▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『【Lament Nocturne 〜 accelerando 〜】 』
桐生・暁4782)&梶原冬弥(NPC2112)



□■□

 手渡された紙は、酷く重かった。
 前とと同じやり方で・・・また、人を殺めるのか?
 そう思うと今この瞬間に息の根を止めてやろうかという気分になった。
 けれど・・・それはまだ早い。
 熱された感情を急速に冷やす。
 この痛みを、苦しみを、感じないように・・・。
 何も知らずに微笑む“仲間”達。
 心に誓う。
 絶対に、同じ過ちは繰り返させないと。
 絶対に、誰も・・・。
 ぎゅっと、唇をかみ締めた。
 それに気づく者はいなかった・・・。




 なんだか悪い予感がしていた。
 それは逐一その事に触れるたびに全身を過ぎっていた。
 旅行鞄に荷物を詰める時も、招待状に触れる時も、まるでなにかの呪文にかかったかのように全身にザワリと“予感”が走るのだ。
 確実に、何かがある気がした。
 けれどそれはあまりに不鮮明なモノだった。
 だからこそ、この“確実”な予感は淡くぼやけて“不確実”へと変化する。
 これは“予感”ではなくただの“思い過ごし”なのだと。


  【運命は、誰も知らないから止められない。】
  【必然と偶然は“異なる同”なのだから・・・】


■□■

 「うっわぁ〜、すっごいおっきー船っ!」
 「・・・なんじゃこりゃ・・・。」
 桐生 暁と梶原 冬弥はポカンと、その大きな船を見上げていた。
 地図の通りに着いた先には、摩訶不思議な光景が広がっていた。
 規格外サイズの船は、規格内サイズの港には少し大きすぎる。
 窮屈そうに押し込められている船が可哀想になってくる程に・・・。
 「え〜!こんなので行くんだ〜!?へ〜、すごいね〜!!」
 暁が感動にも似た驚きの声を上げた。
 「こんなんで島に行くのかよ・・・」
 「いいえ、この船では島の近くまでしか行きません。」
 ふわりと、耳に心地良い女性の声がして、暁と冬弥は振り返った。
 長い髪を下のほうで二つに結った、まだ若い・・そう、20代くらいの女性が1人、笑顔で立っていた。
 「あんたは・・・?」
 「私はキャストの一人です。」
 「キャスト?」
 「はい。詳しくは乗船後に、マスターから御話があります。」
 女性がそう言った時、船の中から暁と冬弥の名を呼ぶ声がした。
 乗船の順番が回ってきたのだ。
 「それでは、桐生様、梶原様、また後ほど・・・。」
 軽やかに手を振る。
 細く白い腕を空へと伸ばして、右へ左へ、ふわり、ゆらりと・・・。
 暁が笑顔でそれの応え、手を大きく振る。
 冬弥はただ1つだけ小さく頭を下げると、船の中へと吸い込まれて行った。


□■□

 船の中は広く、綺麗だった。
 高価そうなアンティークのツボや、柱時計、テーブルクロスまでもがあまりの純白さに驚かされる。
 「なんか、居心地悪いね・・・。」
 「ちょっとでも動いたら壊しちまいそうだよな。」
 「請求書にはゼロがすっごいならんでそうだよね・・・。」
 「ゼロゼロゼロゼロゼロ・・・・・5みたいな・・・?」
 「冬弥ちゃん、それいったい幾らよ?」
 「5兆円とか?」
 通された大きなホールには、数十人の人々が塊ごとに離れて座っていた。
 みな一様にピリピリした雰囲気で、じっと中央に置かれた丸い台の上を見つめている。
 その台の前には、マイクが1本だけ伸びており、これからそこで起こる事を告げていた。
 ぱっと、何の前触れもなく部屋が暗くなる。
 中央の台の上にだけスポットライトが伸びる。
 ホールの丁度中ほどにある、左右対になった扉の、右の方の扉がゆっくりと押し開けられ、1人の太った中年の男の人が現れた。
 その人は悠々と歩き、台の上に乗ると、ひとまず一同を見渡した。
 そして、マイクを引き寄せ・・・。
 「お集まりの皆様、長らくお待たせいたしました。わたくしが、このゲームの総責任者・・・マスターです。」
 高らかに宣言した男だが、拍手や歓声を浴びせる物は誰もいない。
 ・・・なんだか虚しい。
 「え〜・・・ごほん。それでは、ルールの説明にうつります。」
 男はそう言うと、ポケットから畳まれた紙を取り出した。
 それは開き・・・目を通す。
 「これより皆様は無人島へと向かっていただきます。そうして・・・そこで起きる殺人事件を見事解決に導いてほしいのです。」
 ザワザワと騒がしくなるホール。
 ・・・ザワリ・・・
 何故だか背筋に冷たいものが走った。
 それは全身を駆け抜け・・・体温を奪ってゆく。
 「と申しましても、本当に殺人事件が起きるわけではございません。スタッフによる、芝居です。」
 騒がしかったホールが、急に静まる。
 「リアル推理ゲーム。これが、今回のゲームの内容です。ペアごとに、島は違います。1ペアに1つの島です。個々の詳細については、島に渡り次第、現地スタッフから説明があります。」
 男はそれだけ言うと、舞台を後にした。
 あれだけ派手に登場したわりに、引き際は結構簡素だ・・・。
 「リアル推理ゲーム。」
 ポツリ、冬弥が言葉を落とす。
 胸がざわつく。
 嫌な予感が、思い過ごしではなくなるような・・・。
 けれど未来は不確実で不鮮明だ。
 暁はその“予感”をおさえようと、胸に手を当てた。


