▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『弓弦の夏 』
小鳥遊・弓弦5620)&天祥胤・陽(5524)

「うーん、今日も良い天気!さあ、気合入れて行くわよぉっ!」
 全身から喜びオーラを発している女性とは裏腹に、目の前の光景に呆然と立ち竦む男。
 小鳥遊弓弦と天祥胤陽の2人は、全国各地からこの日のために集結する濃ゆい人々――所謂オタクがずらり並んだ列の遥か彼方を見詰めていた。
「あの…、弓弦先生。これは一体?」
 自分達が並ぶその後ろにもどんどんと人が並んで行くのを不安そうに見守る陽。そんな彼を見てくすっと悪戯っぽい笑みを浮かべながら、
「『こういうもの』よ、陽先生。はいこれチケット」
「入場券…ですか。ええと…コミック―――」
 中に書かれている名前を読み上げて、フリーマーケットのようなものなのかな、と思う陽。
 ――そう。
 ここは、お台場。
 夏休みの間の数日間、特に人が集まり、一部交通機関に麻痺が起こるとも言われる世界。
 その、巨大同人イベント会場で、経験者らしい弓弦に強引に連れてこられた陽が、自分の知らない世界に今まさに飲み込まれようとしていた。

*****

『陽先生明日暇?』
『…暇、ですけれど…どうかしたんですか』
 急用で学校に来ていた陽へ、同じく学校に来ていた弓弦が、嬉しそうに駆け寄った第一声がこれ。
 一瞬、デートの誘いか?と思ったもののそれは即打ち消して、何だろうと軽く首をかしげる。
『あー良かった。他の先生達、皆予定があるからって逃げられたのよね』
 にこにこと嬉しそうに笑う弓弦が、更に口を大きく笑みの形に広げ、
『陽先生の家は確か――線沿いだったわよね。それじゃ…ええと。最寄から始発に乗ってここまで来てもらえないかしら』
『………始発?』
『そうなの』
 待ち合わせ場所らしい駅を書いたメモを渡しながら、当然というようにこっくりと弓弦が頷く。
『始発じゃないと目当ての場所を全部回れないのよ。ねっ、お願い!帰りにご飯奢るから』
 ぱん、と手を打ち合わせて両手拝みの姿勢になってしまっては、陽にあっさり断われる筈も無く。
『奢りはいいですよ。この間だって給料間際大変そうだったじゃないですか』
『あらほんと?――あ、でも悪いわ。じゃあジュース奢らせてもらうわね』
 いつの間にか行くことを前提で話が進んでいて、断わる事を言い出せないままに今日、この場所へやって来ていた。
 ――列は全く動く様子が無い。ここに来てから一体どれくらいの時間が過ぎたのか、分からないままにぼうっとしていると、ひやりと頬に冷たいものが当たった。
「驚いた?はい、これ。まだ結構時間はあるから、少し冷たいものでも飲んで置いた方がいいわよ。暑気あたりしてしまうから」
 きんきんに冷えた飲み物を、自分の分と合わせて用意して来たらしい。良く見ると、冷凍庫に入れていたのか、飲み物は半分凍りついていた。
 …何となく弓弦の手馴れた様子に不安を覚えながらも、ありがたく飲み物を受け取って、少しずつ口に運んで行った。
「そう言えば、弓弦先生。何でキャリーカートを持って来たんですか?」
「これが無いと困っちゃうの。陽先生にもすぐ分かるわよ。陽先生こそ、丈夫なバッグは持って来てくれた?」
 ふと、弓弦の荷物を目にした陽が不思議そうに聞く。そして、目に見える範囲では同じようにキャリーカートを持っている人の姿がちらほらあることに気付いて、困ると言うのはどう言う事なのか分からないままに、じわじわと感じる不安を押し隠すように飲み物を煽った。
「――あ、開いたみたいね」
 ずっと動きの無かった列が急に動き始め、それに合わせるようにざわめきが高くなって行く中を、列に付いて移動して行く。
 列が長かったせいか中に入るにも時間がかかったが、チケットのチェックを過ぎてようやく中に入ったと実感した途端、弓弦が目を輝かせて「よおしっ」ともう一度気合をかけ、
「陽先生は、この建物ね。買うものはメモしてある通り。赤い枠で囲ってあるサークルが最初、次は黄色。塗り潰してあるものは新刊を全部買って。後はメモに書いてある通り」
 ずらずらずらずらっ、と、サークル名の横に書かれたたくさんの名前に目を丸くする陽。そして「あっ、忘れるところだったわ」と、弓弦が小銭入れと封筒を手渡した。
「小銭入れは500円玉がほとんどで、細かいのが必要な時用に100円玉が10個。安いのは大抵ワンコインで買えるから、500円玉で足りる筈。それと封筒は全部千円。大型新刊や大手の――赤枠のサークルはほとんど千円単位でしか売ってないから、そっちを使って。それに無料配布やチェックを入れたサークルのパンフは必ず貰っておいて!後でここで会いましょう。それじゃ、グッドラック陽先生!」
「――弓弦先生、ちょっと…」
 捲し立てられた内容は何とか理解出来たものの、その勢いに付いていけず、聞き返そうと思ったが…既に弓弦の姿は人の波へ消えてしまっている。
「…要するに…買出し員って事ですよね」
 仕方ない、と半ば諦めながら、手渡されたマップと会場のそこここに書かれている印を見て、目的地へ向かう。
 初心者にいきなり買い手を任せるのもどうかと思うが、こうして陽は、文字通り人の荒波の中に飛び込んで行った。その先に待つモノを想像する事も出来ず。

