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『〜何処までも続く道〜 』
御崎・綾香5124)&和泉・大和(5123)

 学園祭当日…………学園の出入り口からズラッと模擬店が並び、あちこちから客引きの声が上がっていた。この日の学園は、外からのお客を自由に出入りさせているため、珍しさから大勢の人々で賑わっている。
 そのお客達を沢山自分達の店に入れるため、生徒達は元気に、愛想良く声を上げている。
 自由な校風なこの高校では、公には明かされていないが、模擬店などで得られた利潤の使い方はそれぞれの店の者達で自由に使うことが出来るようになっている。そのためか、クラスや部活の学園祭での意気込みが違う。打ち上げパーティーを豪華にするため、躍起になって盛り上げていた。
 …………ここもその一つ。大きな体育館を貸しきりにし、何百席もの客席を並べ、ステージの上に校内きっての美少女を並べて盛り上げていた。

「ふっふっふっふ………どうだ大和!この俺の目論見通り客席は満席!!打ち上げはウッハウハだぜ!」
「まぁ、立ち見席まで出て来ている辺り感服するんだが、とりあえず手を動かせ。客を待たせるな」

 両手を広げて感極まったように高笑を上げる悪友に蹴りを入れ、和泉 大和は、体育館内に設けられた出店で忙しく働いていた。売る物は飲料水と食べ物の類だ。大和達のクラスはミスコンをしているのだが、途中で空腹になった客をターゲットに、体育館で出店を設けたのだった。
 このミスコン、体育館の入り口に設けられた関所から入ることで五百円も支払うことになる。一回でも出たら再び入場料を支払わなければいけないため、午前中から来ていた客は、自然と体育館の中に設けられた出店に足を運んでいた。
 …………そこで売られている物の値段が、他の出店の二割り増しで売られていることに気が付いた者は、一体何人いたのだろうか?

「ある意味悪徳商売だな」
「何を言う!映画館だの何だの、市場よりも何割か割高になっているのは当たり前!!しかも入場料が五百円もするのだ、ミスコンの可愛い少女達を見逃して、外の安い店で買ってこようなどとは思うまい!!」
「………………」

 呆れて物も言えない大和。内心「こいつこんな奴だったか?」などと呟きながら、テキパキとお客を捌いていく。実に手際が良い。こんな時で、御崎神社で手伝った祭の経験が役立っていた。
 そろそろ昼のピークを過ぎてきたか………という頃、本日197人目のお客にジュースを手渡したとき、大和は隣の悪友に声を掛けられた。

「おい、もうそろそろ交替の時間だぞ。どうだね大和君。この俺と一緒にナンパ合戦でも……」
「悪いな。これから用事があるんだ」
「あっそ。ふ〜ん愛しい彼女と一緒にいるんだ?」
「怒って良いか?」
「いや良いんだ。てか一緒にいて貰わないと、結構困る」
「?」
「お〜い!交替に来てやったぞ」
「おっと時間だ!交代要員も来たんだし、サッサと行ってこい!」
「あ、ああ」

 なぜだか大和を急かす悪友。怪訝に思いながらも、元より急ぐつもりだった大和は、深く追及することなく“関係者以外立ち入り禁止”の区域へと入り、ステージ裏へと消えていった。






 ステージ裏にある楽屋では、出番を終えた御崎 綾香が、ミスコンの結果発表を追えて着替えていた。審査のために(強制的に)着せられた衣装(どんなのかは言いたくない)を脱ぎ、表彰式に臨むための衣装を着こむ。使った衣装を仕舞い込んでいるちょうどその時、コンコンと、楽屋の扉をノックする音が響いた。

「綾香、いるか?」
「ああ大和か。入っ…………ちょ、ちょっと待て!」

 慌てて衣装を仕舞い、目立たない所に隠す。衣装の乱れを修正し、おかしいところがないのを確認してから咳払いし、外で待っている大和に声を掛けた。
 綾香の許しを得て、大和が中に入る。

「どうかしたのか?」
「いや………何でもない」

 ムッとしたように、気まずそうに顔を背ける綾香。チラチラと大和の顔を見てから、意を決したように大和を見つめ、おもむろに詰め寄ってきた。

「大和。私は……おかしくなかったか?」
「おかしいって?」
「いや、だからその………観客席から見て、私は変な女に見られなかったか!?」

 真っ赤に赤面し、必死の様子で大和に訊いてくる。その様子を見て、大和は思わず苦笑してしまった。
 確かに、綾香がそういう風に不安になるのも解る。だってあの審査は………

「まぁ………巫女服に水着、最後の審査の衣装なんて…」
「言わないでくれ!」
(水着審査よりも恥ずかしかったのか………)

 バッと大和の口を塞ぎに掛かる綾香。言葉を止めて、それを躱す大和。
 つい先日、校内に二人の関係があること無いこと広がってからは吹っ切れたのか、段々と不自然さが無くなってきている。
 …………まぁ大抵の噂は、実際の二人の関係とあまり変わらないのだが………

「そう恥ずかしがるな。優勝したんだし」
「…………ここまでやって優勝出来なかったら、いくら何でも惨めだ」

 いつも通りに赤面しながら笑う綾香。一体ステージ上で何があったのか………それは綾香によって箝口令(口止め)が引かれたので、秘密である。
 ミスコンの表彰式準備の待ち時間を利用して小ライブが行われているらしく、音楽が流れてくる。僅かに聞こえてくる音楽と喧騒を聞きながら、二人の間ではのんびりした空気が流れていく………
 だがそれは、突然突入してきたクラスメイト達によって打ち砕かれた。