■□■

 暁と冬弥の番号が呼ばれたのは、一番最初に呼ばれた人達から2時間以上経ってからだった。
 島と島は近くにあるわけではなく、一定の距離が離れているため、そう言う事態が発生してしまうのだ。
 暁と冬弥は係員の誘導に従って船底へと降りた。
 そこには大き目のクルーザーが一台止まっており、港で見たあの美しい女性が先に乗っていた。
 「さぁ、こちらへどうぞ。」
 女性の導きに従って、クルーザーへと乗り込む。
 クルーザには、先ほどの女性と、細く繊細な体つきをした男性、そして暁と冬弥が乗っていた。
 「私達が向かう島はあちらです。」
 女性がその細い指を、すっと目の前に聳える島にあてた。
 本当に小さな小島。
 その中央にはレンガ造りの大きな建物が見える。
 「あの建物が私達がこれよりゲームを行う場所です。」
 「・・・アンティークハウス。」
 ポツリと、男性が呟く。
 「建物自体に特別な名前がついているわけではないんですが、アンティークの小物が沢山置いてあるので、僕達はそう呼んでいるんですよ。」
 「そうなんですか・・・。」
 「うわぁ、それじゃぁまたゼロの嵐だ・・・。」
 暁の呟きに、冬弥が思わず肩を落とす。
 それを不思議そうに見つめる2人・・・。
 ゼロの嵐という単語は、暁と冬弥の間でしか使えない、一種の合言葉のような物だった。
 「あの島には私と彼を含め、6人の人物がいます。」
 「6人・・・?」
 「えぇ。」
 クルーザーは波の上を滑るように進み、島へと近づいていった。
 段々と近づくアンティークハウス。
 暁は空を仰ぎ見た。
 分厚い雲が、太陽の光を遮っている・・・。
 「嵐に・・・なるかもしれませんね。」
 「そうね。でも、大丈夫ですよ。ボロく見えて、アンティークハウスは丈夫に出来てますから。」
 にこっと、微笑む女性の髪を、風が大きく揺らした。


