▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『『アフロバルカンよ、永遠に』 』
本郷・源1108

「……はあはあ」
 闇の中に荒い息づかいだけが響く。
 アフロバルカン隊長・本郷源と、ツヤサラ団総帥・嬉璃の死闘は三日三晩続いた。嬉璃に駆り出されたあやかし荘の住民は――源と嬉璃の戦いに疲れ果てて――全員累々の屍となって倒れている。
 あやかし荘の建物もあいつぐ戦いから見るも無惨な姿に変わり果てている。脇には、激闘の果て破壊されたアフロロボの姿もある。
 源も嬉璃も体中がぼろぼろであり、いつ倒れてもおかしくない状況にあった。けれど、倒れるわけにはいかない。目の前の強敵が倒れるまでは決して倒れるわけにはいかなかった。
「源! おぬしの懐古趣味は時代遅れぢゃとなぜわからんのぢゃ」
「嬉璃殿こそツヤサラなどという流行ばかり追いかけばかりおるなんて。それでも座敷童としての意地はないのか!?」
 もはや源と嬉璃の戦いは、単にアフロヘアとツヤサラヘアのどちらが上かを決めるための戦いなどではない。おたがいの生き様をかけるものであった。
「アフロヘアなんぞを愛しておったら、時代から取り残されるだけぢゃ」
「アフロには日本人の心意気が詰まっておる。ツヤサラのような舶来品なんぞに放逐されていったら、いつかあのすばらしい活気に満ちた日本がなくなるんじゃ」
 アフロヘアも舶来品じゃないのか、というまわりの突っ込みにも耳を貸さない。
「……源。古いものは捨て去られるだけぢゃ」
「嬉璃殿。だからこそ、こんな冷たい日本ができあがったんじゃぞ」
 源のアフロソードと、嬉璃の爪が闇で火花を散らす。
「今こそあの美しい日本を取り戻すべきなんじゃ」
「いつまでも古いものにしがみついおったらひとりになるだけぢゃ」
 嬉璃の放った火炎を、源はアフロソードから放った波動で受けとめる。
「源。わしはおぬしに小学生らしい心を取り戻してほしいとなぜわからんのぢゃ」
「嬉璃殿。わしこそ座敷童の嬉璃殿に日本の心意気を取り戻してほしいんじゃ」
 決め手にかけるまま、一進一退の攻防が続く。
 もはや嬉璃の霊力も源のエネルギーも限界に近づこうとしていた。
 どっちでもいいからはやくやめてほしい、というあやかし荘の住民の願いとは裏腹に、ふたりはますます盛り上がっていく。
「源! そんな分からず屋には引導を渡してくれるわ!」
 嬉璃は最後の力を振り絞って、火球を次々と吐き出した。
 火球は紅蓮の炎を巻き起こして、源に襲いかかる。
 だが、源は決して逃げようとはしなかった。
「ばかな!? なぜ逃げない!?」
「嬉璃殿! わしは命を懸けてもおぬしに日本の心意気を取り戻してみせる!」
 源は自分のアフロソードと、アフロブルーとイエローの武器を合体させてバズーカへと変えた。
「アフロキャノン! セット!」
 源はアフロブルーとイエローと共にポーズを決めると、こちらに向かって来る火球に狙いを定めた。
「ファイア!!」
 アフロキャノンから発射された波動砲は嬉璃が放った火球にぶつかった。
「うわあああっ!」
 すさまじい爆風が巻き起こり、源も嬉璃も吹き飛ばされて壁にたたきつけられた。
 けれども、嬉璃も源もふらふらになりながら立ち上がっていく。
「やはり源ぢゃ。わしが認める童だけはある。ぢゃが……」
 突如、地面から真っ白い光がほとばしり、嬉璃の体が巨大化していく。
「源。おぬしはよくやったが、所詮人間の子供ぢゃ。怪異のわしを倒すことはできん」
「それはどうじゃな」
「強がりはよせ。おぬしのアフロロボはもう壊れたんぢゃぞ」
「こんなこともあろうかと用意しておったんじゃ。いでよ、スーパーアフロロボ!」
 源の叫びと共に、どこからともなくフルオーケストラの演奏が始まった。
「スーパーアフロロボぢゃとぉ!? また所有者の許可なくあやかし荘を改造したのか!?」
「ロボットものはシリーズの後半ではパワーアップするのがセオリーなんじゃ!」
 激怒している嬉璃を無視して、源は高々と三体のロボットを呼んだ。
「アフロイーグル・フォーミュラー!」
 地鳴りと共に粉塵が巻き上がり、あやかし荘の建物の一部が割れていく。
 あやかし荘の夢幻回廊は七色の光に包まれ、夢幻回廊の屋根には鉄の滑走路が走る。カタパルトのジェット噴射で漆黒に輝くアフロイーグルが高々と月夜に舞う。
「アフロパンサー・ジャスティス!」
 夢幻回廊の怪異が吐き出す真っ白い煙に包まれ、姿をあらわす漆黒の豹。異界からの扉が開き、回廊を猛々しい咆哮が震わせる。
 アフロパンサーは怪異たちを伴い、全長一キロの回廊をわずか数秒で駆けた。
「アフロシャーク・レジェンド!」
 天空を目指して熱湯が噴き上がる時報間欠泉。
 その量は時報のときに噴き出す量とは比べ物にならない。海が目の前にあらわれたかのようだ。その海の中を自由に泳ぎ回る黒い鮫。
 露天風呂を浴びていたあやかし荘の住民はみんな押し流されていた。
「合体! スーパーアフロロボ!」
 三体のロボットはあやかし荘からあふれる闇をまとい、一体のロボットに変形した。源はアフロロボのひたいから発射された光を浴びてコクピットに入っていった。
 全長二十メートルはあろうかという漆黒の機体は月夜を浴びて雄々しく輝く。なによりも、アフロヘアの一部が金色に輝いていることが特徴だった。
「うぬぬぬ。わしですらほとんど忘れている設定なんぞ使いおって!」
「さあ、今度こそ決着をつけようぞ!」
「源! もうこれで終わりぢゃ。ただの小学生に戻れ!」
 嬉璃の体にあやかし荘に住む怪異たちの霊力が結集していく。
「色即是空冥界波!!」
 嬉璃が放った真っ黒い炎がスーパーアフロロボに向かっていく。
「嬉璃殿! おぬしこそ日本の美しい座敷童に戻れ!」
 スーパーアフロロボが高々と剣を掲げると、街中のネオンの光が集まる。町全体が目を覚ましたように、ジンギスカンなど七十年代から九十年代に流れていたディスコ音楽が流れ出す。
 スーパーアフロロボは音楽に乗ってダンスをくり広げると、左手を腰に当て、右手を高々と天空を突き刺した後、
「至高秘技サタデーナイトフィーバー斬りぃぃ!!」
 一刀両断に剣を振り下ろした。
 月がミラーボールと化して嬉璃の放った真っ黒い炎とぶつかる。
 あやかし荘を中心として半径五百メートルほどが橙色の光の中に消えていった。

