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『■ねこうさぎを探せ!クリスマス大作戦■ 』
シオン・レ・ハイ3356

 その日、草間興信所には、珍しい(?)人物が訪れていた。
「……はぁ」
 しかしながら、ため息ばかりついている。
 暫くは我慢していた武彦だが、ややもすると煙草を乱暴に灰皿に押しつけた。
「ええい、ため息これで36回だ! いい加減何を依頼しにきたんだか言え!」
 せっかくのクリスマスに、と武彦はごちる。どうやら、なにやら予定があったようだ。ちらりとそんな武彦を見て、本日の依頼人である彼───盛岬りょう(さかさき りょう)は恨めしそうに切れ長の瞳を伏せた。
「いいなぁ……俺だって、らゆと最高のクリスマスの夜、クリスマスディナーの約束をしてたんだ。なのに急に誘拐されちまって」
「誘拐事件なのか?」
 一転して表情をひきしめる、武彦。りょうもまた、真剣な面差しで吸っていた煙草を灰皿に置く。
「ああ。それしか考えられない。らゆが俺以外の人間についてくなんて、そんなことはありえねぇからな」
「心当たりは?」
「それが、まるでないんだ。いつもどおりに腕に抱いていたらだな、急に飛び出していっちまったんだ。多分、ねこうさぎにしか分からない香りか何かに惹かれたんだと思う」
 らゆは砂糖控えめのお菓子に目がないからなぁとほざくりょうに、「お前」と武彦は待ったをかける。
「今、ねこうさぎ……とか言わなかったか」
「言ったがどうした」
「その、らゆとかいうのは……動物、か?」
「動物とか言うな! ちゃんと人化もするんだ、必要なときは!」
 必要なときって、どんなときなんだ。
 そう突っ込みたくなるのをこらえ、武彦は「出て行け」と言い掛けて、
「そういえばあの時、表のほうで妙な薬売りが来てたんだよな」
 とりょうがつぶやいたのを聞いて、かたまる。
 今度は、武彦が身を乗り出すほうだった。
「その薬売り、超美形のクセに曲者的笑顔で眼鏡をかけた、髪をリボンで一まとめにしたスーツ姿の長身男か!?」
「……詳しいな、お前。その通りだけど。知り合いか?」
「知り合いも何も、そんなヤツは世界に一人しかいない。またお前の仕業か英治郎ー!!」
 と、どこかにいるであろう生涯の宿敵、生野英治郎(しょうの えいじろう)に向けて武彦がほえたとき。
「およびですか?」
 例によって、いつからいたのか、どこから入ったのか、英治郎がにこにこ顔で現れた。
「あ、こいつだ! お前、らゆをどこにやった!」
「貴様はまたクリスマスに限って余計な依頼増やしやがって!」
 りょうと武彦と同時に詰め寄られても、英治郎の笑顔は変わらない。
「うーん、私はただ、親友のらゆちゃんにもきくのかなあ、と『うさぎまたたび』を空気にばら撒いてみただけですよ。見た目はただのにんじんを摩り下ろした粉なんですが、空気にばら撒くと空気中に溶け、そこらにいるうさぎ全部を呼び寄せるという。らゆちゃんもやっぱり飛んできたんですが、そのあとどこかのたい焼きやさんにつられて───今はどこに行ったのやら。もう『うさぎまたたび』はないですし」
 りょうが青ざめる。
「車にでもひかれたらどうしてくれる!」
 そして武彦に向き直る。さっきより数十倍も、いや数百倍も必死な形相で、ある意味ものすごくコワイ。
「頼む、らゆを探し出してくれ! 特大特性ケーキでも作れば、大好物のものも入れれば寄ってくるかもしれないし!」
「わ、わかった。わかったからその顔はよせ」
「この顔は元からだ!」
「いや、そーいう意味じゃなくて」
「ええと、あともうひとつ実験したんですよねえ」
 英治郎の言葉に、二人のやり取りが再び止まる。なんだ、今度は何をしたんだ。そんな表情の二人を楽しそうに見つめ、英治郎は言った。
「らゆちゃんと外見がそっくりなねこうさぎがいても、りょうさんがお分かりになるか試してみたくて、ですね。ネコとウサギが一時的に合体するものをここ一帯のネコさんやウサギさんに飲ませてありますので、らゆちゃんのような『ねこうさぎ』はたくさんいますからね?」
 というと、たくさんいるねこうさぎの中から、ホンモノの一匹を見つけ出せということか。
 昔に流行った、なんとかを探せ、という題名の絵本を思わず思い出してしまった、りょうと武彦である。



 そして、その日のうちに人材はあらゆるところから集められ。
 特大のケーキとプチケーキ作りのほか、りょうが持参したらゆの写真を元に、ねこうさぎ探しが始まったのだった。