「予定通りここに残っていたわね綾香に和泉君。さぁ、もう逃げられないわよ」
「なに?」
「なんだ?」

 突然入ってきた女子に、二人とも混乱気味に答える。だがクラスメイトの女子はまったく容赦せず、数人がかりで大和を拘束し、綾香を取り押さえた。
 引き離される二人………

「うわっ!一体何を……」
「良いから!黙ってこっちへ来て!ちょっと脱がすだけだから!」
「大和に何をするんだ!ってちょっと、何で私の服を脱がしに掛かる!?」
「良いから良いから♪じゃ、そっちの方も頑張ってね〜」

 面白いぐらいに慌てる二人を見て笑いながら、クラスメイト達はそれぞれの着替えを開始した。





 大和は綾香と話していた部屋の隣の更衣室へと連れ込まれ、そこに待機していた男子達に問答無用で脱がされ、着替えさせられてしまった。押さえつけられてボサボサになった髪を直しながら、ニヤニヤと笑う男子達を見渡す。
 大和は、黒のタキシードに身を包み、正に……テレビなどで時々目にする、新郎その者の姿になっていた。
 クラスメイト達が何をしたいのかを察した大和は、肩を竦めながら問いかける。

「…………なぁ、この格好は……」
「説明するか?まぁ、しなくても分かってると思うんだが……」

 先程別れた悪友が、ニヤリと笑って大和の肩を叩いてきた。何となくこいつが主犯なのだと感じ、再び呆れた風に苦笑する大和。

「楽しそうだな」
「そりゃあな。てか、お前を思っての事じゃないからな。そこら辺を勘違いするなよ!」

 ビシッと大和に指を突きつけ、そう言い放ってから、お節介焼きの悪友は大和を部屋から追い出した。
 更衣室から出ると、隣の部屋の前に、綾香を押さえていた女子が立っていた。誰かが間違って入らないようにするための見張り役なのか……大和が出て来たのに気が付くと、楽しそうに話しかけてきた。

「むふふふふ〜、似合ってるよ和泉くん♪」
「………当人以外は、みんな知ってるんだな」
「うん♪まぁ、一部の狂信的なファンが抵抗してきたけど、大丈夫!今朝鎮圧したから」

 大和と綾香の知らない所で一体何が起こっていたのか………
 思わず突っ込みそうになったが、思い直し、言葉を呑み込んだ。
 人間、知らない方が幸せなこともある。

「もうちょっと待ってね。綾香の着替え、もうそろそろ終わると思うから」
「もう終わった………だけど、何でこんな事を?」

 衣装を替え、部屋から出て来た綾香は、大和と話していた女子生徒にそう言った。衣装はウエディングドレス………純白の質素な物で、ちゃんとベールまで付いている。
 元から綾香の素材が良いのもあるのだが、これはお世辞抜きに………
 綺麗だった。
 思わず見惚れていた二人だが、女子生徒はすぐに復活し、綾香に純粋な好意のみを描いた笑顔で答えた。

「だって、綾香が結婚する時って、絶対に神前婚でしょ?それだと綾香がドレス着られないからさ……ね?」
「それは………まぁ」
「だったら良いよね!ほらほら、もうみんなも待ってるよ!」
「「みんな?」」

 女子生徒に押し出され、新郎と新婦は、強引にステージへと上がっていく。二人が引っ込んでいる短時間の間に良くもまぁ、ここまで準備した物だ。見渡す限り、体育館はまるで教会のように飾られ、先程までは騒いでいたお客達も、今では畏まって沈黙して注目している。
 普段は教師が弁を振るうために用いられる教壇に、神父服を着こんだ担任が立っていた。二人の姿を見てから小さく笑い、咳払いをしてから合図をする。
 静かに、体育館に持ち込まれていたオルガンが音色を奏でだした。二人の背中を押してきた女子生徒は、躊躇している二人の背中に、最後の一押しを入れる。

「結婚おめでとう。行ってきなよ、新郎に新婦さん♪」
「ありがとう」
「ああ。本当にありがとうな」

 計らずとも、二人の声が揃った。二人を連れてきた女子生徒は、その返答を聞いてから幕の陰に隠れ、にこやかに手を振ってきた。


―――微かに、肩越しに振り返ると…………そこにはクラスメイト達が居て、同じように手を振っていた。


 隣で驚き、いつものように混乱気味な綾香に手を差し伸べる。綾香は差し出された大和の手を見つめ………
 赤面しながら、決して俯かずにその手を取った。
 その光景を食い入るようにしてみながら、客達は、『教会の挙式と言うより、まるでドラマのワンシーンだ』と、羨ましげにそう思った。

「行くか」
「はい」

 ステージの上をゆっくりと歩く。足下には綾香のドレスと同じ、純白の布が、真っ直ぐに伸びている。
 これが、これから二人が歩む道。真っ直ぐな道は、何処までも続いている………













★★参加キャラクター★★
5124 御崎・綾香
5123 和泉・大和

★★ライター通信★★
 お久しぶり、メビオス零です。
 毎度のご発注、誠にありがとうございます。ついに(疑似)結婚にまで辿り着いた二人………クラスメイト達は良い奴等ですねぇ。そこまでやるか!?
 温かく見守られた二人は、これからどんな人生を歩むのか……ククククク。それは、あなた様次第ですのぉ(邪悪な笑み)
 さ〜て、果たして二人を待つのはラブコメか、それとも平和な生活か……まぁ、今回はあまり苛めないで上げましょう。おめでとう記念って事で。
 では、改めまして、今回のご発注、誠にありがとうございました。(・_・)(._.)
PCシチュエーションノベル(ツイン) -
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東京怪談
2005年11月24日

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