*****

「こんにちはっ!今日はスケブやってる?」
「おー、前回ぶり?どしたの昨日は。売り出しの新刊あれで完売よ?」
「ああっ、やっぱりぃぃ…いやね、昨日は緊急の用事で仕事に行かないといけなくなっちゃって。本命は今日だったんだけど」
「それはご愁傷様。で、スケブだっけ?今日はそんなに忙しくないから大丈夫だけど」
「やった!じゃあ、ええっとねえ」
 水を得た魚と言おうか。
 弓弦は着実に、帰りにカートの上に乗る品をその腕に増やしつつ、にこにこと上機嫌で回っていた。ただ残念だったのは、初日の売り出し品の事。目玉商品は大抵その日に売られてしまうので、超人気サークルになると初日完売は珍しくない。仕方なく、通販のチラシや無料配布品で自分を慰めながら、ふと、
「そう言えば陽先生大丈夫かしら」
 ぽつんとそんな事を呟いてみる。ちゃんと買ってくれているのかな?と。
 陽に頼んだ地区は中堅どころが多く、品物を買い揃えるにはそんなに支障は無い筈だから、大丈夫よねと自分に呟いてから、あっさりと陽の事は頭の隅に置いて別のサークルへとすいすい歩いて行った。
 ――陽が地獄のような目に遭っている可能性を全く考えもせずに。
「あの、その格好って○△さんですよね!?その髪は地毛ですか?出来れば一緒に写真を撮ってくれませんか?」
「□□の格好をすれば、激似合いそうだよね、この人」
「うんうん!やってくれたらそしたらコスパに誘えるのに〜」
 自分はどうしてここに立っているのだろう、と陽はぼんやり思っていた。
 赤枠のサークルを巡るたびに、列の最後尾に並び、そうして待っている間、何度声を掛けられた事か。
 街中では見かけない、ドレスを着た少女や、男装している少女や、武装に近い服を着て闊歩している青年や、中年を見かけるたびに、ここはどこ?と思ってしまう。
 そんな、金髪青目の美青年が戸惑ったように立っている姿が、どうしても周辺で熱心に本を買い漁り、きゃあきゃあと黄色い声を上げている女性達の琴線に触れてしまうらしい。
 しかも、そんな陽が買い求めるのが、女性向けのコミックとあっては――。

 ――リアル?
 ――ええ、まさか…慣れてない様子を見れば、家族に無理やりとかじゃないの?
 ――リアルの方が面白いのに…ねえ、連れはどんな人だと思う?男の人だったら素敵じゃない?
 ――それなら年上と年下とどっちがいい?