■ねこうさぎ捜索隊■

「これがらゆの写真だ。かわいいだろ? かわいいと言え」
 焼き増ししたネコウサギ、らゆの写真を集まった全員に配りつつ、さり気なく脅迫する盛岬りょう。
「くっ苦しいって! ちょっとこの人どうにかしてよ生野さん!」
 真っ先に絡みやすいと判断されたかその標的になっている羽角悠宇(はすみ ゆう)、興信所内めいっぱい使ってケーキの材料やらを持ち込んでいる生野英治郎に助けを求めたが。
「悠宇、生野さんに助けを求めるのって無駄だと思うわ」
 初瀬日和(はつせ ひより)がもっともなことを言った。
 そんな時、皆でどこを探すか決め合っていたシュライン・エマが、ぽむ、とりょうの肩に手を置いた。
「りょうさん……いつか捕まらないでね……」
 真顔である。
 真顔のシュラインにそんなことを言われたら、さすがのりょうも青褪めた。
「でもらゆはホントにかわいいんだ!」
「確かにかわいいのです!」
 叫んだりょうに激しく同意したのは、写真を見てほのぼのとなっていたシオン・レ・ハイである。
「シオン、だっけ、でも自分が飼ってたウサギがいなくなってここに相談しにきて草間と頭突きしたんだろ?」
 シオンが「そうでした! ウサギさ〜ん!」と、再びおろおろしはじめるのを見て、武彦は、今鋭い突っ込みをしたラビウス・デッドリーフにお礼を言う。
「ありがとな、ラビ。お前にこんな治癒能力がなければ、俺の額にはまだこぶが残っていたとこだった」
「んなことはいいよ!」
 ラビウスは真っ赤になって慌てたように背を向ける。どうやらかなりの照れ屋のようだ。
「でもね実際、あれだけ激しく相談のためにスライディングしてこられちゃ、二人の額同じくらいこぶができてておかしくないと思うのに、シオンさんて頭、頑丈にできてるんだね〜」
 捕獲にはウサギの姿で! と、この世界にやってきて事情を聞いてすぐさま着替えのため別の部屋を借りていた、別世界に住んでいるプティーラ・ホワイトがようやく出てきた。
「あら、可愛いわね」
 |Д゚*) ………
 シュラインに続いて、その影から、こっそり(?)居たらしいかわうそ?が、バニーガール姿になったプティーラを見てぽっと頬を染める。
 しかしプティーラ、如何せん6歳である。頬を染めるのもアレだろう。
 そんな傍ら、ひとり、英治郎と奮闘(?)している由良皐月(ゆら さつき)の姿もあった。
「あああああまた! またか! どうしてこうこの男は他所様に迷惑をかけるのか!」
「由良さん、言っても無駄です、多分……」
 気の毒そうな日和は、ふと、皐月のお腹の部分がちょっと膨れ気味であることに気がついた。いつも妙なところ、妙な場面で妙なことに気がつく娘である。
「そ、そうね……落ち着け……落ち着くのよ私……とりあえずそのらゆちゃんとやらの特徴を確認して……」
 渡されていたまだ見ていなかったらゆの写真を見下ろした皐月、その手が止まった。その間に日和が、じぃっと、失礼にならない範囲で皐月のお腹の部分をみつめている。そんな彼女に、ようやくりょうの手から逃れてきた悠宇が気づいた。
「どうかしたか? 日和」
「ん? うん、えっと……」
 きょろきょろと見渡した日和は、シュラインが話すのにこの中では最適だと判断し、彼女の名を小さく呼ぶ。どうしたの?と近づいてきたところへ、ひそひそと耳打ちした。
「う、……なにこの可愛い特徴! それで街中にあんなにたくさん可愛い生物がいたの!?」
「やっぱり俺だけじゃなかったんだ、あれだけのネコウサギに遭遇したのって」
 思わず叫んだ皐月に、ほっとしたように駆け寄るラビウス。シオンも反応した。
「うう、そうなんです。たくさんのネコウサギさんがいたので、同じ真っ白ですし、ウサギさんがどこにいるのか見つけられずに相談にきたんです……ほんとに、ちょっと公園でうとうとしていた間にいなくなってしまって……でも、らゆさんを探していればウサギさんも見つかるかもしれませんよね」
「ちょうどいいから、シオンちゃんのウサギも探そうよ。特徴とかないの?」
 プティーラの発案に、シオンは全員に、自分のウサギの分かりやすい特徴として、「サンタの帽子をかぶっている」と言った。
「そうか、お前もそのウサギとクリスマスを一緒にする予定だったんだな。分かるぞその気持ち!」
 |Д゚) りょう 同士作ろうとしてるのか
「ん、いたのかナマモノ。可愛いものを愛でて何が悪いんだよ」
 |Д゚) ……ヘンタイ
「うるせぇ小麦色!」
 りょうの手が掴む寸前に、巧みに逃げるナマモノである。
 そこへ、なにやら皐月のもとへやってきたシュラインと日和。
「由良さん、もしかして……おめでた?」
 またもや真顔で尋ねたシュラインのその声に、全員の手がぴたりと止まった。
 いっせいに、皐月のほうに目が行く彼らである。
「えっ!? なんで!?」
 驚く皐月に、そのふくらんだお腹をつつましやかに指さす日和。
「そのおなか……です」
「ああ、バレちゃったか」
 頬を染める皐月に、興信所内がどよめく。
「おめでとう由良さん!」
 |Д゚;) まさか父親、生野じゃないだろうな
「そんなへまはしません」
 素直にお祝いを言うラビウス、いやな推測をするかわうそ?、さらりとにこやかに物凄いことを言う英治郎。
「その言い方じゃ、まるで由良さんに手出してるみたいだ」
 悠宇の言うことももっともである。
「んー、でもおめでたにしてはちょっとふくれぐあいがおかしくない?」
 冷静にプティーラが皐月のおなかをみる。そのプティーラの後ろで、速攻でお祝いの「赤ちゃんの靴下」を編み始めているシオンである。その手の速さといったら、ない。
「そうなのよね、私もそれが気になってるんだけど」
 と、シュラインが言った途端、
 ───そのおなかが、動いた。
「も、もう動いたぞ!」
「生まれますか!?」
「由良さん、しっかりしてくださいね! 今救急車を」
 焦るラビウスにシオン、日和。
 最初きょとんとしていた皐月だが、もそもそとおなかに手をやり、ぽん、と隠していた「それ」を観念して出したのであった。
「……ごめん、あんまり可愛かったものだから、一匹こっそり入れてきちゃって」
 それは、目をしばしばとしばたたく、一匹のネコウサギであった。
「りょうさん、この子はらゆちゃんじゃないの?」
 すかさずシュラインがたずねると、りょうはじーっとそのネコウサギを見て、かぶりを振った。そんな傍ら、英治郎に、
「しょ、生野サン。この子戻らナイようニ出来るカシラ? ……あ、いや待った。これ合体したのよね。駄目じゃない! 何考えてんのアンタ! あああでも可愛くて怒るに怒れない!」
 と、いつもとは明らかに違う感じの皐月。
「由良さんがいつもの由良さんじゃない」
「そりゃ、これだけ可愛いんだもの、気持ちは分からなくはないわ」
 ひそひそと、悠宇と日和。
「赤ちゃんの手編み靴下……いらないようですね……」
 何故か肩を落とす、シオン。
「うわあ、よくできてるね! これ、ちょっと改造してウサギさんからゆちゃんの靴下にしたら?」
 プティーラが感心したように言うと、シオンはすぐに立ち直った。嬉々としてすぐに改造してしまい、ひと騒動がやむと。
 ようやく、捜査の分担が決まった。
 以下に記してみよう。

