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『大切なトモダチ 』
エトワール・雛社5301

 秋雨の続く中、ぽっかりと開いたような晴れの日。私、エトワール・雛社(−・ひなもり)は、親友のポメラニアンであるぽん太を連れて、買い物に来ていました。
「うわぁ……人がいっぱいいるねぇ。ぽん太。はぐれないように抱っこしててあげる」
 私がそう言うと、ぽん太が嬉しそうに腕の中に飛び込んで来ます。この街は、休日はいつも人の多いところなんだけど、今日は久しぶりの晴れだからなのか、いつもの倍以上の人たちが買い物に来てるみたい。いっぱいの人でちょっと怖いけど、明日からはまた雨になっちゃうし。頑張って行かなきゃ。
 私のお目当てのお店はここからそんなに遠いわけじゃあないんだけど、行くまでに色んな人にぶつかっちゃった。いつもの二倍くらい長い距離を歩いた感じ。そして、その店にやっと辿り着いた私は、ぽん太をお店の入り口の前に座らせました。
「ごめんね、ぽん太。ここはぽん太は入れないんだ。だからここで待ってて。絶対どこかに行っちゃ駄目だよ?」
「わふっ」
 大丈夫ってぽん太は言うんだけど、私はちょっと心配。でもいつもちゃんと待っていてくれるし、今日も大丈夫だよね? すぐに戻って来るから! そう言って私はお店の中へ入ったんだけど、戻って来て見たらぽん太がいないの。
 どうして!?



「こーりゃ、ひでぇ人だな……」
「ぽん太……ぽん太……」
「あー、あー、泣くな泣くな。ちゃんと見つかるって」
 私が泣いていると、草間さんが大丈夫って言って頭を撫でてくれました。ぽん太がいないって判った瞬間、草間興信所に駆け込んで行っちゃったけど、突然来ちゃったのに草間さんは一緒にぽん太を探してくれるって、すぐに言ってくれて、とっても嬉しかった。本当はお休みの日はのんびり休みたいんだろうけど、そんなこと何にも言わない。草間さんは優しい人だなぁ。
「で? どこで逸れたんだ?」
「こっちですぅ……」
 草間さんを案内して、私はぽん太がいなくなった店の前まで来たの。もしかしたらぽん太、戻って来てないかなって期待したのに、やっぱりいなかった。
「ここで待っててって言ったのに……」
「しかし、あの犬は結構頭良かったろ? 何でどっか行ったりしたんだ?」
 草間さんに言われたけど、私も判らなかった。ぽん太は私の言うことを破ってどこかに行っちゃう子じゃないのに……あ!
「……も、もしかして誰かに連れて行かれちゃったとか!? わーん! ぽん太ー!!」
「あー、落ち着け。とりあえず、見た奴がいないかどうか、聞き込みでもするか」
 最悪の想像をしちゃったら、もっと心配になっちゃったよぅ。ぽん太ー! ホントにどこに行っちゃったの?
 草間さんが周りを歩いている人たちにぽん太を見なかったか聞いてる。でも皆、首を横に振るだけで、見たって言う人は誰もいなかった。
「そのときに犬を見た人間がいても、その人間が今もこの近くにいるとは限らねぇからなぁ……」
「そんな……じゃあ、ぽん太は見付からないってことですか……?」
「範囲を広げて、手当たり次第に人に聞いてみよう。下手な鉄砲も数打ちゃ当たるって言うしな。ま、大丈夫だって」
 草間さんがそう言って笑うと、私も頑張ろうって気になった。ぽん太、大丈夫だよ。絶対私が見つけてあげるから。
 それで、私たちはお店の周りを中心に、ひろーい範囲で、色んな人に声をかけてみたの。そしたらね、一人のおばさんが、ぽん太のことを見たって言ったの。
「本当!? おばさん!」
「ああ、耳んとこに何か飾りのついた真っ白の毛玉みたいな犬だろ? 見たよ。あんたんとこの犬だったのかい? いやぁねぇ、その子、最初は店の前でちょこんと座って誰か待ってるみたいだったんだけどね。ありゃ、あんたのこと待ってたんだね。あたしゃそのとき隣の奥さんと話しててずっと傍にいたんだけどね、暫くしたら変な格好の男どもが来てね」
「変な格好の男?」
 草間さんが真剣な顔になる。私も、もしかしてその男にぽん太が連れて行かれちゃったのかと思って、泣きそうになった。そしたら、おばさんはそんな私たちの顔を見て、ぷって噴出したの。
「そうそう、変な格好なのよ。ほら、何て言ったっけ。コギャルとかいうのが顔を真っ黒にして目と口だけ白いの。ヤマンバ? そんな感じの格好した男の子たちが来てね。犬だーって言ってその子を触ろうとしたのよ。そしたらその子、びっくりしちゃったんだろうねぇ。ばーっと逃げ出しちゃって、人ごみの中に入ってっちゃってねぇ。気持ちは判るよぉ。私もあんなのが近付いて来たら逃げ出しちゃうかもしれないしねぇ」
「どっちの方向へ逃げ出したか、判りませんか?」
 笑うおばさんに草間さんが聞くと、おばさんは公園の方に向かって行ったって教えてくれた。私たちが慌ててその公園に行くと、ブランコの近くで私と同い年くらいの子たちが固まってるのが見えたの。もしかしてって近付いたら、その子たちの真ん中に、ぽん太が座ってたの。
「ぽん太!」
 名前を呼んだら、ぽん太が思いっきり尻尾を振りながら私に飛び込んで来た。良かった、ぽん太。もう、心配したんだからね!
「そういやぁ、雛森は何を買いに行ってたんだ?」
 ぽん太と遊んでくれてた子たちと手を振って別れた後、草間さんから聞かれて、私はポケットに入れてた袋を思い出した。ぽん太がいなくなっちゃってそれどころじゃなかったから、すっかり忘れてたよ。
「あのね、ずーっと前に見つけてたんだけど、ぽん太にね、絶対似合うと思って。お小遣い溜めてやっと買えたんだ」
 それはね、ぽん太に付けてあげる新しいリボン。私も同じ模様のリボン買ったから、お揃いだよ。
「うん、似合うよ、ぽん太。可愛い!」
 ちょっと壊れちゃった飾りを取って、替わりにリボンを付けてあげたら、ぽん太が嬉しそうに尻尾を振ってくれた。










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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)   
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【5301/エトワール・雛社/女性/11歳/雛杜のひとり娘】



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           ライター通信          
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はじめまして、緑奈緑と申します。今回はシチュエーションノベルの発注、有難う御座いました。
久しぶりの一人称で、凄く悩んだところもありましたが、エトワールさんの可愛らしさを出そうと頑張りました。如何でしたでしょうか? 楽しんで頂けていれば嬉しいです。
PCシチュエーションノベル(シングル) -
佐伯七十郎 クリエイターズルームへ
東京怪談
2005年10月24日

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