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『『決戦ディスコ戦隊アフロバルカンVS秘密結社ツヤサラ団』 』
本郷・源1108

「なんぢゃ、これはぁ!?」
 平和なある日、あやかし荘に嬉璃の絶叫が響きわたった。
 あやかし荘の廊下にはアフロヘアのコレクションがあふれ出していた。
 その元凶は、薔薇の間でひとりアフロコレクションをながめて悦に浸っている。
「ふふん♪ ふふん♪」
 薔薇の間の住民・本郷源にとってアフロコレクションは生きる糧だ。アフログッズをながめるだけで顔がにやけてしまう。
「源! なにしてるんぢゃ!?」
「おう、嬉璃殿。嬉璃殿も一緒にアフロコレクションを愛でるか?」
「そんなん愛でたないわ。おぬしの汚らしいもののせいで、わしのあやかし荘が汚れてるんぢゃ。その時代遅れのグッズをなんとかせい!」
「き、汚らしいじゃと? 嬉璃殿、わしの尊いコレクションにけちをつけるつもりか?」
「そんな時代遅れのファッションなんぞ骨董価値もないわ。ゴミ処理場で燃やしたほうがよっぽど社会のためぢゃ」
 源の頭の中で血管がぷちっとキレた音がした。
「ご、ゴミじゃとぉ!? もういっぺん言ってみぃ」
「何度でも言うたるわ。おぬしのアフロはゴミぢゃゴミ!」
「くぅ〜。いくら温厚なわしでも堪忍袋の緒が切れた。嬉璃殿、勝負せい!」
 源が地団駄を踏んでいると、嬉璃もびしっと指を突きつけた。
「その勝負受けてやる。いざ尋常に勝負せい」