▲公園:シュライン・エマ
▲商店街:羽角悠宇
▲ランダム:由良皐月&ラビウス・デッドリーフ&シオン・レ・ハイ
▲交番:プティーラ・ホワイト(公園と商店街も)
▲お留守番:初瀬日和(「せっかくのクリスマスにご一緒できないのは淋しいですが、探しに行って自分が迷子になったり風邪でもひいたらいけないので」というのが理由らしいが、どうやらそう言ったのは悠宇らしい)
▲同じく留守番:盛岬りょう&草間武彦&生野英治郎&かわうそ?

「決まったわね。じゃ、お留守番組にはらゆちゃんのおびき寄せケーキとか、無事捕獲したときのための下準備でもしていてもらえる?」
 分担を紙にまとめたシュライン。
「はい、にんじんどっさり入ったケーキを焼きます」
 日和はやる気満々である。
「りょうには、見つけたネコウサギがらゆ本人かどうか判別してもらわなくちゃいけないからな、留守番決定だ」
 武彦に言われ、
「俺だって探したいぞ畜生!」
 と、心配で仕方がないらしい、りょう。
 |Д゚) かわうそ?食べるだけ
「かわうそ?さん、食べるのはケーキだけにしてくださいね」
 かわうそ?の習性や性格を把握しているシオンが真面目に言うと、かわうそ?は。
 |Д゚) いや 食べられるものはみんな食べる うさぎとかねこうさぎとか
「可愛いものは食べちゃ駄目!」
 いつもとだいぶペースの違う皐月が、なだめつつかわうそ?のお腹を撫でる。
「あらふかふか」
 と、ご満悦なあたり、やはりいつもの皐月とどこか違う。
 |Д゚;) いきなり腹を撫でるな びっくりするだろ
「お前みたいなナマモノがいること自体、驚愕だ」
 もう半ばやけくそになっている武彦が、半眼で言う。
 かわうそ?がダイブして武彦の頭にかじりつくのを見ながら、手を振って「またあとでね」「日和、電話時々いれるからな」「私も捕獲が駄目だと思ったら留守番組に変更しますから」「いってくるな!」「がんばってくるからね♪」「あのたくさんのネコウサギちゃんのもとに!」いざいかん、とシュライン、悠宇、シオン、ラビウス、プティーラ、皐月は出て行った。



 公園で。

「おかしいわね」
 シュラインは、そこにいた人たちに聞き込みをしつつ、首を傾げていた。
 皆の話では、街中や道路にネコウサギが溢れかえっていたはずだ。
 それが今は、一匹も見当たらない。
「そういや、さっき土管の中でこんなもの、息子が見つけてきたよ」
 聞き込みの対象であったオバサンが、ひらりとメモらしきものを差し出す。
「甘い香りっていえば、このメモからするバニラのものくらいかねえ」
「? それ、頂いていってもいいですか?」
「ああ、いいよ。捨てようと思ってたとこだし」
 ありがとう、とメモを受け取り、開いてみる。

『場所A:
{ある}    {ない}
ごみ      前(まえ)
帰る(かえる) 行く(いく)
おい      めい
害(がい)   毒(どく)
肩(かた)   胸(むね)』

「……? 何かの暗号かしら」
 首をひねりつつ、メモに鼻を近づける。
 バニラエッセンスの香りが、した。



 商店街で。

 ともかく探す相手には好物についていく程度の知能はあるようだし、鯛焼きとか普通の兎や猫が食べない物が好きらしいし、商店街を中心に鯛焼きでも買ってうろうろ歩いてみるか。
 と考えていた悠宇は、適当なところで鯛焼きを買い、「砂糖控えめの菓子が好き」となればと、出没していそうな、ここらで一番美味しいと言われている有名な和菓子屋に立ち寄った。
「すみませーん、こんなネコウサギ見ませんでした?」
 和菓子屋の主人に、らゆの写真を見せる。
「ん? いや、私は見なかったけどもねえ」
 老主人が、かぶりを振る。
「そういや、関係ないかもしれないけども。動物の白い毛を服にたくさんつけた、胡散臭い男が和菓子を大量に買ってったねぇ。店の前にどでかいトラック停めて、運送会社の人かねえ」
「白い毛……?」
 ネコウサギは分からないが、ネコの毛はよく落ちて服にくっつく。
 礼を言って店を出たとき、悠宇は、風に吹かれていきそうな白い紙を見つけ、急いで取り上げた。
「なんだ、これ?」
 まるで、急いで書いたようなそのメモを、悠宇は見つめる。

