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『サプライズ・ウィンド 』
土岐護・誠人4371)&紫城・禾遊羅(4676)
●挨拶はキスの味
 東京も、7月ともなれば、そろそろじめじめとした雨は影を潜め、うっと惜しいくらいの日差しが、待ってましたとばかりに降り注ぐ頃合だ。
 彼らの住む街とて、それは例外ではなく、駅前の商店街では、ボーナスで膨らんだ懐を当て込んだ、サマーセールと言う名のバーゲンのぼりが、揺らぐ空気にひらめき、長い事雨にさらされた街路樹が、その濡れた体を乾かしながら、深い緑色の風に、そよいでいた。
(そろそろ、夏‥‥ですか‥‥)
 そんな‥‥情緒と人情味溢れる、小さな商店街を、いかにも考え事をしていると言った様子で、ふらふらと歩いている青年がいた。見た目は、どこにでもいる普通の少年。名前は、土岐護・誠人。一見すると女の子のような雰囲気と外見が、ちょっとしたアクセントだ。
「まったくもう。これだから、一般人は!」
 その彼の前で、商店街にあるファーストフード店から、文句を垂れ流しつつ出てくる女性。年は、誠人と同じくらいだろう。ふわふわのウェービーヘアを持った彼女は、なにやら大きなバックを抱えていた。
(危なっかしいですねぇ‥‥)
 そのバックは、彼女と同じくらいの大きさを誇るもの。その上、とても重いらしく、女性は歩行者天国のその道一杯を使って、よろよろと移動中だ。
(見ちゃいられないです‥‥)
 そう思い、誠人はその女性に向かって歩き出した。自身の容姿が女性めいている事に引け目を感じてか、どこか冷たい‥‥と思われてはいるが、普段は結構気さくに人と話す方だ。それに、困っている女性を見捨てておけるほど、彼も心の腕は錆びついてはいない。
「大丈夫です? 手伝いましょうか?」
「ありがとう。ですが、余計なお世話と言う奴ですわ」
 誠人が声をかけると、彼女は案の定、やんわりと断ってきた。多少、冷たい話し方をする女性である。
「でも、そのままじゃ転んじゃいますよ。ああ、別に怪しい者じゃないですから」
 重い物持ってる人、手伝えってガッコで言われなかった? と、あくまでも親切心で手伝おうとしている事をアピールする誠人。と、彼女は迷惑そうな表情で、ぷいとそっぽを向く。
「この子は、見ず知らずの方に触れられても良いほど、低級な子でもありませんの。いいからそこ、どいてくださる?」
「子‥‥?」
 その言い方に、誠人は別の興味をひかれた。中に入っているのは、ただの荷物ではなさそうだったから。
「そう言えば、自己紹介していませんでしたっけ。俺は土岐護・誠人。暇した学生。君は?」
「‥‥紫城・禾遊羅」
 短く己の名前を告げる彼女。迷惑そうにはしているが、声をかけられた事は、嫌ではなさそうだ。
「かゆらちゃんっと。それ、大切な品なんですか?」
「あなたにお答えする義理はありませんわ」
 バックを大切そうに抱えなおしながら、誠人の問いに答えない禾遊羅嬢。
「つれないですね。別に、ナンパしようってわけじゃないんだけど」
「してますわよ。もう」
 そう言って、ぎんっと誠人を睨む禾遊羅。
 いきなり声をかけておいて、どのツラ下げて『ナンパじゃない』だ。と、そんな態度である。
「そうですか?」
 バックを抱えたまま、再び歩き出す禾遊羅に、誠人は話を途中で終わらせるわけに行かず、そのまま並走する形になる。もっとも、スピードが遅いので、並んで歩いているようにしかみえないが。
「そうですわよ! もう! ついてこないで下さいな!」
 機嫌が悪いらしい禾遊羅嬢、怒鳴り返すようにそう言うと、誠人を突き飛ばそうとした。
「うわっ‥‥!」
 重い物をもったまま、ターンを決めれば、荷物は凶器と化す。避けようとした誠人、のけぞるようにして、2、3歩後ろにたたらを踏んだ。
「きゃあっ!」
 それと共に、釣られるようにして、禾遊羅も前のめりにつんのめった。修行を重ねた誠人と違い、バックの重さに耐え切れない彼女。そのまま倒れこんでしまう‥‥。
(危ない‥‥!)