 白々と夜が明けたとき、ふたりの少女は焼け野原に大の字になって倒れていた。
 彼女たちのまわりにはぺんぺん草一本も生えていないような焼け野原の景色。
「源。おぬしなかなかやるな。わしの負けぢゃ」
「嬉璃殿のこそ、なかなかの腕前。わしも感服した」
 ふたりの顔に全力を出し切ったものだけが見せる最高の笑顔があった。
「源。これからもわしらは大切なライバルぢゃ」
「もちろんじゃ。強敵と書いて友と読むじゃな」
 互いに顔を見合わせて声をあげて笑う。
 輝く朝陽の中、ふたりの少女はがっちり手を握り合ったのだった。

 この後、ふたりは管理人さんからさんざん怒られて、あやかし荘をふたりだけで建て直すことになる。
 このふたりの戦いは、あやかし荘三大悲劇のひとつとして後生に永遠に語り継がれるのだった。

***あとがき***
 ご依頼ありがとうございました。
 前回は字数の関係からご要望にお応えできず、申し訳ありませんでした。
 今回もう一度ご依頼いただきましたこと、とても感謝しております。
 今後も引き続きよろしくお願い申し上げます。
PCシチュエーションノベル(シングル) -
大河渡 クリエイターズルームへ
東京怪談
2005年11月30日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.