『場所B:カレーの○、カレーの○ー』

 カレーって、なんだ?
 メモからはかすかに、レモンの香り。レモン……レモンパイ、レモンケーキ?
 甘さ控えめといえば、そんなところだろう……か。



 工事現場で。

「ああ、このネコウサギなら俺たちが仕事する前から大量にいて、仕事できないで困ってたんだよ」
 皐月がらゆの写真を見せると、工事をしていた者から反応があった。
「そっ、その中にサンタの帽子をかぶったウサギさんはっ……!?」
 シオンの悲痛な叫びに、意外にも「そんなやつもいたなあ、一匹だけだけど。そいつは普通のウサギっぽかったな、顔つきが。でも一匹のねこみたいなうさぎみたいなのと仲良くしてたぞ」とこちらも反応が。
「シオン、よかったな! きっとその仲良くなってたネコウサギってらゆのことだぞ!」
 ラビウスに励まされ、早くも力が抜けそうなシオンだったが。
「でも、あれだけいたネコウサギが、今は一匹もいないのはどうして?」
 皐月の疑問に、工事の者がセメントの袋を運びつつ答えた。
「ああ、なんか運送会社みたいなどでかいトラック運転してきた男がいてさ。そいつが全部、ネコウサギ?だか引き取ってくれるっていうし、このまんまじゃ仕事にならないからタダで引き取ってもらったんだ。おかげで今こうして俺達は仕事ができてるってワケ」
 思わず三人は、顔を見合わせる。
「そういや、そのサンタ帽のウサギと仲良くしてたネコウサギが、何か与えられてたな。ありゃオレンジケーキか? わかんねえけど、そいつが連れて行かれざま、こんなもの落としてったぜ。後でゴミと一緒に捨てようと思ってたんだが」
 工事のニーチャンひとりから、メモをひときれもらう三人。
 わずかにオレンジの香りのするそれを開いてみると。

『場所C:静かな竹は、内緒話が大好き! だからいつも、小声で。小声でね。そうしたら、静かな竹ははえてくるよ。でも、はえてきたら、竹は切らなくちゃだめだよ』

「なんでしょう、これ……何かのクイズでしょうか」
「でも、聞いてる限りじゃ誘拐されたっぽいわよ?」
「もし誘拐の途中だとしたら、これって、らゆなりのメッセージなんじゃないか?」
 三人はそのあとファミリーレストランや学校にも寄ってみたが、これといって足取りはつかめなかった。



 交番で。

 プティーラがバニーガール姿で、何故かいなくなっているたくさんのネコウサギはどこにいったのだろうと考えながら交番に行くと。
「すみませーん、こんなネコウサギさん探してるんですけど」
 写真を見せる……しかしそこは、無人だった。
 けれど、大量の白い毛が落ちている。
「ネコウサギの毛、かな?」
 念のため、取れる分だけ少しだけ、採取する。
 集めていると、毛玉の中からひらりと白い紙が出てきた。何かのメモのようである。
「? チョコの香りがする……」
 慎重に開いてみると。

『場所D:「てん」を抜かした、つるつるお料理』

 なんのことだろう?
 しかしこれは。
「なんか、におうなあ」
 チョコの香りではなく、プティーラは交番の中を更に見渡した。



■ねこうさぎ達を救出せよ−クリスマス大作戦!−■

 捜索班が、合計4枚のメモと共に興信所に戻ってきた。
 シュラインが武彦にメモのことを連絡し、同じ頃、悠宇に携帯でメモのことを話されていた日和が武彦に報告し、一度全員そのメモを照らし合わせてみよう、ということになったのだ。
 興信所内には、様々なケーキが、あとは焼くだけになっていたのだが───それらは英治郎やりょうに任せ、シュラインと皐月、日和の淹れたお茶とお茶菓子をつまみながらメモの意味を考えてみることにした。
「てんを抜かしたつるつるお料理は、ところてんだろ?」
「プーもそう思う。で、てんを抜かすんだから……ところ?」
 ラビウスとプティーラがまず「場所D」のメモを解いた。
「場所Bのものは……ぐ、とる、じゃないでしょうか」
 二つ目の暗号(クイズ?)をシオンが解く。
「で、場所Aのは『いき』だと思うんだけど……違うかなあ」
 些か自信なさそうなプティーラに、シュラインが同意した。
「私も『いき』だと思うわ。ほら、左側の文字にはあって、右側の文字には単語にならない文字だから」
「いきごみとか、いきかえるとか、言いますもんね」
 日和が、感心したようにうなずく。
「問題は場所Cだけど……」
 うなる悠宇だが、こちらもシュラインがあっさりと解いた。
「内緒話が好き、そして竹がはえてきたらきらなくちゃだめ、っていうのなら。内緒話って、しって言いながらするし、しと竹のつくものっていったら、シイタケよね? で、竹は切るんだから……『しい』でしょうね」
「で、ABCDの順に単純に並べると……」
 皐月が、それぞれの答えを試しに紙に書いてみる。
 次の単語が出来上がった。