 何だか不穏な事も囁かれているが、幸いな事に、陽にはその言葉の意味が分からなかった。
「新刊2冊ですね。ありがとうございまーす♪」
 本とパンフレットを手渡される時に、必要以上に長いこと手に触れてにこにこ嬉しそうにしている売り子さんが、隣の椅子に座っている女性に小突かれているのを、これで何度目だろうと思いつつ受け取ってその場を後にする。ほんのちょっぴり、陽の目が虚ろになっていたかもしれない。

 ――そんなこんなで。

 お互いにたっぷりの収穫を持って、待ち合わせの場所に戻って来た時には、何だかつやつやしているように見える弓弦に比べ、陽は半分以上魂が抜けかかっていた。
「お疲れ様。うぅん、やっぱり新刊の匂いはいいわ〜」
 腕に抱えた本の束の量に驚きながら、用意して来いと言われたバッグにもぎっしり詰まっている事に気付いて、
「…お疲れ様でした…」
 ふぅぅぅ、と陽が大きく溜息を付く。そこに、
「あら、まだ終わりじゃないわよ、陽せんせい♪」
 にっこりと、笑って弓弦がぽん、と陽の肩を叩いた。

*****

 ――3日目。イベントの最終日。
「昨夜はゆっくり眠れた?」
「お陰様で…というか、夢も見ていません。気がついたら朝でした」
 今日は始発じゃなくてもいいわよ、と言われ、昨日に比べると多少人通りが減った気がする世界へ足を踏み入れた2人。陽の言葉を聞いて、弓弦が笑う。
「あはは、お疲れ様。でも今日で最後だから安心して」
「今日も来る理由があるんですか?」
「そりゃああるわよ。終了の放送を聞かないとね、終わった気がしないの」
「……それだけ?」
「あらもちろん今日の買出し予定はあるわよ?昨日よりも少ないだけ」
 ばさりと開いた地図に今日も描かれる色とりどりのペンとメモ。
「………やっぱりあるんですね、買出し」
「そりゃそうよ?せっかく腕が4つあるんだもの。有効に使わないと」
 確かに昨日に比べればその数は半分以下。その上、売りさばいてしまえば今日まで残っていないサークルも多いと言う事で、回る数は案外少ないかも、と弓弦が説明する。
「あ。でもまずはここね」
 ぐいっ。
 既に長蛇の列が付いている場所に、2人が並んだ。
「2人で並ぶんですか?」
「だって、こんなに長い列を待つのは大変でしょ?もしどっちかが『緊急事態』になっちゃったらどうするの?」
 会場の隅で、お手洗いの列をちらと目で見つつ、弓弦が言う。
「それもそうですね…じゃあ、この後買出しですか…」
「そんなに気落ちしないの。…ホントに待ちそうね。何か飲み物買って来ようか、何がいい?」
「それじゃ、あればですがコーヒーを。…無かったら適当にお願いします」
「了解ー♪」
 ひらひらと手を振って、フットワークも軽くその場を去って行く弓弦。
 ――いい人なんですけどねえ…。
 大らかで裏表の無い彼女を、悪く言う者は少ない。少々デリカシーに欠ける所がないわけではないが、それだって物凄く非常識という程ではない、……と思う。
 時々、しかも的確にこうして気遣ってくれる所を見ても、それは間違いないと思う。
 教師としての態度は時々どうかと思うこともあるが……。
 そんな事を思いながら、陽はのろのろと動く列から、遠く飲み物の売り場で元気良さそうに商品を買い求める彼女の姿を見ていた。