 荒涼とした風が吹き荒ぶ中、ふたりの少女はあやかし荘の中庭に立っていた。
「嬉璃殿。卑怯じゃぞ。座敷童の権限を利用して住民を仲間に引き入れるなんぞ」
「ぢゃあかしいわ。わしら秘密結社ツヤサラ団はツヤサラな髪を普及するために結成された組織ぢゃ。おぬしのような醜いものを正してくれようぞ」
 ふふふ、と嬉璃は悪の幹部のような高笑いをするが、その背後のあやかし荘の住民は気乗りしない表情をしていた。
「ツヤサラなど無個性の極まりじゃ。アフロこそ人類の究極の美なんじゃ」
「これだからお子様は困るんぢゃ。古来より美しいものはツヤサラの髪と決まっておる。今宵こそ源のアフロコレクションを処分してくれるわ」
 手下のあやかし荘の住民はみんなツヤサラヘアに変えられている。パーマをかけていた住民さえ、さらさらヘアにさせられている。彼らは裏の管理人の嬉璃に逆らうことができずに無理やり手下にされたのだった。
「なんたる横暴。自分の趣味嗜好を他人に押しつけたうえに、あまつさえ無辜の民を手下に加えるなど言語道断。この源が天に代わって成敗してくれる」
「たかがひとりでなにができるんぢゃ。どうせわしの前に平伏すのがおちよ」
「ひとり?」
 源の口許に笑みが浮かぶ。その意味深な笑みに嬉璃を含めて怪訝な顔になる。
「わしには強い味方がおるんじゃ。いでよ、ブルー! イエロー!」
 源もアフロを愛するふたりの親友を呼んだ。親友は源の元へと駆け寄ってくると、くるりと回ってテレビの戦隊もののような格好に変身した。
 源も術を使って戦隊もののレッドの衣装に変身した。
「こんな荒んだ時代、いまこそ七十年代の元気を取り戻そう。ディスコ戦隊アフロバルカン! ただいま参上! とう!」
 源と彼女の親友たちがびしっと決めポーズをした瞬間、七色の花火がスパークした。
 嬉璃とあやかし荘の住民はただただあぜんとしていた。
「源。おぬし本当に小学生か? いまどきディスコなんぞ言わんわ。クラブぢゃクラブ!」
「うるさい! 嬉璃殿こそ座敷童のくせにテレビの見過ぎなんじゃ」
「余計なお世話ぢゃ。そのジジくさい感性をたたき直してくれるわ」
「こっちこそ、その座敷童らしくない感性をたたき直してくれるわ」
「さあ、手下共、やってしまえぢゃ!」
 嬉璃が悪代官の如く命じるが、あやかし荘の住民は困って互いに顔を見合わせるだけ。
「ええい! なにをしておる。あやかし荘から追い出されたくなければ、さっさとやらんか!」
 嬉璃の迫力に押されて、あわれにも住民たちは渋々源に襲いかかる。
「無辜の民を傷つけるのは忍びないが、これも正義のためじゃ。行け、イエロー! ブルー!」
 変身した源の親友たちもツヤサラ団のメンバーを迎え撃つ。
 勝敗はあっという間に決まった。
 無理やり仲間に入れさせられたあやかし荘の住民が、アフロを心底愛しているアフロバルカンにかなうはずもなかった。次々にかわいそうなツヤサラ団のメンバーは倒されていき、残ったのは嬉璃ただひとりだった。
「なんと情けない連中ぢゃ。時代遅れのファッションに負けるなんぞ」
「さあ、嬉璃殿。もうおぬしひとりじゃ。観念せい!」
 嬉璃は、じたばたと地団駄を踏んでいたが、
「こうなったら奥の手ぢゃ」
 嬉璃が座敷童としての力を集中した瞬間、その小さな体に異変が起きた。
 嬉璃の体がまたたく間に全長十メートルほどの大きさへとふくれあがった。
「がはははっ! どうぢゃ。これならさすがのアフロバルカンも手が出せまい」
 嬉璃の勝ち誇った笑みに対して、源も余裕の笑みを浮かべた。
「こんなこともあろうかと、こちらも秘密兵器があるんじゃ! いでよ、アフロイーグル! アフロシャーク! アフロパンサー!」
 源が高々と空へと手を掲げた瞬間。
 ジャンジャカジャン♪ ジャンジャカジャン♪
 あやかし荘のいずこからか派手な音楽が鳴り始めた。
「なんぢゃ、これは。こんな仕掛けは知らんぞ!」
 嬉璃が戸惑っている間にも、あやかし荘の建物の一部が割れて鷹の形をしたロボット、鮫の形をしたロボット、豹の形をしたロボットが次々と姿をあらわれていく。あやかし荘の住民は自分たちの部屋が割れていくことに、悲鳴をあげていた。
「きょ、巨大ロボットぢゃとぉ!?」
 源たち三人は三体のロボットに乗り込んだ。
「合体! アフロロボ!」
 三体のアフロヘアのロボットはひとつの巨大人型ロボットへと姿を変えた。
 その様子を呆然と嬉璃は見ていたが、
「源。一介の賃貸者でありながら勝手にアパートを改造するとはどういうことぢゃ」
「正義のロボットは秘密基地に隠されているのがセオリーなんじゃ!」
「土地の所有者も管理人の許可も取らずに好き勝手しおって。こうなったらそのわけのわからんロボットも粉々にしてやるわ」
 嬉璃は怪獣の如く口から冷気を吐き出した。
「こちらも必殺技じゃ」
 アフロロボは剣を抜くと、一気に嬉璃のほう目掛けて振り払った。
「究極奥義ナイトフィーバー斬りぃ!!」
 ふたつの力は互いに宙でぶつかった。
 巨大化した嬉璃もアフロロボの源も悲鳴を上げて吹き飛んだ。
「なにを〜! まだまだこれからぢゃ」
「こちらこそ。目にも見せてくれるわ!」
 ふたたびふたりは互いにぶつかり合おうとしたが、
「あああっ!」
 同時に悲鳴を上げた。
 気づけば、目の前のあやかし荘は半壊に崩れさり、そして当然源のアフロコレクションもまた粉々に崩れている。
「わしのあやかし荘が〜」
「わしのアフロコレクションが〜」
 源と嬉璃は互いに呆然としたまま、あやかし荘の前でひざまずいた。
 そんなふたりの前を、荒涼とした風が過ぎ去るのみだった。

 戦いとはいつの時代もむなしい。
 だが、ふたりの戦いは永遠に終わることはない。
 どうする本郷源? どうするアフロバルカン? 
 果たしてふたりの戦いの結末やいかに!?
 ……続く?

***あとがき***
ご依頼ありがとうございました。
引き続きよろしくお願いします。
PCシチュエーションノベル(シングル) -
大河渡 クリエイターズルームへ
東京怪談
2005年11月21日

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