 しかも、ちょうどバックがのしかかる様な体制。彼女の身体では、その重みに耐え切れないと判断した誠人、組み手の稽古の要領で、禾遊羅を引き寄せ、体を入れ替える。
 そのまま、重力法則に従った結果、先に倒れた禾遊羅にのしかかる様な体制で、顔をぶつけてしまう誠人。
「‥‥!?」
「‥‥!!」
 ぶつけたのは、女性にとっては大切な場所の1つ‥‥ちょうど、唇のあたり。そう、2人はキスするような形で、地面にこけてしまっていた。
「痛たた‥‥」
 しかも、誠人の後ろには、先ほどのバックが直撃し、巨大なたんこぶを作っている。
「かゆらちゃん、大丈夫‥‥」
 身を起こした彼、自分のしでかした事にまったく気付いていない。逆に、座り込んだまま、ふるふると震えている禾遊羅を助け起こそうと、手を差し出した‥‥のだが。
「何をなさるんですのーーーーーー!!!」
 晴れた空に、平手打ちの音が3発。盛大に響き渡った。
「あたー‥‥。い、いきなり何だよ‥‥」
「当たり前ですわ! ああもう、私の可愛いお人形が‥‥」
 真っ赤なモミジをつけた頬をさすりつつ、誠人が何事かと禾遊羅を見ると、彼女はバックから出てしまった大きなヒトガタの者を、あちこちチェックしている最中だ。
「人形‥‥?」
「私が作り上げた大切な作品ですわ!」
 その大切な作品の下敷きになりかけた事なんぞ、露ほども知らない彼女は、盛大な文句を張り上げている。
「帰って治して上げなくては‥‥。もう、今日はどうしてこんなについていないんですのー!」
 で、怒る禾遊羅はと言うと、人形を心配そうに見ていたが、よっこいせとそれを抱え上げると、ぷくーっと頬を膨らませ、すたすたと歩き出してしまった。
「あ、ちょっと待ってよ!」
 誠人が追いすがろうとするが、彼女は振り返りもしない。
「あーあ。行っちゃいましたね‥‥」
 さすがにそれ以上声を書ける事が出来ず、彼はそのまま見送ってしまう。
「でも、怒った時の顔、ちょっと可愛かったな」
 そう呟く誠人。ぷくーっと膨れたその表情は、抱えた人形の様に愛らしく、しばらく彼の脳裏を離れないのだった。

●再会は雨音と共に
 数日後。
(雨‥‥か)
 ちょうど、コンビニへ甘いものを買いに来ていた誠人、どんよりと曇った天を見上げ、いい降りっぷりを見せるウォーターカーテンに、どうしたものかとため息をついた。
(あれ‥‥? かゆらちゃん?)
