机の上に並べた色鉛筆から、ドアに近い色を選んでスケッチブックに線を引いた。
時折思いつくままにアクセサリーのデザインを絵にしていたが、今日は頭の中で強く浮かんでくる物がある。
――骨董屋の主に聞いた話では、あの万華鏡を覗いた人間は、忘れていた記憶の断片、いわば影を目にすることになるという。
ブレスレットの内側に彫ってある名前も、それが何を意味するのかも、今ならわかる。
Vous ouvrirez la porte bleue.(貴方は青いドアを開ける)
ドアを開けるのは簡単だ。鍵となる欠けた記憶は、既に持っているのだから。