 『いきぐるしいところ』

「……なあ、盛岬さん。そのらゆってずいぶん頭がいいとは思うけど、余裕が見られる感じがするのは俺だけ?」
 悠宇が聞いちゃいけないかもしれないことを聞く。
 だがりょうは、胸を張って言い切った。
「らゆは頭がいいんだ、度胸もある、多分。これくらいのことは……って、さっきから聞いてるとそのトラックの男に全部のネコウサギが誘拐されたんじゃねぇのか?」
 自慢してどうすんだそんなもの、と武彦がぼやきつつシュラインの淹れてくれたコーヒーを飲むが、他全員の視線は自然と英治郎に集まった。
 かわうそ?が見守る中、鼻唄を唄いながら特大ケーキが焼きあがるのを、どうやって持ち込んだのかこれまた特大オーブンで焼きあがるのを待っていた英治郎、その視線の意図に気づいてにっこり。
「いやだなあ、私は誘拐犯の真似事をする方とはお友達でもお知り合いでもありませんよ。しかも誘拐するのなら、誰かと組んだりなんてしません、一人ですることに醍醐味があるんですから」
「……そうよね、生野さんはそういう人だったわ」
「だよな、楽しいことは独り占めのひとだもんな」
「誘拐が楽しいことかは、違うと思うんですけど……生野さん絡みじゃないみたいですね」
 妙に納得する、英治郎とはこのメンバーの中では特に親しいシュラインと悠宇、日和。
「だとしたら、その男の狙いってなんでしょう? ねこうさぎさんをそんなに大量に集めて、サーカスでもするのでしょうか」
 シオンが、内心はらはらと自分のウサギさんの行方を心配しつつ、いつもなら喜んでいただくお茶やお茶菓子にもマイお箸をつけられないでいる。
「こういう場合は、単純に考えるといいと思うぞ。俺、ねこうさぎっていうなら弱そうだし、野良犬とかに怪我させられてそうだから、そしたら怪我治してやるつもりでいたけど……」
 ラビウスは、ちらりと皐月が未だ抱っこしていたねこうさぎを見つめる。
「結局、この子だけが助かったひとりってわけか」
 仲間とはぐれちゃったのねとどこかやはりいつもと違う眼差しで、そのねこうさぎの頭を撫でる皐月。
 プティーラが、考える。
「単純に? だと、こんな感じかな。毛がいっぱい落ちてた交番のおまわりさんて、いつも胡散臭そうだったって証言が、毛を拾ってるときにたくさん得られたんだけどね。
 いなくなったおまわりさん。和菓子屋さんでたくさんの和菓子を買い込んでった不審な男。ネコウサギを一匹残らず連れてったっていう工事現場の人たちの証言。結果、皐月ちゃんが思わずもってきちゃった一匹のこしていなくなった、ネコウサギ」
「ネコウサギって、珍しいものだと思うから……売り飛ばす気かしら」
 シュラインのぽつりと言った言葉も恐ろしかったが、
「男が何者かによっちゃ、食べる予定なのかもしれないぞ」
 青褪めつつ推測してしまう、ラビウスの言葉も恐ろしい。
「私の……私のウサギさんもいるんですっ……ああっ」
 さめざめと泣き始めたシオンに、「大丈夫ですよ」と慰める日和。
「ともかく、らゆちゃんがせっかくヘルプメッセージを残してってくれたんだから、息苦しいところっての推理してみようぜ」
 前向きな悠宇である。
 そういえば、と、りょうが思い出したように言った。
「らゆはたまに、この姿のときに遊んでて、よく袋の中に入っちまって、息苦しいよ助けてって言ってたことがある」
 |Д゚) ……らゆってばかなのか
「違う! お茶目なんだ! 天然なだけなんだ!」
「りょうさん、ホントに警察に捕まりそうね……」
「だあっ! 俺はホントのこと言ってるだけだ!」
 シュラインの哀れむような瞳に、りょうは悶える。
「関係あるかわからんけど」
 ぼやーっとしていた武彦は、ちゃんと聞いていたらしい。いつの間にか起動していたパソコンの画面を見つつ、言った。
「ここに最新記事があるぞ。『ここ最近、ネコやウサギ等の小動物を狙う狼男が出現していて被害も多発している。警察も、狼男の姿を目撃した者が多いため、ようやく捜査に乗り出し始めた』」
「それね多分。てことは、らゆちゃんは袋の中につめられてるとか?」
 皐月の推測は、恐らく間違っていないように思われた。
「自力でなんとかできないのか? 普通の動物じゃないんなら特殊能力とか」
 ラビウスの問いに、
「だからあいつは天然なんだよ」
 と、うろうろと熊のようにうろつき始めるりょう。
 それから色々と話し合ったすえ、全員、推理の結果出された「胡散臭かった交番のおまわりさん」を犯人とある程度確定し、英治郎が名づけた「クリスマス大作戦」という計画を立てて───ねこうさぎとシオンのウサギの安全捕獲を遂行することにしたのだった。
「作戦てほどのことは、しなくてもよさそうだけどもね」
 実際数分で終わりそうだ、とシュラインはぽつりとつぶやいたものだが。



 夜の、7時。
 今しも高速道路に入ろうとしている、妖しげな、大きなトラックが一台。
 なにやら前方に人影が何人か見えた……と思ったとたん、

 キイィィィィィ───!!

 急に滑ったタイヤに、驚いてハンドルを切る運転席の人影。
 幸い、道路の脇の野原に突っ込んで、事故は避けられた。
「なんなんだ一体」
 舌打ちしつつ、何が起きたのか運転席から出てくる。
 見ると、何時の間にこんなものがまかれたのか───道路一面に、その部分だけに、大量の油があった。
「くだらねぇ悪戯しやがって、どこのガキだ」
 ぶつぶつ言いながら、男は運転席に戻ろうとし───そこに先客がいて、それが銀髪の少年であり、拳が繰り出されるのを見た。
「っとと」
 かろうじて後ろへ跳躍して避ける、恐るべき運動神経の持ち主。だった、が。
「はい、そこまでね」
 よく通る女の声がしたと同時に、あっという間に男は地面にしかけられてあった、粘着質の異様に強い「何か」に足をとられ、バランスを崩して転んだ。靴を脱いで逃げようとするが、転んだときに打った背中にも粘着質のものがはりついていて身動きがとれない。
 そこに警察がわらわらと出てきて、ライトを浴びた男は。
 文字通り、牙と耳が異様に発達した狼男で。
 その晩、お縄についたのだった。



