、カウントダウンを始めた。それに乗せて、皆も一緒に刻を数え始める。
「11時59分30秒」
 まわりが興奮に包まれていくのを、代真子は感じていた。
「20秒!!」
 誰よりも一番、興奮状態にあるのが代真子で、まわりに負けないぐらいの大声を出し、カウントダウンを始めた。
「10秒」
 アリッサも一緒に、数字をカウントしていく。
「9,8,7,6,5」
 まわりがカウントしていく中、公平がアリッサの耳元で囁いた。
「6,7,8」
 公平のそのカウントに、アリッサもうっかり乗せられてカウントを続けてしまう。
「9,10。ええっ!?」
「いえー!空中で年越し!!」
 代真子はその瞬間を宙で過ごそうと、突然飛び上がった。その瞬間、船の進んでいる少し先にある小さな明かりから、大きな花火がいくつも上がり、夜空を彩った。
「はいやっ!!!」
 公平が未だかついてない、まるで野生の獣を思わせるかのような動きで、飛び上がった代真子の真下へ入ったが、それを阻止しようとしたのか、アリッサが飛び上がった代真子と公平の間へと分け入った。
「見えっ!?」
 公平の目に、アリッサの何が映ったかは、この際考えないことにした。しかし、その阻止したはずみで、アリッサが公平の顔を踏みつけてしまった。
「重い」
「失礼な!新年最初の言葉がそれ!?」
 公平の悪巧みは、アリッサによって阻止されたが、懲りていない感じである。
「見て!花火があんなに。凄く綺麗!」
 上がり続ける花火を前に、代真子は夢の中にいるように、楽しい気分であった。ここで新年を迎えられた事が、何よりも嬉しかった。
「ま、今年もよろしくお願いしますね」
 花火の舞う夜空の下、アリッサが公平に呟いた。
「はい。今年も、頑張って可愛い物を撫でまくりますよおおお!」
 笑顔を見せて、公平も義姉に言葉を返した。
「一緒に来てくれて、二人とも本当に有難う!あたし、こんなに楽しい年越しは初めて!」
 興奮も冷めない顔で、代真子も二人に叫んだ。
 代真子達はしばらくの間、この賑やかな時の瞬間を、船の上で楽しんでいるのであった。



「寝過ごしたーーー!!!」
 代真子達が起きたのはすでに朝の7時であり、初の日出などとっくに出てしまっていた。
 カウントダウンの後、初日の出の時間まで仮眠を取ろうと部屋に戻った3人であったが、あまりにもはしゃぎすぎたせいですっかり眠ってしまい、楽しみにしていた初日の出を見ることは出来なかった。
「そんな。楽しみにしていたのに!」
 アリッサの叫び声で目を覚ましていた代真子は、愕然としていた。
「せっかく海まで来たのに。あたしって、新年からこんなドジやらかして!」
「まあまあ、気にしちゃ駄目ですよ。もう過ぎてしまった事だし、朝食を食べて気分転換しましょう?」
 こればかりはもう、どうしようもないとアリッサに慰められ、代真子達は朝食を食べにいく事にした。公平も一緒にと、アリッサが義弟を起こしたが、よっぽど深い眠りに入ったのか、いくらゆすっても、大声で叫んでも、スリッパで殴っても、公平は起きなかった。
 仕方がないので、公平を置いて食事の場所へと向かったのはいいが、ここで代真子が、初日の出を見られなかった悔しさまでも食い尽くせと、いつもよりも勢いよく朝食を食べ続けた。
「これ、タッパに入れて持って帰れないかな?」
「やめましょうよ、そういう、おばさんみたいな事は」
 代真子の言葉に、アリッサは苦笑して首を横に振った。



「え、朝食がない?」
 結局、公平は昼近くに起きたのだが、すっかり代真子に食い尽くされ、食事は何も残っていなかった。それを話したとたん、公平は驚きのあまり、落ち込んでしまったようであった。
「ごめん!帰ったら私がなんか作りますね」
 アリッサは苦笑をしながら言うと、公平は小さく答えた。
「ま、まあ、ないのならどうしようもないですねえ」
 船は順調に航海を続け、昼には港へと帰還した。
 代真子は船を下りる時、この賑やかな年越しを思い出しながら、新しい年に新たな期待を描くのであった。(終)



◆登場人物◇

【w3b175maoh/唐沢・公平/男性/22歳/孤高の紫】
【w3b313ouma/アリッサ/女性/22歳/レプリカント】
【4241/平・代真子/女性/17歳/神聖都学園の高校二年生。】

◆ライター通信◇

  平・代真子様

 はじめまして。あけましておめでとうノベル2006にご参加頂き、ありがとうございました。WRの朝霧です。
 今回のノベルは、書いていてかなり楽しかったです。プレイングで頂いた雰囲気をなるべく再現しようと、セリフやアクションを崩さずにリプに取り入れてみたのですが、結果的にはかなりコミカルになったかと思います。代真子さんの、物凄い食欲は、まさにコミカルさのメインシーンのようなもので、相当に食べたんだろうなあ、と想像しながら書いておりました(笑)
 楽しんで頂ければ、と思います。それでは、ありがとうございました。
PCあけましておめでとうノベル・2006 -
朝霧 青海 クリエイターズルームへ
東京怪談
2006年01月16日

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