*****

「――ん?」
 そんな弓弦が冷たい飲み物を買っての帰り際。
「―――!」
「いや…、だから……っ」
 建物の影からちらちらと見え隠れする人影と、そこから微かに聞こえた怒号に弓弦がぴたりと足を止める。
 それは数人の少年からなるグループに、2人の男が今まさに建物の影に連れ込まれようとしている所だった。
 どうやら、こうしたイベントを狙うカツアゲの少年達らしい。確かに現金取引がメインのこうした巨大なイベントでは、少々割高な同人誌やソフトを手に入れるために、結構な金額を持ち込んでいる者が多かった。
 そうした人たちをカモと見て、こう言う場所で恫喝して金を巻き上げる手口が頻発していると弓弦も聞いた事があり、それと見て取った瞬間だっと駆け出す。
「ちょおおっとあんた達、そこで何やってんのーっっ!?」
 きりりと表情を引き締め、そんな怒声を掛けながら。
「――何だ、何の用だよ」
 奥に連れ込まれそうになっていた2人が助かったと言う表情と、でも現れたのが女性と見て大丈夫だろうかと言う複雑な顔をする。それと同じく、彼らを連れ込もうとしていた5人程の少年が、突如飛び込んで来た弓弦にうざったそうな顔を向けた。
「それはこっちが聞きたいわね。何をしようとしていたの?」
「ああン?テメェに何かかんけーあんのか?年上だからって威張ってんじゃねえぞ」
「つーか、オバサンもオタクって事かよ。んじゃあ丁度いいや、俺らに小遣いくれねえ?」
「あははは!そりゃいいや、こいつらの代わりにオバサンから貰おうよ、わざわざ俺達のためにここまで来てくれたんだしな」
「あーはいはいそこまで。冗談は顔だけにしようね、あんた達」
「ンだとぉ…っざけんなよ、ババア!」
 ぴしっ。
 弓弦のこめかみに筋が1本立った。
「痛い目に遭わないと分からないのは悲しいわね――相手になってあげる。かかってらっしゃい!」
 そう言って、すっ、と腰を軽く落として構えて見せた。
 相手は恐らく素人。こちらは合気道を持っている。だが、その数は少なくない。また、素人ながらの無茶な攻撃も十分ありえる話で、これは気を付けないと危険かな――そんな事を思っていたその時。
「弓弦先生!大丈夫で」「陽先生!?列離れちゃ駄目でしょおおお!」
 遠くから様子を窺っていたらしい陽が駆け込んで来たのを見て、弓弦が少年達と対峙した時よりも必死な顔をして叫んでいた。
「あのサークルはっ!物凄い人気で、通販でだってなかなか買えないんだから!」
「いや、それはすみません、けれども」
「けれどじゃないのーーーっ!いいから戻って、今の列の人にごめんなさいして割り込んで入って買って!」
「そ、それは問題になるんじゃないですか?」
「分かってるわよ、でも今から並びなおしたって間に合わないかもしれないのに!」
「――おい」
「弓弦先生が危険な目に遭っているのにのほほんと買い物なんてしていられませんってば!」
「えっ?あ、あたしのため?」
「当たり前でしょう、いくら喧嘩に自信があったって、相手が武器を持っていたらどうするんですか。身体に傷が残る事だってあるんですよ」
「おい――てめぇら」
「それは分かってるわよ。だからって見逃せるわけないじゃない」
「だから来たんじゃないですか」
「…陽先生」
「おいッてめぇらッッ、何そこで別世界作ってんだよッッッッ!?」
 ぷっちーん、と音がしそうなくらい顔を真っ赤にした少年達が、手に手にナイフやカッターを持って2人をぐるりと取り囲む。
「困った子たちね。しょうがない。…陽先生、手伝ってね」
「勿論です」
 2人が背中合わせになり、すうっ、と息を吸う。
「覚悟はいい?」
 弓弦がそう、目の前の少年に向かってにこりと笑いかけた。