 種を明かせば。
 英治郎から無線を渡されていたプティーラが、飛行能力で空を飛んで「それらしきトラック」を発見し、りょうの運転する車で、ここから一番近い高速道路や国道をいくつかはっていたシュラインたちがそちらへ向かった。
 近道を通って先回りをし、プティーラが警察にも連絡をとっている間に、
 日和とシオンが、用意していた大量の油をトラックめがけてぶちまけて。
 見事野原に突っ込んだところへ、待機していたラビウスと悠宇と皐月が同時に動いたのだ。
 運転席に座っている悠宇が男の気を引いている間に、ラビウスがトラックの荷台を皐月の鍵開けで開けてもらい、中にたくさんの袋につめられたかわいそうなねこうさぎ達を確認し。
 狙い通りに悠宇の拳から避けた狼男の着地地点に、以前英治郎が使ったトリモチを、シュラインが敷いた。
 結果、犯人である狼男逮捕につながったのである。



■Merry Cristmas To You !!■

 その後はというと、興信所内が壊れるかと思うほどの大クリスマスパーティーになった。
 もちろん、すぐに英治郎は解毒薬を空気中にばらまいてネコウサギたちを元通りにし(ただし、しっかりと、りょうがらゆを見分けてからだった)、ねことうさぎとに戻った彼らは飼い主のところにそれぞれ戻っていった。怪我をしているネコやウサギはラビウスの能力により治癒されたので、問題はないだろう。
 シオンが兎型のお菓子を飾ったり、チェリーに蜜を塗ってキラキラ宝石のように散りばめた特大ケーキやら、シュラインやシオンも手伝って急ぎ作ったクリスマス料理やら、たくさんの色々な小さなケーキが所狭しと並んでいる。
 シオンもサンタ帽子のウサギさんを無事に見つけ、日和たちが作った特大にんじんケーキを切り分けたものを食べているらゆを膝に乗っけているりょうと隣に座り語り合い、らゆとウサギも邂逅している。
 一通りクリスマスの遊びやらが終わり、料理も食べ終えると、プレゼント交換会となった。
「ええと、まずは私から武彦さんと零ちゃん、生野さんとお妹さんに」
 シュラインが、ごそごそと荷物を探る。その頃、らゆとりょうもなにやらプレゼントらしき箱を交換しあって幸せそうだった。
「武彦さんには色々今まで贈ってきたし、今年はちょっと変わった方向で」
 と、以前足の形を測ったことのある靴屋さんのオーダーメイドの靴、そして手編みのセーターをプレゼントした。まだくさっていた武彦だが、これには感動したようだ。
「あ……ありがとうな」
 そして武彦からも、用意していたらしい包みを彼女に渡す。───多分予定とは、シュラインや零を招いて水入らず(?)のパーティーをするつもりだったのだろう、見え見えな彼に、仲間たちは思わず微笑む。
「零ちゃんはお友達とのクリスマスパーティーだったわよね、あとで帰ってきたら渡しましょ」
 その袋の中身は、気張ったところでも大丈夫な上品で質の良い、可愛らしいブラウス。そして手編みのカーディガンだったが、さぞかし零は喜ぶことだろう。
「え、私にもあるんですか? 嬉しいですねえ♪」
 と、素直に喜ぶ英治郎が箱を開けると、スーツ上からもきっと素敵に似合うに違いないと誰もが思う、シンプルで上品なラインの手縫いエプロン。ちなみに彼の妹、ユッケ・英実(−・ひでみ)ともおそろいらしい。
「私からも、生野さんへプレゼントがあるわ」
 にぃっこりと、皐月が包みを取り出す。
「由良さん、その笑みには何か裏があるような気がしてならないのですが」
 しかし微笑みつつ開く、英治郎。そこには、「薬剤と基礎」と書かれた本が一冊。実はこの本、ねこうさぎ捜索の際、抱っこしていったねこうさぎの可愛さに悶えつつ途中で買ってきたものだった。
「薬剤師とやらの基本を思い出してごらんなさい? ね? い・い・こ・だ・か・ら!」
 優しくドスの効いた声の皐月に、
「ありがとうございます、こんなに愛のこもったプレゼントをv」
 と、分かっているのか分かっていないのか、素直に喜ぶあたり、英治郎も相当意地が悪い。
 らゆのほうはというと、その間にこそこそとかわうそ?に近寄り、こちらもなにやらプレゼントを渡している。りょうが色めきたった。
「こら、らゆ! 妙なものには近づくなといってあるだろ?」
 |Д゚) りょう、やきもちいくない
「誰がやきもちだ!」
 |Д゚*) らゆ この手作りケーキ ウマー
 すると。
 らゆが初めて、「しゃべった」。
 (´∀` ) ウマー?
 プレゼント交換をくじで決めていた全員の手が、一瞬止まる。
 喋った。
 本当に喋れたのか、このねこうさぎ。
 (´∀` ) ? きゅー
「その謎顔文字はやめろ、らゆ……俺はなんでも赦すが」
 りょうは、再びらゆを抱き上げて何事もなかったかのようにケーキを食べさせはじめる。
「ぇ、えーと、俺は日和に用意してあったから先に渡すな」
「う、うん」
 動揺しながらも、内心らゆのことをちょっと可愛い、と思っている悠宇と日和である。悠宇から日和へのプレゼントはカシミヤのマフラーと手袋。日和から悠宇へのプレゼントは、こっそりと、手編みの手袋とマフラーだった。奇しくも同じ内容の二人である。
 あとは、くじの通りとなった。
 もっともシュラインは全員分のプレゼントを用意してきたようで、帽子やマフラー、手袋などの手編みものや、ケーキなどがランダムに全員にいきわたった。
「さすがシュラインだな」
 婚約者自慢をする武彦だが、すぐに全員からシュラインへのお礼の言葉で埋め尽くされてしまった。
「わあ美味しそう。このフルーツケーキ、自分が作るより美味しいかもしれないし、レシピもらっちゃっていいかなあ、日々勉強ってね」
 日和の手作りフルーツケーキがあたったのは、皐月だった。喜んでレシピを教える日和のかたわら、 悠宇が目を輝かせる。
「うさみみ帽子か? これ。ていうか手作りっぽいな。すげえ」
 内容よりも手作りというところに感動しているらしい。それはシオンからだった。しかし、これをかぶる自分の姿を想像すると、かたまってしまう悠宇。あとでさり気なく日和にかぶらせてみよう、などとひそかに楽しみに考えている。
「人間用のうさみみ帽子です。お気に召して頂ければ嬉しいです」
 あ、それとらゆさんにはこれを、と、りょうの目をかいくぐるようにさり気なく、包みを渡す。
 (´∀` ) うさぎさん用のうさみみぼうしなのv
「らゆにか? 悪ぃな」
 うさみみ帽子に早くも夢中ならゆのかわりに、りょうが礼を言う。
 そんなシオンには、料理の本があたった。しかも、それは。
「も、もしやこれは、貧乏からのしあがった大料理人が世の中に10冊しか出さなかったという、あの幻の本ではないですか!? それも、どんな食材からも美味しく豪華に見える料理のレシピも半分を占めているという貧乏人の憧れの!」
 あ、それは私、と、皐月が手を挙げた。
「生野さんに本買うとき、たまたま目についたから買ってきたの。誰も欲しくなかったら自分で使おうと思って。残ってたなんて奇跡でしょ?」
「嬉しいですっ!」
 むせび泣くシオン。
 そしてラビウスには、コーヒー豆のセットがあたった。イギリス生まれの彼には、嬉しかったようだ。
「手ぶらっていうのもあれだから、買ってきたんだけど……嫌いだったらごめん」
 悠宇からのプレゼントだ。もちろんラビウスは、
「すっごく嬉しいぞ! ありがとうな!」
 と、嬉しそうに笑った。
 プティーラには、英語版の小説があたった。
「英語版でよかったー、ドイツ語とかだったらぜったいよめなかったし」
 それなりに喜ばれたようだ。送り主は、ラビウスだった。彼がイギリス出身のうえ悪気はなかったのだから、英語版だったとしてもそれは当たり前のことなのだろう。
「コレ凄く面白かったんだ!」
 にこにこと、笑顔のラビウス。天使のような彼の微笑みに、プティーラも「ありがと」と微笑んだ。
 そして最後に、シュラインには……バニーガール衣装フルセットがあたった。
 一瞬、包みを開く手がとまったシュラインだが、
「あ、それプーからのプレゼントだよ! シュラインちゃんもプーと一緒に白銀のバニーガール姿で100%うさぎ気分でたのしも♪」
 と6歳の子供に言われては、にっこりと「ありがとう」と言うしかない。
 しかし、これを着る機会は……。
 |Д゚) シュライン、何かの依頼で潜入捜査とか使えそうだな
「あ、そうね」
 とナマモノの意見にうなずいてみたものの、バニーガール衣装フルセットが必要となる潜入捜査とは一体どんな依頼なのかとちらりと疑問に思う。
 最後に。
「さて、それでは私から皆さんにプレゼントですよ♪」
 英治郎が、全員分の包みを出してきた。武彦には、枕元においてきたのだという。いやだ、俺は絶対開けないぞ、という武彦と全員からの疑いの眼差しに、
「いやですねえ、ちゃんとした、ふつーの、手作りプレゼントですよv もし何か疑問や苦情などありましたら、こちらへどうぞ」
 と、なにやら名刺と共にひとりひとりにプレゼントを渡してゆく。