□■□

 クルーザーが島へ到着してから、一行はアンティークハウスへ向けて歩いた。
 木々が鬱蒼と生え、周りの風景を遮断する。
 「うわぁ・・なんか、えらく田舎っぽいところだね。」
 暁が感想を述べる。
 田舎と言うよりは、ジャングルと言った方が状況的に近いだろう。
 なんだか、このまま進んでもアンティークハウスになんてたどり着かない気がする。
 その内、前の2人が大丈夫ですよと微笑みながらサバイバルナイフで目の前の蔦を切り・・・。
 冬弥はそんな嫌な想像を追い払うべく、頭を振った。
 「もう少しで着きますから・・・。」
 男性がこちらを振り返り、曖昧な笑みを浮かべる。
 「さぁ、着きましたよ。」
 ザァっと、一気に視界が開ける。
 そこはまるで御伽噺の世界だった。
 赤いレンガのお家。
 大きなレンガのお家・・・。
 なんだか、変な歌が聞こえてきそうなほどに、それは異質な物だった。
 3メートルはあろうかと言う、巨大な玄関に近づく。
 するとそれは、音もなく内側に開いた。
 赤い絨毯が敷かれ、その左右には数名の男女が綺麗にお辞儀をして待っていた。
 「ようこそいらっしゃいました、お客様。」
 完璧なまでに、声は合わさっていた。
 右側には、メイド服を着た女性。
 左側には、ギャルソン風の格好をした青年。
 女性の隣には、ピシッとしたスーツを着た初老の男性。
 青年の隣には、蝶ネクタイにチョッキを着た男性。
 皆一様に一昔前のヨーロッパ風の格好だ。
 数秒の後に、顔を上げた面々を見て、暁は思わず驚きの声を漏らした。
 「・・・うっそ・・・。」
 「おい、双子かよ・・。」
 メイド服を着た女性は、先ほどここまで運んできてくれた女性と瓜二つだった。
 そして、ギャルソン風の格好をした青年は、先ほど一緒にクルーザーに乗ってきた男性に・・・。
 「ここは名前を持たぬ者達の住処。彼女と彼女は同じようで異なるもの。彼と彼もまた、同なるようで異なるもの。さぁ、今宵より行われし悲劇の物語を・・・貴方様方は断ち切れますかな?」
 初老の男性はそう言うと、ふっと瞳を細めた。
 「わたくしはメイドで御座います。」
 メイド姿の女性が軽く会釈をする。
 「私もメイドで御座います。」
 先ほどの女性が同じように会釈をする。
 服装が違うから見分けがつくものの・・・もし同じ服装でもされたら・・・。
 「ややこしいな。」
 「でも、一人称が違うから・・・。」
 暁の呟きに、冬弥は軽く頷いた。
 “わたくし”と“私”
 「俺は貴方方の身の回りの世話を。」
 「僕も同じく貴方方の身の回りの世話を。」
 こちらも一人称が違う。
 “俺”と“僕”
 それ以外にはなにも違わない。
 「宴は始まり、悲劇は今宵より行われる。」
 初老の男性が高らかに宣言する。
 それはなぜか力が篭っており・・・。

   ザワリ

 背筋が凍る。
 なんだろう?
 この感じは・・・。

    ザワリ

 “予感”
 それ以外に適当な言葉は見つからない。

  ザワリ

 嫌な予感がする。
 どこか冷たく、無機質なこの館が・・・。

   ザワリ

 誰かに見られている気がする・・・。
 それは“誰か”と言うものではなく・・そう、言うなれば“何か”。

    ザワリ

 すぅっと、血の気が引く。
 “何か”が、冷たい掌を背中に押し付けている。
 そしてそれは・・・ゆっくりと上下に動き・・・。


 「・・・き・・・あき・・暁っ!?」


 はっと、顔を上げると心配そうな冬弥の顔があった。
 「おい、大丈夫か?顔色が悪いぞ・・・?」
 「あ・・・大丈夫・・・。」
 「クルーザーで酔ってしまわれましたか?」
 「いや・・・そう言うんじゃ・・・。」
 「少し休まれますか?」
 「いや・・・。」
 「大丈夫ですよ。今からほんの2時間ほどは自由時間です。つまり、“何も起こらない時間”です。」
 初老の男性はそう言うと、自分の腕に巻きついている金の腕時計をコツコツと叩いた。
 「このゲームのルールです。5時から7時までの2時間と夜中の12時から朝の6時までの6時間は“物語以外の時間”なんです。」
 「物語以外の時間だって?」
 「このゲームは全て“物語マスター”によって描かれた世界なのです。私どもはその登場人物の1人にすぎません。台本通りに動く、役者です。」
 「台本通りに全てが正確に動きます。貴方方の行動以外は。」
 メイドはそう言うと、腕時計に目を走らせた。
 5時3分
 「これから7時までは自由時間です。つまりは“物語以外の時間”です。」
 にっこりと、微笑む。
 その瞳の奥の色までは分からない・・。
 「とりあえず、お部屋にお連れいたします。」
 そう言うと、メイドは先に立って歩き始めた。