 その時、コンビニの軒先に駆け込んできた女性を見て、はたと思い当たる誠人。つい先日、ナンパめいた事件を起こした相手だ。
(急いでる‥‥のかな‥‥)
 コミック本を立ち読みするふりをして観察していると、彼女は時折腕時計をちらちら見ては、イライラした表情となる。手には、何やら紙包み。どうやら、どこかへ届けものと言った様子だ。
(困った女性には優しくするのが、土岐流古剣術‥‥と)
 家にある剣術指南書には、そんな事ぁ書いていないんだが、人様に親切に接するのは、基本中の基本だろうと、勝手に納得しておく。
「かゆらちゃん☆」
 猫なで声を出しつつ、誠人はそう言って、今買ってきたばかりの雨傘を差し出した。
「あなた‥‥確か‥‥」
 彼女もやはり覚えていたのだろう。差し出された安物の傘と、誠人とを交互に見比べていたが、ややあって、ぷいっとそっぽをむいてしまう。
「使って。別に、大した事ないから」
 誠人はそう言ったが、禾遊羅は彼を無視している。
「もしかして、怒ってる?」
 彼女は答えない。そりゃあ、あんな事をしたんだから、怒って当然だろうなぁ‥‥と、誠人は思った。
「あの、さ。これで水に流してくれません? 悪かったと思いますし」
「‥‥そう思ってるなら、付きまとわないでいただけます? うっとおしんですわ」
 ぽたぽたと容赦なく降り注ぐ雨は、禾遊羅の苛立ちも煽っているようだ。そんな彼女に、誠人はちょっと悪戯心を起こして、こんなセリフを口にしてしまう。
「でも、怒った時の顔、可愛かったですよ」
「‥‥ななな何言って」
 かぁっと真っ赤になる禾遊羅嬢。聞き様によっては、あからさまに口説いていると思われるそのセリフに、再びほっぺが丸くなる。
「ほら、このあたりが」
 頬をつつかれて、子供を撫でまわすかのような口調。一応、褒められている部類にはあたるので、文句のつけようが無い辺りが、禾遊羅にとっては非常に悔しいようだ。
「子猫が毛を逆立ててるみたいですよ。ああでも、子猫より可愛いかもしれない」
「私はペットじゃありませんわっ」
 一生懸命無視していた彼女だったが、思わず言い返してしまう。
「誰がそんな事言った? かゆらにゃんこちゃん☆」
 はっと気がつくと、誠人が『ひっかかった』と言いたげな表情で、ほっぺをつついていたり。
「‥‥決めた」
 黙ってその無礼な行いを受けていた禾遊羅だったが、ぱしっとその指先を掴むと、怒った表情のまま、彼の腕を小脇に抱えるようにしてしまう。
「とーーーっても腹が立つんだけど‥‥。貴方しばらく、私のペット決定ね」
 思い知らせてあげるんだから! と血気盛んな禾遊羅ちゃん。気のせいか、頬の赤みが増している。
「素直じゃないですね」
「そう言う問題じゃないわ。人に動物扱いされる事が、どれだけ心を傷つけるか、思い知らせて差し上げます。来なさい!」
 そのままずかずかと、さしかけられた傘ごと、誠人を引っ張っる禾遊羅ちゃん。
「‥‥そう言う事なら、御招待に応じますか」
 反応がいちいち楽しい‥‥そう思った誠人、どうせやる事もないし。と、引かれるままについて行くのだった。

●ケージには鍵をかけて
 そして。
「かゆらちゃん。これは、酷いんじゃないですか?」
「黙りなさい。ペットが文句言わないの」
 有無を言わさず、禾遊羅の家へ連れてこられた誠人は、玄関先で首輪に良く似た、チョーカーをプレゼントされる。
「確かに、首輪はつけるものですけど、ね」
 装飾品としても悪いものではなさそうなので、彼はそう言いながら、チョーカーを付けた。シルバー製のそれは、ちょっとしたアクセサリーに見える。
「付け終わったら、さっさとお上がり。あ、ちゃんと靴は揃えといてね!」
「はいはい」
 まるで、小姑さんである。逆らうつもりはないので、聞き流すように返事をすると、彼女はまた頬を膨らませて、文句を付けてきた。