 シュラインには、トナカイの抱き枕。
 日和には、星座模様の置きランプ。
 悠宇には、ツリー型目覚まし時計。
 皐月には、あったか万能手袋。
 ラビウスには、簡単お化粧セット。
 シオンには、クリスマス曲ランダムオルゴール。
 プティーラには、キャンドルサービス風お風呂セット。

 以上のものは、あらかじめ英治郎が用意していた箱の中に入った数字の書いてある紙を全員が引き、番号にあった包みのものを受け取った結果だった。

 こうして、2005年のクリスマスイヴは、つつがなく終わった。
 ───かのように、みえた……が。

 後日、やはりというか。
 英治郎からのプレゼントでそれぞれに様々な「効果」が現れ───苦情を言いに、名刺に書かれた場所へ行くと。

 桜町小麦村24−12−2005番地

 そこには、
 にゃあにゃあ、と鳴く可愛い仔猫たちが暮らしていたのだった。


《完》
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ 
 登場人物(この物語に登場した人物の一覧)
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0086/シュライン・エマ (しゅらいん・えま)/女性/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
3524/初瀬・日和 (はつせ・ひより)/女性/16歳/高校生
3525/羽角・悠宇 (はすみ・ゆう)/男性/16歳/高校生
5696/由良・皐月 (ゆら・さつき)/女性/24歳/家事手伝
5578/ラビウス・デッドリーフ (らびうす・でっどりーふ)/男性/14歳/召喚士/留学生
3356/シオン・レ・ハイ (しおん・れ・はい)/男性/42歳/びんぼーにん+高校生?+α
0026/プティーラ・ホワイト (ぷてぃーら・ほわいと)/女性/6歳/ エスパー
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■         ライター通信          ■
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こんにちは、東圭真喜愛(とうこ まきと)です。
今回、ライターとしてこの物語を書かせていただきました。また、ゆっくりと自分のペースで(皆様に御迷惑のかからない程度に)活動をしていこうと思いますので、長い目で見てやってくださると嬉しいです。また、仕事状況や近況等たまにBBS等に書いたりしていますので、OMC用のHPがこちらからリンクされてもいますので、お暇がありましたら一度覗いてやってくださいねv大したものがあるわけでもないのですが;(笑)

