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『除夜のカマ 』
風閂(w3g785)
≪始まりは突然に≫
 住職が立ち去ったあと、しばらく有志の警備員たちは相談をしはじめた。
「やばそうだし、どうする?」
「えぇ〜、人員整理と鐘を優先的に叩けるって聞いてただけだからぁ、受けたのにぃ」
 一人、また一人とその場から立ち去ろうとしているそのとき、その立ち去るものたちに向けて、一人の壮年の男―風閂―が渇を入れた。
「除夜の鐘を撞くのを楽しみにしていたのだが、そのような事態で中止とは納得がいかん! その「かま」とかいう変態的な奴等を倒せば良いのだろう!」
 その低い声、がっしりとした体躯、そして紋付袴という様相の彼に言われると勇気というか、そんなものが沸いてくる気がした。
「そうですよ、あきらめる前にやるだけやってみましょう」
 紫桜もそれに同意し、15歳の少年がやるというのにとそのほか恰幅のいい男達が数名残った。だが、結局10名にも満たない…心もとないが仕方ない。
「時間はあまりない、すぐに作戦を練ろうではないか」
こうして、年の終りに向けての一大捕獲作戦が開始された…。

≪迫りくる恐怖≫
 そして、除夜の鐘を鳴らしたりお汁粉を飲みに人々が多くなってきた。
 一件すれば普通の雰囲気、違うといえば周囲に点在し、不審者を見張っている警備員の気合というか、気迫というか…生死をかけたような表情だろう。
「異常なし…っと、このまま無事に終わってくれるといいんですけどね」
 紫桜は一息ついた。新年までもう6時間は過ぎている。肌寒さはまし、ほうと吐く息も白い。
 大体の寺社仏閣はそうなのだが、周囲は木々に覆われていて、ふもとから離れた山の上にある。この寺もそれにたがわず少し高い位置に建っていた。夜になり、視界が悪くなると一層注意しなければならない。
 ボォォーンと54回目の鐘が鳴った。これで半分、いまだ不振人物の姿は…あった。
「いくら、冬だからってあの格好は異常だよね…」
 紫桜が見つめるのは鐘を鳴らすために並んでいる客。その中にひときわ背丈が高く、コートに帽子、サングラスという不審者の模範例のような人物がいた。他にも同じ格好の人物が4人ほど男の後ろで列になっている。
「ちょっと、君…こっちにきてくれるかな?」
 と、近くにいた警備員の男が、最前列の男に声をかけた。
「あらぁん、渋いお・じ・さ・ま。私を誘うなんて、見る目あるじゃなぁい」
「可愛がってあげなきゃね」
「そうよねぇ」
 帰ってきたのは野太いが甘ったるい口調。瞬時に誰もが思った。
『ついにきた』
 と。カマと思われる男達は衣服を脱ぎ捨てると、こぞって警備員に襲い掛かった。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!?」
 断末魔の叫びと共に、捕食するようなイヤーな音が響き、警備員の男はボロ雑巾のような姿で、境内に捨てられた。涙を流し、白目をむいて震えていた。
「な、なんとむごい…」
 風閂は己のことのように涙を流し、そして怒りを奮い立たせてカマをしかりつけた。
「貴様ら、「ぼでぃこん」とかいう露出度の高い服装をして女に化けたつもりだろうが、どこからどう見ても男にしか見えんぞ!!」
「いえ、風閂さん…カマというか、ああいう人たちはそういう格好をするものなのですよ」
「なに!? 同じ男として、情けない…」
 いつの間にか隣に移動してきた紫桜に説明をうけて、カルチャーショックを受けた。そうえいば、昔のグレゴールにもそんなやつらがいたようなと、しばし逡巡。
「あらぁ、そっちのボウヤは好みじゃないけど、紋付袴のオジサマはいいかんじねぇん」
 この寒い中、ボディコンスーツだというのに、寒がっている様子は見せない。
むしろ、今の自分の姿を見せ付けるかのように、のっしのっしとモデル歩きで歩いてくるムッチムッチでピッチピッチのボディで、化粧も完璧だ。狂言役者も逃げ出すくらい気合が入っている。
 その姿を見た客の多くは気を失ったり、子供の目を隠したりと、騒然となる。警備員達は捨てられた男のなきがら(?)を回収したり避難誘導をしたりして、二人に任せるように動いた。
「なんか、逃げるタイミングを逃してしまったような」
 頬を掻いて呆れてはいるが、恐れている様子はない。紫桜は今までもっと恐ろしい経験をしてきたのだ。これくらい平気だ…たぶん。
「逃げるつもりか? この状況で? 除夜の鐘を年明けまでに鳴らし終えねば、年は越せん!!」
「そのつもりはありませんよ、いってみただけです」
 気合の入る風閂の隣に並び、刀を出現させる紫桜。風閂も己の腰に下げている刀を抜いた。
「いざ…勝負!!」