*****

「何よ、準備運動にもならなかったじゃない」
 ほんのちょっと縒れた服のしわを直して、その場に転がる少年達を1人1人手を引いて起こす。
 その様子を見守っていた2人が、ぺこぺこと頭を下げながらお礼もそこそこに目当てのブースへ移動して行くのを見てから、少年達に向き直る。
「怪我は無い?ごめんね、随分手加減したつもりだったんだけど」
 言われた方はきょとんとした顔で弓弦を見た。自分達がやった事についての詰問ではなく、身体の事を言われたのは初めてだったのだろう。
「…別に」
 ぷいとそっぽを向いた少年の1人に、弓弦がしゃがみこんで無理やり視線を合わせ、
「こう言う事はもうやめなさい。実にも何にもならないから」
 そう、少年達が思わず後ずさりしそうな強い目で言う。
「そんなの――俺達の勝手じゃねえか」
「そうね、勝手ね。それが回りまわって、あんたたちの家族が同じ目に遭っても、同じ事言えるのね?」
 真正面から覗き込む弓弦の目。それをまともに受け止められないまま、少年は困ったように目を逸らして、何も言わず。
「その年なんだから、まだやれる事はいっぱいあると思うのになぁ。よりにもよって、誰からも褒められないような事してちゃ、せっかくの時間が勿体無いわ」
 さ、立って、と座り込んでいた5人を立たせ、ぱんぱんと手馴れた手つきで服に付いた汚れや埃を払い落とし、にこりと笑いかけると、
「さ、帰ってよーく考えてみるのね。あんたたちのしていた事を。それから、考えて考えて反省したら、他の事に頑張ってみなさい?そんな、今から眉間にしわを寄せて生きるようなやり方よりも、もっと気分良く生きられる道が必ずある筈よ」
 ぱぁん、といい音を立てて5つの背中を張り飛ばしながら、
「気を付けて帰りなさいねー!」
 どうして簡単に自分達を解放したのか良く分からないでいる少年達を見送ると、
「さーあ、列に戻りましょ。あっ、そうそう。ちょっとぬるくなっちゃったけどはいこれ」
 すっきりした顔で、弓弦が飲み物を差し出した。

*****

「あーっ、お疲れ様ーーっ!」
 にこにこと満足げな顔を浮かべた弓弦が、やはり今日もぐったりと疲れ果てた様子の陽の肩をぽんぽんと叩く。
「弓弦先生こそお疲れ様です。大変でしたね」
「そうね。盛況で何よりだわ」
 今年は新刊が多かったのよーっ、と嬉しそうに、昨日よりは少ないものの、やはり積み上げられた本の束を見て微笑む弓弦。
 そんな様子を見る限りでは、先程の真剣な顔で少年達と向き合っていた姿は想像出来ない。
 今までは、ちょっと誤解していたのかもしれない、と陽は弓弦を見ながら思っていた。
 けれど、彼女なりに真剣に教職に就いているのだと分かって、陽は何故だか少し嬉しくなった。それがどうしてなのかは、良く分からなかったけれど。
 そして。
 弓弦もまた、どこか頼りなさそうに見える陽が見せた別の一面を知って見直しつつあった。
「…ところで弓弦先生」
「なあに?」
「……この2日間で一体幾ら使ったんですか?」
「えーとね。――くらい?」
「!?」
 あっさりと答えた金額に陽が目を見開いて、そしてようやく理解した。時々妙に懐が寂しそうな理由を。そのくせ、上機嫌な理由を。
「……あの…晩ご飯、ご馳走しましょうか?」
「ええっ本当に!?いいの?そりゃすっごく助かっちゃうけど」
「見るに見かねました」
「―――何だかそれってあたしを憐れんでない?」
「だって…次の給料日まで、どうやって生活するつもりなんですか…」
 あははははー、とその質問には答えないまま弓弦が明後日の方向を見る。

 ――少年達が、目の前の大人のようにならないように。

 陽は、そんな事を願わずにはいられなかった。


-END-
PCシチュエーションノベル(ツイン) -
間垣久実 クリエイターズルームへ
東京怪談
2005年09月05日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.