さて今回ですが、今年は東京怪談でこれが二つ目の、そして受難シリーズ番外編クリスマスノベルとなりました。
なんだか無駄なところで文字数多すぎ、というような場所もあったかと思いますが、流れをそのまま書いていたらこのようになってしまい……; プレイングを充分に生かせなかった方もそうでない方も、ご不満な点がありましたらどんどん仰ってくださいね。らゆのトレードマークの文字があんなんですみません(爆)。そしてクイズを答えてくださった方も、答えようとして頑張ってくださった方もありがとうございます!
ラスト、それぞれのクリスマスプレゼントを実際にアイテムにできればよかったのですが、このクリスマスイベントのノベルでは対応していなかったため、できませんでした。ので、ノベルのみだけですが、お楽しみいただければと思います。
また、英治郎からの問題のプレゼント、は……やはり、というオチでしたが、どんな「効果」だったのかは皆様のご想像に、今回はお任せします(笑)。
今回は、全PC様、統一ノベルとさせて頂きました。

■シュライン・エマ様:いつもご参加、有り難うございますv クイズを全部解いてくださいまして、おかげで無事にらゆ救出にたどり着くことができました! そして皆様にだけでなく生野兄妹にまでプレゼントを頂いてしまって……ありがとうございます。なのに、生野氏からは相変わらず妙なものですみません;今年のクリスマスは如何でしたでしょうか。
■初瀬・日和様:いつもご参加、有り難うございますv ところどころ、使いたい台詞を使いこなせなくてもったいなく思っています;そのかわりというか、東圭が勝手に作ってしまった天然部分もありますが……お叱り覚悟です、すみません;ラストはしっかりと「クリスマス大作戦」に参加していただけて、嬉しく思っていますv
■羽角・悠宇様:いつもご参加、有り難うございますv 鯛焼きを買う部分でシチュエーションがあったのですが、結局使わずに終わりまして、申し訳ないです;狼男捕獲(?)の際には問答無用で「悪者」だと分かっていたからこそ、当たらずとも殴っていただいたのですが、如何でしたでしょうか。
■由良・皐月様:いつもご参加、有り難うございますv 今回のプレイングはとてもいい意味で皐月さんらしくなく、楽しんで書かせていただきました。ちょっと弾けすぎかなとも思いましたが……す、すみません;皆様へのプレゼント、勝手に作ってしまいましたがよろしかったでしょうか;今年のクリスマス、生野氏からもらった手袋にはなんの効果があったのでしょう。東圭自身も想像つきませんが、今年のクリスマスは如何でしたでしょうか。
■ラビウス・デッドリーフ様:初のご参加、有り難うございますv とても可愛らしい(と言うとPC様に怒られてしまうでしょうけれど(笑))PCさんで、どこにどんな風にしてそれを盛り込もうかと考えておりましたが、なかなか生かせなかったかもしれません;治癒していただいた場面でも能力の細かい描写ができず、自分の筆力不足をのろっております、うう;実は今回の犯人である男が「狼男」なのは、「犬に怪我させられているかもしれない」ということから連想したのはここだけの話です(笑)
■シオン・レ・ハイ様:いつもご参加、有り難うございますv ウサギさんが行方不明に……という出だしからはとてもよかったと思います。というか、間違いなくそのウサギさん、生野氏の使った『うさぎまたたび』をかいでしまったのだと思われるのですが、真相はどうだったのでしょう(爆)。結果、らゆと仲良くなっていただきましたが、ウサギさんの心情も知りたいところです(笑)。今年のクリスマス、如何でしたでしょうか。
■プティーラ・ホワイト様:いつもご参加、有り難うございますv 今回はどの世界からもお越しいただけるという設定でしたので、遠いところから本当にありがとうございますvしかもバニーガール姿なのですから、相当可愛かったのでは、と思います(笑)。交番に目をつけていただいたのは、とてもありがたかったです。胡散臭いおまわりさん、というのが犯人像として頭の隅にありましたので、生かすことができました。今年のクリスマス、如何でしたか?

「夢」と「命」、そして「愛情」はわたしの全ての作品のテーマと言っても過言ではありません。今回は主に「夢」というか、ひとときの「和み」(もっと望むならば今回は笑いも)を草間武彦氏、そしてご協力いただきましたNPCの盛岬りょう氏、かわうそ?氏にも提供して頂きまして、皆様にも彼らにもとても感謝しております(笑)。
次回受難シリーズは今現在受注しているものを納品し終えましたら、元旦のお話になると思います。サンプルは公開してしまうかもしれませんが、窓開けは今現在の受難納品までしばらくお待ちくださいねv

なにはともあれ、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
これからも魂を込めて頑張って書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します<(_ _)>

それでは☆
2005/12/06 Makito Touko
クリスマス・聖なる夜の物語2005 -
東圭真喜愛 クリエイターズルームへ
東京怪談
2005年12月06日

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