「はいは一回で良いの! まったく、しつけからやらなくちゃだわ‥‥」
 そして、ちょっと先に用があるから、と言って、持っていた紙袋を、奥へ運んで行ってしまう。何か話しているのを聞くと、家族か誰かだろうか。
「ま、どうせ暇だし。付き合ってみるのも一興って所ですね‥‥」
 幸い、チョーカーを付けられているものの、窓と扉に鍵が掛かっているだけで、家の中を自由に行き来は出来る。目当ての気丈な子猫ちゃんが、どう言う暮らしをしているのか気になった誠人は、家の中を順繰りに巡り始めた。
(すごい数の人形だな‥‥)
 応接室にも、廊下にも、ケースに納められたリアルな人形達が、溢れ返っている。誠人に知識は無かったが、球体関節人形といわれる人形達だ。
「ちょっと。何してるの?」
 眺めていると、奥へ部品を届けていたらしい禾遊羅が戻ってきた。しげしげと人形を眺めている彼に、まるで自分の子供を観察された母親のような‥‥少しむっとした表情で、人形と誠人の間に割り込んでくる。
「いや。この子達は‥‥?」
「私の家族ですわ」
 尋ねられ、きっぱりと言い切る禾遊羅。
「大切なものなの?」
「ええ。一体一体丁重にお作りしてます。大切にしていただけない方には、例え億単位のお金を詰まれても、お渡ししませんわ」
 誠人に背を向け、壁に造りつけられたローチェストの上に座る人形達を見上げながら、彼女はそう語る。己の作り出した芸術を見る眼差しは、まるで娘か妹を愛でるかのようだ。
「へぇ、かゆらちゃんが作ったんだ‥‥」
「ちゃん付けは止めていただけます? これでも、貴方より年上なんですのよ」
 感心する誠人に、禾遊羅は少しだけ嬉しそうな表情を見せながらも、彼に釘を刺す。
「失礼。えーと、じゃあ‥‥かゆらさんでいいかな」
 が、それも気に入らないらしく。彼女はぷいとそっぽを向くと、「御主人様とお呼びなさい」なんぞと、要求してくる。どうやら、本気で自分をペット扱いしたいようだ。
「はぁい、かゆらご主人様〜☆」
 そんな我侭に付き合う気はさらさらないが、つつけば面白そうだと思った誠人、わざと声の調子を変え、ペットが甘えるように頬を摺り寄せて見る。
「甘えなくてもよろしい! ああもう。どうして貴方は、私を怒らせるような真似ばかりするの!」
「御主人様がやれって言ったんですよぉ♪」
 口元に手を当てて、応接室のソファーにわざわざシナを造りながら、妙になよっとした声で、わざと言い返す誠人。
「むーーー!」
 とたんに頬を膨らませて反応する禾遊羅嬢。
「‥‥可愛い」
 ぷんすかと怒るその仕草が、まるで子供のようで、誠人はついいぢめたくなってしまう。
「そんな事言う子には、今日のご飯あげませんわ!」
 が、悪戯の過ぎた誠人に、禾遊羅はとっておきの制裁を発動しようとした。
「ええー、兵糧攻めは酷いですよー」
「だったら、少しは反省しなさいっ」
 これ以上からかうと、本当に夕飯を抜かれそうだ。食い意地が張っているわけではなかったが、一食抜いてもOKな程、女の子をギャフンと言わせる事に執着してはいない誠人くん、「はーい」と、素直に両手を挙げる。
 こうして、ペットとご主人様の、奇妙な攻防戦が幕をあけるのだった。

●攻防戦
 数日後。
「いい加減に、ぎゃふんって言ってくださいません?」
 お夕飯を一緒に食べていた禾遊羅ちゃん、向かいの席でサラダをつついていた誠人を、じーっと見つめて、そう言った。
「んー。別に、困った事ないし」
 時々からかう他は、仕事の邪魔をするわけでもなく、何か壊す事もない誠人くん。大人しくしてれば、ご飯は出てくるので、結構なご身分である為、言葉どおりの生活をしていた。
「ご飯もダメ、怖いのもだめ。もー! 何か苦手なものってありませんのー!?」
「特に設定していないけど‥‥」
 禾遊羅の問いに、小首を傾げる誠人君。ちなみに、彼女が『ダメ』と言っているのは、『苦手なものがない』と言う意味だ。