■□■

 「だぁぁっ、なんなんだこりゃ。さーっぱり意味わかんねぇよ。物語だとか、物語マスターだとかっ!」
 「ふぅ〜ん、思ってたよりも難しそうだね、このゲーム。」
 「んあぁ?」
 「だからこれは全て“誰かが描いたシナリオ通りに進んでいく”ゲームなんだよ。なんて言うの?リアル推理小説?」
 「リアル推理小説?」
 「そう。あの人達の行動は全て“台本”通りなんだよ。5時から7時、12時から6時までを除いては。」
 「そこがワケわかんねーんだよ。」
 「おそらく、12時から6時までは寝る時間だね。睡眠時間。でも・・・5時から7時はなんなんだろう・・・。」
 暁はそう呟くと、ベッドの上に突っ伏した。
 柔らかすぎるベッドは、少々腰にきそうな感じだ。
 ふかふかの枕は大きくて、甘い洗剤の匂いがする・・・。
 「しっかしよぉ、この設定はちょっと無理があるんじゃないか?」
 「無理って?」
 「俺らの行動以外は全て決まってるんだろ?つまり、あの人達は決められた事をする。だな?」
 「うん。」
 「もし“決められたこと以外の行動を俺らから要求されたら”・・・どうなるんだ?」
 「拒否するかあるいは・・・。」
 「あるいは?」
 「おそらく、ある程度はこちらの行動をよんでるんだと思うよ?」
 「よんでる??」
 「だからさ、例えば・・・今この部屋にゴキが出るとするでしょ?」
 「・・あぁ。」
 例え話ではあるものの、冬弥は一応部屋の隅々にまで視線を向けた。
 きっと冬弥でなくてもやってしまうだろう。
 普段は気にならない事でも、指摘されると急に気になり始める事があるように・・・。
 「その場合、大抵の人は驚くだろうね。それで、逃げる。または・・・戦う。」
 見てみぬふりはとても出来ないだろう。
 一般的に、ゴキブリは人から好かれてはいない。
 人の嫌い度にもよるが、かなり嫌いな人、もしくは女の人は逃げるを選択するだろう。
 勇敢な人は戦うかも知れない。
 「ある程度の行動は予測できるでしょ?」
 まさか、食すと行動する人は・・・いるだろうか?・・・いや、おそらくいないだろう。
 「確かにな。」
 「だからさ、難しいよね。こっちは相手の裏をかかなくちゃいけない。向こうが予測している行動をとったなら・・・きっとこのゲームには勝てない。」
 暁の瞳が怪しく光る。
 艶かしい色をたたえた瞳のまま、冬弥に微笑んだ。
 「この勝負、絶対勝とうね!」
 「当たり前だっ。」
 暁と冬弥の手がパチリと上空で合わさった時・・・再びあの予感が背筋を撫ぜた。

  ザワリ

 それは確実に近づいてきていた・・・。
 本当に、直ぐそこに・・・。

  「キャーーーーッ!!!!」

 遠くから聞こえる叫び声に、暁と冬弥は素早く身体を起こした。
 「なんだ?」
 「外からだよっ!」
 ベッドから飛び降り、扉を開ける。

  「イヤーーーーっ!誰かっ・・・!!!」

 声のする方に急ぐ。
 暁は、ホールにかかっている時計をチラリと見やった。
 6時38分
 それはまだ“物語以外の時間”
 つまりはこれは“現実の出来事”・・・。
 廊下の端に、メイド服の裾が見える。
 「どうしたんだ!?大丈夫かっ!?」
 暁よりも1歩先にたどり着いた冬弥が、彼女の肩を掴んだ。
 「あっ・・・あっ・・・。」
 震える指先で、前方を指し示す。
 開け放たれた扉。
 中は紙が散乱して真っ白に染まっていた。
 そして・・・その中央に倒れている一人の人物・・・。
 周りの紙を真っ赤に染め上げて、その胸に深々とナイフを刺した・・・。
 「おい・・・これは物語なのか・・・?」
 「違うよ、冬弥ちゃん。まだ“物語の時間”は始まってない。」
 暁はつかつかとその人物に歩み寄ると、首筋に掌をあてた。
 金の腕時計が、無常にも刻々と時を刻んでゆく・・・。