≪ぶつかり合う、肉と肉≫
 風閂の言葉を合図に両者が動いた。カマの狙いは風閂だった。
「二人目ゲェェェッチュゥ!!」
 のっしのっしという歩きかたから、シュタタタッという軽い足取りに変わり、風閂に狙いを定めて攻め込む。
「む、できるっ!!」
 予想していなかった、すばやい動きに反応が遅れて抱きつかれた。
「はふぅ〜ん、厚い胸板にドキドキしちゃうわぁん」
「ええい、気色悪いわ!!」
「風閂さん!!」
 もがく風閂を助けようと動くと、目の前に女性のような自分と同じ背丈人物2人にさえぎられた。
「おねぇさまの邪魔はさせないわ…それにアタシは貴方のほうがタイプだもの」
 そういうとその人物はウィンクと投げキッスをした。
(ああ、この人もなんだ…)と思いつつも、説得を心みることにした。
 まだ話が通じそうだから、うん、たぶん。
「あのー、すみませんが一年の締めくくりであると同時に新年を迎える大事な行事ですし、退いてもらえませんか?」
「ノンノン、それは聞けないわぁ…大事な行事だというのに煩悩を払うって何事!!愛を冒涜するのと一緒よ」
 なびく金色の髪をふっと手で掻いて流す。動作が完璧に決まっているが、衣装は先の巨漢と同じボディコンスーツ。やはり、変な人だった。しかも、くねくねと怪しげな動きをしている。
「仕方ありませんね、斬ります!」
「さぁ、アタシの胸に飛びこんで!」
「それは遠慮しますっ!!」
 両手を広げるカマに対して横面からのスウェー攻撃を仕掛ける紫桜。
刀のみねで胴体を叩く、生々しい骨の砕ける音と肉を押し込む感触を腕に感じつつ、なぎ払った。さすがの一撃にカマ一人絶命…と思われたがくねくねとして立ち上がる。
「ぁぁん、はげしい愛、でもそれが素敵っ!」
「……」
 かつて、戦ってきた相手でここまで変なのがいたのだろうか…、さすがに慣れているといっても少し退いた。くねくねした男はその隙を逃さない。だだっと、駆け寄りはぐをする。腰を押し付けながら体中を蛇のような手で撫で回す
「華奢っぽく見えても肉付きがいいわぁ、ほんとに惚れちゃいそ」
 キスまでしてくる始末、鳥肌と戦慄が体と精神を襲ってくる。
「い、い、い、いい加減にしてくださいっ!」
 全力の気を込めた掌底が、カマの鳩尾を穿ち、突き飛ばした。3mほどとび、石畳の上に顔から突っ込んだ。今度こそ反応はない。
「まさか、あのお方達がやられるなんて!」
「ど、どうしましょう?」
「何よ、不意打ちでやられたのよ、数でかかれば…」
 3人ほど集まってきた同じ格好をしたカマたち。言葉にはやや自信が無い。
「数でかかってきても、無駄になるぞ」
 ビュゥンと風閂が巨漢のカマを投げ飛ばし、それが紫桜と、カマ3人組が対峙している間を通りすぎていった。
「まったく、あれほどの肉体。もっとまともな方向に使えば…」
 パンパンと手を払いつつ、風閂が紫桜と並んだ。これで、2対3
数で行けば勝手はいるが、この二人に勝てる気がしない。
 しばしの沈黙。
「きょ、今日はこのくらいで簡便してあげるわ!逃げるわよ、貴方達っ」
「え、で、でも…2人のおねーさまが…」
「あいつらにやられたいのっ!?体はオカマの命なのよっ!」
  かくして、残り3人のカマと共に、大晦日の騒動は去ったのであった…。

≪鐘と共に去りぬ≫
ボォーンボォーン
「年の最後はこれをしないと締まらないな」
 憧れの除夜の鐘を叩き満足のようである。境内のほうにも徐々に人が戻ってきて、賑わいを増していく。
 この一年はいろいろとあった。走馬灯のように鐘を叩くたびに思い出されては消えていく。いくらか叩いていると、小さな子供が後ろで待っていた。
「おじちゃん、代わって」
「そうか、背が届かないから俺が抱き上げてやろう」
 しゃがみこみ、男の子を抱き上げて鐘をつかせる。
(来年は主とともに着てみたいな)
 鐘の音と共に年は過ぎ去っていく。来年への祈願と今年の締めくくりを刻みつつ、確実に。

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┏┫■■■■■■■■■登場人物表■■■■■■■■■┣┓
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┗━┛★PCあけましておめでとうノベル2006★┗━┛
PC名(PCID)   / 年齢 / 性別 / 職業など
風閂(w3g785ouma)/ 30歳 / 男 /レプリカント
by『神魔創世記 アクスディアEXceed』
櫻・紫桜(5453) / 15歳 / 男 /高校生
by『東京怪談 SECOND REVOLUTION』


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■         ライター通信          ■
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 どうもはじめまして、橘真斗です。
 発注ありがとうございました。初めての受注作品でして、イロイロ気合入れさせてもらいました。
 風閂さんは動かしやすかったです(ちょっと違うといわれるかもしれませんが(汗))
今回は人数が少なかったのでこんな展開にしてみました。せっかくですし、いろいろと絡んでみたりと…
アクションシーンは難しいと思いつつもがんばってみました。
 もし、次回もあればヨロシクお願いします…逃げたカマはまた次のイベントにでも捕まえてください(え)
PCあけましておめでとうノベル・2006 -
橘真斗 クリエイターズルームへ
神魔創世記 アクスディアEXceed
2006年01月05日

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