「設定してるとかしてないじゃなくて! これだけはどうしてもダメって言うもの、何かありませんの!?」
「何かあったかな‥‥」
 そうは答えるものの、思い出している風情など欠片もなく、オードブルの皿に手を伸ばしている誠人。
「ぷー‥‥」
 納得行かない禾遊羅ちゃん。やっぱりいつもの様に、頬を膨らませるはめになる。と、その表情をしげしげと眺めながら、誠人がこう言って来た。
「ああ、そうだ。1つ思い出した」
「なんですの?」
 弱点発見か? と思い、目を輝かせる禾遊羅。
「かゆらさんが、そう言う膨れた顔をしなくなる事」
「なによそれはーーー!」
 ところが、彼の答えに、やっぱり頬を膨らませる事となる。おかげで、飲んでいた湯のみが、盛大に跳ね上がった。
「ほらほら。お茶こぼすよ?」
「まったくもーー! 何で私が誠人にいいようにあしらわれないといけないのよーー!」
 妙な所で世話を焼く誠人から、湯のみをひったくる禾遊羅嬢。
「あしらってないよ。からかってるだけ」
「同じ事よ!」
 ああ言えばこう言う彼に、同じ様に言い返す彼女。負けず嫌い根性が爆発している模様だ。
「そう言う所が可愛いんだけどね」
「むーーーー!!」
 だが、やっぱり誠人にはやりこめられてしまうのだった。

●風が変わる時
 そんな攻防戦が、一週間ほど続いただろうか。
「風が‥‥」
 応接室から続く庭に出ていた誠人、吹き抜ける風が、じめついた西風から、からりと晴れた南風になったのを感じ取り、空を見上げる。
「そうか。そろそろ潮時‥‥と言うわけだね」
 微妙な季節の変化を、誠人はそろそろイベントタイムの終わりだと感じ取る。
「黙って出てったら、きっと怒るよね‥‥」
 だが、そのまま姿を消したら、次にあった時に、半殺しにされかねない。
「娘さん達に、仲立ちをお願いしましょうか」
 彼が、メッセンジャーとして選んだのは、ローチェストに座る『娘』達。その1人‥‥直ったばかりの人形の手に、誠人は書置きの手紙を挟んだ。
「では、言伝お願いしますね」
 彼にとって、窓と扉の施錠など、あってないようなものだ。あっさりとその鍵を見つけ、誠人は家の外へと出てしまう。
「なんですの!? これは!」
 納得行かないのは、禾遊羅。残された置手紙とチョーカーに、ぷんすかと怒っている。
「彼が置いて行った? まったく、ペットのクセに、勝手にいなくなるなんて!」
 それも当然で、結局、彼をへこませる事が出来なかったのだから。
「猫はそう言うもの? 違うわ。猫は私で‥‥って、何を言わせるのよー」
 人形達から話を聞くように、セリフを繰り返す彼女。が、はたと気付いて、うろうろと部屋の中を言ったり来たり。
「ああもう、どうしてくれようかしら‥‥。でも、間接的に手を下すなんて、それくらいで、凹むような誠人じゃないし‥‥」
 既に、頭の中では、次なる作戦が練られているようだ。
「悔しい? いいえ、そんな事ありませんわ。ただ、きちんと返礼しないと、気がおさまらないだけよ!」
 人形と話すようなその口調は、もしかしたら彼女にだけは、その『声』が聞こえているのかもしれない。
「追いかけていけばいい? それも誠人を喜ばせるだけでしょ」
 それでは、ただのラブコメになってしまう。それは、禾遊羅のプライドが許さない。
「ええ。きっと、風が変われば戻ってくるわ」
 そう思い、彼女は『待つ』事を決めた。風‥‥即ち運命と言う名の風が導けば、また出会う事は出来ると。
「見てらっしゃい。その時こそ、ギャフンと言わせて上げるから」
 その時まで、爪を研いでおこう。今度こそ、からかわれないように。固く心に誓う禾遊羅だった。
PCシチュエーションノベル(ツイン) -
姫野里美 クリエイターズルームへ
東京怪談
2005年07月07日

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