   ザワリ


 それはもはや既に、鮮明な輝きを放っていた。



  【刻々と流れる時を、誰が止められようか?】




 ■□■【謎解きの時間です】■□■

 暁 「前回の問題の答えは・・・はいっ、冬弥ちゃんどーぞっ☆」
 冬弥「俺が言うのかっ!?あ〜、答えはAとBだ。」
 暁 「そーです!犯人は彼氏と大家のおばちゃんでしたw」
 冬弥「おいおい、随分あっさりとした言い方だな。」
 暁 「んじゃぁ、一つ一つ紐解いてゆきましょうかっ!まず最初、彼女の部屋の中を見て着目する点は?」
 冬弥「写真とパソコンデスクだろ?」
 暁 「そう!『向かって右側が母親、母親側の手に鉛筆を持ち得意げな笑顔でこちらを見ている一人の少女、そして向かって左が父親』ってあるでしょ?」
 冬弥「ここでのポイントは“向かって”だな?」
 暁 「そう!これはあくまでこちらから見た視線だから、写真の中から見た視線になおすと・・・少女は左利きなのが分かるよね?」
 冬弥「こっちから見て右は、向こうから見れば左だからな。」
 暁 「彼女の部屋のパソコンデスクもそう!『画面の前にキーボード、その左隣にマウスを置き』右利きの人はマウスは右側に置くよね?」
 冬弥「確かにな。」
 暁 「次は彼女の亡くなり方!『この部屋で、今朝方に1人の若い女性がお風呂場で左腕を切った状態で亡くなっているのが発見されました。』って、おかしいよね?」
 冬弥「まぁな。」
 暁 「右利きの人は、剃刀を右で持つから左を切る。でも、左利きの人は・・・。」
 冬弥「普通は右だな。」
 暁 「そうw写真やマウスの位置から考えて、彼女は左利きである可能性が高いでしょ?」
 冬弥「あぁ。」
 暁 「次は大家さんと男性の証言!『俺はすぐに水を止めて、大家さんに救急車を呼んでもらうように頼んだんだ』彼はそう言ったね?」
 冬弥「言ってたな。」
 暁 「けれど鑑識からの報告はこうだった。『風呂場からは彼女の指紋しか検出されませんでした。』おかしいでしょう?」
 冬弥「確か男性は『大変な完璧主義』って言ってたよな?こんな所で完璧主義を貫くとはな・・・。」
 暁 「男にはアリバイがある。したがって、男に彼女を殺す事は不可能なんだ。」
 冬弥「あぁ・・・。」
 暁 「いい?彼女は左腕を切っ亡くなっていたんだ。つまり・・・犯人は・・・。」
 冬弥「右利きだな。」
 暁 「男性は『その右腕に付けられた時計は、明らかに高そうだ』から、右腕に時計をする=左利きだと考えられる。」
 冬弥「右利きの人は普通時計は左腕につけるからな。」
 暁 「彼女が浮気していた彼も『右にタバコを持ち、反対の手でジッポをつける』から左利きだと考えられる。」
 冬弥「右利きの人は大抵左でタバコを持って右でジッポをつけて、その後で右にタバコを持ちかえるからな。」
 暁 「大家さんだけは『左指に光る指輪、それとは反対の手にはペンが握られている』から、右利きだって分かるんだ。」
 冬弥「あと、見落としがちなのは・・・」
 暁 「彼の言った『パソコンに、アイツの、最期の言葉が・・・』この台詞だね。」
 冬弥「よく考えて見ればおかしいよな。」
 暁 「本当に彼女が自殺する前に書いたのだとすれば、昨晩10時から12時の間だ。男性と大家さんが駆けつけたのが朝の8時くらい・・。」
 冬弥「普通なら、スクリーンセーバーがかかるだろう。」
 暁 「もしくは、画面が消えちゃってるとかね。」
 冬弥「この一文を打ったのは、大家さんだとは考えにくい・・だろ?」
 暁 「大家さんは『機械系等が苦手で携帯も使えないと言うことで子供達からは呆れられている』の一文から、パソコンが扱えるとは思えないからね。」
 冬弥「そもそも、マウスが左にあったと言う事は・・・。」
 暁 「おそらくは彼氏さんの方だろうね。」
 冬弥「最後は入力画面・・だろう?」
 暁 「そう。本来、こう言う問題の場合は犯人は1人だと思い込んでしまう場合が多いんだ。つまり、大家さんか彼氏さんか・・・。」
 冬弥「大家を選んだ場合、風呂場の指紋やパソコンの遺書の謎が残る。男性の場合は、左腕を切っていたところと、完璧なアリバイが引っかかる。」
 暁 「互いを補い合っているんだよ。」
 冬弥「そこで入力画面に注目するんだろう?」
 暁 「そう!『確定』と『1つ戻る』のボタン。本来なら、1つしか答えがない場合『1つ戻る』なんてボタンはありえない。せいぜいあって『取り消し』じゃない?」
 冬弥「1つと言う事は、1つ以上入力する場合があるって事だからな。」
 暁 「問題文には、犯人を見つけろと言うだけで1人とも2人とも書いてなかったからね。」
 冬弥「左右に注目すれば、意外と簡単だな。」
 暁 「固定概念に縛られなければ、直ぐに解ける問題ではあるね☆」
 冬弥「暁の言った『簡単なわりに、問題は難しいね。』は、この事だったんだろう?」
 暁 「そうだよw」

 暁 「完璧な謎なんてありえない。謎は人の作り出したモノだから・・・。」



    〈To be continued・・・〉

PCシチュエーションノベル(シングル) -
雨音響希 クリエイターズルームへ
東京怪談
2005年11月04日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.